【目で見る】急傾斜地崩壊危険区域
今回は、崖(ガケ)方面に行ってみましょう。
東京23区内に7か所しか存在しない、レア物件、急傾斜地崩壊危険区域を訪ねてみます。
(7か所のうち、5か所は北区、あとは杉並区と新宿区に1つずつです。)
近場優先ということで、神楽坂から神田川に下る途中にある、「新宿区赤城元町地区急傾斜地崩壊危険区域」を目指します。地図上の青が崖上、赤が崖下のエリアです。
より大きな地図で 急傾斜地崩壊危険区域(新宿区) を表示
神楽坂から赤城元町へ
土曜日でしたので、神楽坂周辺は大変な混雑です。
これだけの人数がみんな急傾斜地崩壊危険区域を見に来たのだとすると、ガケ付近は大渋滞、中には落っこちてしまうオッチョコチョイも出たりして…
と思いながら、歩いて行くと、他の人は大概その辺のお店やら何やらに入ってしまい、どうやらガケだけを目指しているのは、僕だけみたいです。
お、この辺は落ち着いて、いい環境だな、
と思ったあたりで第一目標地点、赤城出世神社様です。
皆さんの合格を心から祈願して、自分の出世をシッカリとお願いして、二礼二拍手一礼完了。
断崖絶壁、そして標識を発見
さて、この神社の裏手に、目指す物件があるはずですが…
と奥へ奥へ向かって行くと、キターッ
東尋坊を思わせるような断崖絶壁(大袈裟!)。
遥か遠くまで見通せる高度です。
さて、急傾斜地法(正式には、「急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律」)によれば、どこかに標識があるはずなのですが。
急傾斜地法6条
都道府県は、急傾斜地崩壊危険区域の指定があつたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該急傾斜地崩壊危険区域内にこれを表示する標識を設置しなければならない。
お、発見!
何だか、ゴミ捨て場になってしまっている感じですが、確かに看板(標識)が出ています。
「この区域内で土地の形状変更をする場合は、知事の許可が必要ですから・・・」
確かに、「ゴミを捨てるには知事の許可が必要」とは書いてないけれども、これはちょっとヒドイ状況ですね(写真は撮り忘れました)。
崖下からの眺めを確認
次に逆サイドから、つまり、崖下から見上げる形で確認しましょう。
北側から、反時計回りで崖下に行くとすると、下っていく坂は、相生坂。気を抜いたら転げ落ちそうな急角度。路面には、車が滑らないように、◯◯マークが掘ってあります。
坂を下って、崖下に着いたのですが、何ということか!ほとんどの崖面がビル(商業ビルやマンション)で覆われていて、崖自体を見ることができません。ビルとビルとのスキマから、わずかに擁壁が覗くだけ。
オレは、ガケの全貌が見たいのだ!
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とは思うものの、なかなか擁壁は見えず、ついに崖下ゾーンは終了です。
ここからは、もう一度、崖の上を目指して登っていくしかありません。
神社の南側から、時計回りに登る、その坂の名は、赤城坂。
坂を登り始め、崖の方を見ると、やっとついに、擁壁の全貌を見ることができました!
お、あれは、さっき見ていた標識の裏側だ!
あ、ここからも見えますよ。擁壁は、2段階の段切りスタイルになっているわけですね。
最後は、階段で神社に戻ります(階段の写真を撮り忘れました)。
階段の途中で、再び擁壁の全体像が見えます。擁壁は、一番高いところでは、ビルの3~4フロア分、ということは、10メートルはありますね。
ということで、急傾斜地崩壊危険区域を一周。
23区内に7箇所だけ。山手線内ではココが唯一という、急傾斜地崩壊危険区域の実見ツアーでした。
まとめを兼ねて勉強しましょう
さて、それでは、宅建の勉強編です。
まず、「急傾斜地」って何でしょう。
これは、急傾斜地法で明確に定義されていて、「傾斜度が三十度以上である土地」のことです。
急傾斜地法2条1項
この法律において「急傾斜地」とは、傾斜度が三十度以上である土地をいう。
今回見てきた赤城元町のブツは、傾斜度30度どころではなく、60度くらいあったんではないでしょうか?
明らかに急傾斜地です。
急傾斜地というだけなら、アチコチにあるのですが、その中で、「急傾斜地崩壊危険区域」とは何でしょう?
これは、急傾斜地法3条1項です。
急傾斜地法3条1項
都道府県知事は、この法律の目的を達成するために必要があると認めるときは、関係市町村長(特別区の長を含む。以下同じ。)の意見をきいて、崩壊するおそれのある急傾斜地で、その崩壊により相当数の居住者その他の者に危害が生ずるおそれのあるもの及びこれに隣接する土地のうち、当該急傾斜地の崩壊が助長され、又は誘発されるおそれがないようにするため、第七条第一項各号に掲げる行為が行なわれることを制限する必要がある土地の区域を急傾斜地崩壊危険区域として指定することができる。
ややこしいから、簡略化しましょう。
- 急傾斜地のうち、
- 崩壊するおそれがあり、
- 崩壊すると相当数の居住者などに危害が生ずるおそれがあるので、
- 急傾斜地の崩壊を助長・誘発する行為を制限する必要がある、
そういう区域です。
指定するのは、「都道府県知事」。ここも押さえておきましょう。
さて、もう一つ覚える必要があるのは、「急傾斜地の崩壊を助長・誘発する行為」の具体例です。これは、急傾斜地法7条1項ですね。
急傾斜地法7条1項
急傾斜地崩壊危険区域内においては、次の各号に掲げる行為は、都道府県知事の許可を受けなければ、してはならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置として行なう行為、当該急傾斜地崩壊危険区域の指定の際すでに着手している行為及び政令で定めるその他の行為については、この限りでない。
一 水を放流し、又は停滞させる行為その他水のしん透を助長する行為
二 ため池、用水路その他の急傾斜地崩壊防止施設以外の施設又は工作物の設置又は改造
三 のり切、切土、掘さく又は盛土
四 立木竹の伐採
五 木竹の滑下又は地引による搬出
六 土石の採取又は集積
七 前各号に掲げるもののほか、急傾斜地の崩壊を助長し、又は誘発するおそれのある行為で政令で定めるもの
過去に出題されたものにアンダーラインを引いておきます。
でも、細かく覚える必要はありませんね。
何しろ、30度以上の角度の崖なのですから、適当な建物を建てたらコケるし、水を放流したり、土砂を採ったりすれば、そりゃー、ガケは崩れます。危険過ぎます!
