【宅建過去問】(平成30年問31)報酬(空家等の売買)

宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)が受け取ることのできる報酬の上限額に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 土地付中古住宅(代金900万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、Aが売主Bから媒介を依頼され、現地調査等の費用を5万円(消費税等相当額を含まない。)要するなど、当該媒介に要する費用を勘案し、報酬額についてBに対して説明し、合意した上で、AがBから受け取ることができる報酬の上限額は418,000円である。
- 土地付中古住宅(代金300万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、Aが買主Cから媒介を依頼され、現地調査等の費用を4万円(消費税等相当額を含まない。)要するなど、当該媒介に要する費用を勘案し、報酬額についてCに対して説明し、合意した上で、AがCから受け取ることができる報酬の上限額は154,000円である。
- 宅地(代金350万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、Aが売主Dから媒介を依頼され、現地調査等の費用を2万円(消費税等相当額を含まない。)要するなど、当該媒介に要する費用を勘案し、報酬額についてDに対し説明し、合意した上で、AがDから受け取ることができる報酬の上限額は330,000円である。
- 中古住宅(長期の空家等ではない。1か月分の借賃15万円。消費税等相当額を含まない。)の貸借について、Aが貸主Eから媒介を依頼され、現地調査等の費用を3万円(消費税等相当額を含まない。)要するなど、当該媒介に要する費用を勘案し、報酬額についてEに対し説明し、合意した上で、AがEから受け取ることができる報酬の上限額は330,000円である。
Contents
正解:3
はじめに~低廉な空家等の売買に関する特例
この問題は、「低廉な空家等の売買に関する特例」に関するものです。
この特例は、媒介・代理に要する費用を勘案して、計算式で求めた金額を超える報酬を受領可能にするルールです。空家問題を解決するため、800万円以下の廉価な宅地や建物の媒介・代理に関与した宅建業者も、33万円(税込)の報酬を得られるようにしたわけです。
この特例を利用するためには、以下のチェックポイントを全てクリアする必要があります。
チェックポイント
適用あり | 適用なし |
---|---|
◯低廉な空家等(売買代金800万円以下(税別)の宅地又は建物) 例:◯居住中の建物 ◯宅地のみ | ×売買代金800万円超(税別) |
◯説明・合意あり | ×説明・合意なし |
◯合計30万円(税別)以内 | ×30万円(税別)超 |
◯売主・買主双方から受領可能 | ×売主限定 |
■参照項目&類似過去問(全選択肢合わせて)
内容を見る低廉な空家等の売買に関する特例(宅建業法[21]5(2)①)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R04-27-4 | Aは、土地付建物について、売主Bから媒介を依頼され、代金300万円(消費税等相当額を含み、土地代金は80万円である。)で契約を成立させた。現地調査等の費用5万円(消費税等相当額を含まない。)を要するなど、当該媒介に要する費用を勘案し、報酬額についてBに対して説明し、合意の上、媒介契約を締結した。この場合、AがBから受領できる報酬の限度額は20万200円である。 | × |
2 | R03-44-3 | 宅地(代金300万円。消費税等相当額を含まない。)の売買の媒介について、現地調査等の費用を6万円(消費税等相当額を含まない。)要するなど、当該媒介に要する費用を勘案し、報酬額について依頼者双方に対して説明し、合意の上、媒介契約を締結した場合、依頼者双方から合計で44万円を上限として報酬を受領することができる。 | × |
3 | R01-32-1 | 宅地(代金200万円。消費税等相当額を含まない。)の売買の代理について、現地調査等の費用が8万円(消費税等相当額を含まない。)要するなど、当該代理に要する費用を勘案し、報酬額について売主Bに対して説明し、合意していた場合には、AはBから660,000円を上限として報酬を受領することができる。 | ◯ |
4 | R01-32-4 | 宅地(代金200万円。消費税等相当額を含まない。)の売買の媒介について、現地調査等の費用を要するなど特段の事情がない場合でも、報酬額について売主Dに対して説明し、合意していた場合には、AはDから330,000円を報酬として受領することができる。 | × |
5 | H30-31-1 | 土地付中古住宅(代金900万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、Aが売主Bから媒介を依頼され、現地調査等の費用を5万円(消費税等相当額を含まない。)要するなど、当該媒介に要する費用を勘案し、報酬額についてBに対して説明し、合意した上で、AがBから受け取ることができる報酬の上限額は418,000円である。 | × |
6 | H30-31-2 | 土地付中古住宅(代金300万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、Aが買主Cから媒介を依頼され、現地調査等の費用を4万円(消費税等相当額を含まない。)要するなど、当該媒介に要する費用を勘案し、報酬額についてCに対して説明し、合意した上で、AがCから受け取ることができる報酬の上限額は154,000円である。 | × |
7 | H30-31-3 | 宅地(代金350万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、Aが売主Dから媒介を依頼され、現地調査等の費用を2万円(消費税等相当額を含まない。)要するなど、当該媒介に要する費用を勘案し、報酬額についてDに対し説明し、合意した上で、AがDから受け取ることができる報酬の上限額は330,000円である。 | ◯ |
8 | H30-31-4 | 中古住宅(長期の空家等ではない。1か月分の借賃15万円。消費税等相当額を含まない。)の貸借について、Aが貸主Eから媒介を依頼され、現地調査等の費用を3万円(消費税等相当額を含まない。)要するなど、当該媒介に要する費用を勘案し、報酬額についてEに対し説明し、合意した上で、AがEから受け取ることができる報酬の上限額は330,000円である。 | × |
1 誤り
設定の確認

