【宅建過去問】(平成15年問38)8つの規制
宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者でないBとの間で締結した売買契約に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定に違反しないものはどれか。
- Aは、Bとの間で3,000万円の宅地の売買契約を締結したが、契約前に当該宅地の周辺の価格が値上がりしているので、2年後には、当該宅地の価格が上昇し、Bが転売によって利益を得ることが確実である旨の説明を行った。
- Aは、Bとの間で建築工事が完了した1億円の新築マンションの売買契約を締結し、宅地建物取引業法第41条の2に規定する手付金等の保全措置を講じたうえで、当該マンションの引渡し前に2,000万円を手付金として受領した。
- Aは、Bとの間で3,000万円の宅地の売買契約を締結したが、契約当日、Bが手付金を一部しか用意できなかったため、残りの手付金をAが貸し付け、契約の締結を誘引した。
- Aは、Bとの間で3,000万円の宅地の売買契約を締結したが、特約の定めにより、Bの債務不履行を理由とする契約解除に伴い、500万円の損害賠償及び同額の違約金をそれぞれ請求した。
Contents
正解:2
1 誤り
宅地建物取引業者は、契約締結の勧誘に際し、相手方に対して確実に利益が生じるかのような誤解を生じさせる断定的判断を提供する行為をしてはならない(宅地建物取引業法47条の2第1項)。
本肢の「2年後には、当該宅地の価格が上昇し、Bが転売によって利益を得ることが確実である旨の説明」は、まさにこの断定的判断の提供行為であり、宅建業法に違反する。
■類似過去問(断定的判断の提供・威迫行為の禁止)
内容を見る
断定的判断の提供・威迫行為の禁止(宅建業法[09]7(4)①)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R01-27-エ | 宅地建物取引業者は、宅地建物取引業に係る契約の締結の勧誘をするに際し、その相手方に対し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供する行為をしてはならない。 | ◯ |
2 | 27-41-イ | 「弊社が数年前に分譲したマンションが、先日高値で売れました。このマンションはそれより立地条件が良く、また、近隣のマンション価格の動向から見ても、5年後値上がりするのは間違いありません。」という発言は、宅建業法に違反しない。 | × |
3 | 26-43-4 | 「近所に幹線道路の建設計画があるため、この土地は将来的に確実に値上がりする」と説明した場合、宅建業法に違反する | ◯ |
4 | 18-40-1 | 利益を生ずることが確実であると誤解させる断定的判断を提供する行為をしたが、実際に売買契約の成立には至らなかった場合、宅建業法に違反しない | × |
5 | 15-38-1 | 「2年後には価格が上昇し転売利益は確実」という発言は宅建業法に違反しない | × |
6 | 08-40-2 | 「周辺の土地の価格が、最近5年間で2.5倍になっていますから、この土地の価格も今後5年間に2倍程度になることは確実です」という発言は適切である | × |
関連過去問:威迫行為の禁止 | |||
1 | 27-43-3 | 宅建業者が契約の相手方を威迫し契約締結を強要したことが判明した場合、免許権者が情状が特に重いと判断したときは、免許を取り消さなければならない | ◯ |
2 正しい
【手付金の額の制限】
宅建業者が自ら売主となる売買契約では代金の2/10を超える額の手付を受領することができない(宅地建物取引業法39条1項)。
本肢では、売買代金の2/10は2,000万円であるから、Aの行為はこの規定に違反しない。
【手付金の保全措置】
工事完了後の物件については、代金額の1/10を超える手付金等については、手付金等の保全措置を講じたうえで、受領することが可能である(宅地建物取引業法41条の2第1項)。
本肢では、手付金の保全措置を講じているので、2,000万円(代金額の2/10)の手付金を受領しても違法とはいえない。
■類似過去問(手付の額の制限)
内容を見る
手付の額の制限(宅建業法[18]2(1)(2))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 30-29-3 | [Aは、Bとの間で、Aが所有する建物を代金2,000万円で売却する売買契約を締結した。]Aは宅地建物取引業者であるが、Bは宅地建物取引業者ではない場合において、Aは、本件契約の締結に際して、500万円の手付を受領した。 | × |
