■講義編■借地借家法[06]建物賃貸借の効力

建物の賃借人は、その引渡しを受けていれば、第三者に対しても、賃借権を対抗することができます。つまり、賃借している建物が売却されたとしても、その買主に対して賃借権を主張することができるのです。
借賃に関し、賃貸人は増額を、賃借人は減額を請求することができます(借賃増減請求権)。

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1.建物賃貸借の対抗力(⇒民法[26]3

(1).対抗要件とは

賃借権の対象となっている建物を賃貸人が売却した場合、この建物を利用できるのは誰か?


賃借人と買主との間は対抗問題。先に対抗要件を備えたほうが勝つ

(2).対抗要件(⇒民法[26]3


★過去の出題例★

建物賃貸借の対抗力(借地借家法[06]1)
年-問-肢内容正誤
1R04-12-2Aは、B所有の甲建物につき、賃貸借契約をBと締結してその日に引渡しを受けた。本件契約が借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約であるか否かにかかわらず、Aは、甲建物の引渡しを受けてから1年後に甲建物をBから購入したCに対して、賃借人であることを主張できる。
2R02-12-1AとBとの間でA所有の甲建物をBに対して、居住の用を目的として、期間2年、賃料月額10万円で賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、Bが甲建物の引渡しを受けた。AがCに甲建物を売却した場合、Bは、それまでに契約期間中の賃料全額をAに前払いしていたことを、Cに対抗することができる。
3H27-11-3[AがBとの間で、A所有の甲建物について、期間3年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約を締結]Cが、AB間の賃貸借契約締結前に、Aと甲建物の賃貸借契約を締結していた場合、AがBに甲建物を引き渡しても、Cは、甲建物の賃借権をBに対抗することができる。×
4H27-12-1賃借権の登記をしない限り賃借人は賃借権を第三者に対抗することができない旨の特約を定めた場合、定期借家契約においても、普通借家契約においても、当該特約は無効である。
5H22-12-1建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。
6H21-12-3引渡しを受けている場合、建物の賃借権は対抗可、使用借権は対抗不可。
7H20-04-4建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。
8H19-14-4登記も引渡しもない場合、定期建物賃借権は対抗不可、一時使用賃借権は対抗可能。×
9H18-14-2建物の引渡しを受けていれば、賃借権を対抗可能。
10H12-12-1賃貸人の承諾を得て転借人に占有させている場合、賃借人は賃借権を対抗不可。×
11H02-13-1引渡しを受けていないと、常に、賃借権を対抗不可。×
12H01-13-1建物の引渡しを受けていれば、建物所有権が移転しても、新所有者に賃借権を対抗可能。

2.借賃増減請求権

(1).協議が調わないとき
①増額について


★過去の出題例★

増額協議が調わないとき(借地借家法[06]2(1)①)
年-問-肢内容正誤
1H16-14-4借主は貸主の請求額を支払わなければならず、裁判で正当とされた賃料額を既払額が超えるときは、貸主は超過額に年1割の利息を付して借主に返還しなければならない。×
2H09-12-3増額を正当とする裁判が確定した場合で、借主が既に支払った額に不足があるとき、借主は、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを貸主に支払わなければならない。
3H09-12-4借主が相当と認める額の家賃を提供したが、貸主が受領を拒んでいる場合、借主が相当と認める額の家賃を供託したとき、貸主は、家賃不払いを理由に家屋の賃貸借契約を解除することはできない。
4H04-11-2賃貸借契約の更新の際、家賃の増額について賃貸人の請求があったときは、賃借人は、これを拒むことはできない。×
5H02-13-3貸主が借主に質料の増額を請求した場合、借主は、その増額を相当でないと考えたときは、相当と認める質料を、直ちに供託すればよい。×
②減額について


★過去の出題例★

減額協議が調わないとき(借地借家法[06]2(1)②)
年-問-肢内容正誤
1H16-14-3協議が調わない場合、賃料減額の裁判の確定時点から将来に向かって賃料が減額される。×
2H13-13-1貸主は、その裁判が確定するまでの期間は、貸主が相当と認める金額の家賃を支払うように借主に請求できる。
3H13-13-2請求にかかる一定額の減額を正当とする裁判が確定した時点以降分の家賃が減額される。×
(2).特約


