■講義編■民法[20]弁済


債務者が債務の内容を実現させることを「弁済」といいます。
例えば、建物の売主が建物を買主に引き渡したり買主が代金を支払う行為、お金を借りた人がそれを返済する行為、これらの行為は、すべて弁済です。
弁済にあたって、債権者の行為(受領行為)が必要になる場合もあります。このような場合、債務者は、弁済の提供さえ行っておけば、債務不履行責任を負いません。

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1.弁済とは

(1).弁済とは
①意味

債務者が債務の内容を実現させること

②効果

債権債務関係が消滅する

(2).構造

弁済=弁済の提供+受領

(3).代物弁済


★過去の出題例★

代物弁済(民法[20]1(3))
年-問-肢内容正誤
120-08-3借地人が地代の支払を怠っている場合、借地上の建物の賃借人は、土地賃貸人の意思に反しても、地代について金銭以外のもので代物弁済することができる。×
212-09-1Bが、Aに対する金銭債務について、不動産の所有権をもって代物弁済の目的とする場合、Aへの所有権移転登記その他第三者に対する対抗要件を具備するため必要な行為を完了しなければ、弁済としての効力は生じない。
312-09-2Aの提供する不動産の価格が1,000万円で、Bに対する金銭債務が950万円である場合、AB間で清算の取決めをしなければ、代物弁済はできない。
×
412-09-3Aが、Bに対する金銭債務の弁済に代えて、Cに対するAの金銭債権を譲渡する場合に、その金銭債権の弁済期が未到来のものであるときは、弁済としての効力は生じない。
×
512-09-4BのAに対する金銭債務について、Aは、代物弁済として不動産の所有権の移転を受けた後は、その不動産が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときであっても、Bの責任を追及することはできない。
×

2.弁済の提供

(1).効果


(2).方法
①【原則】現実の提供

債務の本旨に従って現実に弁済を提供

②【例外】口頭の提供

弁済の準備をしたことを通知して受領を催告

★過去の出題例★

弁済の提供(民法[20]2(1)(2))
年-問-肢内容正誤
効果
118-08-1代金債務につき弁済の提供をしないと、履行遅滞に陥り、遅延損害金支払債務を負う。
方法
118-08-4自分振出しの小切手を持参しても、債務の本旨に従った弁済の提供とはならない。
217-07-3自分振出しの小切手を提供すれば、債務の本旨に従った適法な弁済の提供となる。×
316-04-4売主が残代金の受領を拒絶することを明確にしている場合であっても、買主は売買代金を現実に提供しなければ、履行遅滞の責任を負う。×
404-11-1賃借人が家賃を支払おうとしても、賃貸人がこれを受領せず、以後の家賃の受領を明確に拒んだ場合においても、賃借人は、家賃を供託しないと、履行遅滞になる。×
(3).供託
①供託とは

②供託ができる場合


★過去の出題例★

供託(民法[20]2(3))
年-問-肢内容正誤
120-08-2土地賃貸人が地代を受け取らない場合、借地上の建物賃借人は、供託できる。
217-07-4債務者は、特段の理由がなくても、供託により債務を免れることができる。×
305-05-4債務者が譲渡人名義の債権譲渡通知を受領したが、譲渡人が譲渡を否認している場合、債務者は供託により免責を受けることができる。

3.弁済者・弁済受領者

(1).原則・例外
①原則

弁済者=債務者、弁済受領者=債権者

②例外

(2).第三者による弁済
①【原則】可能

②【例外1】当事者が第三者の弁済を禁止したとき

③【例外2】正当な利益を有しない第三者が弁済するとき
(a).正当な利益を有する第三者が弁済

(b).債務者の意思に反する弁済

(c).債権者の受領拒絶権(債権者の意思に反する弁済)