2 | 27-36-イ | 原則として20%を超える手付金を受領できないが、あらかじめ買主の承諾を得た場合に限り、30%まで受領できる。 | × |
3 | 27-43-2 | 甲県に本店、乙県に支店を設置する宅地建物取引業者B(国土交通大臣免許)は、自ら売主となる乙県内におけるマンションの売買の業務に関し、乙県の支店において当該売買の契約を締結するに際して、代金の30%の手付金を受領した。この場合、Bは、甲県知事から著しく不当な行為をしたとして、業務停止の処分を受けることがある。 | × |
4 | 26-33-2 | 保全措置を講じた上で、代金の20%の手付金を受領しても宅建業法に違反しない。 | ◯ |
5 | 21-37-1 | 5%の手付を受領する予定がある場合、損害賠償額の予定額の限度は15%。 | × |
6 | 21-39-4 | 保全措置を講じれば、代金の40%の手付を受領可能。 | × |
7 | 21-40-3 | 買主の承諾があれば、代金の30%の手付金を受領可能。 | × |
8 | 16-45-3 | 保全措置を講じれば、代金の30%の手付を受領可能。 | × |
9 | 15-38-2 | 保全措置を講じた上で、代金の20%の手付金を受領しても宅建業法に違反しない。 | ◯ |
10 | 14-40-1 | 買主の承諾があれば、代金の20%を超える手付金を受領可能。 | × |
11 | 13-42-1 | 手付金が代金の2割を超える場合、保全措置が必要。 | × |
12 | 09-44-3 | 保全措置を講じれば、代金の20%を超える手付金を受領可能。 | × |
13 | 08-46-1 | 手付として代金の3割を受領した場合、買主が手付放棄して解除したときでも、売主は手付を一切返還する必要がない。 | × |
14 | 07-43-4 | 「保全措置を講ずるので、手付金は代金の30%」という特約があれば、その手付金を受領可能。 | × |
15 | 07-47-4 | 保全措置を講じれば、代金の20%の手付金を受領可能。 | ◯ |
16 | 04-41-4 | 保全措置を講じれば、代金の20%を超える手付金を受領可能。 | × |
17 | 02-40-4 | 保全措置を講じれば、代金の25%の手付金を受領可能。 | × |
■類似過去問(手付金等の保全措置:工事完了後の物件)
内容を見る
保全措置が不要な場合(完成物件)(宅建業法[19]3(1))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 30-38-1 | [宅地建物取引業者である売主は、宅地建物取引業者ではない買主との間で、戸建住宅の売買契約(所有権の登記は当該住宅の引渡し時に行うものとする。)を締結した。]当該住宅が建築工事の完了後で、売買代金が3,000万円であった場合、売主は、買主から手付金200万円を受領した後、当該住宅を引き渡す前に中間金300万円を受領するためには、手付金200万円と合わせて保全措置を講じた後でなければ、その中間金を受領することができない。 | ◯ |
2 | 28-28-イ | 代金4,000万円/手付金400万円→保全措置を講じることなく受領。 | ◯ |
3 | 24-34-ア | 代金2,000万円/手付金200万円・中間金100万円→中間金受領後に保全措置。 | × |
4 | 24-34-イ | 代金2,000万円/代金に充当される申込証拠金10万円・手付金200万円→保全措置を講じた上で手付金を受領。 | ◯ |
5 | 24-38-ウ | 代金3,000万円/手付金300万円→保全措置を講じなければ受領できない。 | × |
6 | 23-37-2 | 代金の10分の2の手付金→受領するまでに保全措置が必要。 | ◯ |
7 | 20-41-2 | 代金5,000万円/手付金700万円→保全措置を講じずに受領できる。 | × |
8 | 17-42-1 | 代金4,000万円/手付金400万円→保全措置を講じずに受領できる。 | ◯ |
9 | 17-42-2 | 代金4,000万円/手付金100万円・中間金600万円→中間金のみ保全措置を講じればよい。 | × |
10 | 15-38-2 | 手付金20%→保全措置を講じた上で受領。 | ◯ |
11 | 14-40-3 | 手付が代金の1/10を超え、かつ、1,000万円を超える→いかなる場合も保全措置が必要。 | × |
12 | 09-44-1 | 手付金が代金の10%を超えるが、営業保証金の額の範囲内→保全措置は不要。 | × |
13 | 09-44-4 | 手付金が本体価額(税引価格)の10%を超えるが、売買代金(税込価格)の10%以下→保全措置は不要。 | ◯ |
14 | 04-41-1 | 代金4,500万円/手付金400万円・中間金2000万円→中間金のみ保全措置を講じればよい。 | × |