★過去の出題例★

借賃増減請求権に関する特約(借地借家法[06]2(2))
年-問-肢内容正誤
特約がない場合
1R05-12-4現行賃料が定められた時から一定の期間が経過していなければ、賃料増額請求は、認められない。×
2R02-12-2AとBとの間でA所有の甲建物をBに対して、居住の用を目的として、期間2年、賃料月額10万円で賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、Bが甲建物の引渡しを受けた。本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、賃料改定に関する特約がない場合、経済事情の変動により賃料が不相当となったときは、AはBに対し、賃料増額請求をすることができる。
3H24-12-2普通建物賃貸借・定期建物賃貸借の双方につき、特約がなければ、賃料の増減額請求権が発生。
4H22-12-4定期建物賃貸借で、特約がなければ、賃料の増減額請求権が発生。
5H16-14-1普通建物賃貸借において、使用収益開始前には賃料減額請求は不可。
6H16-14-2転貸借契約を締結した場合、賃借人は、賃料の増減額請求権を行使できない。×
7H13-13-3普通建物賃貸借では、家賃が不相当に高額になった場合、借主は、契約条件にかかわらず減額請求が可能。
8H09-12-1家賃の増減について特約のない場合で、経済事情の変動により家賃が不相当に高額となったとき、賃借人は、賃貸人に対し将来に向かって家賃の減額を請求できる。
特約がある場合
1R05-12-2当事者間において、一定の期間は建物の賃料を減額しない旨の特約がある場合、現行賃料が不相当になったなどの事情が生じたとしても、この特約は有効である。×
2H27-12-2賃貸借契約開始から3年間は賃料を増額しない旨の特約を定めた場合、定期借家契約においても、普通借家契約においても、当該特約は無効である。×
3H25-11-4定期建物賃貸借において、賃料改定につき特約がある場合、賃借人は賃貸人に対して賃料の減額請求ができない。
4H13-13-3普通建物賃貸借では、家賃が不相当に高額になった場合、借主は、契約条件にかかわらず減額請求が可能。
5H13-13-4普通建物賃貸借では、「家賃を減額しない」という特約は無効。
6H09-12-2「家賃を増額しない」という特約があっても、増額請求が可能。×
7H05-12-2「家賃を増額しない」という特約は有効。

3.造作買取請求権

(1).造作買取請求権とは
①造作買取請求権の構造

②同時履行の抗弁権(⇒民法[22]2(3)④

③転借人の造作買取請求権

(2).造作買取請求権の発生
①期間満了・解約申入れの場合

②債務不履行による解除の場合


★過去の出題例★

造作買取請求権(借地借家法[06]3)
年-問-肢内容正誤
1R02-12-4
AとBとの間でA所有の甲建物をBに対して、居住の用を目的として、期間2年、賃料月額10万円で賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、Bが甲建物の引渡しを受けた。本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、造作買取請求に関する特約がない場合、期間満了で本件契約が終了するときに、Bは、Aの同意を得て甲建物に付加した造作について買取請求をすることができる。
2H30-12-4
[AとBとの間で、Aが所有する甲建物をBが5年間賃借する旨の契約を締結した。]CがBから甲建物を適法に賃貸された転借人で、期間満了によってAB間及びBC間の賃貸借契約が終了する場合、Aの同意を得て甲建物に付加した造作について、BはAに対する買取請求権を有するが、CはAに対する買取請求権を有しない。
×
3H28-12-3
建物の適法な転借人が、賃貸人の同意を得て建物に造作を付加した場合、期間満了により契約が終了するときは、転借人は賃貸人に対してその造作を時価で買い取るよう請求することができる。
4H27-11-4[AがBとの間で、A所有の甲建物について、期間3年、賃料月額10万円と定めた賃貸借契約を締結]AB間の賃貸借契約がBの賃料不払を理由として解除された場合、BはAに対して、Aの同意を得てBが建物に付加した造作の買取りを請求することはできない。
5H10-12-3転借人が建物所有者の同意を得て建物に付加した造作は、期間の満了によって建物の賃貸借が終了するとき、転借人から建物所有者に対し買取りを請求することができる。
6H03-13-4賃借人は、建物所有者の同意を得て建物に造作を付加したときは、賃貸借終了の際、建物所有者に対し時価でその造作を買い取るべきことを請求することができる。
(3).造作買取請求権を排除する特約

造作買取請求権に関する規定=任意規定
→特約で排除可能

★過去の出題例★

造作買取請求権を排除する特約(借地借家法[06]3(3))
年-問-肢内容正誤
1R03s-12-4建物の賃借人Bが賃貸人Aの同意を得て建物に付加した造作がある場合であっても、本件契約終了時にAに対して借地借家法第33条の規定に基づく造作買取請求権を行使することはできない、という特約は無効である。×
2H27-12-3期間満了により賃貸借契約が終了する際に賃借人は造作買取請求をすることができない旨の規定は、定期借家契約では有効であるが、普通借家契約では無効である。×
3H24-12-1普通建物賃貸借、定期建物賃貸借の双方において、特約で造作買取請求権の排除が可能。
4H23-12-1普通建物賃貸借、定期建物賃貸借の双方において、特約で造作買取請求権の排除が可能。
5H22-12-3定期建物賃貸借で、特約がなければ、造作買取請求権が発生。
6H11-14-1普通建物賃貸借において、特約で造作買取請求権の排除が可能。
7H07-13-1普通建物賃貸借において、特約で造作買取請求権の排除が可能。
8H05-12-4普通建物賃貸借において、造作買取請求権を排除する特約は無効。×

