【宅建過去問】(令和04年問06)賃貸借と使用貸借

Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. Aは、甲土地をBに引き渡す前であれば、①では口頭での契約の場合に限り自由に解除できるのに対し、②では書面で契約を締結している場合も自由に解除できる。
  2. Bは、①ではAの承諾がなければ甲土地を適法に転貸することはできないが、②ではAの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができる。
  3. Bは、①では期間内に解約する権利を留保しているときには期間内に解約の申入れをし解約することができ、②では期間内に解除する権利を留保していなくてもいつでも解除することができる。
  4. 甲土地について契約の本旨に反するBの使用によって生じた損害がある場合に、Aが損害賠償を請求するときは、①では甲土地の返還を受けた時から5年以内に請求しなければならないのに対し、②では甲土地の返還を受けた時から1年以内に請求しなければならない。

正解:3

はじめに

設定の確認

Aを貸主Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合

「資材置場とする」目的ということは、建物所有目的がないことが分かります。したがって、本問の賃借権は、借地借家法上の「借地権」ではありません(同法2条1号)。解答にあたっては、民法だけを考えればOKです。

賃貸借と使用貸借の根本的な違い

賃貸借契約と使用貸借契約は、どちらも「他人の物を借りて使用し、最終的にはその物を返す」という点は共通です。
両者の違いは、「貸してくれた人に賃料を払うかどうか」という点にあります。①賃貸借では借主が賃料を支払います(有償)が、②使用貸借の借主はタダで他人の物を使っている(無償)のです。①賃貸借の借主のほうが、②使用貸借より強く保護されるのが当然で、このバランスが崩れていれば、その選択肢は誤りです。

1 誤り

①賃貸借契約の場合

引渡しの前でも後でも、口頭の契約でも書面による契約でも、いったん契約した以上、貸主Aが「自由に解除できる」などということはありません(借主Bからの解除も不可能です)。
あまりにも当然のことなので、あえて勉強していないでしょう。しかし、「お金を払って借りる」という契約をした以上、どちらかの当事者が自由に解除することなど不可能です。

②使用貸借契約の場合

借主が借用物を受け取るまでの間で、書面で契約をしていなければ(=口頭での契約であれば)、貸主が自由に契約を解除することができます(民法593条の2)。

本肢は、「書面で契約を締結している場合も自由に解除できる」とする点が誤っています。

■参照項目&類似過去問
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賃貸借の解除(民法[26]なし)
年-問-肢内容正誤
1R04-06-1Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約又は②使用貸借契約を締結した。Aは、甲土地をBに引き渡す前であれば、①では口頭での契約の場合に限り自由に解除できるのに対し、②では書面で契約を締結している場合も自由に解除できる。×
2R03s-09-1AがBに対してA所有の甲建物を①売却又は②賃貸した。①と②の契約が解除された場合、①ではBは甲建物を使用収益した利益をAに償還する必要があるのに対し、②では将来に向かって解除の効力が生じるのでAは解除までの期間の賃料をBに返還する必要はない。
3H22-12-2賃貸借契約において、借主が貸主との間の信頼関係を破壊し、契約の継続を著しく困難にした場合であっても、貸主が契約解除するためには、催告が必要である。×
使用貸借:借用物受取り前の貸主による解除(民法[27]1(2))
年-問-肢内容正誤
1R04-06-1Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約又は②使用貸借契約を締結した。Aは、甲土地をBに引き渡す前であれば、①では口頭での契約の場合に限り自由に解除できるのに対し、②では書面で契約を締結している場合も自由に解除できる。×

2 誤り

①賃貸借契約の場合

貸主Aは、借主Bについて、「この人なら甲土地をきれいに使って、最終的にも原状回復した上で返してくれるだろう。」と信頼して契約をしています。それなのに、「実際には見知らぬCが使っている。」というのでは、不安で仕方ありません。そこで、賃貸借契約については、賃貸人の承諾を得なければ、賃借物を転貸することができないというルールがあります(無断譲渡・転貸の禁止。民法612条1項)。

②使用貸借契約の場合

使用貸借でも、貸主Aの承諾を得ない限り、甲土地を転貸することはできません(民法594条2項)。
本肢は「Aの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができる」としていて、真実と正反対です。有償の賃貸借で禁止されていることが、無償の使用貸借で許されるはずがありません。

