【宅建過去問】(平成07年問03)連帯保証と消滅時効


AのBに対する債権(連帯保証人C)の時効の完成猶予又は更新に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. AがCに対して訴訟により弁済を求めた場合、Bの債務についても、時効の完成が猶予される。
  2. AがBに対して訴訟により弁済を求めても、その訴えが却下された場合は、時効更新の効力は生じない。
  3. AがBに対して訴訟により弁済を求めた場合、Cの債務についても、時効の完成が猶予される。
  4. BがAに対して債務の承認をした場合、Bが被保佐人であって、保佐人の同意を得ていなくても、時効更新の効力を生じる。

正解:1

裁判上の請求による時効の完成猶予・更新

肢1・2・3で、Aは、B又はCに対して訴訟により弁済を求めています。これは、裁判上の請求に当たります。この行為により、Aの債権の時効について、完成が猶予されます(民法147条1項1号)。
裁判上の請求をした場合であっても、訴え却下や棄却の判決が下されたり、Aによる訴えの取下げがあった場合のように、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその訴えが終了した場合、時効は更新されません。この場合、6か月の間、時効の完成が猶予されるだけです(同項柱書き)。
一方、Aの主張が認められ、認容判決があった場合、消滅時効は、更新されます(同条2項)。ここから新たな時効がカウントされ、その期間は、判決の日から10年ということになります(同法169条1項)。

1 誤り

連帯保証人に履行を請求した場合については、連帯債務に関するルールが準用されます(民法458条)。そして、連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しては、その効力を生じません(相対効。民法441条本文)。
したがって、連帯保証人Cに履行を請求しても、主たる債務者Bの債務には全く影響を与えません。Bの債務については、そのまま時効が進行します。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
連帯保証人について生じた事由(民法[18]3(2)②)
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
BがAに対して負う1,000万円の債務について、Dが連帯保証人となっている。
免除
120-06-1Aが、Bに対して債務を免除した場合にはDが、Dに対して債務を免除した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。
×
216-06-2AがDに対して連帯保証債務の全額を免除すれば、Bも債務の全額を免れる。
×
時効の完成
120-06-3Bについて時効が完成した場合にはDが、Dについて時効が完成した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。
×
履行の請求
120-06-2Aが、Bに対して履行を請求した効果はDに及ぶが、Dに対して履行を請求した効果はBに及ばない。
215-07-3Dの保証債務がBとの連帯保証債務である場合、Dに対する履行の請求による時効の完成猶予は、Bに対してはその効力を生じない。
310-04-3AがDに対して請求の訴えを提起することにより、Bに対する関係でも消滅時効の完成が猶予されることになる。
×
407-03-1AがDに対して訴訟により弁済を求めた場合、Bの債務についても、時効の完成が猶予される。
×
502-07-3AのDに対する履行の請求は、Bに対しては効力を生じない。

2 正しい

Aの訴えが却下された場合、時効は、更新されません。却下の後6か月の間、時効の完成が猶予されるだけです。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
時効の完成猶予・更新:裁判上の請求(民法[06]5(2)③・(3)①)
年-問-肢内容正誤
1R03-02-1債務者A、B、Cの3名が、内部的な負担部分の割合は等しいものとして合意した上で、債権者Dに対して300万円の連帯債務を負った。DがAに対して裁判上の請求を行ったとしても、特段の合意がなければ、BとCがDに対して負う債務の消滅時効の完成には影響しない。
2R02s-05-2訴えの提起後に当該訴えが取り下げられた場合には、特段の事情がない限り、時効の更新の効力は生じない。×
3R01-09-1訴えの提起後に当該訴えが取り下げられた場合には、特段の事情がない限り、時効の更新の効力は生じない。
4R01-09-2訴えの提起後に当該訴えの却下の判決が確定した場合には、時効の更新の効力は生じない。
5R01-09-3訴えの提起後に請求棄却の判決が確定した場合には、時効の更新の効力は生じない。
6R01-09-4訴えの提起後に裁判上の和解が成立した場合には、時効の更新の効力は生じない。×
709-04-4AがBの不動産に抵当権を有している場合に、Cがこの不動産に対して強制執行の手続を行ったときは、Aがその手続に債権の届出をしただけで、Aの債権の時効は更新される×
807-03-2
債権者が債務者に対して訴訟により弁済を求めても、その訴えが却下された場合は、時効更新の効力は生じない。
901-02-3
金銭債権の債権者Aが訴えを取り下げた場合、Aの金銭債権は、Aがその取下げをした日から10年間権利を行使しないとき、消滅する。×

