【宅建過去問】(令和03年12月問21)農地法

農地に関する次の記述のうち、農地法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 自己所有の農地に住宅を建設する資金を借り入れるため、当該農地に抵当権の設定をする場合には、法第3条第1項の許可を受ける必要がある。
  2. 農地の賃貸借の解除については、農地の所有者が、賃借人に対して一方的に解約の申入れを行う場合には、法第18条第1項の許可を受ける必要がない。
  3. 登記簿の地目が宅地となっている場合には、現況が農地であっても法の規制の対象とはならない。
  4. 市街化区域内の自己所有の農地を駐車場に転用するため、あらかじめ農業委員会に届け出た場合には、法第4条第1項の許可を受ける必要がない。

正解:4

1 誤り

農地法でいう「権利移動」とは、農地を使用収益する権利を設定・移転するという意味です(同法3条1項、5条1項)。ここでいう「権利」とは、所有権、地上権、賃借権、使用借権などを指します。つまり、農地の使用収益者が変わる場合を規制の対象としているのです。

「権利移動」のイメージ

抵当権を設定したとしても、農地の使用収益者が変わるわけではありません。資金の貸主が農地を耕作するわけもなく、使用収益者は、今までと同じなのです。したがって、抵当権の設定について、同法3条の許可は不要です。

「権利」に当たるもの・当たらないもの

■参照項目&類似過去問
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権利移動:抵当権の設定(農地法[01]3(1)③)
年-問-肢内容正誤
1R03s-21-1自己所有の農地に住宅を建設する資金を借り入れるため、当該農地に抵当権の設定をする場合には、法第3条第1項の許可を受ける必要がある。×
2R02-21-4農地に抵当権を設定する場合には、法第3条第1項の許可を受ける必要がある。×
3R01-21-2金融機関からの資金借入れのために農地に抵当権を設定する場合、法第3条第1項の許可が必要である。×
4H29-15-3銀行から500万円を借り入れるために農地に抵当権を設定する場合、法第3条第1項又は第5条第1項の許可を受ける必要がある。×
5H26-21-3農業者が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるために、自己所有の農地に抵当権を設定する場合には、法第3条第1項の許可を受ける必要はない。
6H21-22-2農業者が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため、自己所有の農地に抵当権を設定する場合には、法第3条第1項の許可を受けなければならない。×
7H17-25-4農業者が自ら居住している住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため、自己所有の農地に抵当権を設定する場合、農地法第3条第1項の許可を受ける必要はない。
8H09-21-1農家が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため、自己所有の市街化区域外の農地に抵当権を設定する場合は、農地法第3条の許可を受ける必要はない。

2 誤り

(肢1の表参照。)
賃借権の設定も、権利移動に該当します。したがって、農地の賃貸借を行う場合には、農地法3条1項の許可が必要です。
また、賃貸借を解除する場合にも、知事の許可を受ける必要があります。これは、賃貸借の解除、解約の申入れ、合意による解約に共通のルールです(同法18条1項)。

※農地の賃貸借契約については、出題の度に別の論点が出てきて、傾向といえるものがありません。この選択肢を無視して、「他の選択肢で解決できないか。」を考えましょう。見え見えの正解肢がありますよ。

■参照項目&類似過去問
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農地の賃貸借(農地法[なし])
年-問-肢内容正誤
1R04-21-3農地の賃貸借及び使用貸借は、その登記がなくても農地の引渡しがあったときは、これをもってその後にその農地について所有権を取得した第三者に対抗することができる。×
2R03s-21-2農地の賃貸借の解除については、農地の所有者が、賃借人に対して一方的に解約の申入れを行う場合には、農地法第18条第1項の許可を受ける必要がない。×
3H25-21-1農地の賃貸借について法第3条第1項の許可を得て農地の引渡しを受けても、土地登記簿に登記をしなかった場合、その後、その農地について所有権を取得した第三者に対抗することができない。×
4
H22-22-4賃貸借の存続期間については、民法上は50年を超えることができないこととされているが、農地の賃貸借についても、50年までの存続期間が認められる。

3 誤り

農地法上の「農地」とは、耕作の目的に供される土地のことをいいます(同法2条1項)。現況を基準に判断しますから、登記簿上の地目は関係がありません。
本肢の土地は、「現況が農地」だというのですから、農地法上の「農地」として扱います。登記簿上の地目が「宅地」となっていても、「農地」かどうかの判断には関係がありません。

