【宅建過去問】(令和03年10月問44)報酬

宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)が受け取ることができる報酬額についての次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 居住の用に供する建物(1か月の借賃20万円。消費税等相当額を含まない。)の貸借であって100万円の権利金の授受があるものの媒介をする場合、依頼者双方から受領する報酬の合計額は11万円を超えてはならない。
  2. 宅地(代金1,000万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、売主から代理の依頼を受け、買主から媒介の依頼を受け、売買契約を成立させて買主から303,000円の報酬を受領する場合、売主からは489,000円を上限として報酬を受領することができる。
  3. 宅地(代金300万円。消費税等相当額を含まない。)の売買の媒介について、通常の媒介と比較して現地調査等の費用が6万円(消費税等相当額を含まない。)多く要した場合、依頼者双方から合計で44万円を上限として報酬を受領することができる。
  4. 店舗兼住宅(1か月の借賃20万円。消費税等相当額を含まない。)の貸借の媒介をする場合、依頼者の一方から受領する報酬は11万円を超えてはならない。

正解:2

1 誤り

■設定の確認

■貸借の代理・媒介に関する報酬

貸借の代理・媒介については、この表を使って考えます。

貸借に関する報酬の計算方法

本肢は、居住用建物の貸借に関するものです。したがって、権利金の授受があったとしても、その額をベースとして報酬計算をすることはできません(報酬額告示第六)。あくまで、賃料がベースになります(報酬額告示第四)。
さらに、原則と例外(依頼者の承諾がある場合)に分かれますが、本肢で求める「依頼者双方から受領する報酬の合計額」は、いずれの場合でも同じで、「貸主・借主双方から合わせて月額賃料の1か月分」です。本肢では、20万円ということになります。
宅建業者Aは消費税課税事業者ですから、これに消費税を加算することができます。報酬合計の限度額は、20万×1.1=22万円です。

※それぞれの依頼者から受領する報酬の限度額まで考える場合、以下の例のように計算します。

2 正しい

■設定の確認

■公式による計算(媒介・代理・合計)
(1)買主から受け取る報酬(媒介)

即算式に従って計算すると、
1,000万×3%+6万=36万円
です(報酬額告示第二)。

報酬には消費税が課税されるので、
36万×1.1=39.6万円
これが買主から受領する報酬の限度額です。

(2)売主から受け取る報酬(代理)

媒介の場合の2倍を受領することができます(報酬額告示第三)。すなわち、
39.6万×2=79.2万円
これが売主から受領する報酬の限度額です。

(3)売主・買主から受け取る報酬の合計額

売主・買主の双方から報酬を受領する場合でも、その合計は媒介の場合の報酬限度額の2倍(=代理の場合の報酬限度額)を超えることができません(報酬額告示第三)。
本問の場合でいえば、売主と買主から受領する報酬の合計を79.2万円の範囲に収める必要があります。

まとめ

宅建業者Aは、(1)~(3)という3つの規制をクリアする必要があります。
本肢での受領額は、すべての規制をクリアしているので、宅建業法に違反しません。

3 誤り

■設定の確認

■公式による計算(媒介)

即算式に従って計算すると、
300万×4%+2万=14万円
です(報酬額告示第二)。

■空家等の売買に関する費用

本肢では、代金300万円の宅地が売買されています。代金400万円以下ですから、この宅地は、「空家等」に該当します。したがって、以下のチェックポイントをみたせば、計算式で求めた報酬に加えて、現地調査等に要する費用を受領することが可能です。
チェックポイントのうち、「売主への説明・合意」の有無が確認できません。したがって、現地調査等の費用を加算できるかどうか分かりません。
仮にこの説明・合意があったとしても、費用のうち加算できるのは、計算式で求めた報酬と合わせて18万円(税別)までです。本肢は、6万円の費用を丸々加算している点が誤っています。加算できる場合でも、6万円のうち、4万円を加算できるに過ぎません。
14万+4万=18万(税別)
さらに、現地調査等の費用は売主からしか受け取ることができません。本肢では、売主と買主の双方から二重に受け取った計算になっていますが、これまたトンデモナイ間違いです。

