【宅建過去問】(令和02年12月問09)地役権

地役権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. 地役権は、継続的に行使されるもの、又は外形上認識することができるものに限り、時効取得することができる。
  2. 地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、承役地を要役地の便益に供する権利を有する。
  3. 設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人もその義務を負担する。
  4. 要役地の所有権とともに地役権を取得した者が、所有権の取得を承役地の所有者に対抗し得るときは、地役権の取得についても承役地の所有者に対抗することができる。

正解:1

地役権とは

地役権とは、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利という意味です(民法280条本文)。
具体例で考えてみましょう。
Aの所有地は、接する道路が狭く、また、一方が行き止まりのため、日常生活で不便な思いをしています。一方、隣接するBの土地は、広い公道に面しています。
このような場合、AとBとの話し合いがまとまれば、Bの土地をAが通行することができます。Bの土地をAの土地の便益(便利さ。役立つこと)のために使っているのです。この便益を必要する側の土地を要役地、便益を引き受ける(承認・承諾する)。側の土地を承役地と呼びます。

■参照項目&類似過去問
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地役権(民法[11]3)
年-問-肢内容正誤
地役権とは
1R02s-09-2地役権者は、設定行為で定めた目的に従い、承役地を要役地の便益に供する権利を有する。
付従性
114-04-2(Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約を、乙土地所有者Bと締結した。)この通行地役権の設定登記を行った後、Bが、乙土地をDに譲渡し、乙土地の所有権移転登記を経由した場合、Dは、この通行地役権が自己に移転したことをAに対して主張できる。
214-04-3(上と同じケース)Bは、この通行地役権を、乙土地と分離して、単独で第三者に売却することができる。×
時効取得
1R02s-09-1地役権は、継続的に行使されるもの、又は外形上認識することができるものに限り、時効取得することができる。×
225-03-4承役地の所有者が通路を開設し、要役地の所有者がその通路を利用し続けると、時効によって通行地役権を取得することがある。×
322-03-4継続的に行使され、外形上認識できる地役権は時効取得が可能。
414-04-4継続的に行使され、外形上認識できる地役権であっても時効取得は不可能。×
対抗要件
1R02s-09-4要役地の所有権とともに地役権を取得した者が、所有権の取得を承役地の所有者に対抗し得るときは、地役権の取得についても承役地の所有者に対抗することができる。
214-04-1Aは、自己所有の甲土地の一部につき、通行目的で、隣地乙土地の便益に供する通行地役権設定契約を、乙土地所有者Bと締結した。この通行地役権の設定登記をしないまま、Aが、甲土地をCに譲渡し、所有権移転登記を経由した場合、Cは、通路として継続的に使用されていることが客観的に明らかであり、かつ、通行地役権があることを知っていたときでも、Bに対して、常にこの通行地役権を否定することができる。×
その他の知識
1R02s-09-3設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人もその義務を負担する。

1 誤り

地役権は、継続的に行使され、かつ外形上認識することができるものに限って、時効取得の対象になります(民法283条)。
本肢は、「又は」とする点がヒッカケです。

※「継続」の要件をみたすには、承役地となる土地上に通路の開設があったというだけでは不十分で、その開設が要役地所有者(本肢ではA)によるものであることが必要です(最判昭33.02.14)。

要役地所有者が通路を開設した場合 承役地所有者が通路を開設した場合
時効取得◯ 時効取得×

2 正しい

本問冒頭の「地役権とは」で説明しましたが、地役権とは、設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利という意味です(民法280条本文)。
この「他人の土地」が「承役地」、「自己の土地」が「要役地」ですから、この選択肢は、まさに地役権の意味をなぞった記述です。

3 正しい

設定行為又は設定後の契約により、承役地の所有者(図のB)が自己の費用で地役権の行使のために工作物を設け、又はその修繕をする義務を負担したときは、承役地の所有者の特定承継人(図のC)も、その義務を負担します(民法286条)。

4 正しい

地役権は、要役地の所有権に従たるものとして、その所有権とともに移転します(民法281条1項本文)。これを地役権の付従性といいます。
つまり、要役地がAからDに売却された場合、所有権だけでなく、地役権もAからDに移転します。さらに、Dが所有権に対する対抗要件(所有権移転登記)を備えていれば、Dは、Bに対して、所有権だけでなく、地役権も対抗することができます。


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【宅建過去問】(令和02年12月問09)地役権” に対して2件のコメントがあります。

  1. 藤澤咲生 より:

    今年の本試験について質問ばかりしていたので、お返しとして、質問に回答させていただきます(余計なおせっかいかもしれません。ごめんなさい)。

    ご質問に対する回答については、場合を分けて考えなければならないように思います。

    そこで、例として、甲土地(要役地でA所有)、乙土地(承役地でB所有)とし、AB間で地役権を設定したが、地役権の登記をしていないケースで考えてみます。

    この場合は、地役権の登記がなくても、ABは地役権の設定契約の当事者なので、AのBへの地役権の主張については、登記がなくても可能です。

    そして、Aが承役地である甲土地をCに売却すると、地役権の付従性によって、要役地である甲土地の所有権の移転とともに、地役権もAからCに移転します。

    この場合、甲土地の取得者であるCが甲土地の所有権移転登記をしていない場合、CはBに所有権移転の物権変動をBに対抗できないので、所有権に従として移転する地役権についても、CはBに対抗できません。

    これに対して、Cが甲土地の所有権移転登記をしていれば、Bは、地役権の取得をCに対抗できます(AはBに地役権を登記がなくても主張できたところ、CはそのAの地役権を取得しているので、Cは甲土地の所有権の移転登記を備えれば、Bに対して地役権の登記がなくても地役権の主張ができると考えます)。

    ただし、Bが乙土地(承役地)をDに譲渡している場合であれば、地役権の登記のないAはDに地役権を主張できないので、そのAから甲土地(要役地)の所有権を取得したCも、Dに地役権の取得を対抗できないと考えます。

  2. onestone より:

    いつも参考にさせていただきましてありがとうございます。

    肢4ですが、地役権の設定「登記」がされていない場合でも、成立しますでしょうか?

    つまり、要役地の所有権移転登記がされた場合、地役権の設定「登記」がされていない場合でも、地役権の取得を承役地の所有者に対抗できますでしょうか?

    以上、突然の質問で申し訳ありません。ご教示いただけると幸いです。

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