急傾斜地法は、
そういうガケの崩壊を招く行為をする場合には、知事のチェックを受けておけ!
という、当たり前のことを決めているだけです。
あ、ここでも、許可するのは、都道府県知事です。
急傾斜地崩壊危険区域を指定するのも知事、一定の行為を許可するのも知事です。
これは大事なことなので、何度も言うよ、
残さず言うよ(以下、自粛)。
以上が、急傾斜地法の概要です。
これに加えて、宅建業法の重要事項説明についても見ておきましょう。
宅建業法35条
宅地建物取引業者は、宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の相手方若しくは代理を依頼した者又は宅地建物取引業者が行う媒介に係る売買、交換若しくは貸借の各当事者(以下「宅地建物取引業者の相手方等」という。)に対して、その者が取得し、又は借りようとしている宅地又は建物に関し、その売買、交換又は貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。
一 (略)
二 都市計画法 、建築基準法 その他の法令に基づく制限で契約内容の別(当該契約の目的物が宅地であるか又は建物であるかの別及び当該契約が売買若しくは交換の契約であるか又は貸借の契約であるかの別をいう。以下この条において同じ。)に応じて政令で定めるものに関する事項の概要
宅建業法施行令3条
法第三十五条第一項第二号の法令に基づく制限で政令で定めるものは、宅地又は建物の貸借の契約以外の契約については、次に掲げる法律の規定(これらの規定に基づく命令及び条例の規定を含む。)に基づく制限で当該宅地又は建物に係るもの及び都市計画法施行法 (昭和四十三年法律第百一号)第三十八条第三項 の規定により、なお従前の例によるものとされる緑地地域内における建築物又は土地に関する工事若しくは権利に関する制限(同法第二十六条 及び第二十八条 の規定により同法第三十八条第三項 の規定の例によるものとされるものを含む。)で当該宅地又は建物に係るものとする。
二十三 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第七条第一項
こりゃーダメだ。
まったくチンプンカンプン!
いったい何が言いたいんだ!
ということで、まとめておきましょう。
- 「宅地・建物の売買・交換」に関しては、
- 「急傾斜地崩壊危険区域でやろうとする場合には知事の許可が必要な行為」について、
- 重要事項として説明しなさい
ということです。
過去問で確認
今日一日のまとめとして、過去の本試験問題を解いておきましょう。
急傾斜地法(法令制限[なし])
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-32-ア | 宅地の売買の媒介を行う場合、当該宅地が急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第3条第1項により指定された急傾斜地崩壊危険区域にあるときは、同法第7条第1項に基づく制限の概要を説明しなければならない。 | ◯ |
2 | H22-36-3 | 宅地の売買の媒介において、当該宅地が急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第3条の規定に基づく急傾斜地崩壊危険区域内にあることは説明したが、立木竹の伐採には都道府県知事の許可を受けなければならないことについては説明しなかった。 | × |
3 | H20-25-4 | 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律によれば、傾斜度が30度以上である土地を急傾斜地といい、急傾斜地崩壊危険区域内において、土石の集積を行おうとする者は、原則として都道府県知事の許可を受けなければならない。 | ◯ |
4 | H14-25-4 | 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律によれば、急傾斜地崩壊危険区域内において水を放流し、又は停滞させる等の行為をしようとする者は、原則として都道府県知事の許可を受けなければならない。 | ◯ |
5 | H11-25-3 | 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律によれば、急傾斜地崩壊危険区域内において、工作物の設置を行おうとする者は、原則として市町村長の許可を受けなければならない。 | × |
6 | H10-25-3 | 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律によれば、急傾斜地とは、傾斜度が30度以上である土地をいい、急傾斜地崩壊危険区域は、崩壊するおそれのある急傾斜地を含む土地で所定の要件に該当するものの区域について指定される。 | ◯ |
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家坂 先生いつも分かりやすい解説ありがとうございます。先生に質問ですが、
平成22年問36-肢3の問題で、もしこれが急傾斜地崩壊危険区域内の宅地の貸借の媒介・建物の貸借の媒介だった場合は、重要事項説明は不要なのでしょうか?危なそうな場所なので説明が必要そうだなと疑問に思い質問させていただきました。もしよろしければ教えてください。宜しくお願いします。
中川様
ご質問ありがとうございます。
令和2年12月試験の問32肢アで出題された論点ですね。
この制限は、建物の貸借「以外」の契約に関する重要事項です。
詳しくは、以下の解説をご覧ください。
【宅建過去問】(令和02年12月問32)重要事項説明書(35条書面)(個数問題)
家坂先生ありがとうございます!とても勉強になります!!!
どういたしまして。
ラストスパート、頑張りましょう!