AがBに対し、A所有の甲建物を3年間賃貸する旨の契約をした場合における次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定によれば、正しいものはどれか(借地借家法第39条に定める取壊し予定の建物の賃貸借及び同法第40条に定める一時使用目的の建物の賃貸借は考慮しないものとする。)。
- AB間の賃貸借契約について、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書による等書面によって契約すれば足りる。
- 甲建物が居住の用に供する建物である場合には、契約の更新がない旨を定めることはできない。
- AがBに対して、期間満了の3月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は定めがないものとなる。
- Bが適法に甲建物をCに転貸していた場合、Aは、Bとの賃貸借契約が解約の申入れによって終了するときは、特段の事情がない限り、Cにその旨の通知をしなければ、賃貸借契約の終了をCに対抗することができない。
正解:4
設定の確認
1 誤り
契約の更新がない建物賃貸借を定期建物賃貸借といいます。
定期建物賃貸借は、公正証書による等書面によって契約を締結しない限り有効になりません(借地借家法38条1項前段。電磁的記録でも書面による契約とみなされます)。しかし、書面によって契約するだけで有効になるわけではありません。賃貸人(A)は、あらかじめ、建物の賃借人(B)に対し、契約の更新がなく期間の満了により終了することについて、書面を交付して説明しなければならないのです(同条3項。賃借人の承諾があれば、電磁的方法による提供も可能)。
本肢は、「公正証書による等書面によって契約すれば足りる」とする点が誤っています。
■参照項目&類似過去問
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定期建物賃貸借契約の成立(書面による契約)(借地借家法[07]1(2)②)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
1 | R04-12-1 | Aは、B所有の甲建物につき、居住を目的として、期間2年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。BはAに対して、本件契約締結前に、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借が終了する旨を記載した賃貸借契約書を交付して説明すれば、本件契約を借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約として締結することができる。 | × |
2 | R02s-12-3 | 賃貸人Aと賃借人Bとの間で居住用建物の賃貸借契約を締結した。賃貸借契約に期間を定め、賃貸借契約を書面によって行った場合には、AがBに対しあらかじめ契約の更新がない旨を説明していれば、賃貸借契約は期間満了により終了する。 | × |
3 | R01-12-1 | 建物の賃貸借契約について、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書による等書面によって契約すれば足りる。
| × |
4 | 26-12-1 | 定期建物賃貸借契約を締結するには、公正証書による等書面によらなければならない。 | ◯ |
5 | 24-12-3 | 定期建物賃貸借契約では、更新がない旨の特約を記載した書面を契約に先立って賃借人に交付さえしておけば当該特約は有効となる。 | × |
6 | 19-14-1 | 定期建物賃貸借契約は書面によって契約しなければ有効とならない。 | ◯ |
7 | 18-13-3 | 20年後に賃貸借契約を更新させずに終了させるという建物賃貸借契約が可能である。 | ◯ |
8 | 15-14-2 | 定期建物賃貸借契約は、公正証書でしなければ、無効である。 | × |
9 | 07-13-2 | 定期建物賃貸借契約は、公正証書でしなければならない。 | × |
定期建物賃貸借契約の成立(事前説明)(借地借家法[07]1(2)③)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
1 | R04-12-1 | Aは、B所有の甲建物につき、居住を目的として、期間2年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。BはAに対して、本件契約締結前に、契約の更新がなく、期間の満了により賃貸借が終了する旨を記載した賃貸借契約書を交付して説明すれば、本件契約を借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約として締結することができる。 | × |