■参照項目&類似過去問
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「農地」の定義(農地法[01]2(1))
年-問-肢内容正誤
1R03s-21-3
登記簿の地目が宅地となっている場合には、現況が農地であっても法の規制の対象とはならない。×
2R02s-21-1
山林を開墾し、農地として耕作している土地であっても、土地登記簿上の地目が山林であれば、法の適用を受ける農地に該当しない。×
3H30-22-4
雑種地を開墾し耕作している土地でも、登記簿上の地目が雑種地である場合は、法の適用を受ける農地に当たらない。×
4H28-22-4
農業者が、市街化調整区域内の耕作しておらず遊休化している自己の農地を、自己の住宅用地に転用する場合、あらかじめ農業委員会へ届出をすれば、法第4条第1項の許可を受ける必要がない。×
5H26-21-4山林を開墾し現に農地として耕作している土地であっても、土地登記簿上の地目が山林であれば、法の適用を受ける農地とはならない。×
6H25-21-2雑種地を開墾し、現に畑として耕作されている土地であっても、土地登記簿上の地目が雑種地である限り、法の適用を受ける農地には当たらない。×
7H24-22-1登記簿上の地目が山林となっている土地であっても、現に耕作の目的に供されている場合には、法に規定する農地に該当する。
8H23-22-3農業者が、自らの養畜の事業のための畜舎を建設する目的で、市街化調整区域内にある150㎡の農地を購入する場合は、法第5条第1項の許可を受ける必要がある。
9H20-24-1現況は農地であるが、土地登記簿上の地目が原野である市街化調整区域内の土地を駐車場にするために取得する場合は、法第5条第1項の許可を受ける必要はない。×
10H19-25-3耕作する目的で原野の所有権を取得し、その取得後、造成して農地にする場合には、法第3条第1項の許可を受ける必要がある。×
11H19-25-4市街化調整区域内の農地を駐車場に転用するに当たって、当該農地がすでに利用されておらず遊休化している場合には、法第4条第1項の許可を受ける必要はない。×
12H18-25-1山林を開墾し現に水田として耕作している土地であっても、土地登記簿上の地目が山林である限り、法の適用を受ける農地には当たらない。×
13H16-24-2市街化調整区域内の山林の所有者が、その土地を開墾し果樹園として利用した後に、その果樹園を山林に戻す目的で、杉の苗を植える場合には、農地法第4条の許可を受ける必要がある。
14H13-23-1現況は農地であるが、土地登記簿上の地目が「山林」である土地を住宅建設の目的で取得する場合には、農地法第5条の許可を要しない。×
15H11-24-4土地登記簿上の地目が山林や原野であっても、現況が農地であれば、その所有権を取得する場合は、原則として農地法第3条又は第5条の許可を受ける必要がある。
16H09-21-4[市街化区域外の農地]山林を開墾して造成した農地について、それを宅地に転用する目的で取得する場合は、農地法第5条の許可を受ける必要はない。×
17H07-26-1[個人が市街化区域外の農地等を売買により取得しようとする場合]現在耕作されている農地を取得して宅地に転用しようとする場合は、登記簿上の地目が「原野」であっても、農地法第5条の許可を受ける必要がある。
18H04-26-1土地区画整理事業の施行地区内にある農地で、耕作の目的に供されているものは、仮換地の指定処分があっても農地法上の農地である。
19H03-27-1山林を開墾した場合、農地として耕作していても、土地登記簿の地目が「山林」から「田」又は「畑」に変更されるまでは、農地法上の農地ではない。×

4 正しい

農地を駐車場にすることは、「転用」に該当します(農地法4条1項)。
市街化区域内の農地を農地以外のものに転用する場合、4条許可は不要です。農業委員会にあらかじめ届出するだけで済みます(同項8号)。

市街化区域内の特例

■参照項目&類似過去問
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4条許可:市街化区域内の特例(農地法[03]1(2)①)
年-問-肢内容正誤
市街化区域内
1R03s-21-4市街化区域内の自己所有の農地を駐車場に転用するため、あらかじめ農業委員会に届け出た場合には、法第4条第1項の許可を受ける必要がない。
2R02-21-2市街化区域内の自己の農地を駐車場に転用する場合には、農地転用した後に農業委員会に届け出ればよい。×
3R01-21-3市街化区域内の農地を自家用駐車場に転用する場合、法第4条第1項の許可が必要である。×
4H24-22-3市街化区域内の農地について、あらかじめ農業委員会に届け出てその所有者が自ら駐車場に転用する場合には、法第4条第1項の許可を受ける必要はない。
5H14-23-1農地の所有者がその土地に住宅を建設する場合で、その土地が市街化区域内にあるとき、必ず農地法第4条の許可を受けなければならない。×
6H05-26-1市街化区域内の農地に住宅を建てようとする場合、事前に農業委員会へ届出を行えば、農地法の許可を受ける必要はない。
市街化調整区域内
1H28-22-4農業者が、市街化調整区域内の耕作しておらず遊休化している自己の農地を、自己の住宅用地に転用する場合、あらかじめ農業委員会へ届出をすれば、4条の許可を受ける必要がない。×
2H25-21-4相続で取得した市街化調整区域内の農地を自己の住宅用地として転用する場合、許可が必要。
3H20-24-3市街化調整区域内の農地転用について、あらかじめ届け出れば、許可は不要。×
4H19-25-1相続により取得した市街化調整区域内の農地を住宅用地に転用する場合、許可は不要。×
5H12-25-2農家が自己所有する市街化調整区域内の農地を転用して、そこに自ら居住する住宅を建設する場合には、農地法第4条の許可を受ける必要がある。
市街化区域外
1H27-22-2農業者が、市街化調整区域内の耕作しておらず遊休化している自己の農地を、自己の住宅用地に転用する場合、あらかじめ農業委員会へ届出をすれば、法第4条第1項の許可を受ける必要がない。×
2H27-22-3農業者が相続により取得した市街化調整区域内の農地を自己の住宅用地として転用する場合でも、法第4条第1項の許可を受ける必要がある。×
3H22-22-2市街化調整区域内の農地を宅地に転用する場合は、あらかじめ農業委員会へ届出をすれば、法第4条第1項の許可を受ける必要はない。×
4H09-21-2農業者が相続により取得した市街化調整区域内の農地を自己の住宅用地として転用する場合には、法第4条第1項の許可を受ける必要はない。×
5H09-21-3農家が自己所有する市街化調整区域内の農地を転用して、そこに自ら居住する住宅を建設する場合には、農地法第4条の許可を受ける必要がある。×

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