4.建物賃貸借終了時の転借人の保護

(1).期間満了・解約申入れによる終了

(2).その他の理由による終了
①合意解除

転借人には対抗できない


【例外】賃貸人が債務不履行による解除権(⇒②)を有していた場合

②債務不履行による解除

転貸借も終了
転借人に賃料代払いのチャンスを与える必要なし

★過去の出題例★

建物賃貸借終了時の転借人の保護(借地借家法[06]4(1))
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
Aは、所有する甲建物をBに賃貸している。

1R03s-12-3甲建物がCに転貸借されている場合において、本件契約がB(転貸人)の債務不履行によって解除されて終了するときは、Aが転借人に本件契約の終了を通知した日から6月を経過することによって、転貸借契約は終了する。
×
2R03-12-3甲建物が適法にBからCに転貸されている場合、AがCに対して本件契約が期間満了によって終了する旨の通知をしたときは、建物の転貸借は、その通知がされた日から3月を経過することによって終了する。×
3R01-12-4賃借人Bが適法に甲建物をCに転貸していた場合、賃貸人Aは、Bとの賃貸借契約が解約の申入れによって終了するときは、特段の事情がない限り、Cにその旨の通知をしなければ、賃貸借契約の終了をCに対抗することができない。
4H29-12-3転貸人が建物を適法に転借している場合、賃貸借契約が期間満了によって終了するときに、転貸人がその旨を賃借人から聞かされていれば、賃貸人は転借人に対して、賃貸借契約の期間満了による終了を対抗することができる。×
5H25-11-3賃貸借契約が期間満了で終了する場合、転貸人の転借人に対する解約申入れに正当事由がない限り、賃貸人は転借人に対して建物明渡しを請求できない。×
6H16-13-2賃貸借契約の期間満了による終了を転借人に通知しなければ、契約終了を転借人に対抗できない。
7H12-12-3賃貸借契約が期間満了により終了するときは、転借人に通知しなければ、賃借人に対しても、契約終了を主張できない。×
8H10-12-4賃貸借契約が期間満了により終了するときも、転借人に通知した日から6月を経過しないと、転貸借は終了しない。
9H06-12-4賃貸借契約の期間が満了する場合でも、転借人に通知しなければ、契約終了を転借人に対抗できない。
10H01-06-3賃貸借契約が期間満了により終了すれば、当然に転貸借契約も終了する。×

5.借地上の建物の賃借人の保護


★過去の出題例★

借地上の建物の賃借人の保護(借地借家法[06]5)
年-問-肢内容正誤
1H22-11-4借地権の存続期間の満了を、建物の賃借人が1年前までに知らなかった場合、裁判所が期限を許与できる。
2H18-14-3借地権の債務不履行による解除を、建物の賃借人が1年前までに知らなかった場合、裁判所が期限を許与できる。×
3H18-14-4借地権の存続期間の満了を、建物の賃借人が1年前までに知らなかった場合、裁判所が期限を許与できる。
4H12-12-4借地権の存続期間の満了を、建物の賃借人が1年前までに知らなかった場合、裁判所に明渡しの猶予を請求できる。

6.居住用建物の賃貸借の承継

(1).居住用建物の賃借人が死亡した場合の賃借権
①相続人が存在する場合

相続人が承継

②相続人が存在しない場合

事実上夫婦or養親子と同様の関係にあった同居者が承継

承継したくない場合
→相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に、賃貸人に反対の意思表示

(2).同居者の承継を排除する特約

同居者の賃借権承継に関する規定=任意規定
→特約で排除可能
★過去の出題例★

居住用建物の賃貸借の承継(借地借家法[06]6)

[共通の設定]
Aは、所有する甲建物をBに賃貸している。
年-問-肢内容正誤
1R02s-12-4Bが相続人なしに死亡した場合、Bと婚姻の届出をしていないが事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Cは、Bが相続人なしに死亡したことを知った後1月以内にAに反対の意思表示をしない限り、賃借人としてのBの権利義務を承継する。
2H11-14-2Bが死亡した場合で、その当時Bの相続人でない事実上の配偶者Cがこの建物で同居していたとき、Cは、当該建物の賃借権に限っては、相続人に優先してBの賃借人としての地位を承継する。
×
3H07-13-3Aを賃貸人、Bを賃借人とするA所有の居住用建物の賃貸借に関し、AとBとC(Bと同居する内縁の妻)の三者で「Bが相続人なくして死亡したときでも、Cは借家権を承継することができない」と定めた場合、その特約は、無効である。
×
4H02-13-4Bが相続人なくして死亡した場合、Bと事実上夫婦と同様の関係にあった同居者Cは、その事実を知った後1月内にAに対し特段の意思表示をしないときは、BのAに対する権利義務を承継する。

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