【宅建過去問】(平成09年問09)委任契約

Aは、その所有する土地について、第三者の立入り防止等の土地の管理を、当該管理を業としていないBに対して委託した。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

  1. Bが無償で本件管理を受託している場合は、「善良なる管理者の注意」ではなく、「自己の財産におけると同一の注意」をもって事務を処理すれば足りる。
  2. Bが無償で本件管理を受託している場合は、Bだけでなく、Aも、いつでも本件管理委託契約を解除することができる。
  3. Bが有償で本件管理を受託している場合で、Bの責に帰すべからざる事由により本件管理委託契約が履行の中途で終了したときは、Bは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
  4. Bが有償で本件管理を受託している場合で、Bが死亡したときは、本件管理委託契約は終了し、Bの相続人は、当該契約の受託者たる地位を承継しない。

正解:1

1 誤り

委託の受任者は、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う(民法644条)。これは、報酬を受け取る(有償)場合でも、無報酬(無償)の場合でも、異ならない。
無償の委任契約だからといって、「自己の自己の財産におけると同一の注意」に軽減されるわけではない。

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受任者の注意義務(民法[29]2(2))

[共通の設定]
Aが、A所有の不動産の売買をBに対して委任する。
年-問-肢内容正誤
1R02-05-2Bは、契約の本旨に従い、自己の財産に対するのと同一の注意をもって委任事務を処理しなければならない。×
2H20-07-2委託の受任者は、報酬を受けて受任する場合も、報酬で受任する場合も、善良な管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負う。
3H14-10-3Bが当該物件の価格の調査など善良な管理者の注意義務を怠ったため、不動産売買についてAに損害が生じたとしても、報酬の合意をしていない以上、AはBに対して賠償の請求をすることができない。×
4H09-09-1Bが無償で本件管理を受託している場合は、「善良なる管理者の注意」ではなく、「自己の財産におけると同一の注意」をもって事務を処理すれば足りる。×

2 正しい

委任契約は、各当事者がいつでもその解除をすることができる(民法651条1項)。これは、報酬を受け取る(有償)場合でも、無報酬(無償)の場合でも、異ならない。

※ただし、相手方に不利な時期に解除したときは、やむを得ない場合を除き、相手方の損害を賠償しなければならない(民法651条2項)。

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解除(民法[29]3(1))
年-問-肢内容正誤
1R04-09-ア委任によって代理権を授与された者は、報酬を受ける約束をしている場合であっても、いつでも委任契約を解除して代理権を消滅させて、代理人を辞することができる。
2H18-09-1委任契約は、委任者又は受任者のいずれからも、いつでもその解除をすることができる。ただし、相手方に不利な時期に委任契約の解除をしたときは、相手方に対して損害賠償責任を負う場合がある。
3H14-10-4委任はいつでも解除することができるから、有償の合意があり、売買契約成立寸前に委任者が理由なく解除して受任者に不利益を与えたときでも、受任者は委任者に対して損害賠償を請求することはできない。×
4H09-09-2Aは、その所有する土地について、第三者の立入り防止等の土地の管理を、当該管理を業としていないBに対して委託した。Bが無償で本件管理を受託している場合は、Bだけでなく、Aも、いつでも本件管理委託契約を解除することができる。
5H02-08-3無償の委任契約においては、各当事者は、いつでも契約を解除することができるが、その解除が相手方のために不利な時期であった場合、その損害を賠償しなければならない。

3 正しい

委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる(民法648条3項)。

※受任者は、特約がない限り、報酬を請求することができない(同条1項)。

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報酬(民法[29]2(1))

[共通の設定]
Aが、A所有の不動産の売買をBに対して委任する。
年-問-肢内容正誤
1R02-05-1Aの責めに帰すべき事由によって履行の途中で有償の委任契約が終了した場合、Bは報酬全額をAに対して請求することができるが、自己の債務を免れたことによって得た利益をAに償還しなければならない。
2R02-05-3Bの責めに帰すべき事由によって履行の途中で有償の委任契約が終了した場合、BはAに対して報酬を請求することができない。×
3H14-10-2Bは、委任契約をする際、有償の合意をしない限り、報酬の請求をすることができないが、委任事務のために使った費用とその利息は、Aに請求することができる。
4H09-09-3Aは、その所有する土地について、第三者の立入り防止等の土地の管理を、当該管理を業としていないBに対して委託した。Bが有償で本件管理を受託している場合で、Bの責に帰すべからざる事由により本件管理委託契約が履行の中途で終了したときは、Bは、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
5H07-09-1Bは、Aとの間で特約がなくても、Aに対して報酬の請求をすることができる。×

4 正しい

委任契約は、以下の事由によって終了する(民法653条)。

  1. 委任者or受任者の死亡
  2. 委任者or受任者の破産
  3. 受任者の後見開始

本肢では、受任者Bが死亡したことにより、委任契約は終了する。Bの相続人は、受託者たる地位を承継しない。

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委任契約:終了(民法[29]3(2))
年-問-肢内容正誤
1R03-03-アAがBとの間でB所有建物の清掃に関する準委任契約を締結していた場合、Aの相続人は、Bとの間で特段の合意をしなくても、当該準委任契約に基づく清掃業務を行う義務を負う。×
2R02-05-4AとBとの間で締結された委任契約において、委任者Aが受任者Bに対して報酬を支払うこととされていた。Bが死亡した場合、Bの相続人は、急迫の事情の有無にかかわらず、受任者の地位を承継して委任事務を処理しなければならない。
×
318-09-2委任者が破産手続開始決定を受けた場合、委任契約は終了する。
418-09-3委任契約が委任者の死亡により終了した場合、受任者は、委任者の相続人から終了についての承諾を得るときまで、委任事務を処理する義務を負う。×
518-09-4委任契約の終了事由は、これを相手方に通知したとき、又は相手方がこれを知っていたときでなければ、相手方に対抗することができず、そのときまで当事者は委任契約上の義務を負う。
613-06-1委任契約において、委任者又は受任者が死亡した場合、委任契約は終了する。
709-09-4有償の準委任契約は、受託者の死亡によって終了し、受託者の相続人はその地位を相続しない。
807-09-3委任者が死亡したとき、委託契約は終了するが、急迫の事情がある場合においては、受任者は、その管理業務を行う必要がある。

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