【宅建過去問】(令和03年12月問01)自力救済(判決文の読取り問題)


次の1から4までの記述のうち、民法の規定、判例及び下記判決文によれば、正しいものはどれか。
(判決文)
私力の行使は、原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によつたのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許されるものと解することを妨げない。

  1. 権利に対する違法な侵害に対抗して法律に定める手続によらずに自力救済することは、その必要の限度を超えない範囲内であれば、事情のいかんにかかわらず許される。
  2. 建物賃貸借契約終了後に当該建物内に家財などの残置物がある場合には、賃貸人の権利に対する違法な侵害であり、賃貸人は賃借人の同意の有無にかかわらず、原則として裁判を行わずに当該残置物を建物内から撤去することができる。
  3. 建物賃貸借契約の賃借人が賃料を1年分以上滞納した場合には、賃貸人の権利を著しく侵害するため、原則として裁判を行わずに、賃貸人は賃借人の同意なく当該建物の鍵とシリンダーを交換して建物内に入れないようにすることができる。
  4. 裁判を行っていては権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合には、その必要の限度を超えない範囲内で例外的に私力の行使が許される。

正解:4

はじめに~私力行使の禁止

私力行使の禁止」に関する判決文の読取り問題です。
「私力行使の禁止」を「自力救済の禁止」とか「実力行使の禁止」と表現しても同じ意味です。授業では、民法[08]占有権の1(2)「占有権の意義」で説明しています。以下の図を使って整理しておきましょう。

判決文の整理

挙げられている判決文は、最判昭40.12.07の一部です。
判決文の内容は、[原則]と[例外]、そして、「例外的な扱いが認められる[要件](2つ)」と整理することができます。
一覧表にまとめたので、これと各選択肢を照らし合わせていきましょう。

原則 私力の行使は禁止
例外 許される
要件1 緊急やむを得ない特別の事情
要件2 必要の限度を超えない範囲内

1 誤り

本肢は、「自力救済(=私力の行使)」が、「必要の限度を超えない範囲内であれば」「事情のいかんにかかわらず許される」としています。しかし、これは、[要件2]だけをピックアップし、[要件1]を無視しているため、判決文と矛盾します。
私力の行使が許されるのは、[要件1]「緊急やむを得ない特別の事情」が存する場合に限られる、というのが、判決文の考え方です。

2 誤り

本肢は、「原則として裁判を行わずに当該残置物を建物内から撤去することができる」としています。しかし、これは、「私力行使の禁止」を[原則]とする判決文と全く逆の結論です。
私力行使が許されるのは、例外的な場合であり、2つの要件をみたしているときに限られます。

3 誤り

本肢は、「原則として裁判を行わずに、賃貸人は賃借人の同意なく当該建物の鍵とシリンダーを交換して建物内に入れないようにすることができる」としています。しかし、これは、「私力行使の禁止」を[原則]とする判決文と全く逆の結論です。
私力行使が許されるのは、例外的な場合であり、2つの要件をみたしているときに限られます。

4 正しい

本肢は、「例外的に私力の行使が許される」としているので、[原則]・[例外]の区別は、判決文と一致しています。
また、[例外]を認める要件についても「権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する」が[要件1]、「必要の限度を超えない範囲内で」が[要件2]に対応します。したがって、本肢の内容は、判決文と一致しています。


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