Aは、BのCに対する債務を担保するため、Aの所有地にCの抵当権を設定し、その旨の登記も完了した後、建物を新築して、Dに対し当該土地建物を譲渡した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。
- Cは、Bが債務を返済しないときは、Dに通知しなければ、抵当権を実行することができない。
- Cは、抵当権を実行して、土地及び建物をともに競売し、建物の売却代金からも優先して弁済を受けることができる。
- Dは、Cの抵当権が設定されていることを知らなかったときであっても、Cが抵当権を実行する前においては、Aに対し、売買契約を解除することができない。
- Dは、B及びCの反対の意思表示のないときは、Bの債務を弁済して、抵当権を消滅させることができる。
正解:4
1 誤り
平成15年の法改正により、抵当権実行通知の制度は、廃止されている。したがって、Bは、通知の義務を負わない。
2 誤り
抵当権設定後に、抵当地上に建物が築造された場合には、抵当権者は土地とともにその建物を競売することができる(民法389条1項本文)。ただし、その優先権は土地の代価についてのみ行使することができる(同項ただし書き)。
本肢は、「建物の売却代金からも優先して弁済」とする点が誤り。
■参照項目&類似過去問
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抵当地の上の建物の一括競売(民法[12]10)
[共通の設定]
Aは、Bに対する貸付金債権の担保のために、当該貸付金債権額にほぼ見合う評価額を有するB所有の更地である甲土地に抵当権を設定し、その旨の登記をした。その後、Bはこの土地上に乙建物を築造し、自己所有とした。
[共通の設定]
Aは、Bに対する貸付金債権の担保のために、当該貸付金債権額にほぼ見合う評価額を有するB所有の更地である甲土地に抵当権を設定し、その旨の登記をした。その後、Bはこの土地上に乙建物を築造し、自己所有とした。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R04-04-3 | 本件抵当権設定登記後に、甲土地上に乙建物が築造された場合、Aが本件抵当権の実行として競売を申し立てるときには、甲土地とともに乙建物の競売も申し立てなければならない。 | × |
2 | H27-06-4 | 土地に抵当権が設定された後に抵当地に建物が築造されたときは、一定の場合を除き、抵当権者は土地とともに建物を競売することができるが、その優先権は土地の代価についてのみ行使することができる。 | ◯ |
3 | H14-06-4 | 抵当権者は、建物に抵当権を設定していなくても、土地とともに土地上の建物を競売することができるが、優先弁済権は土地の代金についてのみ行使できる。 | ◯ |
4 | H04-06-2 | Aは、抵当権を実行して、甲土地及び乙建物をともに競売し、建物の売却代金からも優先して弁済を受けることができる。 | × |
5 | H01-07-4 | 土地に抵当権を設定した後、抵当権設定者がその抵当地に建物を築造した場合、抵当権者は、建物を土地とともに競売して、建物の競売代金からも優先弁済を受けることができる。 | × |
3 誤り
民法は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合についても、目的物が契約の内容に適合しないものである場合のルールを準用している(同法565条)。
したがって、「Cの抵当権が設定されていること」がAD間の契約の内容に適合しないのであれば、買主Dは、売主Aの担保責任を追及することが可能である。
担保責任を追及する方法の一つとして、契約を解除することができる(同法564条、541条)。
※抵当権の実行前でも、担保責任を追及することができる。この点は、令和2年以前の民法と大きく違っている。
■参照項目&類似過去問
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売主の担保責任(抵当権・地上権等がある場合)(民法[24]3(3)③)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
抵当権がある場合 | |||
[共通の設定] Aを売主、Bを買主として甲土地の売買契約を締結した。甲土地には、Cを抵当権者とする抵当権が設定され、その登記もされていた。 | |||
1 | 28-06-3 | Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失い損害を受けたとしても、BはAに対して、損害賠償を請求することができない。 | × |
2 | 28-06-4 | Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失ったときは、Bは、本件契約を解除することができる。 | ◯ |
3 | 20-09-2 | 甲土地に設定されている抵当権が実行されてBが所有権を失った場合、Bが甲土地に抵当権が設定されていることを知っていたとしても、BはAB間の売買契約を解除することができる。 | ◯ |
4 | 17-09-3 | 買主が、抵当権が存在していることを知りつつ不動産の売買契約を締結し、当該抵当権の行使によって買主が所有権を失った場合には、買主は、売買契約の解除はできるが、売主に対して損害賠償請求はできない。 | × |
5 | 11-10-3 | AがCに設定していた契約の内容に適合しない抵当権の実行を免れるため、BがCに対しAの抵当債務を弁済した場合で、BがAB間の契約締結時に抵当権の存在を知っていたとき、Bは、Aに対し、損害の賠償請求はできないが、弁済額の償還請求はすることができる。 | × |
6 | 08-08-3 | この土地が抵当権の目的とされており、その実行の結果Dが競落したとき、Bは、Aに対して契約を解除することができる。 | ◯ |
7 | 04-06-3 | Bは、Cの抵当権が設定されていることを知らなかったときであっても、Cが抵当権を実行する前においては、Aに対し、売買契約を解除することができない。 | × |
8 | 02-06-1 | Aは、契約の際Cの抵当権のあることを知らなくても、その理由だけでは、AB間の売買契約を解除することはできない。 | ◯ |
9 | 01-04-4 | その土地に抵当権が設定されていて、買主がそのことを知らなかったときであっても、買主は、その事実を知ったとき、抵当権が行使された後でなければ、契約を解除することができない。 | × |
地上権がある場合 | |||
1 | 05-08-4 | 売買の目的物である土地に第三者が登記済みの地上権を有していて、買主が利用目的を達成することができなかった場合、善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。 | ◯ |
4 正しい
抵当不動産の第三取得者(D)は、債務者(B)の弁済について、正当な利益を有する(民法474条2項本文)。
また、第三者の弁済について、「B及びCの反対の意思表示」は、存在しない。つまり、当事者は、第三者の弁済を禁止していない(同条4項)。
したがって、Dは、たとえBの意思に反する場合であっても、債務を弁済することができる(同条1項、2項本文)。
そして、債務が弁済されたことにより、抵当権は消滅する。
■参照項目&類似過去問
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第三者による弁済(民法[20]3(2))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 20-08-1 | 借地上の建物の賃借人は、借地人の意思に反しても、地代を弁済できる。 | ◯ |
2 | 20-08-4 | 借地上の建物の賃借人が土地賃借人に代わって地代を弁済した場合、土地賃貸人は地代不払を理由に借地契約を解除できない。 | ◯ |
3 | 17-07-1 | Bは、土地所有者Aから土地を賃借し、その土地上に建物を所有してCに賃貸している。Cは、借賃の支払債務に関して正当な利益を有しないので、Bの意思に反して、債務を弁済することはできない。 | × |
4 | 16-04-1 | 正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反しても、弁済することができる。 | × |
5 | 11-05-1 | Aが、Bに対して不動産を売却し、所有権移転登記及び引渡しをした。Bの親友Cが、Aに直接代金の支払いを済ませても、それがBの意思に反する弁済である場合には、Bの代金債務は消滅しない。 | ◯ |
6 | 05-06-1 | BのAからの借入金100万円の弁済について、Bの兄Cは、Bが反対しても、Aの承諾があれば、Aに弁済することができる。 | × |
7 | 04-06-4 | 抵当不動産の第三取得者は、債権者・債務者の反対の意思表示のないときは、Bの債務を弁済して、抵当権を消滅させることができる。 | ◯ |
8 | 02-06-4 | 抵当不動産の第三取得者は、債務者の債権者に対する債務を弁済することができる。 | ◯ |
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