【宅建過去問】(令和02年12月問38)宅建士(個数問題)
宅地建物取引士に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法及び民法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。
ア 宅地建物取引業者は、事務所に置く唯一の専任の宅地建物取引士が退任した場合、その日から30日以内に新たな専任の宅地建物取引士を設置し、その設置の日から2週間以内に、専任の宅地建物取引士の変更があった旨を免許権者に届け出なければならない。
イ 未成年者も、法定代理人の同意があれば、宅地建物取引業者の事務所に置かれる専任の宅地建物取引士となることができる。
ウ 宅地建物取引士は、重要事項説明書を交付するに当たり、相手方が宅地建物取引業者である場合、相手方から宅地建物取引士証の提示を求められない限り、宅地建物取引士証を提示する必要はない。
エ 成年被後見人又は被保佐人は、宅地建物取引士として都道府県知事の登録を受けることができない。
- 一つ
- 二つ
- 三つ
- なし
正解:1
3+
家坂先生、お返事ありがとうございます。
相手方が宅建業者の場合は、宅建業法35条の6項から、35条4項、22条の4の規定に従う。
考え方の流れが、よく分かりました。
そして、
自分の法的な考え方に無理があることが分かりました。
私は、まだまだ宅建試験に合格するための、内容を絞った勉強しかできていなかったようです。
今回の問38のウは、さらっとした、平坦な表現ですが、
宅建業法35条をよく勉強した受験生にとっては、
やりごたえのあるいい問題だったのでは、と思います。
今日は、質問させてください。
令和2年12月の宅建試験、問38の、選択肢ウの選択肢についてすっきりと理解できません。
私はこの問題のケースで、自主的に宅建士証を見せる必要が無い、
と考える根拠が、宅建を勉強してきた知識からどうしても導き出すことができません。
どうか、ご教授をお願いできないでしょうか?
問38
ウ、宅地建物取引士は、重要事項説明書を交付するに当たり、相手方が宅地建物取引業者である場合、相手方から宅地建物取引士証の提示を求められない限り、宅地建物取引士証を提示する必要はない。
有名予備校のの動画説明では、
相手が宅建業者だから、重説の説明部分が不要。だから宅建士証の自主的な提示は不要。
と、言われていました。
しかし、問題文は重要事項説明書という「書面の交付」に際して、
宅建士証を自主的に見せる必要があるのか?
という内容です。
言葉による説明が不要だから見せなくていい。という解説は論点がずれているような気がします。
宅建業法35条では、
宅地建物取引業者は、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面(第五号において図面を必要とするときは、図面)を交付して説明をさせなければならない。となっていますが、
要点を縮めると、宅建士をして重要事項を記載した書面を交付する。と読み取れます。
ここで「交付」という言葉の解釈ですが」
その中には、「書類を作成する」というものと、
「その書類を相手方に手渡す」という二つの意味が入っています。
このことから考えると、重要事項説明書は、宅建士が、自ら相手方に引き渡す必要があるとなります。
では、相手方が、書面の引き渡し者を、宅建士と確認する方法ですが、
それは宅建士証を見せてもらうことしかありません。
手渡された重説書面には宅建士の記名押印がされていますが、
これは文書の作成を宅建士が行ったという印で、
引き渡しの部分については、引き渡し者が宅建士であると証明するものでは無いです。
これが37条書面なら、誰が引き渡しても良い規則なので、
引き渡す者が、宅建士であると、証明する必要はないでしょうが、
35条書面の場合には、宅建士が引き渡さなければならないという規則なので、
この引き渡し時にも宅建士であると証明する必要があると思います。
このような解釈で、私は、相手が業者で、重要事項説明書を交付する(引き渡す)だけの場合でも、宅建士証の提示が必要という考え方に、なっています。
教えて頂きたいです。よろしくお願いします。
みずたに様
ご質問ありがとうございます。
私も、有名予備校さんと全く同じ考えです。
言い方は失礼かも知れませんが、みずたにさんの解釈(?)には、随所に無理があります。
法律学的な筋道で結論を正確に導くためには、宅建業法35条1項と6項、そして4項について検討する必要があります。
(1)宅建業法35条1項・6項
みずたにさんのお考えの根拠は、以下の部分にあると思われます。
ここが勘違いの始まりです。
この文章は、宅建業法35条1項の一部ですが、これを根拠として本肢の結論を検討するのは不可能です。
なぜなら、本肢は、「相手方が宅地建物取引業者である場合」が前提になっているからです。
この場合、宅建業法35条1項をストレートに適用することはできません。同条6項に従って読み替える必要があるのです。
6項に従って読み替えると、1項の内容は、以下のようになります。
「説明」どころか「宅地建物取引士」の言葉すら出現しません。
この規定を根拠に、宅建士証の提示を義務付けるのは、無理です。
(2)宅建業法35条4項
そもそも、重要事項説明にあたって、宅建士が宅建士証を提示する義務を負う根拠は、宅建業法35条4項にあります。
つまり、35条1項から3項に基づく「説明」の際に、宅建士証の提示が要求されています。
しかし、(1)で考えたように、相手方が宅建業者である場合には、そもそも「説明」自体が不要です。
「説明」自体が不要である以上、「説明時の宅建士証提示」も不要であるのは、当然のことです。
(3)結論
以上より、「相手方が宅地建物取引業者である場合」という前提の下で、宅建士が宅建士証の提示義務を負うのは、宅建業法22条の4を根拠とする場合、すなわち、「取引の関係者から請求があったとき」に限られます。