【宅建過去問】(令和06年問12)借地借家法(借家)
賃貸人Aと賃借人Bとが、居住目的で期間を3年として、借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約(以下この問において「契約①」という。)を締結した場合と、定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通建物賃貸借契約(以下この問において「契約②」という。)を締結した場合とに関する次の記述のうち、借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか。
- Bが建物の引渡しを受けた後にAが建物をCに売却して建物所有者がCに変わった場合、Bは、契約①の場合ではCに対して賃借人であることを主張できるが、契約②の場合ではCに対して賃借人であることを主張できない。
- 契約期間中は賃料の改定を行わない旨の特約を契約において定めていても、契約期間中に賃料が不相当になったと考えるに至ったBは、契約①の場合も契約②の場合も、借地借家法第32条に基づく賃料減額請求をすることができる。
- Bが契約期間中に相続人なしで死亡した場合において、婚姻はしていないが事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Dがあるときは、契約①の場合も契約②の場合も、Aに反対の意思表示をしないDは、建物の賃貸借契約に関し、Bの権利義務を承継する。
- 契約①の場合、公正証書によって契約をするときに限り契約の更新がないことを有効に定めることができ、契約②の場合、書面で契約し、かつ、Aに正当な理由がない限り、Aは契約の更新を拒絶することができなくなる。
Contents
正解:3
設定の確認
3種類の建物賃貸借
建物賃貸借に適用される法的ルールは、3つのレベルになっています。具体的には、民法→借地借家法の一般ルール→借地借家法の定期建物賃貸借契約に関するルール、の3レベルです。
本問では、契約①については、3つのルールが全て適用されます。一方、契約②については、民法のルールと借地借家法(一般)の2つのルールが適用されます。
1 誤り
適用されるルール
民法が建物賃借権の対抗要件として認めているのは、賃借権の登記です(同法605条)。それに加えて、借地借家法が認めた対抗要件が建物の引渡しです(借地借家法31条)。
定期建物賃貸借契約について、対抗要件に関する特別なルールはありません。したがって、契約①でも、契約②でも、建物賃借権の対抗要件は、賃借権の登記又は建物の引渡しということになります。
本問では
本肢の賃借人Bは、すでに建物の引渡しを受けています。したがって、その後に賃貸人Aから建物を購入したCに対して、自分が賃借人であることを主張することができます。本肢は、契約②に関する部分が誤っています。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R06-12-1 | 賃貸人Aと賃借人Bとが、居住目的で期間を3年として、借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約(契約①)を締結した場合と、定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通建物賃貸借契約(契約②)を締結した場合について考える。Bが建物の引渡しを受けた後にAが建物をCに売却して建物所有者がCに変わった場合、Bは、契約①の場合ではCに対して賃借人であることを主張できるが、契約②の場合ではCに対して賃借人であることを主張できない。 | × |
2 | R04-12-2 | Aは、B所有の甲建物につき、賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。本件契約が借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約であるか否かにかかわらず、Aは、甲建物の引渡しを受けてから1年後に甲建物をBから購入したCに対して、賃借人であることを主張できる。 | ◯ |
3 | R02-12-1 | AとBとの間でA所有の甲建物をBに対して、居住の用を目的として、期間2年、賃料月額10万円で賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、Bが甲建物の引渡しを受けた。AがCに甲建物を売却した場合、Bは、それまでに契約期間中の賃料全額をAに前払いしていたことを、Cに対抗することができる。 | ◯ |
4 | H27-11-3 | [AがBとの間で、A所有の甲建物について、期間3年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約を締結]Cが、AB間の賃貸借契約締結前に、Aと甲建物の賃貸借契約を締結していた場合、AがBに甲建物を引き渡しても、Cは、甲建物の賃借権をBに対抗することができる。 | × |
5 | H27-12-1 | 賃借権の登記をしない限り賃借人は賃借権を第三者に対抗することができない旨の特約を定めた場合、定期借家契約においても、普通借家契約においても、当該特約は無効である。 | ◯ |
