【宅建過去問】(令和02年12月問06)転貸借

AはBにA所有の甲建物を賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. Aは、Bとの間の賃貸借契約を合意解除した場合、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していたとしても、合意解除したことをもってCに対抗することはできない。
  2. Cの用法違反によって甲建物に損害が生じた場合、AはBに対して、甲建物の返還を受けた時から1年以内に損害賠償を請求しなければならない。
  3. AがDに甲建物を売却した場合、AD間で特段の合意をしない限り、賃貸人の地位はDに移転する。
  4. BがAに約定の賃料を支払わない場合、Cは、Bの債務の範囲を限度として、Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負い、Bに賃料を前払いしたことをもってAに対抗することはできない。

正解:1

設定の確認

1 誤り

賃貸人Aが賃借人Bと賃貸借契約を合意解除したとしても、転借人Cに対して解除を対抗することができないのが原則です(民法613条3項本文)。

ただし、解除の当時、AがBの債務不履行による解除権を有していたときは、例外です(同項ただし書き)。この場合、Aは、賃貸借契約の合意解除をCに対抗することができます。つまり、Cに対して、甲建物の明渡しを請求することができます。
※例外のケースの場合、AB間の債務不履行による解除と同様に考えているわけです。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
転貸の終了(合意解除)(民法[26]5(4)①)
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
Aは、Bに対し建物を賃貸し、Bは、その建物をAの承諾を得てCに対し適法に転貸している。
1R02s-06-1
Aは、Bとの間の賃貸借契約を合意解除した場合、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していたとしても、合意解除したことをもってCに対抗することはできない。×
228-08-4
AがBとの間で甲建物の賃貸借契約を合意解除した場合、AはCに対して、Bとの合意解除に基づいて、当然には甲建物の明渡しを求めることができない。
327-09-1土地の賃借人が無断転貸した場合において賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるため賃貸人が無断転貸を理由に賃貸借契約を解除できないときであっても、賃貸借契約を合意解除したときは、賃貸人は転借人に対して賃貸土地の明渡しを請求することができる。
×
427-09-4土地の賃借人が無断転貸した場合、転借人は、賃貸人と賃借人との間で賃貸借契約が合意解除されたとしても、賃貸人からの賃貸土地の明渡し請求を拒絶することができる場合がある。
523-07-3Aが、Bとの賃貸借契約を合意解除しても、特段の事情がない限り、Cに対して、合意解除の効果を対抗することができない。
616-13-3AB間で賃貸借契約を合意解除しても、転借人Cに不信な行為があるなどの特段の事情がない限り、賃貸人Aは、転借人Cに対し明渡しを請求することはできない。
710-06-1AとBとが賃貸借契約を合意解除した場合、BC間の転貸借契約は、その前提を失うため、特別の事情のある場合を除き、当然に終了する。
×
806-12-2AB間の賃貸借が合意解除によって終了すれば、CがBの承諾を得て転借していても、特段の事由のない限り、AC間の転貸借は終了し、Cの権利は、消滅する。
×
904-11-4賃貸人の承諾を得て、賃借人から建物を転借している場合、賃貸借契約が合意解除されても、転借人の権利は、特段の事由がある場合を除き、消滅しない。

2 正しい

契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償は、貸主が返還を受けた時から1年以内に請求する必要があります(民法622条、600条1項)。

■参照項目&類似過去問
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損害賠償請求の期間制限(民法[26]7(5))
年-問-肢内容正誤
1R04-06-4Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、賃貸借契約を締結した。甲土地について契約の本旨に反するBの使用によって生じた損害がある場合に、Aが損害賠償を請求するときは、甲土地の返還を受けた時から5年以内に請求しなければならない。×
2R02s-06-2AはBにA所有の甲建物を賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している。Cの用法違反によって甲建物に損害が生じた場合、AはBに対して、甲建物の返還を受けた時から1年以内に損害賠償を請求しなければならない。

3 正しい

転借人Cが甲建物に居住していることから、甲建物は、AからB、BからCへと引き渡されていることが分かります。つまり、Bは、甲建物の賃借権について、対抗要件を備えているわけです(借地借家法31条)。
この場合、甲建物がAからDに譲渡されると、甲建物の賃貸人たる地位も、譲受人Dに移転します(民法605条の2第1項)。

