【宅建過去問】(平成07年問09)委任契約


Aは、Bにマンションの一室を賃貸するに当たり、管理を業としないCとの間で管理委託契約を締結して、Cに賃料取立て等の代理権を与えた。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

  1. Cは、Aとの間で特約がなくても、Aに対して報酬の請求をすることができる。
  2. Aは、CがBから取り立てた賃料を自己の生活費に消費したときは、Cに対して、その賃料額に、消費した日以後の利息を付した金額を支払うよう請求することができる。
  3. Aが死亡したとき、委託契約は終了するが、急迫の事情がある場合においては、Cは、その管理業務を行う必要がある。
  4. Cは、地震のため重傷を負った場合、Aの承諾を得ることなく、Dに委託して賃料の取立てをさせることができる。

正解:1

はじめに

07-09-0管理を業としない者(C)に、マンションの管理(法律行為でない事務)を委託する契約は、準委任契約である。したがって、委任に関する規定が全面的に準用される(民法656条)。

 

1 誤り

委任契約は、原則として無償契約であり、特約がない限り、報酬の請求をすることはできない(民法648条)。
本肢は、「特約がなくても、・・・報酬の請求をすることができる」とする点が誤り。

■参照項目&類似過去問
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報酬(民法[29]2(1))

[共通の設定]
Aが、A所有の不動産の売買をBに対して委任する。
年-問-肢内容正誤
1R02-05-1Aの責めに帰すべき事由によって履行の途中で有償の委任契約が終了した場合、Bは報酬全額をAに対して請求することができるが、自己の債務を免れたことによって得た利益をAに償還しなければならない。
2R02-05-3Bの責めに帰すべき事由によって履行の途中で有償の委任契約が終了した場合、BはAに対して報酬を請求することができない。×
3H14-10-2Bは、委任契約をする際、有償の合意をしない限り、報酬の請求をすることができないが、委任事務のために使った費用とその利息は、Aに請求することができる。
4H09-09-3Aは、その所有する土地について、第三者の立入り防止等の土地の管理を、当該管理を業としていないBに対して委託した。Bが有償で本件管理を受託している場合で、Bの責に帰すべからざる事由により本件管理委託契約が履行の中途で終了したときは、Bは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
5H07-09-1Bは、Aとの間で特約がなくても、Aに対して報酬の請求をすることができる。×

2 正しい

受任者(C)が、委任者(A)に引き渡すべき金額又はその利益のために用いるべき金額を自己のために消費したときは、その消費した日以後の利息を支払わなければならない(民法647条前段)。

3 正しい

委任契約は、以下の事由によって終了する(民法653条)。

したがって、委託者(A)が死亡した本肢のケースでは、委託契約は終了する。

委託契約が終了した場合であっても、急迫の事情があるときは、受託者又はその相続人等は、委託者又はその相続人等が委託事務を処理することができるに至るまで、必要な処分をしなければならない(同法654条)。

■参照項目&類似過去問
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委任契約:終了(民法[29]3(2))
年-問-肢内容正誤
1R03-03-アAがBとの間でB所有建物の清掃に関する準委任契約を締結していた場合、Aの相続人は、Bとの間で特段の合意をしなくても、当該準委任契約に基づく清掃業務を行う義務を負う。×
2R02-05-4AとBとの間で締結された委任契約において、委任者Aが受任者Bに対して報酬を支払うこととされていた。Bが死亡した場合、Bの相続人は、急迫の事情の有無にかかわらず、受任者の地位を承継して委任事務を処理しなければならない。
×
318-09-2委任者が破産手続開始決定を受けた場合、委任契約は終了する。
418-09-3委任契約が委任者の死亡により終了した場合、受任者は、委任者の相続人から終了についての承諾を得るときまで、委任事務を処理する義務を負う。×
518-09-4委任契約の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、相手方に対抗することができず、そのときまで当事者は委任契約上の義務を負う。
613-06-1委任契約において、委任者又は受任者が死亡した場合、委任契約は終了する。
709-09-4有償の準委任契約は、受託者の死亡によって終了し、受託者の相続人はその地位を相続しない。
807-09-3委任者が死亡したとき、委託契約は終了するが、急迫の事情がある場合においては、受任者は、その管理業務を行う必要がある。

4 正しい

委任は、委任者と受任者の信任関係をベースにするものであるから、受任者が自ら事務を処理しなければならない。他人に復委任することは、原則として、認められない。
例外的に復委任が認められるのは、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときに限られる(民法644条の2)。

本肢では、受託者(C)が地震のため重傷を負った、というのだから、「やむを得ない事由」が存在する。したがって、本人(A)の承諾を得なくても、Dに復委任することが可能である。

■参照項目&類似過去問
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復受任者の選任(民法[29]1(3))
年-問-肢内容正誤
1H07-09-4Aは、Bにマンションの一室を賃貸するに当たり、管理を業としないCとの間で管理委託契約を締結して、Cに賃料取立て等の代理権を与えた。Cは、地震のため重傷を負った場合、Aの承諾を得ることなく、Dに委託して賃料の取立てをさせることができる。

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