【宅建過去問】(令和02年12月問04)債務不履行
債務不履行に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限が到来したことを知らなくても、期限到来後に履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
- 債務の目的が特定物の引渡しである場合、債権者が目的物の引渡しを受けることを理由なく拒否したため、その後の履行の費用が増加したときは、その増加額について、債権者と債務者はそれぞれ半額ずつ負担しなければならない。
- 債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に、当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行不能は債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされる。
- 契約に基づく債務の履行が契約の成立時に不能であったとしても、その不能が債務者の責めに帰することができない事由によるものでない限り、債権者は、履行不能によって生じた損害について、債務不履行による損害の賠償を請求することができる。
正解:2
1 正しい
債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、①その期限の到来した後に履行の請求を受けた時又は②その期限の到来したことを知った時のいずれか早い時から遅滞の責任を負います(民法412条2項)。
本肢の「期限が到来したことを知らなくても、期限到来後に履行の請求を受けた時」は、①に該当します。したがって、債務者は、遅滞の責任を負います。
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履行期と履行遅滞(民法[15]2(1))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-04-1 | 債務の履行について不確定期限があるときは、債務者は、その期限が到来したことを知らなくても、期限到来後に履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。 | ◯ |
2 | 18-08-1 | AはBとの間で、土地の売買契約を締結し、Aの所有権移転登記手続とBの代金の支払を同時に履行することとした。決済約定日に、Aは所有権移転登記手続を行う債務の履行の提供をしたが、Bが代金債務につき弁済の提供をしなかったので、Aは履行を拒否した。この場合、Bは、履行遅滞に陥り、遅延損害金支払債務を負う。 | ◯ |
3 | 08-09-1 | Bが、A所有の建物を代金8,000万円で買い受け、即日3,000万円を支払った。Bは、履行期前でも、Aに代金を提供して甲建物の所有権移転登記及び引渡しを請求し、Aがこれに応じない場合、売買契約を解除することができる。 | × |
2 誤り
債権者が債務の履行を受けることを拒み、又は受けることができないという受領遅滞のケースです。
債権者の受領遅滞によって履行の費用が増加した場合、その増加額は債権者が負担します(民法413条2項)。
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受領遅滞(民法[15]6)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-04-2 | 債務の目的が特定物の引渡しである場合、債権者が目的物の引渡しを受けることを理由なく拒否したため、その後の履行の費用が増加したときは、その増加額について、債権者と債務者はそれぞれ半額ずつ負担しなければならない。 | × |
3 正しい
債務者が履行遅滞の責任を負っている間に当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務が履行不能になった場合、その履行不能は、債務者の帰責事由によるものとみなされます(民法413条の2第1項)。
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履行遅滞中の履行不能(民法[15]2(4))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-04-3 | 債務者がその債務について遅滞の責任を負っている間に、当事者双方の責めに帰することができない事由によってその債務の履行が不能となったときは、その履行不能は債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされる。 | ◯ |
2 | 08-11-4 | 買主が代金の支払を終えたのに、物件の引渡しを請求しても売主が応じない場合、建物が地震で全壊したときは、買主は、契約を解除して代金返還を請求することができない。 | × |
3 | 01-09-4 | 所有権移転登記が完了し、引渡し期日が過ぎたのに、売主が売買契約の目的物である家屋の引渡しをしないでいたところ、その家屋が類焼によって滅失した場合、買主は、契約を解除することができる。 | ◯ |
4 正しい
債務の履行が契約の成立時に不能である場合を原始的不能といいます。現在の民法では、原始的不能も履行不能の一種として、後発的不能と同様に扱います(民法412条の2第2項)。
したがって、原始的不能の場合であっても、債権者は、債務者に対して、損害賠償を請求することができます(同項、同法415条1項本文)。ただし、「債務者の責めに帰することができない事由によるもの」、すなわち、債務者に帰責事由がない場合は例外です(同項ただし書き)。
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履行不能(民法[15]2(2))
損害賠償(債務者の帰責事由)(民法[15]3)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03-03-ウ | AがA所有の土地について買主Bとの間で売買契約を締結し、当該土地の引渡しと残代金決済の前にAが死亡した場合、当該売買契約は原始的に履行が不能となって無効となる。 | × |
2 | R02s-04-4 | 契約に基づく債務の履行が契約の成立時に不能であったとしても、その不能が債務者の責めに帰することができない事由によるものでない限り、債権者は、履行不能によって生じた損害について、債務不履行による損害の賠償を請求することができる。 | ◯ |
3 | 24-08-3 | AB間でB所有の甲不動産の売買契約を締結した後、Bが甲不動産をCに二重譲渡してCが登記を具備した場合、AはBに対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。 | ◯ |
4 | 19-10-1 | 令和X年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立した。甲建物が同年8月31日時点でAB両者の責に帰すことができない火災により滅失していた場合、甲建物の売買契約は有効に成立するが、Aは甲建物を引き渡す債務を負わないものの、Bは、代金の支払いを拒むことができない。 | × |
5 | 19-10-2 | 令和X年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立した。甲建物が同年9月15日時点でAの責に帰すべき火災により滅失した場合、有効に成立していた売買契約は、Aの債務不履行によって無効となる。 | × |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-04-4 | 契約に基づく債務の履行が契約の成立時に不能であったとしても、その不能が債務者の責めに帰することができない事由によるものでない限り、債権者は、履行不能によって生じた損害について、債務不履行による損害の賠償を請求することができる。 | ◯ |
2 | R02s-07-2 | 甲土地の売買契約における売主Aが買主Bに甲土地の引渡しをすることができなかった場合、その不履行がAの責めに帰することができない事由によるものであるときを除き、BはAに対して、損害賠償の請求をすることができる。 | ◯ |
3 | H26-01-3 | 債務の履行のために債務者が使用する者の故意又は過失は、債務者の責めに帰すべき事由に含まれる旨が、民法の条文に規定されている。 | × |
4 | H23-02-4 | Aは、自己所有の甲不動産を3か月以内に、1,500万円以上で第三者に売却でき、その代金全額を受領することを停止条件として、Bとの間でB所有の乙不動産を2,000万円で購入する売買契約を締結した。停止条件が成就しなかった場合で、かつ、そのことにつきAの責に帰すべき事由がないときでも、AはBに対し売買契約に基づき買主としての債務不履行による損害賠償責任を負う。 | × |
5 | H14-07-1 | AB間の土地売買契約中の履行遅滞の賠償額の予定の条項によって、AがBに対して、損害賠償請求をする。賠償請求を受けたBは、自己の履行遅滞について、帰責事由のないことを主張・立証すれば、免責される。 | ◯ |
6 | H11-10-4 | Bが、甲建物の引渡し後、建物の柱の数本に、しろありによる被害があることを発見した場合は、AがAB間の契約締結時にこのことを知っていたときでないと、Bは、Aに損害賠償の請求をすることはできない。 | × |
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