【宅建過去問】(平成30年問04)時効の援用
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- 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。
- 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。
- 詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。
- 債務者が時効の完成の事実を知らずに権利の承認をした場合、その後、債務者はその完成した消滅時効を援用することはできない。
正解:2
時効の効力
時効の援用
時効期間の経過により時効が完成したとしても、自動的に時効の効力が発生するわけではありません。時効による利益(メリット)を受けるという意思表示、すなわち時効の援用があって初めて、時効の効力が発生するのです(民法145条)。
時効の援用権を有するのは、「当事者」です。この「当事者」には、保証人、物上保証人、第三取得者など「権利の消滅について正当な利益を有する者」が含まれます(同条)。
時効の利益の放棄
時効の援用とは逆に、「時効によるメリットを受けない」という意思表示をすることもできます。「時効が完成したとしても、借りたお金は返す。」という意思表示、これを時効の利益の放棄といいます(同法146条)。時効の利益は、時効の完成前にあらかじめ放棄することができません。
1 正しい
保証人は、「権利の消滅について正当な利益を有する者」の典型例です(民法145条)。したがって、保証人は、主たる債務に関し、消滅時効を援用することができます。
問題は、主債務者が時効の利益を放棄していることです。主債務者は、時効完成後であっても、債務を弁済するという意思を表示しています。この場合でも、保証人が時効を援用することは可能です。時効を援用するかどうかは、それぞれの人について相対的に判断するからです。主債務者が時効の利益を放棄したからといって、保証人が援用権を失うわけではありません。
以上より、主債務者が時効の利益を放棄した後であっても、保証人は、主たる債務についての消滅時効を援用することができます。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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時効の効力 | |||
1 | H29-02-1 | Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合、Bが甲土地の所有権を取得するのは、取得時効の完成時である。 | × |
時効の援用 | |||
1 | R02s-05-1 | 消滅時効の援用権者である「当事者」とは、権利の消滅について正当な利益を有する者であり、債務者のほか、保証人、物上保証人、第三取得者も含まれる。 | ◯ |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H30-04-2 | 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。 | × |
4 | H30-04-3 | 詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。 | ◯ |
5 | H18-01-3 | 時効は、一定時間の経過という客観的事実によって発生するので、消滅時効の援用が権利の濫用となることはない。 | × |
6 | H12-02-1 | 物上保証人は、主たる債務者の消滅時効を援用できる。 | ◯ |
7 | H09-04-3 | 物上保証人は、債権の消滅時効を援用して債権者に抵当権の抹消を求めることができる。 | ◯ |
時効の利益の放棄 | |||
1 | R02-07-2 | 主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は連帯保証人に及ぶ。 | × |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H21-03-2 | 賃借人が、賃貸人との建物賃貸借契約締結時に、賃料債権につき消滅時効の利益はあらかじめ放棄する旨約定したとしても、その約定に法的効力は認められない。 | ◯ |
2 誤り
問題文が単純化され過ぎているので、もう少し具体的にしましょう。一つの建物に債権者①と債権者②の2人が抵当権を設定しています。債権者①の抵当権が一番抵当権、債権者②の抵当権が二番抵当権です。この状況で、被担保債権①について消滅時効が完成した場合、債権者②がその時効を援用できるか、という問題です。
判例は、後順位抵当権者(債権者②)は、「権利の消滅について、正当な利益を有する者」にあたらないとして、時効の援用を認めません(最判平11.10.21)。一番抵当権が消滅すれば、債権者②の二番抵当権が一番に繰り上がります(順位上昇の法則)。しかし、この利益は、たまたまのもの(反射的利益)に過ぎず、直接利益ではない、と判断しているわけです。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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時効の効力 | |||
1 | H29-02-1 | Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合、Bが甲土地の所有権を取得するのは、取得時効の完成時である。 | × |
時効の援用 | |||
1 | R02s-05-1 | 消滅時効の援用権者である「当事者」とは、権利の消滅について正当な利益を有する者であり、債務者のほか、保証人、物上保証人、第三取得者も含まれる。 | ◯ |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H30-04-2 | 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。 | × |
4 | H30-04-3 | 詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。 | ◯ |
5 | H18-01-3 | 時効は、一定時間の経過という客観的事実によって発生するので、消滅時効の援用が権利の濫用となることはない。 | × |
6 | H12-02-1 | 物上保証人は、主たる債務者の消滅時効を援用できる。 | ◯ |
7 | H09-04-3 | 物上保証人は、債権の消滅時効を援用して債権者に抵当権の抹消を求めることができる。 | ◯ |
時効の利益の放棄 | |||
1 | R02-07-2 | 主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は連帯保証人に及ぶ。 | × |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H21-03-2 | 賃借人が、賃貸人との建物賃貸借契約締結時に、賃料債権につき消滅時効の利益はあらかじめ放棄する旨約定したとしても、その約定に法的効力は認められない。 | ◯ |
3 正しい
問題文の設定を図にしておきます。債権者は、債務者に対してお金を貸し付けています。債務者は、唯一の資産である土地を安い値段で第三者(「受益者」といいます)に売却し、債権者に対する借金を返済できるような経済状況ではなくなってしまいました。