3 正しい

主たる債務者Bに履行を請求すれば、保証債務の付従性により、連帯保証人Cにも履行を請求したことになります。これにより、Cの消滅時効についても、完成が猶予されわけです。
その他にも、主たる債務者に関して時効の完成猶予又は更新があれば、保証人の消滅時効も、完成猶予又は更新されます(民法457条1項)。

※このことは、通常の保証でも、連帯保証でも共通です。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
主たる債務者について生じた事由(民法[18]2(2)①②)
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
BがAに対して負う1,000万円の債務について、Cが保証人となっている。
免除
120-06-1Aが、Bに対して債務を免除した場合にはCが、Cに対して債務を免除した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。
×
時効完成
120-06-3Bについて時効が完成した場合にはCが、Cについて時効が完成した場合にはBが、それぞれ全額の債務を免れる。
×
履行の請求
120-06-2Aが、Bに対して履行を請求した効果はCに及ぶが、Cに対して履行を請求した効果はBに及ばない。
215-07-4Cの保証債務にBと連帯して債務を負担する特約がない場合、Bに対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、Cに対してもその効力を生ずる。
307-03-3AがBに対して訴訟により弁済を求めた場合、Cの債務についても、時効の完成が猶予される。
402-07-2AのBに対する履行の請求は、Cに対しては効力を生じない。×
債務の承認
116-06-4Bが債務を承認して時効が更新された場合にはCの保証債務に対しても時効更新の効力を生ずる。
主たる債務者の債権による相殺
106-09-4AがCに対して直接1,000万円の支払を求めて来ても、BがAに 600万円の債権を有しているときは、Cは、600万円の範囲で債務の履行を拒むことができるため、 400万円を支払えばよい。

4 正しい

債務者による債務の承認は、時効の更新事由に該当します(民法152条1項)。この承認は、行為能力の制限を受けている場合でもすることができます(同条2項)。
したがって、Bが被保佐人であっても、保佐人の同意を得ることなく債務を承認することが可能です。この承認により、Bの債務の時効は更新されます。

■参照項目&類似過去問
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時効の更新:権利の承認(債務者の承認)(民法[06]5(3)②)
年-問-肢内容正誤
1R02s-05-3権利の承認があったときは、その時から新たに時効の進行が始まるが、権利の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことを要しない。
230-04-4債務者が時効の完成の事実を知らずに債務の承認をした場合、その後、債務者はその完成した消滅時効を援用することはできない。
321-03-4消滅時効完成後に債務者が債権を承認した場合、時効完成を知らなかったとしても、時効の援用は許されない。
417-04-4消滅時効完成後に債務者が債権を承認した場合、時効完成を知らなかったとしても、時効の援用は許されない。
512-02-2物上保証人が、債権者に対し、金銭債務の存在を時効期間の経過前に承認した場合、当該債務の消滅時効の更新の効力が生じる。×
612-02-3主債務者が、債権者に対し、金銭債務の存在を時効期間の経過前に承認した場合、物上保証人は、当該債務の消滅時効の更新の効力を否定することができない。
707-03-4債務の承認をした場合、債務者が被保佐人であって、保佐人の同意を得ていなくても、時効更新の効力を生じる。

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