正当な利益を有しない第三者
→債権者の意思に反する弁済×

【例外の例外】
第三者が債務者の委託を受けて弁済+債権者が悪意
→弁済◯

★過去の出題例★
第三者による弁済(民法[20]3(2))
年-問-肢内容正誤
120-08-1借地上の建物の賃借人は、借地人の意思に反しても、地代を弁済できる。
220-08-4借地上の建物の賃借人が土地賃借人に代わって地代を弁済した場合、土地賃貸人は地代不払を理由に借地契約を解除できない。
317-07-1Bは、土地所有者Aから土地を賃借し、その土地上に建物を所有してCに賃貸している。Cは、借賃の支払債務に関して正当な利益を有しないので、Bの意思に反して、債務を弁済することはできない。
×
416-04-1正当な利益を有しない第三者は、債務者の意思に反しても、弁済することができる。
×
511-05-1Aが、Bに対して不動産を売却し、所有権移転登記及び引渡しをした。Bの親友Cが、Aに直接代金の支払いを済ませても、それがBの意思に反する弁済である場合には、Bの代金債務は消滅しない。
605-06-1BのAからの借入金100万円の弁済について、Bの兄Cは、Bが反対しても、Aの承諾があれば、Aに弁済することができる。
×
704-06-4抵当不動産の第三取得者は、債権者・債務者の反対の意思表示のないときは、Bの債務を弁済して、抵当権を消滅させることができる。
802-06-4抵当不動産の第三取得者は、債務者の債権者に対する債務を弁済することができる。
(3).弁済受領者
①受領権者としての外観を有する者

  1. 債権者本人や相続人を名乗る者
  2. 債権者の代理人と名乗る者
  3. 受取証書の持参人
②受領権者以外の者に対する弁済

債権者が利益を受けた限度で有効

★過去の出題例★
弁済受領者(民法[20]3(3))
年-問-肢内容正誤
1R01-07-1[Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された。]Bが、本件代金債務につき受領権限のないCに対して弁済した場合、Cに受領権限がないことを知らないことにつきBに過失があれば、Cが受領した代金をAに引き渡したとしても、Bの弁済は有効にならない。
×
2R01-07-2[Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された。]Bが、Aの代理人と称するDに対して本件代金債務を弁済した場合、Dに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。
3R01-07-3[Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約が締結された。]Bが、Aの相続人と称するEに対して本件代金債務を弁済した場合、Eに受領権限がないことにつきBが善意かつ無過失であれば、Bの弁済は有効となる。

417-07-2債権者の代理人と称する者に対して弁済した場合、その者に弁済受領権原の外観があり、弁済者が善意無過失であれば、弁済は有効である。
511-05-3偽造文書を持参した者に弁済した場合、弁済者は、善意無過失であれば、債務を免れる。
605-06-3債権者名義の領収証を持参した受領権限のない者に対して債務者が弁済した場合、債務者が過失無くしてその事情を知らなかったときは、免責される。

4.弁済に関するルール

(1).弁済の場所


★過去の出題例★

弁済の場所(民法[20]4(1))
年-問-肢内容正誤
103-09-3返済場所について別段の定めがないときは、借主は、貸主の住所で返済しなければならない。
202-03-3返済の場所を定めていない場合において、貸主が住所を移転したときは、借主は、貸主の新たな住所で返済しなければならない。
(2).弁済の費用

(3).弁済の証拠
①受取証書の交付(⇒[22]2(2)②

債権者が受取証書を交付しないとき
→弁済を拒むことができる(債務不履行にならない)

★過去の出題例★

弁済と受取証書の交付(民法[20]4(3)①)
同時履行の抗弁権:弁済と受取証書の交付(民法[22]2(2)②)
年-問-肢内容正誤
105-06-4借主は、弁済に当たり、貸主に対して領収証を請求し、貸主がこれを交付しないときは、その交付がなされるまで弁済を拒むことができる。
203-09-4借主が返済をしようとしても貸主が受取証書を交付しないときは、借主は、その交付がなされるまで、返済を拒むことができる。
②債権証書の返還(⇒[22]2(2)②

債権者が債権証書を返還しないとき
→債務者が弁済を拒むことはできない(債務不履行になる)

5.弁済による代位

(1).仕組み
第三者が債務者に代わって弁済した場合 第三者が債権者に代位する
(2).法定代位と任意代位
①分類

②法定代位の例
  1. 保証人(⇒[18]4(1)(2)
  2. 連帯保証人(⇒[18]4(1)~(3)
  3. 抵当不動産の第三取得者(⇒[12]7(1)
★過去の出題例★
弁済による代位(民法[20]5)
年-問-肢内容正誤
111-05-4連帯保証人が債務全額を弁済した場合、連帯保証人は、債権者の承諾がないときでも、債権者に代位する。
210-04-4連帯保証人が債権者に対して全額弁済した場合に、主債務者に対して債権者が有する抵当権を代位行使するためには、連帯保証人は、債権者の承諾を得る必要がある。×
306-05-3連帯保証人は、債務者及び第三取得者に対して債権者に代位できる。
406-05-4第三取得者が弁済した場合、債務者及び連帯保証人に対して債権者に代位できる。×
505-06-2主債務者の保証人が債権者に弁済した場合、保証人は、債権者の承諾がなくても、債権者に代位することができる。
602-06-4抵当不動産の第三取得者が債務者に代わって弁済した場合、債務者に対して支払いを請求できる。

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