【宅建過去問】(平成20年問01)行為能力


行為能力に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. 成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、 日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。
  2. 未成年者は、営業を許されているときであっても、その営業に関するか否かにかかわらず、その法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は、取り消すことができる。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りではない。
  3. 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者につき、4親等内の親族から補助開始の審判の請求があった場合、家庭裁判所はその事実が認められるときは、本人の同意がないときであっても同審判をすることができる。
  4. 被保佐人が、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手方に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる。

正解:1

1 正しい

成年被後見人の法律行為は、取り消すことができます。例外的に取り消すことができないのは、日用品の購入その他日常生活に関する行為のみです(民法9条)。
これは、成年被後見人に事理を弁識する能力(意思能力。同法3条の2)があった場合でも同様です。制限行為能力者である以上、行為能力の制限を理由に、法律行為を取り消すことができます。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
成年被後見人(民法[01]3(1))
年-問-肢内容正誤
1R04-03-1成年後見人は、後見監督人がいる場合には、後見監督人の同意を得なければ、成年被後見人の法律行為を取り消すことができない。×
2R04-03-2相続の放棄は相手方のない単独行為であるから、成年後見人が成年被後見人に代わってこれを行っても、利益相反行為となることはない。×
3R04-03-3成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。×
4R04-03-4成年年齢は18歳であるため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。
5H26-09-1成年被後見人が第三者との間で建物の贈与を受ける契約をした場合には、成年後見人は、当該法律行為を取り消すことができない。×
6H26-09-4成年後見人は家庭裁判所が選任する者であるが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。
7H20-01-1成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。
8H18-12-1成年者Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況になった場合、Aの推定相続人はAの法定代理人となる。×
9H15-01-3成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。
10H02-04-1成年被後見人は、契約の際完全な意思能力を有していても契約を取り消すことができる。
意思能力(民法[01]1(2))
年-問-肢内容正誤
1R03-05-4意思能力を有しないときに行った不動産の売買契約は、後見開始の審判を受けているか否かにかかわらず効力を有しない。
2H30-03-4AとBとの間で、A所有の甲建物をBに贈与する旨を書面で約した。本件約定の時点でAに意思能力がなかった場合、Bは、本件約定に基づき甲建物の所有権を取得することはできない。
3H24-03-1意思能力を欠く状態での意思表示は、無効である。
4H20-01-1成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。
5H19-01-4A所有の甲土地についてのAB間の売買契約が、Aが泥酔して意思無能力である間になされたものである場合、Aは、酔いから覚めて売買契約を追認するまではいつでも売買契約を取り消すことができ、追認を拒絶すれば、その時点から売買契約は効となる。×
6H17-01-2自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方である買主Bが意思無能力者であった場合、Bは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。×
7H15-01-1意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行った場合、その親族が当該意思表示を取り消せば、取消しの時点から将来に向かって無効となる。×
8H02-04-1A所有の土地が、AからBへと売り渡された。Aが成年被後見人の場合、Aは、契約の際完全な意思能力を有していてもAB間の契約を取り消し、Cに対して所有権を主張することができる。

2 誤り

■未成年者の法律行為

未成年者は、法定代理人の同意を得ずに行った法律行為を取り消すことができます(民法5条1項、2項)。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、取り消すことができません(同条1項ただし書き)。
これが原則論です。

■営業を許された未成年者

例外的に、「営業を許された未成年者」は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有します(民法6条1項)。
したがって、その営業に関する行為については、法定代理人の同意を得ずに、単独で行うことができます。もちろん、法定代理人の同意を得ていないことを理由に、法律行為を取り消すことはできません。

