【宅建過去問】(令和06年問04)売買契約と相続
Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)が締結された直後にAが死亡し、CがAを単独相続した場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
- 売買代金を受領したCが甲土地の引渡しを拒絶する意思を明確に表示したとしても、Bは、Cに対して相当の期間を定めた催告をしなければ、本件契約を解除することができない。
- Bが期日までに売買代金を支払わない場合であっても、本件契約の解除権はAの一身に専属した権利であるため、Cは本件契約を解除することはできない。
- Bは、売買代金が支払い済みだったとしても、甲土地の所有権登記を備えなければ、Cに対して甲土地の引渡しを請求することはできない。
- 本件契約が、Aの詐欺により締結されたものである場合、BはCに対して、本件契約の取消しを主張することができる。
正解:4
相続されるかされないか
このような問題が出ると、「解除権は、相続される。」「取消権は、相続される。」と一つ一つ覚えようとする人がいます。しかし、それは、時間のムダ。原則・例外思考を使いましょう。
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条本文)。これが大原則です。例外は、被相続人の一身に専属したものに限られます(同条ただし書き)。
勉強の効率性を考えると、例外(相続されないもの)をしっかり覚える→それ以外は相続されると答える、というアプローチが有効です。
設定の確認
「例外」が出てこない限り、被相続人A=単独相続人Cと考えます。買主Bの立場から見れば、売主A=Cと扱えばいいのです。つまり、Bは、Aに対して要求できたことは、Cに対しても要求することができます。
1 誤り
契約の解除をするに先立って、買主Bが売主Cに履行を催告するのが原則です(民法541条本文)。例外的に、履行の催告なしで契約を解除できるのは、以下の場合に限られます(同法542条1項)。
- 債務の全部が履行不能であるとき
- 債務の全部について債務者が履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
- 債務の一部が履行不能で、残存部分のみでは契約目的を達成できないとき
- 特定の日時や期間内に履行しなければ契約の目的を達することができないとき(定期行為)
本肢では、「Cが甲土地の引渡しを拒絶する意思を明確に表示した」というのですから、2に当たります。したがって、Bは、催告をすることなく、本件契約を解除することができます。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R06-04-1 | Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約が締結された直後にAが死亡し、CがAを単独相続した。売買代金を受領したCが甲土地の引渡しを拒絶する意思を明確に表示したとしても、Bは、Cに対して相当の期間を定めた催告をしなければ、本件契約を解除することができない。 | × |
2 | R03-07-3 | Bが引渡しを受けた甲建物に契約の内容に適合しない欠陥があることが判明したときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。 | × |
3 | R02-03-4 | 債務者が債務を履行しない場合であって、債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したときは、債権者は、相当の期間を定めてその履行を催告することなく、直ちに契約の解除をすることができる。 | ◯ |
4 | H22-12-2 | 賃貸借契約において、借主が貸主との間の信頼関係を破壊し、契約の継続を著しく困難にした場合であっても、貸主が契約解除するためには、催告が必要である。 | × |
5 | H19-10-2 | 売買契約の目的物である建物が、売主の責に帰すべき火災により滅失した場合、有効に成立していた売買契約は、売主の債務不履行によって無効となる。 | × |
6 | H10-08-3 | Bが代金を支払った後Aが引渡しをしないうちに、Aの過失で建物が焼失した場合、Bは、Aに対し契約を解除して、代金の返還、その利息の支払い、引渡し不能による損害賠償の各請求をすることができる。 | ◯ |
7 | H08-11-4 | 買主が代金の支払を終えたのに、物件の引渡しを請求しても売主が応じない場合、建物が地震で全壊したときは、買主は、契約を解除して代金返還を請求することができない。 | × |
8 | H01-09-3 | 建物の所有権移転登記後、引渡し前に、その建物がAの失火によって焼失した場合、その契約は失効する。 | × |
9 | H01-09-4 | 建物の所有権移転登記が完了し、引渡し期日が過ぎたのに、Aがその引渡しをしないでいたところ、その建物が類焼によって滅失した場合、Bは、契約を解除することができる。 | ◯ |
