【宅建過去問】(平成28年問03)意思表示・対抗問題


AがA所有の甲土地をBに売却した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. Aが甲土地をBに売却する前にCにも売却していた場合、Cは所有権移転登記を備えていなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張することができる。
  2. AがBの詐欺を理由に甲土地の売却の意思表示を取り消しても、取消しより前にBが甲土地をDに売却し、Dが所有権移転登記を備えた場合には、DがBの詐欺の事実を知っていたか否かにかかわらず、AはDに対して甲土地の所有権を主張することができない。
  3. Aから甲土地を購入したBは、所有権移転登記を備えていなかった。Eがこれに乗じてBに高値で売りつけて利益を得る目的でAから甲土地を購入し所有権移転登記を備えた場合、EはBに対して甲土地の所有権を主張することができない。
  4. AB間の売買契約が、Bの意思表示の動機に錯誤があって締結されたものである場合、Bが所有権移転登記を備えていても、AはBの錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。

正解:3

設定の確認

28-03-0

1 誤り

A→Cの譲渡とA→Bの譲渡は、二重譲渡の関係になっています。この場合、CとBとの優劣を決定するのは、登記の有無です(民法177条)。契約締結日時の先後で判定するわけではありません。
したがって、Cは、登記を備えない限り、Bに対して甲土地の所有権を主張することはできません。
28-03-1a

■類似過去問
内容を見る
契約締結日時の先後(民法[08]1(1)②)
 年-問-肢内容正誤
129-11-1
(A所有の甲土地につき、平成29年10月1日にBとの間で賃貸借契約(本件契約)が締結された。)Aが甲土地につき、本件契約とは別に、平成29年9月1日にCとの間で建物所有を目的として賃貸借契約を締結していた場合、本件契約が資材置場として更地で利用することを目的とするものであるときは、本件契約よりもCとの契約が優先する。×
228-03-1
Aが甲土地をBに売却する前にCにも売却していた場合、Cは所有権移転登記を備えていなくても、Bに対して甲土地の所有権を主張することができる。
×
324-06-3二重譲渡の場合、契約締結日時の先後で優劣を判定。×
422-04-1二重譲渡の場合、契約締結日時の先後で優劣を判定。×
519-03-4二重譲渡の場合、契約締結日時の先後で優劣を判定。×

2 誤り

  1. 買主Bが売主Aをだます
  2. 売主Aが買主Bに売却
  3. 買主Bが第三者Dに売却
  4. 売主Aが詐欺を理由に取消し

というプロセスをたどっているので、売却を受けた第三者Dは、詐欺による取消し前の第三者にあたります。
この場合、売主Aは、契約の取消しを善意の第三者に対抗することができません(民法96条3項)。逆にいえば、第三者が悪意である場合、取消しを対抗することが可能です。
本肢は、「詐欺の事実を知っていたか否かにかかわらず、……主張することができない」とする点が誤っています。
28-03-2

■類似過去問
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詐欺による取消し前の第三者(民法[03]2(3)①)
 年-問-肢
内容
正誤
1R01-02-2
[AがBに甲土地を売却し、Bが所有権移転登記を備えた。]AがBとの売買契約をBの詐欺を理由に取り消す前に、Bの詐欺について悪意のCが、Bから甲土地を買い受けて所有権移転登記を備えていた場合、AはCに対して、甲土地の返還を請求することができる。
228-03-2
売主Aが買主Bの詐欺を理由に甲土地の売却の意思表示を取り消しても、取消しより前にBが甲土地をDに売却し、Dが所有権移転登記を備えた場合には、DがBの詐欺の事実を知っていたか否かにかかわらず、AはDに対して甲土地の所有権を主張することができない。
×
314-01-4買主が建物を、詐欺について善意の第三者に転売して所有権移転登記を済ませても、売主は詐欺による取消しをして、第三者から建物の返還を求めることができる。×
408-05-1第三者が移転登記を受ける際に、売買契約が買主の詐欺に基づくものであることを知らなかった場合で、当該登記の後に売主により売主・買主間の売買契約が、取り消されたとき、第三者は、売主に対して土地の所有権を対抗できる。
501-03-1A所有の土地が、AからB、BからCへと売り渡され、移転登記も完了している場合、Aが、Bにだまされて土地を売ったので、その売買契約を取り消したときは、そのことを善意のCに対し対抗することができる。×