■具体的な計算

公式によって計算した報酬に現地調査等の費用を加算し、消費税を上乗せすると、報酬の上限は以下のようになります。
依頼者双方から受領できる報酬の上限額は、35.2万円(税込)です。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
空家等の売買に関する費用(宅建業法[21]5(2))
年-問-肢内容正誤
1R04-27-4Aは、土地付建物について、売主Bから媒介を依頼され、代金300万円(消費税等相当額を含み、土地代金は80万円である。)で契約を成立させた。現地調査等の費用については、通常の売買の媒介に比べ5万円(消費税等相当額を含まない。)多く要する旨、Bに対して説明し、合意の上、媒介契約を締結した。この場合、AがBから受領できる報酬の限度額は20万200円である。×
2R03-44-3宅地(代金300万円。消費税等相当額を含まない。)の売買の媒介について、通常の媒介と比較して現地調査等の費用が6万円(消費税等相当額を含まない。)多く要した場合、依頼者双方から合計で44万円を上限として報酬を受領することができる。×
3R01-32-1宅地(代金200万円。消費税等相当額を含まない。)の売買の代理について、通常の売買の代理と比較して現地調査等の費用が8万円(消費税等相当額を含まない。)多く要した場合、売主Bと合意していた場合には、AはBから308,000円を上限として報酬を受領することができる。
4R01-32-4宅地(代金200万円。消費税等相当額を含まない。)の売買の媒介について、通常の売買の媒介と比較して現地調査等の費用を多く要しない場合でも、売主Dと合意していた場合には、AはDから198,000円を報酬として受領することができる。×
5H30-31-1土地付中古住宅(代金500万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、Aが売主Bから媒介を依頼され、現地調査等の費用が通常の売買の媒介に比べ5万円(消費税等相当額を含まない。)多く要する場合、その旨をBに対し説明した上で、AがBから受け取ることができる報酬の上限額は286,000円である。×
6H30-31-2土地付中古住宅(代金300万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、Aが買主Cから媒介を依頼され、現地調査等の費用が通常の売買の媒介に比べ4万円(消費税等相当額を含まない。)多く要する場合、その旨をCに対し説明した上で、AがCから受け取ることができる報酬の上限額は198,000円である。×
7H30-31-3土地(代金350万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、Aが売主Dから媒介を依頼され、現地調査等の費用が通常の売買の媒介に比べ2万円(消費税等相当額を含まない。)多く要する場合、その旨をDに対し説明した上で、AがDから受け取ることができる報酬の上限額は198,000円である。
8H30-31-4中古住宅(1か月分の借賃15万円。消費税等相当額を含まない。)の貸借について、Aが貸主Eから媒介を依頼され、現地調査等の費用が通常の貸借の媒介に比べ3万円(消費税等相当額を含まない。)多く要する場合、その旨をEに対し説明した上で、AがEから受け取ることができる報酬の上限額は198,000円である。×

4 誤り

■設定の確認

■「居住用建物」の意味

肢1でも検討しましたが、貸借に関する報酬の計算方法は、居住用建物とそれ以外で大きく異なります。
それでは、本肢の「店舗建住宅」は、どちらと扱うのでしょうか。
報酬計算における「居住用建物」とは、「専ら居住の用に供する建物」をいいます(解釈・運用の考え方)。逆にいえば、
事務所、店舗など居住以外の用途を兼ねる建物は、「居住用建物以外」と扱うことになります。

■具体的な計算

権利金に関する記述はありませんから、「居住用建物以外」の「原則」ルールに従います。

貸借に関する報酬の計算方法

「依頼者の一方から受領する報酬」について、特に限定はありません。依頼者の双方を合わせて賃料の1か月分以内であればOKで、それを貸主と借主からどのような内訳で受け取るか、は決められていないのです。例えば、「貸主から1か月分、借主からゼロ円」というのでも構いません。
あえていうならば、「依頼者の一方から受領する報酬」の限度額は、「賃料の1か月分+税」ということになります。具体的には、20万×1.1=22万円です。

 


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