【宅建過去問】(令和04年問28)重要事項説明書(35条書面)
宅地建物取引業者が行う宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
- 宅地建物取引業者が、宅地建物取引業者ではない個人から媒介業者の仲介なしに土地付建物を購入する場合、買主である宅地建物取引業者は重要事項説明書を作成しなくても宅地建物取引業法違反とはならない。
- 宅地建物取引業者が、重要事項説明書を作成する際、調査不足のため、重要事項説明書に記載された内容が事実と異なるものとなったが、意図的に事実と異なる内容を記載したものではないため、宅地建物取引業法違反とはならない。
- 宅地建物取引業者は、土地売買の媒介を行う場合、宅地建物取引業者ではない売主に対して契約が成立する前までの間に、宅地建物取引士をして重要事項説明書を交付して説明をさせなければならない。
- 宅地又は建物の取引は権利関係や法令上の制限など取引条件に関する事項が複雑で多岐にわたるため、重要事項説明書は、宅地又は建物の取引の専門的知識を有する宅地建物取引士が作成しなければならない。
Contents
正解:1
1 正しい
重要事項説明の相手方
重要事項説明は、物件の概要について説明するものです。そのため、売買であれば買主にだけ重要事項説明書を交付し、その内容を説明すればOKです(宅建業法35条1項)。
本肢の宅建業者は、買主の立場です。買主は重要事項説明書を作成する義務を負いません。もちろん、交付や説明も不要です。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R05-33-1 | 甲宅地を所有する宅地建物取引業者Aが、乙宅地を所有する宅地建物取引業者ではない個人Bと、甲宅地と乙宅地の交換契約を締結するに当たって、Bに対して、甲宅地に関する重要事項の説明を行う義務はあるが、乙宅地に関する重要事項の説明を行う義務はない。 | ◯ |
2 | R05-42-イ | 売主及び買主が宅地建物取引業者ではない場合、当該取引の媒介業者は、売主及び買主に重要事項説明書を交付し、説明を行わなければならない。 | × |
3 | R04-28-1 | 宅地建物取引業者が、宅地建物取引業者ではない個人から媒介業者の仲介なしに土地付建物を購入する場合、買主である宅地建物取引業者は重要事項説明書を作成しなくても宅地建物取引業法違反とはならない。 | ◯ |
4 | R04-28-3 | 宅地建物取引業者は、土地売買の媒介を行う場合、宅地建物取引業者ではない売主に対して契約が成立する前までの間に、宅地建物取引士をして重要事項説明書を交付して説明をさせなければならない。 | × |
5 | R03s-35-2 | 宅地建物取引業者は、その媒介により売買契約が成立したときは、当該契約の各当事者に、遅滞なく、重要事項説明書を交付しなければならない。 | × |
6 | H29-33-1 | 宅地建物取引業者が宅地の売買の媒介を行う場合、売買の各当事者すなわち売主及び買主に対して、重要事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。 | × |
7 | H27-29-1 | 売主に対しては、買主に対してと同様に、宅地建物取引士をして、契約締結時までに重要事項を記載した書面を交付して、その説明をさせなければならない。 | × |
8 | H27-29-3 | 宅地建物取引業者が代理人として売買契約を締結し、建物の購入を行う場合は、代理を依頼した者に対して重要事項の説明をする必要はない。 | × |
9 | H25-29-1 | 宅地建物取引業者でない売主と宅地建物取引業者である買主が、媒介業者を介さず宅地の売買契約を締結する場合、法第35条の規定に基づく重要事項の説明義務を負うのは買主の宅地建物取引業者である。 | × |
10 | H08-38-1 | 売主A、買主Bの間の宅地の売買について宅地建物取引業者Cが媒介した。Bが未成年者で、契約の締結について法定代理人の同意を得ていた場合において、Cは、宅地建物取引士をして、Bに対してのみ35条書面を交付して説明をさせた。 | ◯ |
11 | H04-42-2 | 35条書面の交付は契約締結前に、37条書面の交付は契約締結後に、いずれも売主買主双方に対して、行わなければならない。 | × |
2 誤り
重要事項説明は、いい加減に記載した重要事項説明書を作成し、それをただ読んでいればOK、というものではありません。説明義務の前には、重要事項について調査する義務があり、この調査義務を怠って適当な重要事項説明書を作成すること自体が宅建業法に違反します。
そうでないとすると、調査不足で適当な重要事項説明書を作成しても意図的でなければ許される一方、真面目に調査をする宅建業者ほど記載のミスが深刻に取り扱われる、というおかしな逆転現象が起こってしまいます。
3 誤り
重要事項説明の相手方
(肢1の表参照。)
売買の媒介を行う場合、重要事項説明は、買主に対してするものです(宅建業法35条1項)。売主に対して、重要事項説明をする必要はありません。
【参考】買主に対する説明
買主に対してであれば、話は全く別です。買主が宅建業者でない場合を考えると、媒介業者は、買主に対して、「宅地建物取引士をして重要事項説明書を交付して説明をさせ」なければなりません。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R05-33-1 | 甲宅地を所有する宅地建物取引業者Aが、乙宅地を所有する宅地建物取引業者ではない個人Bと、甲宅地と乙宅地の交換契約を締結するに当たって、Bに対して、甲宅地に関する重要事項の説明を行う義務はあるが、乙宅地に関する重要事項の説明を行う義務はない。 | ◯ |
2 | R05-42-イ | 売主及び買主が宅地建物取引業者ではない場合、当該取引の媒介業者は、売主及び買主に重要事項説明書を交付し、説明を行わなければならない。 | × |
