【宅建過去問】(令和07年問09)連帯債務
連帯債務者の一人について生じた次の事由のうち、民法の規定によれば、他の連帯債務者に対して効力が生じないものとして正しいものはどれか。なお、この問において、連帯債務者の一人について生じた事由が他の連帯債務者に対して効力が生じる旨の別段の意思表示はないものとする。
- 債権者がした連帯債務者の一人に対する履行の請求
- 連帯債務者の一人と債権者との間の混同
- 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者がした相殺の援用
- 連帯債務者の一人と債権者との間の更改
Contents
正解:1
登場人物の設定
登場人物に名前がないと、図が描きにくいし、理解が進みません。
ここでは、令和03年10月問02の設例を使います。
債務者A、B、Cの3名が、内部的な負担部分の割合は等しいものとして合意した上で、債権者Dに対して300万円の連帯債務を負った。
連帯債務者の一人に生じた事由
令和2年施行の改正民法で大きく変わったところです。分かりやすい方向に整理されたのですが、改正前の民法を知っている人は、残像に迷うことがあるかも知れません。最初にアウトラインを確認しておきましょう。
絶対効・相対効
| 絶対効 | 一人の連帯債務者に生じた事由が、他の連帯債務者に影響を与える。 | 例外 |
| 相対効 | 一人の連帯債務者に生じた事由が、他の連帯債務者には影響を与えない。 | 原則 |
原則は、相対効です。つまり、連帯債務者の一人に何らかの事情が生じたとしても、他の連帯債務者には影響しません。
例外的に、絶対効、つまり、連帯債務者の一人に生じた事情が他の連帯債務者に影響を与える場合があります。
絶対効と相対効の2種類しかないのに、一つ一つの事由について「これは絶対効。あれは相対効…」と覚えようとする人がいます。しかし、それはムダ!わずかに存在する例外=絶対効だけ覚えれば、「これ以外は相対効」と処理できるからです。
絶対効が生じる場合
以下の4パターンしかありません。しかも④については、この問題の冒頭文のように「別段の意思表示はないものとする」で済まされるケースが多いと思います。①②③をしっかり覚えれば、それで対処可能です。
| ①弁済(代物弁済・供託・相殺) | 債務が消滅するケース |
| ②更改 | 債務の要素を変更する契約をすること |
| ③混同 | 債権者=債務者となること |
| ④当事者の合意 | 別段の意思表示がある |
1 正しい
履行の請求は、絶対効のリストに載っていません。ということは、相対効しか生じないことになります(民法441条本文)。
したがって、Dが、連帯債務者の一人であるAに対して裁判上の請求をしても、他の連帯債務者(BとC)にはその効力が及びません。

※履行の請求の効用は、債務者の消滅時効の完成猶予を得ることです(民法147条1項1号)。
Aに履行の請求をしたことにより、Aの債務の消滅時効は完成が猶予されます。しかし、BやCの債務の消滅時効には影響がなく、時効はそのまま完成に向かって進行します。
■参照項目&類似過去問
内容を見る連帯債務者の一人に生じた事由(履行の請求)(民法[17]4(4)③)
[共通の設定]
AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1,000万円を借り入れた。
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | R07-09-1 | 債権者がした連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対して効力が生じない。 | ◯ |
| 2 | R03-02-1 | AがBに対して裁判上の請求を行ったとしても、特段の合意がなければ、CがAに対して負う債務の消滅時効の完成には影響しない。 | ◯ |
| 3 | H29-08-1 | AがBに対して履行の請求をした場合、Cがそのことを知っていれば、Cについても、その効力が生じる。 | × |
| 4 | H20-06-2 | Aが、Bに対して履行を請求した効果はCに及ばす、Cに対して履行を請求した効果はBに及ばない。 | ◯ |
| 5 | H08-04-2 | Aが、Bに対し代金の支払いを請求した場合、その効力はCには及ばない。 | ◯ |
| 6 | H03-06-3 | AがBに対して貸金の返済を請求して、Aの貸金債権の消滅時効の完成が猶予されたときでも、Cの債務については、猶予されない。 | ◯ |
| 7 | H02-07-4 | BとCが連帯債務を負う場合、AのBに対する履行の請求は、Cに対しては効力を生じない。 | ◯ |
| 8 | H01-10-1 | AがBに対して代金支払いの請求をすると、Aの代金債権の消滅時効は、Cについても完成が猶予される。 | × |
2 誤り
絶対効を生じる事由の1つである混同のケースです。
債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅します(民法520条)。これが混同です。
連帯債務者の一人と債権者との間に混同があった場合、債権は、消滅します(同法440条)。
例えば、連帯債務者の1人であるAが死亡し、債権者Dが単独で相続したとしましょう。つまり、DとAに混同が起こったわけです。この場合、Aだけでなく、B・Cの連帯債務も消滅します。これが絶対効という意味です。