2 | R02s-12-3 | 賃貸人Aと賃借人Bとの間で居住用建物の賃貸借契約を締結した。賃貸借契約に期間を定め、賃貸借契約を書面によって行った場合には、AがBに対しあらかじめ契約の更新がない旨を説明していれば、賃貸借契約は期間満了により終了する。 | × |
3 | R01-12-1 | 建物の賃貸借契約について、契約の更新がない旨を定めるには、公正証書による等書面によって契約すれば足りる。
| × |
4 | H29-12-4 | 賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借で、契約の更新がない旨を定めるものである場合、当該契約前に賃貸人が賃借人に契約の更新がなく期間の満了により終了する旨を記載した書面を交付して説明しなければ、契約の更新がない旨の約定は無効となる。 | ◯ |
5 | H26-12-3 | 定期建物賃貸借契約につき、契約書と同じ書面内に記載して説明すれば足りる。 | × |
6 | H26-12-4 | 定期建物賃貸借契約につき説明しなかったときは、契約の更新がない旨の定めは無効となる。 | ◯ |
7 | H24-12-3 | 定期建物賃貸借契約につき、書面を交付さえすれば特約は有効。 | × |
8 | H20-14-2 | 公正証書で契約を締結すれば、書面の交付・説明の必要はない。 | × |
9 | H15-14-3 | 定期建物賃貸借契約を締結する場合、書面の交付・説明が必要である。 | ◯ |
2 誤り
(肢1参照。)
定期建物賃貸借契約を締結するにあたり、建物の用途を限定するような規定は存在しません(借地借家法38条1項参照)。
■参照項目&類似過去問
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定期建物賃貸借契約の成立(要件でないもの)(借地借家法[07]1(2)④)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
1 | R01-12-2 | 甲建物が居住の用に供する建物である場合には、契約の更新がない旨を定めることはできない。 | × |
2 | H20-14-1 | 賃貸人は、建物を一定の期間自己の生活の本拠として使用することが困難であり、かつ、その期間経過後はその本拠として使用することになることが明らかな場合に限って、定期建物賃貸借契約を締結することができる。
| × |
3 | H15-14-1 | 居住用建物の賃貸借においては、定期建物賃貸借契約とすることができない。 | × |
3 誤り
期間の定めがある建物賃貸借において、期間満了の1年前から6か月前までの間に、賃貸人も賃借人も更新をしない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(法定更新。借地借家法26条1項本文)。ただし、契約期間については、定めがないものとなります(同項ただし書き)。
本肢は、「3月前までに」とする点が誤っています。
■参照項目&類似過去問
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建物賃貸借契約の更新等(借地借家法[05]2(1))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
1 | R03s-12-1
| 本件契約に期間を2年とする旨の定めがあり、AもBも更新拒絶の通知をしなかったために本件契約が借地借家法に基づき更新される場合、更新後の期間について特段の合意がなければ、更新後の契約期間は2年となる。
| × |
2 | R01-12-3
| 建物の賃貸人Aが賃借人Bに対して、期間満了の3月前までに更新しない旨の通知をしなければ、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は定めがないものとなる。 | × |
3 | H30-12-3
| [AとBとの間で、Aが所有する甲建物をBが5年間賃借する旨の契約を締結した。]AB間の賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借でない場合、A及びBのいずれからも期間内に更新しない旨の通知又は条件変更しなければ更新しない旨の通知がなかったときは、当該賃貸借契約が更新され、その契約は期間の定めがないものとなる。
| ◯ |
4 | H29-12-1
| 賃貸人が賃借人に対し、建物の賃貸借契約の期間満了の1年前に更新をしない旨の通知をしていれば、賃貸借契約は期間満了によって当然に終了し、更新されない。
| × |
5 | H28-12-1
| 賃借人も賃貸人も相手方に対し、建物賃貸借契約の期間満了前に何らの通知もしなかった場合、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが、その期間は定めがないものとなる。
| ◯ |
