【宅建過去問】(令和03年12月問31)報酬(個数問題)

宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)が貸主Bから建物の貸借の代理の依頼を受け、宅地建物取引業者C(消費税課税事業者)が借主Dから媒介の依頼を受け、BとDとの間で賃貸借契約を成立させた場合における次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、誤っているものはいくつあるか。なお、1か月分の借賃は8万円とし、借賃及び権利金(権利設定の対価として支払われる金銭であって返還されないものをいう。)には、消費税等相当額を含まないものとする。

  • ア 建物を住居として貸借する場合、Cは、媒介の依頼を受けるに当たってDから承諾を得ているときを除き、44,000円を超える報酬をDから受領することはできない。
  • イ 建物を店舗として貸借する場合、AがBから受領する報酬とCがDから受領する報酬の合計額は88,000円を超えてはならない。
  • ウ 建物を店舗として貸借する場合、200万円の権利金の授受があるときは、A及びCが受領できる報酬の額の合計は、110,000円を超えてはならない。
  • エ Aは、Bから媒介報酬の限度額まで受領する他に、Bの依頼によらない通常の広告の料金に相当する額を別途受領することができる。
  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ

正解:2

設定の確認

権利金」については、「権利金(権利設定の対価として支払われる金銭であって返還されないものをいう。)」と定義されています。したがって、建物が居住用以外のものであれば、「権利金」をベースとした報酬計算が可能です。

貸借の代理・媒介に関する報酬

計算の全パターンを一覧にしたのがこの表です。表の中でどこに当てはまるか、が分かれば、計算方法が導かれます。

貸借に関する報酬の計算方法

ア 正しい

「住居として貸借」する場合、つまり、居住用建物です。一覧表のうち、上半分を使うことになります。
宅建業者Cは、Dから「媒介」の依頼を受けているのですから、表の左側の列を使います。「Dから承諾を得ているときを除き」とされているので、承諾がない「原則」のルールで計算します(宅建業法46条1項・2項、報酬額告示第四)。

Cの報酬限度額は、借賃の0.5か月分です。具体的には、
8万×0.5=4万円
Cは消費税課税業者ですから、消費税分を上乗せすると、
4万×1.1=44,000円
これがCの受領する報酬限度額です。

イ 正しい

「店舗として貸借」する場合、つまり、居住用建物以外です。一覧表のうち、下半分を使うことになります。
「権利金」に関する記述はありませんから、「例外」パターンは考えません。「原則」を適用しましょう(宅建業法46条1項・2項、報酬額告示第四、第五)。

AとCの報酬の合計額は、借賃の1か月分です。A・Cはそれぞれ消費税課税業者ですから、消費税分を加算すると、
8万×1.1=88,000円
が合計の報酬限度額です。

本肢のケースでは、Aの報酬限度額=Cの報酬限度額=合計の報酬限度額=88,000円です。
CとAの具体的な報酬額は、88,000円をどのようにシェアするか、で決まります。

ウ 誤り

「店舗として貸借」する場合、つまり、居住用建物以外です。一覧表のうち、下半分を使うことになります。
「200万円の権利金」が授受されていますから、「原則」の他に「例外」を使うこともできます(宅建業法46条1項・2項、報酬額告示第四、第五、第六)。両方を計算した上で、額の多いほうが報酬限度額になります。

■【原則】借賃ベースの報酬計算

肢イと全く同じ状況。AとCが受領できる報酬限度額の合計は、88,000円です。

■【例外】権利金ベースの報酬計算

権利金を売買代金とみなして、売買の報酬計算と同じ方法で計算します。

(1)媒介業者Cの報酬

権利金200万円を売買代金とみなすのですから、報酬限度額は、
200万×5%=10万円
消費税分を加算すると、
10万×1.1=11万円

(2)代理業者Aの報酬

媒介の場合の2倍ですから、
11万×2=22万

(3)A・Cを合計した報酬限度額

媒介の報酬の2倍=代理の報酬を超えることができません。

■借賃ベースと権利金ベースの比較

全ての数値について、権利金ベースのほうが高額です。したがって、こちらが報酬限度額ということになります。
本肢で問われている「A及びCが受領できる報酬の額の合計」は、22万円です。11万円ではありません。

