【宅建過去問】(平成25年問09)不法行為
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- Aは、Cに対して事故によって受けたCの損害の全額を賠償した。この場合、Aは、BとDの過失割合に従って、Dに対して求償権を行使することができる。
- Aは、Dに対して事故によって受けたDの損害の全額を賠償した。この場合、Aは、被用者であるBに対して求償権を行使することはできない。
- 事故によって損害を受けたCは、AとBに対して損害賠償を請求することはできるが、Dに対して損害賠償を請求することはできない。
- 事故によって損害を受けたDは、Aに対して損害賠償を請求することはできるが、Bに対して損害賠償を請求することはできない。
正解:1
はじめに
本問のケースは、BとDの2人を加害者とする共同不法行為です。そして、被害者はB・C・Dの3人です。
以下の話を分かりやすくするため、この事故を、【Bを加害者とする面】、【Dを加害者とする面】の二面に分けて考えてみましょう。それぞれの立場は、以下の通りです。
Bを加害者とする面 | Dを加害者とする面 | |
A | 使用者 | ― |
B | 加害者 | 被害者 |
C | 被害者 | 被害者 |
D | 被害者 | 加害者 |
1 正しい
【Bを加害者とする面】から見ると、Aは加害者Bの使用者にあたります。そのため、被害者であるCに対し、使用者責任を負います(民法715条1項)。一方、【Dを加害者とする面】からすれば、Dも、Cに対する加害者です。
つまり、被害者Cから見ると、BとDによる共同不法行為があったことになります。
このようなケースで、使用者Aが被害者Cに対する損害全額を賠償した場合、
- Aは、Dに対して求償権を行使することができ、
- Dの負担部分は、BとDとの過失割合による
とするのが判例です(最判昭41.11.18)。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | 28-07-ウ | 使用者は、使用者責任に基づき、被害者に対して被用者の不法行為から生じた損害を賠償した場合、被用者に対して求償することができるが、その範囲が信義則上相当と認められる限度に制限される場合がある。 | ◯ |
2 | 25-09-1 | 使用者は、被用者との共同不法行為者に対して、求償権を行使することができる。 | ◯ |
3 | 25-09-2 | 使用者は、被用者に対して、求償ができない。 | × |
4 | 24-09-3 | 使用者は、被用者から全額の求償ができる。 | × |
5 | 20-11-3 | 使用者は、被用者に対して、求償ができない。 | × |
6 | 18-11-4 | 使用者は、被用者から損害額の1/2の求償ができる。 | × |
7 | 14-11-3 | 使用者は、被用者に対して、信義則上相当と認められる限度において、求償ができる。 | ◯ |
8 | 14-11-4 | (Aの被用者Bと、Cの被用者Dが、A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為)Dが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Aに対し、Aの負担部分の限度で求償することができる。 | ◯ |
9 | 11-09-4 | 使用者は、被用者に故意または重過失がなければ、求償できない。 | × |
10 | 06-07-4 | 使用者は、被害者に対して損害の賠償をした場合、被用者に求償することはできない。 | × |
11 | 04-09-4 | 使用者は、被用者に対して、求償ができない。 | × |
2 誤り
【Bを加害者とする面】から見ると、Aは加害者Bの使用者にあたります。そのため、被害者であるDに対して、使用者責任を負います(民法715条1項)。この場合、使用者Aは、被用者Bに対して求償することができます(同条3項)。
※求償の範囲は、「信義則上相当と認められる限度」です(最判昭51.07.08)。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | 28-07-ウ | 使用者は、使用者責任に基づき、被害者に対して被用者の不法行為から生じた損害を賠償した場合、被用者に対して求償することができるが、その範囲が信義則上相当と認められる限度に制限される場合がある。 | ◯ |
2 | 25-09-1 | 使用者は、被用者との共同不法行為者に対して、求償権を行使することができる。 | ◯ |
3 | 25-09-2 | 使用者は、被用者に対して、求償ができない。 | × |
4 | 24-09-3 | 使用者は、被用者から全額の求償ができる。 | × |
5 | 20-11-3 | 使用者は、被用者に対して、求償ができない。 | × |
6 | 18-11-4 | 使用者は、被用者から損害額の1/2の求償ができる。 | × |
7 | 14-11-3 | 使用者は、被用者に対して、信義則上相当と認められる限度において、求償ができる。 | ◯ |
8 | 14-11-4 | (Aの被用者Bと、Cの被用者Dが、A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為)Dが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Aに対し、Aの負担部分の限度で求償することができる。 | ◯ |