6 | H27-11-1 | AがBとの間で、A所有の甲建物について、期間3年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約を締結した場合、AがBに対し、賃貸借契約の期間満了の6か月前までに更新しない旨の通知をしなかったときは、AとBは、期間3年、賃料月額10万円の条件で賃貸借契約を更新したものとみなされる 。 | × |
7 | H14-14-1 | 期間の定めのある建物賃貸借において、賃貸人が、期間満了の1年前から6月前までの間に、更新しない旨の通知を出すのを失念したときは、賃貸人に借地借家法28条に定める正当事由がある場合でも、契約は期間満了により終了しない。 | ◯ |
8 | H14-14-2 | 期間の定めのある建物賃貸借において、賃貸人が、期間満了の10月前に更新しない旨の通知を出したときで、その通知に借地借家法28条に定める正当事由がある場合は、期間満了後、賃借人が使用を継続していることについて、賃貸人が異議を述べなくても、契約は期間満了により終了する。 | × |
9 | H14-14-3 | 期間の定めのある契約が法定更新された場合、その後の契約は従前と同一条件となり、従前と同一の期間の定めのある賃貸借契約となる。 | × |
10 | H10-12-1 | 賃貸人が賃借人に対する更新拒絶の通知をしたときでも、期間満了後に転借人が建物の使用を継続し、賃貸人がこれに対して遅滞なく異議を述べないと、賃借人・賃貸人間の契約は更新される。 | ◯ |
11 | H04-11-3 | 賃貸借契約の期間が満了した場合において、賃貸人が自ら使用することを必要とする等正当の事由があるときは、賃貸人は、あらかじめ更新拒絶の通知をしなくても、賃貸借契約の更新を拒むことができる。 | × |
12 | H01-13-4 | 賃貸人が賃貸借期間満了の1年前から6月前までの間に賃借人に対して更新拒絶の通知をしないときは、前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる。 | ◯ |
4 正しい
建物の転貸借がされている場合、建物の賃貸借が期間満了又は解約申入れによって終了するときは、建物の賃貸人Aは、建物の転借人Cにその旨の通知をしなければ、その終了をCに対抗することができません(借地借家法34条1項)。この通知をしたときは、通知の日から6か月経過時に転貸借が終了します(同条2項)。
■参照項目&類似過去問
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建物賃貸借終了時の転借人の保護(借地借家法[06]4(1))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
| [共通の設定]
Aは、所有する甲建物をBに賃貸している。
|
1 | R03s-12-3 | 甲建物がCに転貸借されている場合において、本件契約がB(転貸人)の債務不履行によって解除されて終了するときは、Aが転借人に本件契約の終了を通知した日から6月を経過することによって、転貸借契約は終了する。
| × |
2 | R03-12-3 | 甲建物が適法にBからCに転貸されている場合、AがCに対して本件契約が期間満了によって終了する旨の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から3月を経過することによって終了する。 | × |
3 | R01-12-4 | 賃借人Bが適法に甲建物をCに転貸していた場合、賃貸人Aは、Bとの賃貸借契約が解約の申入れによって終了するときは、特段の事情がない限り、Cにその旨の通知をしなければ、賃貸借契約の終了をCに対抗することができない。
| ◯ |
4 | H29-12-3 | 転貸人が建物を適法に転借している場合、賃貸借契約が期間満了によって終了するときに、転貸人がその旨を賃借人から聞かされていれば、賃貸人は転借人に対して、賃貸借契約の期間満了による終了を対抗することができる。 | × |
5 | H25-11-3 | 賃貸借契約が期間満了で終了する場合、転貸人の転借人に対する解約申入れに正当事由がない限り、賃貸人は転借人に対して建物明渡しを請求できない。 | × |
6 | H16-13-2 | 賃貸借契約の期間満了による終了を転借人に通知しなければ、契約終了を転借人に対抗できない。 | ◯ |
7 | H12-12-3 | 賃貸借契約が期間満了により終了するときは、転借人に通知しなければ、賃借人に対しても、契約終了を主張できない。 | × |
8 | H10-12-4 | 賃貸借契約が期間満了により終了するときも、転借人に通知した日から6月を経過しないと、転貸借は終了しない。 | ◯ |
9 | H06-12-4 | 賃貸借契約の期間が満了する場合でも、転借人に通知しなければ、契約終了を転借人に対抗できない。 | ◯ |
10 | H01-06-3 | 賃貸借契約が期間満了により終了すれば、当然に転貸借契約も終了する。 | × |
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