※例外は、AD間で賃貸人たる地位を留保した場合です(民法605条の2第2項)。この場合、Aが賃貸人たる地位にとどまります。

■参照項目&類似過去問
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賃貸人たる地位の移転(民法[26]6)
年-問-肢内容正誤
1R05-12-3賃借人が建物の引渡しを受けている場合において、当該建物の賃貸人が当該建物を譲渡するに当たり、当該建物の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及び当該建物の譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない。
2R03-12-2Aを賃貸人、Bを賃借人とする甲建物の賃貸借契約が締結された。甲建物がBに引き渡された後、甲建物の所有権がAからCに移転した場合、本件契約の敷金は、他に特段の合意がない限り、BのAに対する未払賃料債務に充当され、残額がCに承継される。
3R02s-06-3AはBにA所有の甲建物を賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している。AがDに甲建物を売却した場合、AD間で特段の合意をしない限り、賃貸人の地位はDに移転する。
424-06-2甲土地の賃借人であるBが、甲土地上に登記ある建物を有する場合に、Aから甲土地を購入したCは、所有権移転登記を備えていないときであっても、Bに対して、自らが賃貸人であることを主張することができる。
×
516-03-2Aは、自己所有の建物をCに売却したが、Cはまだ所有権移転登記を行っていない。BがAからこの建物を賃借し、引渡しを受けて適法に占有している場合、Cは、Bに対し、この建物の所有権を対抗でき、賃貸人たる地位を主張できる。
×
607-07-1BがAの所有地を賃借して、建物を建てその登記をしている。Aがその土地をCに譲渡する場合、賃貸人の義務の移転を伴うから、Aは、その譲渡についてBの承諾を必要とする。
×
707-07-3BがAの所有地を賃借して、建物を建てその登記をしている。CがAからその土地の譲渡を受けた場合、Cは、登記を移転していなくても賃貸人たる地位の取得をBに対抗することができる。
×

4 正しい

賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負います(民法613条1項前段)。したがって、賃貸人は、賃借料の範囲で、転借人に対して直接に転借料を自分に支払うよう請求することが可能です。ただし、請求できるのは賃借料と転借料のうち、少ないほうの額に限られます。
例えば、AからBへの賃借料が10万円、BからCへの転借料が15万円だったとしましょう。この場合、Cは、10万円を限度として、Aに対して転借料を支払う義務を負います。CがBに賃料を前払いしている場合であっても、これをAに対抗することはできません(同項後段)。

■参照項目&類似過去問
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転貸の効果(民法[26]5(3))
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
AがBに甲建物を月額10万円で賃貸し、BがAの承諾を得て甲建物をCに適法に月額15万円で転貸している。
1R02s-06-4
BがAに約定の賃料を支払わない場合、Cは、Bの債務の範囲を限度として、Aに対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負い、Bに賃料を前払いしたことをもってAに対抗することはできない。
228-08-2
BがAに対して甲建物の賃料を支払期日になっても支払わない場合、AはCに対して、賃料10万円をAに直接支払うよう請求することができる。
323-07-1BがAに対して賃料を支払わない場合、Aは、Bに対する賃料の限度で、Cに対し、Bに対する賃料を自分に直接支払うよう請求することができる。
416-13-1転借人Cは、賃貸人Aに対しても、月10万円の範囲で、賃料支払債務を直接に負担する。
510-06-2Cは、Aから請求があれば、CがBに支払うべき転借料全額を直接Bに支払うべき義務を負う。
×
601-06-4BがAの承諾を得て第三者Cに建物を転貸した場合、Aは、Cに対して直接賃料を請求することができる。

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【宅建過去問】(令和02年12月問06)転貸借” に対して11件のコメントがあります。

  1. とも より:

    足の3番について教えてください。 
    Dが所有権移転登記をしているかどうかを問わず、賃貸人の地位はDに移転するのですか?

    類似過去問16-03-2は、Cが所有権移転登記をしていないため賃貸人たる地位を主張できない、となっています。

    1. 家坂 圭一 より:

      とも様

      いつもご質問ありがとうございます。
      賃貸人たる地位の移転について、「移転の方法」と「対抗要件」に関する知識で混乱されているのと思います。

      賃貸人たる地位を移転する方法

      Dが所有権移転登記をしているかどうかを問わず、賃貸人の地位はDに移転するのですか?

      本問肢3は、賃貸人たる地位を「移転する方法」に関する出題です。

      甲建物は、賃貸人B、そして転借人Cに引き渡されています。つまり、BやCは建物賃借権に関する対抗要件を備えています。
      この場合、「AD間で特段の合意」つまり、「賃貸人の地位をAのもとに留保する」という特約がない限り、賃貸人の地位は、Dに移転します。
      これについて、Dが所有権移転登記を受けたかどうか、は問われません。

      賃貸人たる地位を第三者に対抗する方法

      類似過去問16-03-2は、Cが所有権移転登記をしていないため賃貸人たる地位を主張できない、となっています。

      本肢で、甲建物の譲受人Dが賃貸人たる地位を転借人Cに対抗するためには、Dが所有権の移転の登記を受ける必要があります。

      平成16年問03肢2は、こちらの「対抗要件」に関する問題です。
      問題文に「(甲土地の譲受人)Bはまだ所有権移転登記を行っていない」とあります。
      したがって、Bは、甲土地の賃貸人たる地位をDに対して主張することができません。

      復習のポイント

      個別の選択肢をバラバラに検討する前に、[Step.1]基本習得編を見直して、体系的な知識を押さえましょう。
      具体的には、以下の箇所を確認してください。

      ■民法[26]賃貸借契約
      6.賃貸人たる地位の移転
      (2).方法
      (3).対抗

      以下の2つの図を自分で説明できるようになれば、基本知識のマスターは完了です。

      ●賃貸人たる地位を「移転」する方法

      ●賃貸人たる地位の移転を「対抗」する方法

      1. とも より:

        いつも丁寧な回答をいただきありがとうございます。まさにおっしゃる通りで、移転の方法と対抗要件について、混乱しておりました。

        1. 家坂 圭一 より:

          とも様

          ご返信ありがとうございます。

          ともさんの質問を見ていると、言い方は失礼ですが、
          「問題をたくさん解きたい」という気持ちが最優先になっていて、
          基本知識にさかのぼって確認する、という手順が後回しになっているように思います。

          [Step.2]『一問一答式過去問』でも、[Step.3]『年度別過去問』でも、理解が確実でないときは、[Step.1]基本習得編に戻って基礎知識を確認する、というのが必須の学習方法です。
          そして、そのような繰返し学習を可能にするために、各選択肢に「参照項目」を明記しているわけです。

          せっかく「スリー・ステップ学習法」を選んだのですから、その特長を最大限に活用しましょう。
          悩んだとき、疑問に思ったときが、苦手論点を克服し、得点源に変える最大のチャンスです。
          面倒がらず、疑問と解決のプロセスを繰返していきましょう。

        2. とも より:

          家坂先生

          親身な学習アドバイスをいただきありがとうございます。念頭において精進します。

          このサイトの使い方について、教えていただきたいのですが、

          そして、そのような繰返し学習を可能にするために、各選択肢に「参照項目」を明記しているわけです。

          とのことですが、この、参照項目を明記、とは、どこを見ればよいのでしょうか。各選択肢の解説文の太文字やカラー文字、が、基本習得に戻るための参照項目、ということであっていますか?

        3. とも より:

          何度も申し訳ありません。

          参考項目は、類似過去問を開いた時に出てくる、冒頭のブルーで書かれた項目タイトルのことですね?ここから、基礎の講義に戻ることができました。

        4. 家坂 圭一 より:

          とも様

          既に解決済みのようですね。
          返信が遅くなって申し訳ありません。

          「各選択肢に関する[Step.1]参照項目の調べ方」という質問ですね。

          [Step.3]の『年度別過去問 問題&解説』を読んでいるときであれば、各選択肢の下に「出題テーマ・参照項目・出題回数」という一覧表があります。この「参照項目」について、[Step.1]基本習得編の講義を見直します。


          出先など、スマホなどしかない状況でも、参照項目を調べることは可能です。
          各選択肢の「■類似過去問」を開くと、その下に出題テーマの一覧表が並んでいます。それぞれの表のタイトルは、「出題テーマ(参照項目)」を示しています。
          この参照項目に従って、[Step.1]基本習得編の講義を確認してください。

          このような「確認」のための再受講の場合、[Step.1]基本習得編は、1.5倍とか2倍の高速再生でも構いません。
          「疑問を持ったときには、その都度、基本知識を確認する。」という繰返し学習の鉄則が何より重要。再生スピードにこだわる必要はないのです。
          面倒がらず、疑問に思ったときに「確認」し、「裏を取る」クセを付けましょう。
          日々のこの繰返しが、直前期、そして本試験当日に強烈な効果を発揮します。

  2. あんしん より:

    令2年12月問6肢1の問題「Aは、Bとの間の賃貸借契約を合意解除した場合、解除の当時Bの債務不履行による解除権を有していたとしても、合意解除したことをもってCに対抗することはできない。」について、AはBの債務不履行による解除を行わず、合意解除しています。この場合、
    ABは合意解除を選択したのだから、AはCに対して解除を対抗することができないのではない
    でしょうか?

    1. 家坂 圭一 より:

      あんしん様

      質問ありがとうございます。

      AはBの債務不履行による解除を行わず、合意解除しています。この場合、ABは合意解除を選択したのだから、AはCに対して解除を対抗することができないのではないでしょうか?

      肢1の図を見ながら、以下の解説をお読みください。

      • 【原則】AB間の契約終了をCに対抗することができません。
      • 【例外】AB間の契約終了をCに対抗することができます。

      そして、【例外】的に扱われるのは、条文の表現でいえば、「その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときその解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときです。
      つまり、【原則】【例外】の基準は、「賃貸人Aが賃借人Bの債務不履行による解除権を有していた」かどうか、です。

      あんしんさんのお考えでは、
      「実際の解除が合意解除だったか、債務不履行解除だったか」
      が基準になっています。
      しかし、それは民法が定めているルールと異なります。
      さらにいえば、あんしんさんの基準ですと、そもそも【例外】は必要ないことになります。

      「債務不履行による解除も可能であったが、実際には、合意によって解除されたとき」が、【例外】ルールを定めるメリットです。

  3. ムライ より:

    すごくわかりやすいです!正直手持ちのテキストよりも分かりやすいです。笑
    模試の点数が酷すぎて泣きそうです。権利はそこそこでしたが法令と業法が終わってました…
    残り僅かな時間でできるだけのことはやろうと思っていますが、高確率でまたもう一年お世話になるかもしれません。その際はまたどうぞ宜しくお願いいたします…

    1. 家坂 圭一 より:

      ムライ様

      おほめいただきありがとうございます。
      宅建試験は本試験の直前まで点数を伸ばせる試験です。諦めることなく、最後の最後まで頑張りましょう!

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