【宅建過去問】(令和05年問02)相隣関係
相隣関係に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 土地の所有者は、境界標の調査又は境界に関する測量等の一定の目的のために必要な範囲内で隣地を使用することができる場合であっても、住家については、その家の居住者の承諾がなければ、当該住家に立ち入ることはできない。
- 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越える場合、その竹木の所有者にその枝を切除させることができるが、その枝を切除するよう催告したにもかかわらず相当の期間内に切除しなかったときであっても、自らその枝を切り取ることはできない。
- 相隣者の一人は、相隣者間で共有する障壁の高さを増すときは、他方の相隣者の承諾を得なければならない。
- 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に出るためにその土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができる。
正解:1
1 正しい
土地所有者は、以下の目的に必要な範囲で、隣地を使用することができます(民法209条1項)。
本肢は、表のうち②のケースです。したがって、必要な範囲内で隣地を使用することが可能です。
ただし、住家に立入りするためには、居住者の承諾を得る必要があります(同項ただし書き)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る
隣地使用権(民法[09]2)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R05-02-1 | 土地の所有者は、境界標の調査又は境界に関する測量等の一定の目的のために必要な範囲内で隣地を使用することができる場合であっても、住家については、その家の居住者の承諾がなければ、当該住家に立ち入ることはできない。 | ◯ |
2 | H21-04-1 | 土地の所有者は、境界において障壁を修繕するために必要であれば、必要な範囲内で隣地を使用することができる。 | ◯ |
3 | H11-02-1 | 土地の所有者は、隣地との境界近くで建物を築造し、又は修繕する場合でも、隣人自身の承諾を得たときを除き、隣地に立ち入ることはできない。 | × |
2 誤り
隣地の竹木の枝が境界線を越えてきたときは、竹木の所有者に、その枝を切除させることができます(民法233条1項)。しかし、竹木所有者の承諾がない限り、原則として、土地の所有者が自らその枝を切ることは許されません。例外的に、以下の場合は、自ら切除することができます(同条3項)。
本肢は、表のうち1のケースです。したがって、土地の所有者が自ら枝を切り取ることが可能です。
※隣地の竹木の根が境界線を越えてきたときは、土地の所有者が自らその根を切り取ることができます(民法233条4項)。
■参照項目&類似過去問
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竹木の枝・根(民法[09]5)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R05-02-2 | 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越える場合、その竹木の所有者にその枝を切除させることができるが、その枝を切除するよう催告したにもかかわらず相当の期間内に切除しなかったときであっても、自らその枝を切り取ることはできない。 | × |
2 | H21-04-3 | 土地所有者Aの隣地の竹木の枝が境界線を越えてもAは原則として竹木所有者の承諾なくその枝を切ることはできないが、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、Aはその根を切り取ることができる。 | ◯ |
3 | H16-07-3 | 土地の所有者は、隣地から木の枝が境界線を越えて伸びてきたときは、自らこれを切除できることはない。 | × |
4 | H16-07-4 | 土地の所有者は、隣地から木の根が境界線を越えて伸びてきたときは、自らこれを切除できる。 | ◯ |
5 | H11-02-3 | 隣地の竹木の根が境界線を越えて侵入している場合は、これを竹木の所有者に切り取るように請求することができるが、自分で切り取ることはできない。 | × |
3 誤り
相隣者の一人は、自分の判断に従って、共有の障壁の高さを増すことができます(民法231条1項本文)。他方の相隣者の承諾を得る必要はありません。
4 誤り
他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地。図の甲地)の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地(囲繞(いにょう)地。図の乙地)を通行することができます(民法210条1項)。