債務者が債権者を害することを知って土地を売却していた場合、債権者は、この売買契約を取り消すことができます。これが詐害行為取消権です(民法424条)。
このケースで、受益者が被保全債権(債権者の債務者に対する債権のこと)について消滅時効を援用することができるでしょうか。判例は、受益者が「権利の消滅について、正当な利益を有する者」にあたるとして、時効の援用を認めました(最判平10.06.22)。受益者は、詐害行為が取り消されると土地の所有権を失います。一方、被保全債権が時効消滅すれば、詐害行為取消権を行使されることもなくなり、土地の所有権を確保することができます。このような受益者の立場を「権利の消滅について、正当な利益を有する者」ととらえたわけです。
※詐害行為について、過去の本試験での出題は、平成20年問05のみです。今後の出題可能性も低いので、はまり込まないように注意しましょう。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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時効の効力 | |||
1 | H29-02-1 | Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合、Bが甲土地の所有権を取得するのは、取得時効の完成時である。 | × |
時効の援用 | |||
1 | R02s-05-1 | 消滅時効の援用権者である「当事者」とは、権利の消滅について正当な利益を有する者であり、債務者のほか、保証人、物上保証人、第三取得者も含まれる。 | ◯ |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H30-04-2 | 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。 | × |
4 | H30-04-3 | 詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。 | ◯ |
5 | H18-01-3 | 時効は、一定時間の経過という客観的事実によって発生するので、消滅時効の援用が権利の濫用となることはない。 | × |
6 | H12-02-1 | 物上保証人は、主たる債務者の消滅時効を援用できる。 | ◯ |
7 | H09-04-3 | 物上保証人は、債権の消滅時効を援用して債権者に抵当権の抹消を求めることができる。 | ◯ |
時効の利益の放棄 | |||
1 | R02-07-2 | 主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は連帯保証人に及ぶ。 | × |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H21-03-2 | 賃借人が、賃貸人との建物賃貸借契約締結時に、賃料債権につき消滅時効の利益はあらかじめ放棄する旨約定したとしても、その約定に法的効力は認められない。 | ◯ |
4 正しい
債務者による権利の承認は時効の更新事由に該当します(民法152条1項)。
しかし、本肢の債務については既に消滅時効が完成しています。時効完成後に、債務者がその事実を知らずに権利の承認をした場合、時効は更新されるのでしょうか。債務者は、消滅時効を援用して、債務を免れることができなくなるのでしょうか。
判例は、債務者が時効の完成を知らずに権利を承認した場合でも、その後、債務者は、消滅時効を援用することができないとしています(最判昭41.04.20)。いわば、援用権を喪失させるわけです。債務者が権利を承認すれば、債権者は、債務の弁済を期待します。その後になって消滅時効を援用することは、信義則に反する行為です。この理由から、援用権を喪失させています。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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時効の効力 | |||
1 | H29-02-1 | Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合、Bが甲土地の所有権を取得するのは、取得時効の完成時である。 | × |
時効の援用 | |||
1 | R02s-05-1 | 消滅時効の援用権者である「当事者」とは、権利の消滅について正当な利益を有する者であり、債務者のほか、保証人、物上保証人、第三取得者も含まれる。 | ◯ |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H30-04-2 | 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。 | × |
4 | H30-04-3 | 詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。 | ◯ |
5 | H18-01-3 | 時効は、一定時間の経過という客観的事実によって発生するので、消滅時効の援用が権利の濫用となることはない。 | × |
6 | H12-02-1 | 物上保証人は、主たる債務者の消滅時効を援用できる。 | ◯ |
7 | H09-04-3 | 物上保証人は、債権の消滅時効を援用して債権者に抵当権の抹消を求めることができる。 | ◯ |
時効の利益の放棄 | |||
1 | R02-07-2 | 主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は連帯保証人に及ぶ。 | × |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H21-03-2 | 賃借人が、賃貸人との建物賃貸借契約締結時に、賃料債権につき消滅時効の利益はあらかじめ放棄する旨約定したとしても、その約定に法的効力は認められない。 | ◯ |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | R02s-05-3 | 権利の承認があったときは、その時から新たに時効の進行が始まるが、権利の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことを要しない。 | ◯ |
2 | 30-04-4 | 債務者が時効の完成の事実を知らずに債務の承認をした場合、その後、債務者はその完成した消滅時効を援用することはできない。 | ◯ |
3 | 21-03-4 | 消滅時効完成後に債務者が債権を承認した場合、時効完成を知らなかったとしても、時効の援用は許されない。 | ◯ |
4 | 17-04-4 | 消滅時効完成後に債務者が債権を承認した場合、時効完成を知らなかったとしても、時効の援用は許されない。 | ◯ |
5 | 12-02-2 | 物上保証人が、債権者に対し、金銭債務の存在を時効期間の経過前に承認した場合、当該債務の消滅時効の更新の効力が生じる。 | × |
6 | 12-02-3 | 主債務者が、債権者に対し、金銭債務の存在を時効期間の経過前に承認した場合、物上保証人は、当該債務の消滅時効の更新の効力を否定することができない。 | ◯ |
7 | 07-03-4 | 債務の承認をした場合、債務者が被保佐人であって、保佐人の同意を得ていなくても、時効更新の効力を生じる。 | ◯ |
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