15 | 02-42-4 | 代金1億円/手付金900万円・中間金4,100万円/引渡し・登記の移転は中間金の支払いと同時→保全措置なしで、手付金を受領できない。 | × |
16 | 01-42-2 | 代金12,000万円/手付金1,500万円・中間金4,500万円・残代金6,000万円/引渡し・登記移転は中間金の支払いと同時 →手付金の受領前に保全措置が必要。 | ◯ |
3 誤り
宅地建物取引業者は、手付金を貸し付けることによって、契約の締結を誘引してはならない(宅地建物取引業法47条3号)。
■類似過去問(手付貸与による契約誘引)
内容を見る
手付貸与による契約誘引の禁止(宅建業法[09]7(3))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | 30-40-ア | 宅地建物取引業者Aは、自ら売主として、建物の売買契約を締結するに際し、買主が手付金を持ち合わせていなかったため手付金の分割払いを提案し、買主はこれに応じた。 | × |
2 | 30-40-イ | 宅地建物取引業者Aは、建物の販売に際し、勧誘の相手方から値引きの要求があったため、広告に表示した販売価格から100万円値引きすることを告げて勧誘し、売買契約を締結した。 | ◯ |
3 | 29-34-1 | 宅地建物取引業者が、自ら売主として、宅地及び建物の売買の契約を締結するに際し、手付金について、当初提示した金額を減額することにより、買主に対し売買契約の締結を誘引し、その契約を締結させることは、法に違反しない。 | ◯ |
4 | 29-34-3 | 宅地建物取引業者が、宅地及び建物の売買の媒介を行うに際し、媒介報酬について、買主の要望を受けて分割受領に応じることにより、契約の締結を誘引する行為は、法に違反する。 | × |
5 | 29-34-4 | 宅地建物取引業者が、手付金について信用の供与をすることにより、宅地及び建物の売買契約の締結を誘引する行為を行った場合、監督処分の対象となるほか、罰則の適用を受けることがある。 | ◯ |
6 | 28-29-イ | 宅建業者が、建物の売買の媒介に際し、買主に対して手付の貸付けを行う旨を告げて契約の締結を勧誘したが、売買は成立しなかった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
7 | 28-34-4 | 宅建業者が、宅地の売買契約締結の勧誘に当たり、相手方が手付金の手持ちがないため契約締結を迷っていることを知り、手付金の分割払いを持ちかけたことは、契約締結に至らなかったとしても宅建業法に違反する。 | ◯ |
8 | 27-41-ウ | 「弊社と提携している銀行の担当者から、手付金も融資の対象になっていると聞いております。ご検討ください。」という発言は、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
9 | 26-43-1 | 手付金を複数回に分けて受領することとし、契約締結を誘引するのは、宅建業法に違反しない。 | × |
10 | 24-34-ウ | 手付の貸付により契約を誘引するのは、宅建業法に違反する。 | ◯ |
11 | 24-41-ウ | 宅地建物取引業者A社による投資用マンションの販売の勧誘において、A社の従業員は、勧誘の相手方が金銭的に不安であることを述べたため、売買代金を引き下げ、契約の締結を誘引した。 | ◯ |
12 | 23-41-ア | 宅地建物取引業者A社は、建物の販売に際して、買主が手付として必要な額を持ち合わせていなかったため、手付を貸し付けることにより、契約の締結を誘引した。 | × |
13 | 21-40-1 | 手付の貸付を告知し契約を誘引したが、契約不成立だった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
14 | 20-38-4 | 手付を後日支払うこととして、売買契約を締結するのは、宅建業法に違反しない。 | × |
15 | 18-40-3 | 手付の貸付を告知し契約を誘引したが、契約不成立だった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
16 | 15-38-3 | 手付金の一部を貸付け、契約の締結を誘引することは、宅建業法に違反しない。 | × |
17 | 13-42-2 | 業者間取引であれば、買主に対し手付金を貸し付けて契約の締結を誘引してもさしつかえない。 | × |
18 | 12-35-4 | 手付金に関し買主と銀行との間の金銭の貸借のあっせんをして、売買契約を締結させたとしても、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