9 | 11-09-4 | 使用者は、被用者に故意または重過失がなければ、求償できない。 | × |
10 | 06-07-4 | 使用者は、被害者に対して損害の賠償をした場合、被用者に求償することはできない。 | × |
11 | 04-09-4 | 使用者は、被用者に対して、求償ができない。 | × |
3 誤り
Cは、【Bを加害者とする面】から見ても、【Dを加害者とする面】から見ても、被害者です。したがって、加害者(共同不法行為者)であるBとDに損害賠償を請求することができます(民法719条1項)。
※両者の債務は、連帯債務の関係です。つまり、BとDはそれぞれCに対して、債務全額の支払い義務を負います(求償関係における負担部分は過失割合によって決まります)。
※Cは、加害者Bの使用者であるAに対して、使用者責任を追及することもできます(同法715条1項)。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | 25-09-3 | 共同不法行為(自動車事故)の加害者の同乗者は、他の加害者に対して損害賠償請求できない。 | × |
2 | 19-05-3 | 共同不法行為の加害者の1人に履行を請求しても、他の加害者には効力を有しない。 | ◯ |
3 | 14-11-1 | 共同不法行為の加害者は、加害割合に応じた金額についてのみ賠償の責任を負う。 | × |
4 | 14-11-2 | (Aの被用者Bと、Cの被用者Dが、A及びCの事業の執行につき、共同してEに対し不法行為)Aが、自己の負担部分を超えて、Eに対し損害を賠償したときは、その超える部分につき、Cに対し、Cの負担部分の限度で求償することができる。 | ◯ |
5 | 12-08-2 | 共同不法行為の加害者のうち過失が軽微な者に対しても、損害全額の賠償を請求できる。 | ◯ |
6 | 04-09-3 | 売主・買主それぞれが宅建業者に媒介を依頼し、両業者が共同不法行為を行った場合、買主は、自らが依頼した宅建業者には損害賠償請求できるが、売主が依頼した業者には請求できない。 | × |
4 誤り
【Bを加害者とする面】から見ると、Aは加害者Bの使用者にあたるため、被害者であるDに対し、使用者責任を負います(民法715条1項)。
このように使用者責任が成立する場合でも、被用者は独立して不法行為責任(同法709条)を負い、両者の債務は、連帯債務の関係です(肢3参照)。
本問でいえば、被害者Dは、使用者A、加害者Bの双方に損害賠償を請求することができます。
■類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 25-09-4 | 使用者責任に基づく損害賠償を請求した場合、加害者に対する損害賠償請求はできない。 | × |
2 | 20-11-3 | AがCに雇用されており、AがCの事業の執行につきBに加害行為を行った場合には、CがBに対する損害賠償責任を負うのであって、CはAに対して求償することもできない。 | × |
3 | 18-11-1 | 使用者責任が発生する場合、被用者である加害者の不法行為に基づく損害賠償責任は発生しない。 | × |
4 | 06-07-2 | 使用者責任に基づく損害賠償を請求した場合、被用者である加害者に対する損害賠償請求はできない。 | × |
ムラカミ様
【宅建過去問】(平成28年問07)賃貸借・使用者責任
https://e-takken.tv/28-07/#comments
にいただいた問題について、こちらで回答いたします。
言い方は失礼ですが、ムラカミさんの考えすぎだと思います。
本問の肢1で問われているのは、
「Aが、Dに対して求償権を行使することができるか?」
ということだけです。
「Bに対する求償権の有無」
については、一切触れられていません。
したがって、Dに対する求償権の有無だけを考慮すれば十分です。このことを根拠に、本肢は「正しい」という結論が導かれます。
以下、ムラカミさんの御質問を引用しつつ、コメントします。
>回答先行で無理やりつじつま合わせで解説されているのでしょうか?
↑
そのようなことはありません。
問われているテーマ(「Aが、Dに対して求償権を行使することができるか?」)に対して、「できる」と答えているだけです。「つじつま合わせ」ではありませんし、その必要もありません。
>BとDの過失・・・と宣わっている時点でおんどれ社員への求償に全く触れないのは×のはず!!!
>Bの求償部分 が欠如と判断可能で、× では!!!ないでしょうか?
↑
繰り返しになりますが、本肢では、「Bへの求償」について、全く問われていません。
したがって、このことを考える必要はないのです。
もちろん、「被用者であるB」に対する求償も可能です。しかし、このことは、本肢の正誤とは無関係です。
(本問では、Bに対する求償について、肢2で出題しています。)
>解説画像では Bの求償 のいついては 2 で触れていると仰せですが、
>1と2は 話は分けずに繋げて解釈し解くのでしょうか?
↑
肢1と2は独立の選択肢です。つなげて考える必要はありません。
肢1では「Dに対する求償権」、肢2では「Bに対する求償権」、について、それぞれ解答・解説しています。
動画で、「2で触れている」のは、同じ内容の繰り返しを防ぐためのものです。肢1と2がどちらか単独で出題されてとしても、正誤の判断に変わりはありません。