☆賃貸借における「無断譲渡・転貸の禁止」というテーマは、問08肢2でも出題されています。

■参照項目&類似過去問
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無断譲渡・転貸の禁止(民法[26]5(2))
年-問-肢内容正誤
1R04-06-2Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合について考える。Bは、①ではAの承諾がなければ甲土地を適法に転貸することはできないが、②ではAの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができる。
2R04-08-2AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、①地上権である場合と②賃借権である場合について考える。CがBに無断でAから当該権原を譲り受け、甲土地を使用しているときは、①でも②でも、BはCに対して、甲土地の明渡しを請求することができる。
3R03s-09-2AがBに対してA所有の甲建物を①売却又は②賃貸した。①ではBはAの承諾を得ずにCに甲建物を賃貸することができ、②ではBはAの承諾を得なければ甲建物をCに転貸することはできない。
[共通の設定]
A所有の甲建物につき、Bが賃貸借契約を締結している。
4R02s-12-2BがAに無断でCに当該建物を転貸した場合であっても、Aに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除することができない。
5H27-09-2賃貸人が転貸借について承諾を与えた場合には、賃貸人は、断転貸を理由としては賃貸借契約を解除することはできないが、賃借人と賃貸借契約を合意解除することは可能である。
6H27-09-3土地の賃借人が無断転貸した場合、賃貸人は、賃貸借契約を民法第612条第2項により解除できる場合とできない場合があり、土地の賃借人が賃料を支払わない場合にも、賃貸人において法定解除権を行使できる場合とできない場合がある。
7H25-11-1BがAに断で甲建物をCに転貸した場合には、転貸の事情のいかんにかかわらず、AはAB間の賃貸借契約を解除することができる。×
8H21-12-1BがAに無断で甲建物を転貸しても、Aに対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除できない。
9H18-10-1AがBの承諾なく当該建物をCに転貸しても、この転貸がBに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、BはAの無断転貸を理由に賃貸借契約を解除することはできない。
10H06-12-1AC間の転貸借がBの承諾を得ていない場合でも、その転貸借がBに対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、Bの解除権は発生しない。
使用貸借:転貸(民法[27]2(6))
年-問-肢内容正誤
1R04-06-2Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合について考える。Bは、①ではAの承諾がなければ甲土地を適法に転貸することはできないが、②ではAの承諾がなくても甲土地を適法に転貸することができる。
[共通の設定]
AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物について使用貸借契約を締結した。
2H21-12-1BがAに無断で甲建物を転貸しても、Aに対する背信的行為と認めるに足らない特段の事情があるときは、Aは賃貸借契約を解除できないのに対し、CがAに無断で甲建物を転貸した場合には、Aは使用貸借契約を解除できる。
3H17-10-3Bは、Aの承諾がなければ、この建物の一部を、第三者に転貸して使用収益させることはできない。

3 正しい

①賃貸借契約の場合

期間の定めのある賃貸借契約を期間の途中で中途解約することができるのは、解約する権利を留保した場合に限られます(民法618条)。

②使用貸借契約の場合

使用貸借契約は、借主のほうからであれば、いつでも解除することができます(民法598条3項)。解約する権利を留保する必要はありません。
「タダで借りている物が必要なくなった。」というのですから、それを返すのは自由です。貸主のほうでも、早く返ってくることに文句はありません。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
土地賃貸借の中途解約(民法[26]7)
年-問-肢内容正誤
1R04-06-3Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲土地につき、資材置場とする目的で期間を2年として、AB間で、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合について考える。Bは、①では期間内に解約する権利を留保しているときには期間内に解約の申入れをし解約することができ、②では期間内に解除する権利を留保していなくてもいつでも解除することができる。
[Q2&3 共通の設定]
甲土地の所有者が甲土地につき、建物の所有を目的として賃貸する場合(ケース①)と、建物の所有を目的とせずに資材置場として賃貸する場合(ケース②)について考える。
2H26-11-3期間を定めない契約を締結した後に賃貸人が甲土地を使用する事情が生じた場合において、ケース①では賃貸人が解約の申入れをしても合意がなければ契約は終了しないのに対し、ケース②では賃貸人が解約の申入れをすれば契約は申入れの日から1年を経過することによって終了する。
3H26-11-4賃貸借の期間を定めた場合であって当事者が期間内に解約する権利を留保していないとき、ケース①では賃借人側は期間内であっても1年前に予告することによって中途解約することができるのに対し、ケース②では賃貸人も賃借人もいつでも一方的に中途解約することができる。×
4H20-13-3Aが所有している甲土地を平置きの駐車場用地として利用しようとするBに貸す場合と、一時使用目的ではなく建物所有目的を有するCに貸す場合について考える。土地賃貸借契約の期間を定めなかった場合、Aは、Bに対しては、賃貸借契約開始から1年が経過すればいつでも解約の申入れをすることができるのに対し、Cに対しては、賃貸借契約開始から30年が経過しなければ解約の申入れをすることができない。×
使用貸借:終了・解除(民法[27]2(3))

[共通の設定]
AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物について使用貸借契約を締結した。
年-問-肢内容正誤
1R04-06-3使用貸借の期間を2年と定めた場合、Bは、期間内に解除する権利を留保していなくてもいつでも解除することができる。×
1H21-12-2A所有の甲建物につき、Bが適当な家屋に移るまでの一時的な居住を目的として使用貸借契約を締結した。返還時期の定めがない場合、AはBに対していつでも返還を請求できる。×
2H17-10-4Aは、災害により居住建物を失った友人Bと、適当な家屋が見つかるまでの一時的住居とするとの約定のもとに、使用貸借契約を締結した。適当な家屋が現実に見つかる以前であっても、適当な家屋を見つけるのに必要と思われる客観的な期間を経過した場合は、AはBに対し、この建物の返還を請求することができる。
3H09-08-22年の期間満了時において、Aの返還請求に正当事由がない場合には、Bは、従前と同一の条件で、さらに2年間当該建物を無償で借り受けることができる。×

4 誤り

分かりやすくするために、②使用貸借→①賃貸借の順で説明します。

②使用貸借契約の場合

契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害がある場合、貸主は、返還を受けた時から1年以内に請求しなければなりません(民法600条1項)。

①賃貸借契約の場合

賃貸借でも、使用貸借に関する民法の規定が準用されています(民法622条)。したがって、賃貸借の場合も、損害賠償を請求できる期間は1年以内です。「5年以内」ではありません。


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