本肢は、「その営業に関するか否かにかかわらず、…取り消すことができる」という点が誤っています。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
未成年者(民法[01]2)
年-問-肢内容正誤
1R04-03-4成年年齢は18歳であるため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。
2R03-05-119歳の者は未成年であるので、携帯電話サービスの契約や不動産の賃貸借契約を1人で締結することはできない。×
3R03-05-3営業を許された未成年者が、その営業に関するか否かにかかわらず、第三者から法定代理人の同意なく負担付贈与を受けた場合には、法定代理人は当該行為を取り消すことができない。×
4H28-02-1古着の仕入販売に関する営業を許された未成年者は、成年者と同一の行為能力を有するので、法定代理人の同意を得ないで、自己が居住するために建物を第三者から購入したとしても、その法定代理人は当該売買契約を取り消すことができない。
×
5H26-09-3未成年後見人は、自ら後見する未成年者について、後見開始の審判を請求することはできない。×
6H26-09-4成年後見人は家庭裁判所が選任する者であるが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。
7H25-02-2営業を許可された未成年者が、その営業のための商品を仕入れる売買契約を有効に締結するには、父母双方がいる場合、父母のどちらか一方の同意が必要である。
×
8H22-01-1土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになるので、未成年者が土地を売却するに当たっては、その法定代理人の同意は必要ない。
×
9H20-01-2未成年者は、営業を許されているときであっても、その営業に関するか否かにかかわらず、その法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は、取り消すことができる。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りではない。×
10H17-01-4自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方Bが未成年者であり、法定代理人から宅地建物取引業の営業に関し許可を得ている場合、Bは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる。
×
11H14-02-3未成年者であっても、成年者を代理人とすれば、法定代理人の同意を得ることなく、土地の売買契約を締結することができ、この契約を取り消すことはできない。×
12H11-01-1満18歳に達した者は、成年とされる。
13H01-03-2A所有の土地が、AからB、BからCへと売り渡され、移転登記も完了している。Aは、Bに土地を売ったとき未成年者で、かつ、法定代理人の同意を得ていなかったので、その売買契約を取り消した場合、そのことを善意のCに対し対抗することができない。
×

3 誤り

精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者につき、本人、配偶者、4親等内の親族などから補助開始の審判の請求があった場合には、家庭裁判所では補助開始の審判をすることができます(民法15条1項本文)。ただし、本人以外の者の請求による場合には、本人の同意が要求されます(同条2項)。
本肢は、「本人の同意がないときであっても」とする点が誤りです。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
被補助人(民法[01]3(3))
年-問-肢内容正誤
1H28-02-4
被補助人が、補助人の同意を得なければならない行為について、同意を得ていないにもかかわらず、詐術を用いて相手方に補助人の同意を得たと信じさせていたときは、被補助人は当該行為を取り消すことができない。
2H22-01-4被補助人が法律行為を行うためには、常に補助人の同意が必要である。×
3H20-01-3精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者につき、4親等内の親族から補助開始の審判の請求があった場合、家庭裁判所はその事実が認められるときは、本人の同意がないときであっても同審判をすることができる。×

4 誤り

■被保佐人の法律行為

被保佐人が、民法が定める重要行為(表のもの)を行う場合には、保佐人の同意(又はこれに代わる家庭裁判所の許可)を得なければなりません(民法13条1項柱書本文)。土地の売却は、このリストに含まれていますから、原則的に取消しが可能です。

被保佐人が単独でできない行為(例)

■制限行為能力者の詐術

しかし、制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができなくなります(民法21条)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
被保佐人(民法[01]3(2))
年-問-肢内容正誤
1R04-03-3
成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。×
2H28-02-2
被保佐人が、不動産を売却する場合には、保佐人の同意が必要であるが、贈与の申し出を拒絶する場合には、保佐人の同意は不要である。×
3H22-01-3被保佐人については、不動産を売却する場合だけではなく、日用品を購入する場合も、保佐人の同意が必要である。×
4H20-01-4被保佐人が、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手方に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる。×
5H17-01-1自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方である買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。×
6H15-01-4被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、保佐人は、当該意思表示を取り消すことができる。×
7H06-02-4Aは、「近く新幹線が開通し、別荘地として最適である」旨のBの虚偽の説明を信じて、Bの所有する原野(時価20万円)を、別荘地として 2,000万円で購入する契約を締結した。Aが被保佐人であり、保佐人Cの同意を得ずに当該契約を締結した場合、Cは当該契約の締結にはCの同意がないとして、その無効を主張することができる。×
制限行為能力者が詐術を用いた場合(民法[01]1(3))
年-問-肢内容正誤
1H28-02-4被補助人が、補助人の同意を得なければならない行為について、同意を得ていないにもかかわらず、詐術を用いて相手方に補助人の同意を得たと信じさせていたときは、被補助人は当該行為を取り消すことができない。
2H20-01-4
被保佐人が、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手方に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる。×

>>年度目次に戻る

【無料公開講座】スリー・ステップ学習法

宅建学習のプロセスを3段階に分け、着実なステップアップを目指す『スリー・ステップ学習法』。この講座の特長を実際に理解・体験していただくための「無料公開講座」です。
  • [Step.1]基本習得編で宅建合格に必要な基礎知識を学ぶ。
  • [Step.2]一問一答編で「一問一答式」の本試験過去問で基礎知識を確認し、○×を見分ける解法テクニックを身に付ける。
  • [Step.3]過去演習編で「四択問題」の解決法を学ぶ。

この3段階で、着実に合格レベルに進むことができます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です