3 | R04-28-1 | 宅地建物取引業者が、宅地建物取引業者ではない個人から媒介業者の仲介なしに土地付建物を購入する場合、買主である宅地建物取引業者は重要事項説明書を作成しなくても宅地建物取引業法違反とはならない。 | ◯ |
4 | R04-28-3 | 宅地建物取引業者は、土地売買の媒介を行う場合、宅地建物取引業者ではない売主に対して契約が成立する前までの間に、宅地建物取引士をして重要事項説明書を交付して説明をさせなければならない。 | × |
5 | R03s-35-2 | 宅地建物取引業者は、その媒介により売買契約が成立したときは、当該契約の各当事者に、遅滞なく、重要事項説明書を交付しなければならない。 | × |
6 | H29-33-1 | 宅地建物取引業者が宅地の売買の媒介を行う場合、売買の各当事者すなわち売主及び買主に対して、重要事項を記載した書面を交付して説明しなければならない。 | × |
7 | H27-29-1 | 売主に対しては、買主に対してと同様に、宅地建物取引士をして、契約締結時までに重要事項を記載した書面を交付して、その説明をさせなければならない。 | × |
8 | H27-29-3 | 宅地建物取引業者が代理人として売買契約を締結し、建物の購入を行う場合は、代理を依頼した者に対して重要事項の説明をする必要はない。 | × |
9 | H25-29-1 | 宅地建物取引業者でない売主と宅地建物取引業者である買主が、媒介業者を介さず宅地の売買契約を締結する場合、法第35条の規定に基づく重要事項の説明義務を負うのは買主の宅地建物取引業者である。 | × |
10 | H08-38-1 | 売主A、買主Bの間の宅地の売買について宅地建物取引業者Cが媒介した。Bが未成年者で、契約の締結について法定代理人の同意を得ていた場合において、Cは、宅地建物取引士をして、Bに対してのみ35条書面を交付して説明をさせた。 | ◯ |
11 | H04-42-2 | 35条書面の交付は契約締結前に、37条書面の交付は契約締結後に、いずれも売主買主双方に対して、行わなければならない。 | × |
4 誤り
重要事項説明に関し、宅建士でなければできないことは、表の③重要事項説明書に記名すること、⑤重要事項説明書の内容を説明すること、の2つだけです(宅建業法35条1項)。
重要事項説明書を作成すること自体は、宅建士でない宅建業者の従業者が担当しても問題はありません。
【参考】宅建士の独占業務
宅建士でなければできない業務(独占業務)には、この他に、契約書面(37条書面)への記名があります(宅建業法37条3項)。
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書(35条書面)への記名
- 契約書面(37条書面)への記名
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R04-28-4 | 宅地又は建物の取引は権利関係や法令上の制限など取引条件に関する事項が複雑で多岐にわたるため、重要事項説明書は、宅地又は建物の取引の専門的知識を有する宅地建物取引士が作成しなければならない。 | × |
2 | R04-40-イ | 建物の貸主が宅地建物取引業者で、代表者が宅地建物取引士であり建物の事情に詳しいことから、その代表者が作成し、記名押印した重要事項説明書がこちらになります。当社の宅地建物取引士は同席しますが、説明は貸主の代表者が担当します。 | × |
【無料公開講座】スリー・ステップ学習法
- [Step.1]基本習得編で宅建合格に必要な基礎知識を学ぶ。
- [Step.2]一問一答編で「一問一答式」の本試験過去問で基礎知識を確認し、○×を見分ける解法テクニックを身に付ける。
- [Step.3]過去演習編で「四択問題」の解決法を学ぶ。
この3段階で、着実に合格レベルに進むことができます。
宅建士でなければできない業務(独占業務)は、以下の3業務ですが、同一契約で、各業務を異なる宅建士が行えますか?
1.重要事項の説明(A宅建士)
2.重要事項説明書(35条書面)への記名(B宅建士)
3.契約書面(37条書面)への記名(C宅建士)
重要事項説明書と契約書面
ご質問の順序とは違うのですが、まず最初に、重要事項説明書(質問の1&2)と契約書面(同3)を比較します。
結論から言うと、2つの書面に関わる宅建士は、別人でも構いません。
このことは過去問で5回に渡って問われています。直近の過去問は、令和01年問34肢4です。
この選択肢の下にある「■参照項目&類似過去問」から他の出題にもリンクしています。確認してみてください。
重要事項説明書の記名と説明
重要事項説明書に記名する宅建士Aと、その内容を説明する宅建士Bが同一人物でなければならないか。
宅建業法の条文には、スッキリした根拠がありません。
しかし、以下3つの理由から、AとBは、同一人物でなければならないと考えます。
(1).宅建士に記名させる趣旨
宅建士の記名は、重要事項説明を行った宅建士を特定し、その責任を明らかにするために要求されています。
重要事項説明にあたって不正又は著しく不当な行為があった場合には、宅建士に監督処分が行われることもあり得ます(【講義編】宅建業法[22]監督)。
このような制度の趣旨から考えると、
「宅建士Aの記名がある重要事項説明書を宅建士Bが説明」
というのは、認め難いです。
(2).国土交通省の様式例
国土交通省が用意した「重要事項説明の様式例」では、記名欄のタイトルが、
「説明をする宅地建物取引士」
とあります。
(3).過去問の内容
この問題と同じ年度の問40肢ウは、以下のような内容です。
井奥さんの命名に従えば、重要事項説明書に記名した宅建士Aの名前を訂正し、宅建士Bが記名した上で、Bが説明していることになります。
A=Bが通用するのであれば、ここで、「重要事項説明書にある宅地建物取引士欄を訂正」する必要はないはずです。わざわざ「訂正」しているということは、記名する宅建士=説明する宅建士が必要であると考えられます。
(平成26年問36肢3も、ほぼ同様の内容です。)