6 | H22-12-1 | 建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。 | ◯ |
7 | H21-12-3 | 引渡しを受けている場合、建物の賃借権は対抗可、使用借権は対抗不可。 | ◯ |
8 | H20-04-4 | 建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。 | ◯ |
9 | H19-14-4 | 登記も引渡しもない場合、定期建物賃借権は対抗不可、一時使用賃借権は対抗可能。 | × |
10 | H18-14-2 | 建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。 | ◯ |
11 | H12-12-1 | 賃貸人の承諾を得て転借人に占有させている場合、賃借人は賃借権を対抗不可。 | × |
12 | H02-13-1 | 引渡しを受けていないと、常に、賃借権を対抗不可。 | × |
13 | H01-13-1 | 建物の引渡しを受けていれば、建物所有権が移転しても、新所有者に賃借権を対抗可能。 | ◯ |
2 誤り
適用されるルール
借地借家法では、建物の賃貸借に関して、当事者に借賃増減請求権を認めています(同法32条1項本文)。ただし、一定の期間借賃を増額しない旨の特約(不増額特約)をすることが可能です(同項ただし書き)。一方、借賃を減額しないという特約(不減額特約)は、無効です。
定期建物賃貸借契約については、借賃の不減額特約も、有効性を認められています(同法38条9項)。
本問では
契約①では、借賃の不減額特約は有効です。したがって、特約を定めている以上、Bは、賃料減額請求をすることができません。一方、契約②では、不減額特約を定めても、無効です。そのため、Bは、不減額特約を無視して、賃料減額請求をすることができます。本肢は、契約①に関する部分が誤っています。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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特約がない場合 | |||
1 | R05-12-4 | 現行賃料が定められた時から一定の期間が経過していなければ、賃料増額請求は、認められない。 | × |
2 | R02-12-2 | AとBとの間でA所有の甲建物をBに対して、居住の用を目的として、期間2年、賃料月額10万円で賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、Bが甲建物の引渡しを受けた。本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、賃料改定に関する特約がない場合、経済事情の変動により賃料が不相当となったときは、AはBに対し、賃料増額請求をすることができる。 | ◯ |
3 | H24-12-2 | 普通建物賃貸借・定期建物賃貸借の双方につき、特約がなければ、賃料の増減額請求権が発生。 | ◯ |
4 | H22-12-4 | 定期建物賃貸借で、特約がなければ、賃料の増減額請求権が発生。 | ◯ |
5 | H16-14-1 | 普通建物賃貸借において、使用収益開始前には賃料減額請求は不可。 | ◯ |
6 | H16-14-2 | 転貸借契約を締結した場合、賃借人は、賃料の増減額請求権を行使できない。 | × |
7 | H13-13-3 | 普通建物賃貸借では、家賃が不相当に高額になった場合、借主は、契約条件にかかわらず減額請求が可能。 | ◯ |
8 | H09-12-1 | 家賃の増減について特約のない場合で、経済事情の変動により家賃が不相当に高額となったとき、賃借人は、賃貸人に対し将来に向かって家賃の減額を請求できる。 | ◯ |
特約がある場合 | |||
1 | R06-12-2 | 賃貸人Aと賃借人Bとが、居住目的で期間を3年として、借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約(契約①)を締結した場合と、定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通建物賃貸借契約(契約②)を締結した場合について考える。契約期間中は賃料の改定を行わない旨の特約を契約において定めていても、契約期間中に賃料が不相当になったと考えるに至ったBは、契約①の場合も契約②の場合も、借地借家法第32条に基づく賃料減額請求をすることができる。 | × |
2 | R05-12-2 | 当事者間において、一定の期間は建物の賃料を減額しない旨の特約がある場合、現行賃料が不相当になったなどの事情が生じたとしても、この特約は有効である。 | × |
3 | H27-12-2 | 賃貸借契約開始から3年間は賃料を増額しない旨の特約を定めた場合、定期借家契約においても、普通借家契約においても、当該特約は無効である。 | × |