2 誤り
解除権は一身に専属する権利ではありません。原則どおり、AからCに相続されるわけです。
したがって、Cは、Bとの契約を解除することができます。
※肢1で見たように、原則として、履行の催告が必要です(民法541条)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R06-04-2 | Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約が締結された直後にAが死亡し、CがAを単独相続した。Bが期日までに売買代金を支払わない場合であっても、本件契約の解除権はAの一身に専属した権利であるため、Cは本件契約を解除することはできない。 | × |
2 | R06-07-3 | Aを貸主、Bを借主として甲建物の賃貸借契約が締結され、Bが甲建物の引渡しを受けた。Bが死亡して、DがBを単独相続した場合、Dは相続開始を知るまでは、Bによる甲建物の占有を承継しない。 | ◯ |
3 | R03-03-ウ | AがA所有の土地について買主Bとの間で売買契約を締結し、当該土地の引渡しと残代金決済の前にAが死亡した場合、当該売買契約は原始的に履行が不能となって無効となる。 | × |
4 | R02-10-1 | BがA所有の甲土地を所有の意思をもって平穏かつ公然に17年間占有した後、CがBを相続し甲土地を所有の意思をもって平穏かつ公然に3年間占有した場合、Cは甲土地の所有権を時効取得することができる。 | ◯ |
3 誤り
Bは、Aと売買契約を締結し、売買代金を支払っているのですから、Aに対して、甲土地の引渡しを請求することができます。
その後、Aは、死亡しましたが、Aの地位は、単独相続人Cに引き継がれています。つまり、売主A=Cと考えればいいわけです。そのため、買主BとCとは、売買契約の当事者同士の関係です。対抗関係ではありません(同法177条)。したがって、Bは、所有権登記を備えなくても、Cに対して、自らの所有権を主張し、甲土地の引渡しを請求することができます。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R06-04-3 | Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約が締結された直後にAが死亡し、CがAを単独相続した。Bは、売買代金が支払い済みだったとしても、甲土地の所有権登記を備えなければ、Cに対して甲土地の引渡しを請求することはできない。 | × |
2 | H17-08-1 | Aが所有地をBに譲渡した後死亡し単独相続人Cが所有権移転登記をした場合、Bは、所有権をCに対抗できない。 | × |
3 | H17-08-2 | Aが所有地をBに譲渡した後死亡し単独相続人Cが所有権移転登記をした。その後、CがDに土地を売却しDがその旨登記すると、Bは、所有権をDに対抗できない。 | ◯ |
4 | H15-12-2 | 相続財産である土地につき、B、C及びDが持分各3分の1の共有相続登記をした後、遺産分割協議によりBが単独所有権を取得した場合、その後にCが登記上の持分3分の1を第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、Bは、単独所有権を登記なくして、その第三者に対抗できる。 | × |
5 | H10-01-4 | Aから土地を取得したBは、Bが当該土地を取得した後で、移転登記を受ける前に、Aが死亡した場合におけるAの相続人に対し、所有権を主張できない。 | × |
6 | H08-03-2 | 売主が買主への所有権移転登記を完了する前に死亡した場合、買主は、売主の相続人に対して所有権の移転を主張することができる。 | ◯ |
4 正しい
売主Aの詐欺により売買契約が締結された場合、Bは、その契約を取り消すことができます(民法96条1項)。
その後、Aは、死亡しましたが、Aの地位は、単独相続人Cに引き継がれています。つまり、売主A=Cと考えればいいわけです。したがって、Bは、Cに対して、本件契約の取消しを主張することができます。
☆「詐欺:当事者間の効果」というテーマは、問01肢3でも出題されています。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R06-01-3 | 詐欺による意思表示は取り消すことによって初めから無効であったとみなされるのに対し、強迫による意思表示は取り消すまでもなく無効である。 | × |
2 | R06-04-4 | Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約が締結された直後にAが死亡し、CがAを単独相続した。本件契約が、Aの詐欺により締結されたものである場合、BはCに対して、本件契約の取消しを主張することができる。 | ◯ |
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