【宅建過去問】(令和06年問28)報酬(組合せ問題)
宅地建物取引業者A(消費税課税事業者)及び宅地建物取引業者B(消費税免税事業者)が受領した報酬に関するアからウの記述のうち、宅地建物取引業法の規定に違反しないものの組合せは1から4のうちどれか。なお、代理、媒介に当たり、広告の依頼は行われていないものとする。
- ア 居住用建物(1か月の借賃12万円。消費税等相当額を含まない。)について、Aは貸主から代理を依頼され、Bは借主から媒介を依頼され、Aは貸主から6.7万円、Bは借主から6.5万円を報酬として受領した。なお、Bは、媒介の依頼を受けるに当たって、報酬について借主から特段の承諾を得ていない。
- イ Bは、事業用建物について、貸主と借主双方から媒介を依頼され、借賃1か月分10万円(消費税等相当額を含まない。)、権利金90万円(権利設定の対価として支払われる金銭であって返還されないもので、消費税等相当額を含まない。)の賃貸借契約を成立させ、貸主と借主からそれぞれ5万円を報酬として受領した。
- ウ Aは、土地付建物について、売主と買主双方から媒介を依頼され、代金3,500万円(消費税等相当額を含み、土地代金は2,400万円である。)の売買契約を成立させ、売主と買主からそれぞれ110万円を報酬として受領したほか、売主の特別の依頼に基づき行った遠隔地への現地調査に要した実費の費用について、売主が事前に負担を承諾していたので、売主から9万円を受領した。
- ア、イ
- イ、ウ
- ア、ウ
- ア、イ、ウ
Contents
正解:2
課税業者と免税業者
宅建業者Aは消費税課税業者ですから、計算した報酬に10%の消費税を上乗せすることができます。
一方、宅建業者Bは消費税免税業者です。しかし、免税業者であっても、仕入れや事務経費として消費税を支払っているわけです。これを回収するため、計算した報酬に4%上乗せすることが認められています。
ア 違反する
貸借の報酬計算
宅建業者Aの報酬
居住用建物の賃貸借について、宅建業者Aは、貸主を代理しています。したがって、報酬の上限は、1か月分の賃料(=12万円)です。Aは消費税課税業者ですから、さらに消費税10%を加算することができます。
12万×1.1=13.2万円
が報酬の上限額です。
宅建業者Bの報酬
宅建業者Bは、居住用建物の借主を媒介しています。その際、借主からは、特段の承諾を得ていません。したがって、報酬の上限は、0.5か月分の賃料(=6万円)です。Bは消費税免税業者ですから、これに4%加算することができます。
6万×1.04=6.24万円
が報酬の上限額です。
本肢がいう6.5万円を受領することは、宅建業法に違反します。
イ 違反しない
貸借の報酬計算
事業用建物(=居住用建物「以外」)ですから、賃料ベースの計算以外に権利金をベースにした報酬計算も可能です。両方で計算をして、多いほうが報酬の上限額ということになります。
賃料ベースの報酬
宅建業者Bは、貸主と借主を媒介しています。報酬の上限は、貸主・借主双方から、合わせて1か月分の借賃(=10万円)です。Bは消費税免税業者ですから、これに4%加算することができます。
10万×1.04=10.4万円
「貸主と借主からそれぞれ5万円を報酬として受領」しても、合計10万円で、この枠内に収まっています。したがって、宅建業法に違反しません。
【練習】権利金ベースの報酬
本肢が宅建業法に違反しないことは決まりました。
ここでは、練習のため、権利金ベースの計算方法を試しておきましょう。
権利金90万円を売買代金とみなして報酬を計算します。
Bは消費税免税業者ですから、これに4%加算することができます。
4.5万×1.04=4.68万円
これが貸主・借主それぞれから受領できる報酬の上限額です。一方から5万円を受領することはできません。
ウ 違反しない
税抜本体価格の計算
土地付建物の代金3,500万円の中には、土地代金・建物代金・消費税が混在しています。報酬計算に当たって、まずは、税引の本体価格を求める必要があります。
そもそも土地の売買は非課税です。したがって、土地代金2,400万円は、それ自体が本体価格です。
一方、建物の売買代金は、
3,500万-2,400万=1,100万円
ここから消費税10%分を除くと、建物の本体価格は、1,000万円です。
以上より、土地付建物の本体価格は、3,400万円ということが分かります。
公式による計算
公式に当てはめると、
3,400万×3%+6万==108万円
Aは消費税課税業者ですから、さらに消費税10%を加算することができます。
108万×1.1=118.8万
Aが報酬として110万円を受領しても、宅建業法に違反しません。
依頼者の依頼による費用
Aは、遠隔地への現地調査を行い、その実費9万円を負担しています。この調査は、売主の特別の依頼によるものでありまた、その費用について、売主は、事前に負担を承諾しています。したがって、Aは、売主からこの9万円を受領することができます。
まとめ
宅建業法に違反しないものはイ・ウです。正解は、肢2。
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国交省に問い合わすと令和6年6月公布の低廉な空き家等に関する宅建業者の媒介・代理の依頼者に対する売買の仲介手数料の場合800万円以下の全ての不動産に対し有効・賃貸借の仲介においても全ての賃貸借に有効との返答でした。
今年の宅建試験に出題された場合は上記解釈で良いのでしょうか?
今年の本試験は、「令和7年4月1日現在施行の法令」を基準に出題されます。
空家等に関する報酬の特例が施行されたのは、令和6年7月1日です。
したがって、今年の試験では、特例の適用を検討する必要があります。
念のための確認です。
ここでいう「全ての不動産」「全ての賃貸借」というのは、あくまで「適用要件を満たした『全ての』取引」という意味です。
適用要件を満たしていない場合、例えば、当事者の合意を得ていないケースでは、適用を受けることはできません。この場合には、「原則」のみに基づいて報酬を計算します。
適用要件については、[Step.1]で以下の箇所を確認してください。
↓
■宅建業法[21]報酬
5.(2)空家等に関する報酬の特例
国交省が令和6年6月公布の低廉な空き家等に関する宅建業者の媒介・代理の依頼者に対する報酬額の上限が引き上げられ、賃貸借契約に対する報酬額も引き上げられたので令和6年の宅建試験の時点で有効なので令和6年の賃貸借の問題は間違といえませんか?
もし、そうならその問題で失格となった受験者は意義を訴えられますか。
【1】宅建試験の出題基準
宅建試験の出題の根拠となる法令は、「試験を実施する年度の4月1日現在施行されているもの」です。
令和6年本試験でいえば、「令和6年4月1日現在施行」の法令を根拠に、各選択肢の正誤を判定することになります。
このことは、試験実施機関である不動産適正取引推進機構さんのWebサイトに明示されています。
また、問題冊子の表紙にも「適用法令」として明記されています。
【2】空家等に関する報酬特例の施行日
一方、宅建業者が受領する報酬に関し、「低廉な空家等の売買に関する特例」「長期の空家等の貸借に関する特例」が施行されたのは、「令和6年7月1日」です。
したがって、令和6年本試験に関しては、これらの特例は、適用されません。
【3】注意点
令和6年本試験の時点(10月20日)では、
にズレがあり、宅建試験では、後者の「試験」を根拠に考える必要があったわけです。
このことは、令和6年本試験直前に公開した「令和06年「宅建」法改正点情報」で、「実務と試験が違うところ」として説明したとおりです。
年度によっては、このようなズレが生じます。「法改正点情報」などで正確に整理しておきましょう。