4 | H25-11-4 | 定期建物賃貸借において、賃料改定につき特約がある場合、賃借人は賃貸人に対して賃料の減額請求ができない。 | ◯ |
5 | H13-13-3 | 普通建物賃貸借では、家賃が不相当に高額になった場合、借主は、契約条件にかかわらず減額請求が可能。 | ◯ |
6 | H13-13-4 | 普通建物賃貸借では、「家賃を減額しない」という特約は無効。 | ◯ |
7 | H09-12-2 | 「家賃を増額しない」という特約があっても、増額請求が可能。 | × |
8 | H05-12-2 | 「家賃を増額しない」という特約は有効。 | ◯ |
3 正しい
適用されるルール
借地借家法は、居住用建物の賃借人が、相続人なしで死亡した場合、事実上夫婦や養親子と同様の関係にあった同居者が、賃借人の権利義務を承継するとしています(同法36条1項本文)。賃貸借を承継したくないときは、1か月以内に反対の意思を表示する必要があります(同項ただし書き)。
定期建物賃貸借契約について、この点に関する特別なルールはありません。したがって、契約①でも、契約②でも、事実上の夫婦や養親子関係にあったものは、賃借人の権利義務を承継することが可能です。
本問では
賃借人Bが相続人なしで死亡し、事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Dが存在します。Dは、反対の意思表示をしない限り、Bの権利義務を承継します。
■参照項目&類似過去問
内容を見る[共通の設定]
Aは、所有する甲建物をBに賃貸している。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R06-12-3 | 賃貸人Aと賃借人Bとが、居住目的で期間を3年として、借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約(契約①)を締結した場合と、定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通建物賃貸借契約(契約②)を締結した場合について考える。Bが契約期間中に相続人なしで死亡した場合において、婚姻はしていないが事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Dがあるときは、契約①の場合も契約②の場合も、Aに反対の意思表示をしないDは、建物の賃貸借契約に関し、Bの権利義務を承継する。 | ◯ |
2 | R02s-12-4 | Bが相続人なしに死亡した場合、Bと婚姻の届出をしていないが事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Cは、Bが相続人なしに死亡したことを知った後1月以内にAに反対の意思表示をしない限り、賃借人としてのBの権利義務を承継する。 | ◯ |
3 | H11-14-2 | Bが死亡した場合で、その当時Bの相続人でない事実上の配偶者Cがこの建物で同居していたとき、Cは、当該建物の賃借権に限っては、相続人に優先してBの賃借人としての地位を承継する。 | × |
4 | H07-13-3 | Aを賃貸人、Bを賃借人とするA所有の居住用建物の賃貸借に関し、AとBとC(Bと同居する内縁の妻)の三者で「Bが相続人なくして死亡したときでも、Cは借家権を承継することができない」と定めた場合、その特約は、無効である。 | × |
5 | H02-13-4 | Bが相続人なくして死亡した場合、Bと事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Cは、その事実を知った後1月内にAに対し特段の意思表示をしないときは、BのAに対する権利義務を承継する。 | ◯ |
4 誤り
適用されるルール
民法は、建物賃借権契約の成立について、特別な方式を要求していません。つまり、口頭の契約でも、賃貸借契約が有効に成立します(諾成契約。民法601条)。この点は、借地借家法でも同様です。
定期建物賃貸借契約については、契約の成立に関する特別なルールがあります。公正証書による等書面によって契約する必要があるのです(借地借家法38条1項前段。電磁的記録でも書面による契約とみなされます)。
本問では
契約①の場合、公正証書等の書面で契約すれば、有効性が認められます。「公正証書」に限定されるわけではありません。
また、契約②の場合、書面で契約しなくても、契約は有効です。口頭で契約したケースでも、Aに正当な理由があれば、契約の更新が認められます。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R06-12-4 | 賃貸人Aと賃借人Bとが、居住目的で期間を3年として、借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約(契約①)を締結した場合と、定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通建物賃貸借契約(契約②)を締結した場合について考える。契約①の場合、公正証書によって契約をするときに限り契約の更新がないことを有効に定めることができ、契約②の場合、書面で契約し、かつ、Aに正当な理由がない限り、Aは契約の更新を拒絶することができなくなる。 | × |