19 | 12-40-3 | 買主の要求に応じ、手付金を分割払とすることができる。 | × |
20 | 11-42-2 | 手付の貸付を条件に契約を誘引したが、契約不成立だった場合、宅建業法に違反しない。 | × |
21 | 11-42-4 | 手付金額を減額することで契約を誘引し、契約が成立した場合、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
22 | 09-38-1 | 「手付金の不足額は契約成立後に支払う」旨説明して契約を成立させたとしても、宅建業法に違反しない。 | × |
23 | 09-40-1 | 手付金の不足額を宅建業者が立て替えて契約を成立させたとしても、宅建業法に違反しない。 | × |
24 | 04-44-1 | 手付金を分割払としても、宅建業法に違反しない。 | × |
25 | 01-48-1 | 手付の貸付により契約締結を誘引しても、宅建業法違反とならない。 | × |
4 誤り
債務不履行を理由とする契約解除に伴う損害賠償額の予定、違約金の定めについては、その合計額が代金額の2/10を超えてはならない(宅地建物取引業法38条1項)。
本肢では「500万円の損害賠償及び同額の違約金」を請求しており、合計1000万を請求していることになる。これは代金額の2/10を超えているので違法である。
■類似過去問(損害賠償の予定等の制限)
内容を見る
損害賠償額の予定(予定額の上限)(宅建業法[17]2(1))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R01-34-1 | 宅地建物取引業者が自ら売主として建物の売買を行う場合、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額として売買代金の額の10分の2を超えない額を予定するときは、37条書面にその内容を記載しなくてよい。 | × |
2 | 30-29-2 | [Aは、Bとの間で、Aが所有する建物を代金2,000万円で売却する売買契約を締結した。]A及びBがともに宅地建物取引業者である場合において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除があったときの損害賠償の額を600万円とする特約を定めた。 | ◯ |
3 | 29-31-ウ | 宅地建物取引業者Aは、宅地建物取引業者でないBとの間で、当事者の債務不履行を理由とする契約解除に伴う違約金について300万円とする特約を定めた場合、加えて、損害賠償の予定額を600万円とする特約を定めることができる。 | × |
4 | 28-28-エ | 損害賠償の予定額を25%とする特約が可能。 | × |
5 | 27-36-ア | 損害賠償20%+違約金10%とする特約は、全体として無効。 | × |
6 | 25-38-イ | 損害賠償の予定額と違約金の合計額を20%とする特約は有効。 | ◯ |
7 | 24-38-イ | 損害賠償10%+違約金20%の特約をした場合、違約金については全て無効。 | × |
8 | 23-37-3 | 損害賠償+違約金で10%の特約が可能。 | ◯ |
9 | 22-39-2 | 損害賠償20%+違約金10%の特約が可能。 | × |
10 | 22-40-2 | 損害賠償15%+違約金15%の特約が可能。 | × |
11 | 21-37-1 | 手付金5%+損害賠償15%の特約は不可。 | × |
12 | 20-40-2 | 売主の違約金30%の特約が可能。 | × |
13 | 18-39-2 | 損害賠償+違約金が20%を超える特約は不可。 | ◯ |
14 | 17-43-2 | 損害賠償40%とする特約が可能。 | × |
15 | 15-38-4 | 損害賠償+違約金で33%の特約は違法。 | ◯ |
16 | 12-40-4 | 代金の20%の手付金を違約手付とする特約を定めた場合、別途損害賠償の予定を定めることができる。 | × |
17 | 10-36-2 | 損害賠償を20%と予定した場合、違約金を定めることはできない。 | ◯ |
18 | 08-46-3 | 損害賠償を10%と予定しても、実際の損害が大きければ20%まで請求できる。 | × |
19 | 07-43-2 | 損害賠償の予定額20%、別に違約金10%という特約をすることはできない。 | ◯ |
20 | 07-45-4 | 損害賠償の予定額として、手付の5%に加え、20%を支払うという特約は有効である。 | × |
21 | 05-43-2 | 違約金20%とする特約が可能。 | ◯ |
22 | 04-44-4 | 違約金と損害賠償額の予定を合わせて20%超でも、宅建業法に違反しない。 | × |