エ 誤り

報酬限度額を超えて受領することができるのは、依頼者の依頼によって行う広告料金に限られます(宅建業法46条1項・2項、報酬額告示第九①)。本肢は、「依頼によらない」広告の料金を受領する点が誤りです。

依頼者の依頼による費用

■参照項目&類似過去問
内容を見る
依頼者の依頼による費用(宅建業法[21]5(1))
年-問-肢内容正誤
1R05-27-3既存住宅の売買の媒介を行う宅地建物取引業者が売主に対して建物状況調査を実施する者のあっせんを行った場合、宅地建物取引業者は売主から報酬とは別にあっせんに係る料金を受領することはできない。
2R05-34-イ宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)は貸主Bから建物の貸借の媒介の依頼を受け、宅地建物取引業者C(消費税課税事業者)は借主Dから建物の貸借の媒介の依頼を受け、BとDとの間で、1か月分の借賃を12万円(消費税等相当額を含まない。)とする賃貸借契約を成立させた。AはBから事前に特別な広告の依頼があったので、依頼に基づく大手新聞掲載広告料金に相当する額をBに請求し、受領した。×
3R05-34-ウ宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)は貸主Bから建物の貸借の媒介の依頼を受け、宅地建物取引業者C(消費税課税事業者)は借主Dから建物の貸借の媒介の依頼を受け、BとDとの間で、1か月分の借賃を12万円(消費税等相当額を含まない。)とする賃貸借契約を成立させた。CはDに対し、賃貸借契約書の作成費を、Dから限度額まで受領した媒介報酬の他に請求して受領した。×
4R04-27-1Aが、Bから売買の媒介を依頼され、Bからの特別の依頼に基づき、遠隔地への現地調査を実施した。その際、当該調査に要する特別の費用について、Bが負担することを事前に承諾していたので、Aは媒介報酬とは別に、当該調査に要した特別の費用相当額を受領することができる。
5R04-31-1Aが、Bと一般媒介契約を締結した場合、AがBに対し当該土地付建物の価額について意見を述べるために行った価額の査定に要した費用をBに請求することはできない。
6R03s-31-エ宅地建物取引業者は、依頼者から媒介報酬の限度額まで受領する他に、依頼者の依頼によらない通常の広告の料金に相当する額を別途受領することができる。
×
7R03-30-イ宅地建物取引業者は、建物の貸借の媒介において広告を行った場合には、依頼者の依頼の有無にかかわらず、報酬の限度額を超えて、当該広告の料金に相当する額を受領することができる。×
8R02s-34-4
宅地建物取引業者は、依頼者の依頼によらない広告の料金に相当する額を報酬額に合算する場合は、代理又は媒介に係る報酬の限度額を超える額の報酬を依頼者から受けることができる。×
9R01-30-ウ
建物の貸借の媒介において、依頼者の依頼によらない通常の広告を行い、国土交通大臣の定める報酬限度額の媒介報酬のほか、当該広告の料金に相当する額を受領した。
×
10R01-32-3
宅地建物取引業者Aは、既存住宅の売買の媒介について、Aが売主Bに対して建物状況調査を実施する者をあっせんした場合、AはBから報酬とは別にあっせんに係る料金を受領することはできない。
11H30-30-3
建物が店舗用である場合、宅地建物取引業者Aは、貸主Bからの依頼に基づくことなく広告をした場合でも、その広告が賃貸借契約の成立に寄与したときは、報酬とは別に、その広告料金に相当する額をBに請求することができる。×
12H30-33-3
宅地建物取引業者Aは、Bから、Bが所有し居住している甲住宅の売却について媒介の依頼を受けた。Aは、甲住宅の評価額についての根拠を明らかにするため周辺の取引事例の調査をした場合、当該調査の実施についてBの承諾を得ていなくても、同調査に要した費用をBに請求することができる。×
13H29-26-2
宅地建物取引業者は、限度額の報酬に加えて、依頼者の依頼によって行った広告の料金に相当する額を別途受領することができない。×
14H29-26-3
宅地建物取引業者は、限度額の報酬に加えて、法第35条の規定に基づく重要事項の説明を行った対価として、報酬を受領することができる。×
15H29-43-エ