2 | R04-12-1 | Aは、B所有の甲建物につき、居住を目的として、期間2年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。BはAに対して、本件契約締結前に、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借が終了する旨を記載した賃貸借契約書を交付して説明すれば、本件契約を借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約として締結することができる。 | × |
3 | R02s-12-3 | 賃貸人Aと賃借人Bとの間で居住用建物の賃貸借契約を締結した。賃貸借契約に期間を定め、賃貸借契約を書面によって行った場合には、AがBに対しあらかじめ契約の更新がない旨を説明していれば、賃貸借契約は期間満了により終了する。 | × |
4 | R01-12-1 | 建物の賃貸借契約について、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書による等書面によって契約すれば足りる。 | × |
5 | 26-12-1 | 定期建物賃貸借契約を締結するには、公正証書による等書面によらなければならない。 | ◯ |
6 | 24-12-3 | 定期建物賃貸借契約では、更新がない旨の特約を記載した書面を契約に先立って賃借人に交付さえしておけば当該特約は有効となる。 | × |
7 | 19-14-1 | 定期建物賃貸借契約は書面によって契約しなければ有効とならない。 | ◯ |
8 | 18-13-3 | 20年後に賃貸借契約を更新させずに終了させるという建物賃貸借契約が可能である。 | ◯ |
9 | 15-14-2 | 定期建物賃貸借契約は、公正証書でしなければ、無効である。 | × |
10 | 07-13-2 | 定期建物賃貸借契約は、公正証書でしなければならない。 | × |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R06-12-4 | 賃貸人Aと賃借人Bとが、居住目的で期間を3年として、借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約(契約①)を締結した場合と、定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通建物賃貸借契約(契約②)を締結した場合について考える。契約①の場合、公正証書によって契約をするときに限り契約の更新がないことを有効に定めることができ、契約②の場合、書面で契約し、かつ、Aに正当な理由がない限り、Aは契約の更新を拒絶することができなくなる。 | × |
2 | 30-11-1 | [AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]本件契約が専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする場合には、公正証書によらなければ無効となる。 | × |
3 | 27-03-3 | 貸主と借主との間の契約は、賃貸借では諾成契約であり、使用貸借でも諾成契約である。 | ◯ |
4 | 17-15-1 | 動産の賃貸借契約は、当事者の合意のみで効力を生じるが、建物の賃貸借契約は、要式契約である。 | × |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R06-12-4 | 賃貸人Aと賃借人Bとが、居住目的で期間を3年として、借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約(契約①)を締結した場合と、定期建物賃貸借契約でも一時使用目的の賃貸借契約でもない普通建物賃貸借契約(契約②)を締結した場合について考える。契約①の場合、公正証書によって契約をするときに限り契約の更新がないことを有効に定めることができ、契約②の場合、書面で契約し、かつ、Aに正当な理由がない限り、Aは契約の更新を拒絶することができなくなる。 | × |
2 | H28-12-2 | 建物の賃貸借契約において、賃貸人が賃借人に対し、解約を申し入れる場合、明渡しの条件として、一定額以上の財産上の給付を申し出たときは、賃貸人の解約の申入れに正当事由があるとみなされる。 | × |
3 | H21-12-2 | 期間の定めがない場合、賃貸人は、正当事由があるときに限り、解約の申入れができる。 | ◯ |
4 | H10-12-2 | 正当事由の有無は、賃貸人・賃借人についての事情のみで決せられ、転借人の事情は考慮されない。 | × |
5 | H08-12-3 | 正当事由は、解約申入れ時に存在すれば、6月経過後に存在しなくても良い。 | × |
6 | H08-12-4 | 正当事由は、自己使用の必要性のほかに、金銭支払の申出も考慮される。 | ◯ |
7 | H01-13-3 | 正当の事由がなければ、更新を拒絶できない。 | ◯ |