【宅建過去問】(平成15年問01)意思能力・行為能力


意思無能力者又は制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行った場合、その親族が当該意思表示を取り消せば、取消しの時点から将来に向かって無効となる。
  2. 未成年者が土地を売却する意思表示を行った場合、親権者が当該意思表示を取り消せば、取消しの時点から将来に向かって無効となる。
  3. 成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。
  4. 被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、保佐人は、当該意思表示を取り消すことができる。

正解:3

1 誤り

意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行った場合、その意思表示は無効であり(民法3条の2)、取消しの対象ではない。したがって、当初から効力を発生しないことになる。

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意思能力(民法[01]1(2))
年-問-肢内容正誤
1R03-05-4意思能力を有しないときに行った不動産の売買契約は、後見開始の審判を受けているか否かにかかわらず効力を有しない。
2H30-03-4AとBとの間で、A所有の甲建物をBに贈与する旨を書面で約した。本件約定の時点でAに意思能力がなかった場合、Bは、本件約定に基づき甲建物の所有権を取得することはできない。
3H24-03-1意思能力を欠く状態での意思表示は、無効である。
4H20-01-1成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。
5H19-01-4A所有の甲土地についてのAB間の売買契約が、Aが泥酔して意思無能力である間になされたものである場合、Aは、酔いから覚めて売買契約を追認するまではいつでも売買契約を取り消すことができ、追認を拒絶すれば、その時点から売買契約は効となる。×
6H17-01-2自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方である買主Bが意思無能力者であった場合、Bは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。×
7H15-01-1意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行った場合、その親族が当該意思表示を取り消せば、取消しの時点から将来に向かって無効となる。×
8H02-04-1A所有の土地が、AからBへと売り渡された。Aが成年被後見人の場合、Aは、契約の際完全な意思能力を有していてもAB間の契約を取り消し、Cに対して所有権を主張することができる。

2 誤り

未成年者は、法定代理人の同意を得ずに行った法律行為を取り消すことができる(民法5条1項、2項)。
親権者も、未成年者の法定代理人として、取消権を有している(同法120条1項)。

取り消された行為は、初めから無効であったものとみなされる(同法121条)。
本肢は、「取消しの時点から将来に向かって無効」とする点が誤り。

3 正しい

成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合であっても、成年後見人は、その意思表示を取り消すことができる。
成年後見人には、そもそも同意権がないためである。

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成年被後見人(民法[01]3(1))
年-問-肢内容正誤
1R04-03-1成年後見人は、後見監督人がいる場合には、後見監督人の同意を得なければ、成年被後見人の法律行為を取り消すことができない。×
2R04-03-2相続の放棄は相手方のない単独行為であるから、成年後見人が成年被後見人に代わってこれを行っても、利益相反行為となることはない。×
3R04-03-3成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。×
4R04-03-4成年年齢は18歳であるため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。
5H26-09-1成年被後見人が第三者との間で建物の贈与を受ける契約をした場合には、成年後見人は、当該法律行為を取り消すことができない。×
6H26-09-4成年後見人は家庭裁判所が選任する者であるが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。
7H20-01-1成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。
8H18-12-1成年者Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況になった場合、Aの推定相続人はAの法定代理人となる。×
9H15-01-3成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。
10H02-04-1成年被後見人は、契約の際完全な意思能力を有していても契約を取り消すことができる。

4 誤り

「土地の売却」は「不動産に関する権利の得喪を目的とする行為」であるから、保佐人の同意を得なければならない(民法13条1項3号)。
被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、その意思表示は有効である。保佐人が、その意思表示を取り消すことはできない(民法13条4項)。

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被保佐人(民法[01]3(2))
年-問-肢内容正誤
1R04-03-3
成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。×
2H28-02-2
被保佐人が、不動産を売却する場合には、保佐人の同意が必要であるが、贈与の申し出を拒絶する場合には、保佐人の同意は不要である。×
3H22-01-3被保佐人については、不動産を売却する場合だけではなく、日用品を購入する場合も、保佐人の同意が必要である。×
4H20-01-4被保佐人が、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手方に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる。×
5H17-01-1自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方である買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。×
6H15-01-4被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、保佐人は、当該意思表示を取り消すことができる。×
7H06-02-4Aは、「近く新幹線が開通し、別荘地として最適である」旨のBの虚偽の説明を信じて、Bの所有する原野(時価20万円)を、別荘地として 2,000万円で購入する契約を締結した。Aが被保佐人であり、保佐人Cの同意を得ずに当該契約を締結した場合、Cは当該契約の締結にはCの同意がないとして、その無効を主張することができる。×

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【宅建過去問】(平成15年問01)意思能力・行為能力” に対して3件のコメントがあります。

  1. ロヒモト より:

    いつもお世話になっております。

    肢3について教えて下さい。
    本問は、「成年被後見人が成年後見人の事前の同意を『得ずに』土地を売却する意思表示を行った場合であっても、成年後見人は、その意思表示を取り消すことができる。」
    ことになるのでしょうか?

    「同意権がない」というのは、どのような場面でも取消し得るため、ある意味とても有利なのかと理解しております。

    お手すきのときにご教示頂けますと幸いです。

    1. 家坂 圭一 より:

      「成年被後見人が成年後見人の事前の同意を『得ずに』土地を売却する意思表示を行った場合であっても、成年後見人は、その意思表示を取り消すことができる。」
      ことになるのでしょうか?


      もちろん、取り消すことができます。
      ・同意を得ていた場合でも、取り消すことができるのに、
      ・同意を得ない場合は、取り消すことができない
      というのは、あり得ません。

      「同意権がない」というのは、どのような場面でも取消し得るため、ある意味とても有利なのかと理解しております。


      精神上の障害のあるかたを保護するための制度です。
      有利・不利で理解する問題ではないように思います。

      また、「どのような場面でも取消し得る」とおっしゃいますが、制限行為能力者が詐術を用いた場合には取り消すことができません。

      1. ロヒモト より:

        ご回答いただきありがとうございます。
        有利・不利というのは不適切ですね。

        また、詐術の件も忘れないようにしたいと思います。

        「同意権」という概念の理解に少し苦慮しております。

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