3 正しい

BとEとの関係は、肢1と同様、二重譲渡の関係にあるようにも見えます。
しかし、Eは、Bが登記を備えていないのに乗じ、Bに高値で売りつけて利益を得る目的でAから甲土地を購入し所有権移転登記を得たのですから、背信的悪意者に該当します(最判昭43.08.02)。つまり、Eは、Bに登記がないことを主張する正当な利益を有していないため、民法177条の「第三者」にあたりません。
したがって、Eは、登記を備えてはいるものの、Bに対して甲地の所有権を主張することができません。
28-03-3

■類似過去問
内容を見る
対抗問題:悪意者・背信的悪意者(民法[08]3(1)(2))
 年-問-肢内容正誤
単純悪意者
115-03-1第一買主の存在を知らずに土地を購入し登記した者→第一買主:対抗可能。
203-04-1未登記の第一買主→第一買主の存在を知りつつ土地を譲り受け登記した第二買主:対抗不可。
背信的悪意者
128-03-3
Aから甲土地を購入したBは、所有権移転登記を備えていなかった。Eがこれに乗じてBに高値で売りつけて利益を得る目的でAから甲土地を購入し所有権移転登記を備えた場合、EはBに対して甲土地の所有権を主張することができない。
224-06-4背信的悪意者(第二買主)からの善意の転得者→第一買主:対抗可能。
315-03-2買主を欺き著しく高く売りつける目的で土地を購入した者→買主:登記があっても対抗不可。
410-01-2買主→買主が登記を受けていないことに乗じ、高値で売りつけ不当利益を得る目的で土地を購入した者:登記がなくても対抗可能。
507-02-2買主→買主を強迫して登記申請を妨げた者:登記がなくても対抗可能。
607-02-3買主→買主から登記手続を委任されたにも関わらず自らに登記移転した者:登記がなくても対抗可能。

4 誤り

■動機の錯誤

意思表示の動機は、表意者がこれを意思表示の内容とし、明示又は黙示的に表示したときに限り、法律行為の要素となります(民法95条、最判昭29.11.26)。
(本肢では、この点の事情が明らかになっていません。)

■錯誤の効果

錯誤による意思表示は、無効とされています(民法95条本文)。
本肢は、「取消し」の問題としている点が第一の誤りです。

■表意者以外による無効主張

錯誤無効の制度は、錯誤に陥った表意者を保護する制度です。したがって、表意者が無効を主張する意思がない場合に、他人が無効を主張することは、原則として許されません(民法95条。最判昭40.09.10)。
表意者ではないAが錯誤の主張をしている点が、本肢の第二の誤りです。

■類似過去問
内容を見る
錯誤:動機の錯誤(民法[02]4(3))
 年-問-肢内容正誤
128-03-4
売主Aと買主Bとの間の売買契約が、Bの意思表示の動機に錯誤があって締結されたものである場合、Bが所有権移転登記を備えていても、AはBの錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。
×
223-01-1動機が表示されない場合でも、動機の錯誤を主張できる。×
321-01-3動機は、明示的に表示された場合、法律行為の要素となる。
421-01-4動機は、黙示的に表示された場合、法律行為の要素とならない。×
517-02-2動機が表示された場合でも、意思表示が無効となることはない。×
613-02-3動機が表示されない場合、錯誤無効を主張できない。
錯誤:効果(民法[02]4(2)①)
 年-問-肢内容正誤
128-03-4
売主Aと買主Bとの間の売買契約が、Bの意思表示の動機に錯誤があって締結されたものである場合、Bが所有権移転登記を備えていても、AはBの錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。
×
225-01-1意思表示に要素の錯誤があった場合、表意者は取り消すことができる旨は、民法の条文に規定されている。×
323-01-1土地の買主がその土地は将来地価が高騰すると勝手に思い込んで売買契約を締結したところ、実際には高騰しなかった場合、動機の錯誤を理由に本件売買契約を取り消すことができる。×
錯誤:表意者以外による無効主張(民法[02]4(2))
 年-問-肢内容正誤
130-01-2
[AがBに甲土地を売却した。]Aが甲土地を売却した意思表示に錯誤があったとしても、Aに重大な過失があって無効を主張することができない場合は、BもAの錯誤を理由として無効を主張することはできない。
228-03-4
売主Aと買主Bとの間の売買契約が、Bの意思表示の動機に錯誤があって締結されたものである場合、Bが所有権移転登記を備えていても、AはBの錯誤を理由にAB間の売買契約を取り消すことができる。
×
321-01-2表意者に無効主張の意思がない場合、第三者が無効主張できない。
417-02-4表意者が錯誤を認めていない場合でも、相手方が無効主張できる。×
513-02-2表意者が錯誤を認めず、無効主張の意思がない場合、表意者の債権者が債権者代位権を行使できる。×

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