低廉な空家等の売買に関する特例
代金が900万円(税別)であり、800万円(税別)を超えています。したがって、低廉な空家等の売買に関する特例を適用することはできません。
正しい計算方法
特例が使えないのですから、通常どおりの計算方法で報酬を求めることになります。
400万円超の物件 | 3%+6万 |
200万円超400万円以下の物件 | 4%+2万 |
200万円以下の物件 | 5% |
900万×3%+6万=33万円
33万円×1.1=363,000円
418,000円を受領することはできません。
2 誤り
設定の確認

低廉な空家等の売買に関する特例
チェックポイントを確認します。この特例は、売主から受領する報酬だけでなく、買主から受領する特例についても適用される点に注意が必要しましょう。
- 代金=300万円(税別)≦800万(税別)
- 報酬額についてCに対して説明し、合意
- 154,0000円(税込)≦33万(税込)
- 買主からの報酬
結論
全てのチェックポイントを満たしています。
特例を適用することができるので、報酬の上限額は、330,000円(税込)です。
「154,000円」ではありません。
3 正しい
設定の確認

低廉な空家等の売買に関する特例
- 代金=350万円(税別)≦800万(税別)
- 報酬額についてDに対して説明し、合意
- 330,000円(税込)≦33万(税込)
- 売主からの報酬
結論
全てのチェックポイントを満たしています。
特例を適用することができるので、報酬の上限額は、330,000円(税込)です。
4 誤り
設定の確認

低廉な空家等の売買に関する特例
この特例は、「売買」を対象にしています。この選択肢は「貸借」の問題ですので、特例を適用することはできません。
貸借の媒介・代理の報酬

住宅(居住用建物)の貸借を媒介していますから、報酬の上限額は、借賃をベースに決まります。
具体的にいえば、
- Eの承諾がない場合→賃料の0.5か月分+税=75,000円×1.1=82,500円
- Eの承諾を得た場合→賃料の1か月分+税=150,000円×1.1=165,000円
330,000円は、報酬の上限額を超えています。
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土地付中古住宅(代金500万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、Aが売主Bから媒介を依頼され、現地調査等の費用が通常の売買の媒介に比べ5万円(消費税等相当額を含まない。)多く要する場合、その旨をBに対し説明した上で、AがBから受け取ることができる報酬の上限額は286,000円である。
800万以下、33万に改正されたので、286,000円受け取れますよね?
問1について仮に50000円が報酬ではなく実費の請求であれば業者は受け取り可能ですか?
敏治様
ご質問ありがとうございます。
「報酬」か「実費」か、という名目で区別するわけではありません。
「依頼者からの依頼があったかどうか」がポイントです。
(1)依頼者の依頼があった場合
依頼者の依頼によるものであれば、
・広告費用
・遠隔地での現地調査費用
・空家の調査費用
などを報酬に加えて受領することができます。
「空家等の売買代金が400万円超」であろうが、「買主からの依頼によるもの」であろうが、結論は異なりません。
(2)空家等の売買の特例
こちらについては、依頼者の依頼がなくても構いません。
「依頼者に対して説明し、両者間で合意」
していれば、受領することができます。