その場合、通行の場所と方法は、通行権を有する者のために必要であり、かつ、他の土地のために損害が最も少ないものを選ぶ必要があります(同法211条1項)。
「自由に選んで」通行できるわけではありません。
■参照項目&類似過去問
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公道に至るための他の土地の通行権(民法[09]3)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R05-02-4 | 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に出るためにその土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができる。 | × |
2 | R02-01-1 | Aが購入した甲土地が他の土地に囲まれて公道に通じない土地であった。甲土地が共有物の分割によって公道に通じない土地となっていた場合には、Aは公道に至るために他の分割者の所有地を、償金を支払うことなく通行することができる。 | ◯ |
3 | R02-01-2 | Aが購入した甲土地が他の土地に囲まれて公道に通じない土地であった。Aは公道に至るため甲土地を囲んでいる土地を通行する権利を有するところ、Aが自動車を所有していても、自動車による通行権が認められることはない。 | × |
4 | R02-01-4 | Aが購入した甲土地が他の土地に囲まれて公道に通じない土地であった。Cが甲土地を囲む土地の所有権を時効により取得した場合には、AはCが時効取得した土地を公道に至るために通行することができなくなる。 | × |
5 | H29-04-2 | 他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を自由に選んで通行することができる。 | × |
6 | H25-03-1 | 囲んでいる他の土地を自由に選んで通行できるわけではない。 | ◯ |
7 | H25-03-2 | 共有物分割によって袋地が生じた場合、償金を支払わずに、他の分割者の土地を通行できる。 | ◯ |
8 | H21-04-2 | 囲んでいる他の土地を自由に選んで通行できる。 | × |
9 | H13-03-1 | 償金を支払えば、自己の意思のみによって通行の場所・方法を定め通路を開設できる。 | × |
10 | H13-03-2 | 囲繞地通行権の対象となる土地を譲り受けた場合、所有権移転の登記を完了しないと、囲繞地に通路を開設することができない。 | × |
11 | H13-03-3 | 共有地の分割によって袋地となったときには、分割後の残余地にしか通路を開設できない。 | ◯ |
12 | H13-03-4 | 甲地が、D所有の土地を分筆してAに売却した結果、袋地になった場合で、Dが、甲地の譲渡後、その残余地である乙地をEに売却したときには、Aは乙地に通路を開設できない。 | × |
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家坂様
返信が遅くなりましたが、下記の件ありがとうございます。
民法の条文に記載があるのですね、、、過去問ばかりにとらわれ、基礎知識が欠落していました。
※そもそも、高さの変更が「共有物の変更には当たらない」という事ですね。。。。
エンズ様
ご返信ありがとうございます。
引き続きよろしくお願いします。
※一連の「質問」や「回答」については、「返信」機能をお使いいただけると助かります。
(他のかたが、話の流れを追いやすいので)
恐れ入れいます。問3の解釈がイマイチ、承諾不要な理由がわかりません。
共有物に関しては、改正法により「軽微な形状変更」はできるとありますが、問題文からは。この「軽微」が判断できる文面が無く、非常にあいまいの様な気がしてならないのですが。。。。
例えば、障壁を2mを超える変更とした場合など、承諾も不要な「軽微な変更」といえるのでしょうか?その点、承諾のさじ加減のようなものを読み取れないので、ご教示頂ければと思います。
エンズ様
ご質問ありがとうございます。
この選択肢については、「共有物の変更」と考える必要がないように思います。
理由は、以下の2点です。
1.共有物自体に変更がない。
工事をする人の行為は、「共有する障壁の高さを増す」です。
「共有する障壁」自体を変更しているわけではありません。
また、「高さを増した部分は、その工事をした者の単独の所有に属する」(民法231条2項)のですから、この部分は、共有になっていないのです。
以上を考えると、そもそも「共有物の変更」がありません。
2.システムが完結している。
仮に「共有物の変更」と考えたとしても、共有に関する一般的なルールを適用する余地がありません。
共有の障壁の高さを増す工事については、
まで個別の条文で明確に定められています。
この2つの条文だけで問題を解決することができるわけで、共有の規定を適用する必要性を感じません。
民法の条文を引用しておきます。