専任媒介契約に係る通常の広告費用は宅地建物取引業者Aの負担であるが、指定流通機構への情報登録及び依頼者BがAに特別に依頼した広告に係る費用については、成約したか否かにかかわらず、国土交通大臣の定める報酬の限度額を超えてその費用をBに請求することができる。×
16H28-33-イ
宅地建物取引業者は、媒介に係る報酬の限度額の他に、依頼者の依頼によらない通常の広告の料金に相当する額を報酬に合算して、依頼者から受け取ることができる。
×
17H26-37-ア宅地建物取引業者Aが居住用建物の貸借の媒介をするに当たり、依頼者からの依頼に基づくことなく広告をした場合でも、その広告が貸借の契約の成立に寄与したとき、Aは、報酬とは別に、その広告料金に相当する額を請求できる。
×
18H25-37-ウ宅地建物取引業者A社(消費税課税事業者)は売主Bから土地付建物の売却の代理の依頼を受け、宅地建物取引業者C社(消費税課税事業者)は買主Dから戸建住宅の購入の媒介の依頼を受け、BとDの間で売買契約を成立させた。なお、土地付建物の代金は5,500万円(うち、土地代金は2,200万円)で、消費税額及び地方消費税額を含むものとする。A社はBから1,660,000円の報酬を受領し、C社はDから1,669,500円を報酬として受領したほか、Dの特別の依頼に基づき行った遠隔地への現地調査に要した特別の費用について、Dが事前に負担を承諾していたので、50,000円を受領した。
19H24-35-エ宅地建物取引業者A社が売主Bから土地付中古別荘の売却の代理の依頼を受け、売買契約を成立させた場合、A社は、代理報酬のほかに、Bからの依頼の有無にかかわらず、通常の広告の料金に相当する額についても、Bから受け取ることができる。
×
20H23-36-3宅地建物取引業者は、建物の貸借の媒介において広告を行った場合には、依頼者の依頼の有無にかかわらず、報酬とは別に、当該広告の料金に相当する額を受領することができる。
×
21H23-40-4宅地建物取引業者は、媒介報酬の限度額まで受領できるほかに、法第37条の規定に基づく契約の内容を記載した書面を作成した対価として、文書作成費を受領することができる。×
22H22-42-2宅地建物取引業者は、国土交通大臣の定める限度額を超えて報酬を受領してはならないが、相手方が好意で支払う謝金は、この限度額とは別に受領することができる。
×
23H19-42-2宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)は、B所有の建物についてB及びCから媒介の依頼を受け、Bを貸主、Cを借主とする賃貸借契約を成立させた。Aは、媒介報酬の限度額のほかに、Bの依頼によらない通常の広告の料金に相当する額を報酬に合算して、Bから受け取ることができる。×
24H18-43-イ宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)は、BからB所有の宅地の売却について媒介の依頼を受け、Cを買主として代金1,000万円で売買契約を成立させた。その際、Bから報酬30万円のほかに、Bの特別の依頼による広告に要した実費10万円を受領した。
25H17-34-4宅地建物取引業者Aは、建物の貸借の媒介に当たり、依頼者の依頼に基づいて広告をした。Aは報酬とは別に、依頼者に対しその広告料金を請求することができない。
×
26H12-35-2宅地建物取引業者は、建物の売買の媒介をするに当たり、建物の売主から特別の依頼を受けて広告をし、当該建物の売買契約が成立したので、国土交通大臣が定めた報酬限度額の報酬のほかに、その広告に要した実費を超える料金を受領した。×
27H12-38-3宅地建物取引業者Aが、建物の貸借の媒介をするに当たり、依頼者からの依頼に基づくことなく広告した場合でも、その広告が貸借の契約の成立に寄与したとき、Aは、報酬とは別に、その広告料金を請求できる。×
28H09-43-1宅地建物取引業者Aが宅地の売買の媒介をするに当たり、特に依頼者から依頼されて特別の広告を行った場合には、当該売買が不成立に終わったときでも、Aは、その広告の料金に相当する額を依頼者から受け取ることができる。

まとめ

誤っているものはウ・エの二つです。正解は、肢2。


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