【宅建過去問】(平成30年問05)事務管理

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Aは、隣人Bの留守中に台風が接近して、屋根の一部が壊れていたB宅に甚大な被害が生じる差し迫ったおそれがあったため、Bからの依頼なくB宅の屋根を修理した。この場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

  1. Aは、Bに対して、特段の事情がない限り、B宅の屋根を修理したことについて報酬を請求することができない。
  2. Aは、Bからの請求があったときには、いつでも、本件事務処理の状況をBに報告しなければならない。
  3. Aは、B宅の屋根を善良な管理者の注意をもって修理しなければならない。
  4. AによるB宅の屋根の修理が、Bの意思に反することなく行われた場合、AはBに対し、Aが支出した有益な費用全額の償還を請求することができる。

正解:3

事務管理

本問のように、頼まれてもいないのに他人のために事務の管理をする行為を事務管理といいます(民法697条1項)。本問のAの事務管理は、台風による甚大な被害を免れさせるための行為です。身体、名誉又は財産に対する急迫の危害を免れさせるための事務管理であり、緊急事務管理と呼ばれます(同法698条)。
事務管理の関係では、本問のBを本人、Aを管理者と呼びます。

■参照項目&類似過去問
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事務管理(民法[なし])

[共通の設定(Q1~5)]
Aは、隣人Bの留守中に台風が接近して、屋根の一部が壊れていたB宅に甚大な被害が生じる差し迫ったおそれがあったため、Bからの依頼なくB宅の屋根を修理した。
年-問-肢内容正誤
1H30-05-1Aは、Bに対して、特段の事情がない限り、B宅の屋根を修理したことについて報酬を請求することができない。
2H30-05-2Aは、Bからの請求があったときには、いつでも、本件事務処理の状況をBに報告しなければならない。
3H30-05-3Aは、B宅の屋根を善良な管理者の注意をもって修理しなければならない。×
4H30-05-4AによるB宅の屋根の修理が、Bの意思に反することなく行われた場合、AはBに対し、Aが支出した有益な費用全額の償還を請求することができる。
5H25-08-1倒壊しそうなB所有の建物や工作物について、Bが倒壊防止の措置をとらないため、Bの隣に住むAがBのために最小限度の緊急措置をとったとしても、Bの承諾がなければ、Aはその費用をAに請求することはできない。×
6H23-08-4BはAに200万円の借金があり、その返済に困っているのを見かねたCが、Bから頼まれたわけではないが、Bに代わってAに対して借金の返済を行った。Bの意思に反する弁済ではないとして、CがAに支払った200万円につき、CがBに対して支払いを求める場合、CのBに対する債権は、契約に基づいて発生する。×

1 正しい

事務管理者Aは、特約がない限り、報酬を請求することができません。
※委任の場合を考えてみましょう。委任契約を締結した場合でも、特約がない限り、受任者は報酬を請求することができません(民法[32]2(1)、同法648条)。契約関係を前提としていない事務管理で、報酬を請求できるのは、おかしな結論です。

2 正しい

管理者による報告に関し、民法の事務管理に関する規定(同法701条)は、委任に関する規定(同法645条)を準用しています。したがって、Aは、Bの請求を受けたときは、いつでも事務管理の状況を報告しなければなりません。

3 誤り

緊急事務管理を行う場合、管理者は、悪意又は重大な過失がある場合に限って、責任を負います(民法698条)。善良な管理者の注意義務を負うのではありません。
※緊急事務管理以外の通常の事務管理においては、管理者は善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負うものと考えられています。

4 正しい

管理者の事務管理が本人の意思に反していない場合、管理者は、本人のために支出した有益な費用の全額について償還を請求することができます(民法702条1項)。
※管理者が本人の意思に反して事務管理をしたときは、本人が現に利益を受けている限度においてのみ、償還を請求することができます(同条3項)。


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【宅建過去問】(平成30年問05)事務管理” に対して2件のコメントがあります。

  1. ホンケ より:

    家坂先生
    こんにちは。
    類似過去問にある「25-08-1」の問題ですが、肢1と同じように感じますが、回答をみると有益な費用を支出したときは、その償還を請求することができますと書いており、その違いの区別を教えてください。
    よろしくお願い致します。

    1. 家坂 圭一 より:

      ホンケ様

      いつもご質問ありがとうございます。

      類似過去問にある「25-08-1」の問題ですが、肢1と同じように感じますが、回答をみると有益な費用を支出したときは、その償還を請求することができますと書いており、その違いの区別を教えてください。

      本問は「報酬の支払い」の話、平成25年の問題は「立替費用の精算」の話です。
      このようにタイトルを付ければ、両者が全く別の話であることが分かると思います。

      もう少し詳しく見ておきましょう。

      1.平成30年問05肢1
      これは「報酬」に関する問題です。
      冒頭の「事務管理」でも説明していますが、事務管理というのは、「頼まれてもいないのに他人のために事務の管理をする行為」のことをいいます。
      頼まれてもいない事務をしたからといって、「報酬を払え!」というのは、無茶な話です。

      このことは、委任契約をした場合でも、原則的には無報酬であることを考えればよく分かるでしょう。

      2.平成25年問08肢1
      こちらは「立替費用の精算」に関する問題です。
      「倒壊しそうなA所有の建物や工作物について、Aが倒壊防止の措置を」とる際に、その費用は、当然、Aが負担すべきです。
      しかし、Aがその措置をとらないので、Bが費用を立て替えて「最小限度の緊急措置」を講じているわけです。
      立て替えた費用を精算するのは当然のことです。Aから依頼を受けたかどうか、で結論は異なりません。

      3.動画講義の確認
      平成30年と25年の問題ですから、どちらも、[Step.3]過去問演習編で解説講義をしています。ここで詳しく説明していますから、この機会に見直しておきましょう。
      (1.5倍速や2倍速でも構いません。)

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