■参照項目&類似過去問
内容を見る連帯債務者の一人に生じた事由(混同)(民法[17]4(2)③)
[共通の設定]
AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1,000万円を借り入れた。
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | R07-09-2 | 連帯債務者の一人と債権者との間の混同は、他の連帯債務者に対して効力が生じない。 | × |
| 2 | H01-10-4 | Aが死亡し、Bがその相続人としてその代金債権を承継しても、Cの貸金返済債務は、消滅しない。 | × |
3 誤り
絶対効を生じる事由の1つである相殺のケースです。
相殺でも弁済でも、連帯債務が減少することにより、他の連帯債務者の債務も当然に減少します。
例えば、連帯債務者の1人であるAが債権者Dに対して300万円の債権(反対債権)を持っていたとしましょう。この反対債権を使って、AがDに対する連帯債務と相殺しました。これにより、Dの債権は消滅したわけです。この場合、Aだけでなく、B・Cの連帯債務も消滅します。これが絶対効という意味です。

■参照項目&類似過去問
内容を見る連帯債務者の一人に生じた事由(相殺)(民法[17]4(3))
[共通の設定]
AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1,000万円を借り入れた。
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | R07-09-3 | 連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において、その連帯債務者がした相殺の援用は、他の連帯債務者に対して効力が生じない。 | × |
| 2 | R03-02-2 | BがAに対して1,000万円の債権を有している場合、Bが相殺を援用しない間に1,000万円の支払の請求を受けたCは、BのAに対する債権で相殺する旨の意思表示をすることができる。 | × |
| 3 | H29-08-2 | Bが、Aに対する債務と、Aに対して有する200万円の債権を対当額で相殺する旨の意思表示をAにした場合、CのAに対する連帯債務も200万円が消滅する。 | ◯ |
| 4 | H13-04-4 | Aから請求を受けたBは、Cが、Aに対して有する債権をもって相殺しない以上、Cの負担部分についても、Bが債務の履行を拒むことはできない。 | × |
4 誤り
絶対効を生じる事由の1つである更改のケースです。
更改とは、債務の要素を変更する契約をすることをいいます(民法513条)。
例えば、AがDとの間で、「300万円の金銭を支払う代わりに、Aの所有する甲土地をDに引き渡す。」という契約をしたとしましょう。これは、契約内容の重要な変更であり、更改にあたります。
この場合、BやCがこの債務(甲土地を引き渡す)を履行するのは不可能です。連帯債務の関係を解消するしかありません。つまり、Aだけでなく、BやCも、「Dに300万円の金銭を支払う」という債務を負わないことになります。これが絶対効という意味です。

■参照項目&類似過去問
内容を見る連帯債務者の一人に生じた事由(更改)(民法[17]4(2)②)
[共通の設定]
AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1,000万円を借り入れた。
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | R07-09-4 | 連帯債務者の一人と債権者との間の更改は、他の連帯債務者に対して効力が生じない。 | × |
| 2 | R03-02-4 | BとAとの間に更改があったときは、1,000万円の債権は、Cのために消滅する。 | ◯ |



