【宅建過去問】(平成12年問02)物上保証・消滅時効
Aは、BのCに対する金銭債務を担保するため、A所有の土地に抵当権を設定し、物上保証人となった。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。
- Aは、この金銭債務の消滅時効を援用することができる。
- Aが、Cに対し、この金銭債務が存在することを時効期間の経過前に承認した場合、当該債務の消滅時効の更新の効力が生じる。
- Bが、Cに対し、この金銭債務が存在することを時効期間の経過前に承認した場合、Aは、当該債務の消滅時効の更新の効力を否定することができない。
- CからAに対する不動産競売の申立てがされた場合、競売開始決定の正本がBに送達された時からその競売が終了するまでの間は、時効が完成しない。
正解:2
1 正しい
物上保証人は、「権利の消滅について正当な利益を有する者」の典型例です(民法145条)。
したがって、物上保証人Aは、BのCに対する金銭債務に関し、消滅時効を援用することができます。
■参照項目&類似過去問
内容を見る
時効の効力(民法[06]4(1))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
時効の効力 | |||
1 | H29-02-1 | Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合、Bが甲土地の所有権を取得するのは、取得時効の完成時である。 | × |
時効の援用 | |||
1 | R02s-05-1 | 消滅時効の援用権者である「当事者」とは、権利の消滅について正当な利益を有する者であり、債務者のほか、保証人、物上保証人、第三取得者も含まれる。 | ◯ |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H30-04-2 | 後順位抵当権者は、先順位抵当権の被担保債権の消滅時効を援用することができる。 | × |
4 | H30-04-3 | 詐害行為の受益者は、債権者から詐害行為取消権を行使されている場合、当該債権者の有する被保全債権について、消滅時効を援用することができる。 | ◯ |
5 | H18-01-3 | 時効は、一定時間の経過という客観的事実によって発生するので、消滅時効の援用が権利の濫用となることはない。 | × |
6 | H12-02-1 | 物上保証人は、主たる債務者の消滅時効を援用できる。 | ◯ |
7 | H09-04-3 | 物上保証人は、債権の消滅時効を援用して債権者に抵当権の抹消を求めることができる。 | ◯ |
時効の利益の放棄 | |||
1 | R02-07-2 | 主たる債務の目的が保証契約の締結後に加重されたときは、保証人の負担も加重され、主たる債務者が時効の利益を放棄すれば、その効力は連帯保証人に及ぶ。 | × |
2 | H30-04-1 | 消滅時効完成後に主たる債務者が時効の利益を放棄した場合であっても、保証人は時効を援用することができる。 | ◯ |
3 | H21-03-2 | 賃借人が、賃貸人との建物賃貸借契約締結時に、賃料債権につき消滅時効の利益はあらかじめ放棄する旨約定したとしても、その約定に法的効力は認められない。 | ◯ |
2 誤り
債務者による債務の承認は、時効の更新事由に該当します(民法152条1項)。
しかし、物上保証人が被担保債権を承認しても、時効が更新されることはありません(最判昭62.09.03)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る
時効の更新:権利の承認(債務者の承認)(民法[06]5(3)②)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-05-3 | 権利の承認があったときは、その時から新たに時効の進行が始まるが、権利の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことを要しない。 | ◯ |
2 | 30-04-4 | 債務者が時効の完成の事実を知らずに債務の承認をした場合、その後、債務者はその完成した消滅時効を援用することはできない。 | ◯ |
3 | 21-03-4 | 消滅時効完成後に債務者が債権を承認した場合、時効完成を知らなかったとしても、時効の援用は許されない。 | ◯ |
4 | 17-04-4 | 消滅時効完成後に債務者が債権を承認した場合、時効完成を知らなかったとしても、時効の援用は許されない。 | ◯ |
5 | 12-02-2 | 物上保証人が、債権者に対し、金銭債務の存在を時効期間の経過前に承認した場合、当該債務の消滅時効の更新の効力が生じる。 | × |
6 | 12-02-3 | 主債務者が、債権者に対し、金銭債務の存在を時効期間の経過前に承認した場合、物上保証人は、当該債務の消滅時効の更新の効力を否定することができない。 | ◯ |
7 | 07-03-4 | 債務の承認をした場合、債務者が被保佐人であって、保佐人の同意を得ていなくても、時効更新の効力を生じる。 | ◯ |
3 正しい
(肢2参照。)
債務者による債務の承認は時効の更新事由に該当します(民法152条1項)。
そして、この承認の効力は、物上保証人Aにも及びます(最判平07.03.10)。
したがって、Aは、消滅時効の更新の効力を否定することができません。
■参照項目&類似過去問
内容を見る
時効の更新:権利の承認(債務者の承認)(民法[06]5(3)②)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R02s-05-3 | 権利の承認があったときは、その時から新たに時効の進行が始まるが、権利の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないことを要しない。 | ◯ |
2 | 30-04-4 | 債務者が時効の完成の事実を知らずに債務の承認をした場合、その後、債務者はその完成した消滅時効を援用することはできない。 | ◯ |
3 | 21-03-4 | 消滅時効完成後に債務者が債権を承認した場合、時効完成を知らなかったとしても、時効の援用は許されない。 | ◯ |
4 | 17-04-4 | 消滅時効完成後に債務者が債権を承認した場合、時効完成を知らなかったとしても、時効の援用は許されない。 | ◯ |
5 | 12-02-2 | 物上保証人が、債権者に対し、金銭債務の存在を時効期間の経過前に承認した場合、当該債務の消滅時効の更新の効力が生じる。 | × |
6 | 12-02-3 | 主債務者が、債権者に対し、金銭債務の存在を時効期間の経過前に承認した場合、物上保証人は、当該債務の消滅時効の更新の効力を否定することができない。 | ◯ |
7 | 07-03-4 | 債務の承認をした場合、債務者が被保佐人であって、保佐人の同意を得ていなくても、時効更新の効力を生じる。 | ◯ |
4 正しい
物上保証人に対する不動産競売では、正本が債務者に到達した時点から競売が終了するまでの間、被担保債権の消滅時効の完成が猶予されます(民法148条1項。最判平07.09.05)。
さらに、競売が終了した時には、消滅時効が更新されます(同条2項)。
【無料公開講座】スリー・ステップ学習法
宅建学習のプロセスを3段階に分け、着実なステップアップを目指す『スリー・ステップ学習法』。この講座の特長を実際に理解・体験していただくための「無料公開講座」です。
この3段階で、着実に合格レベルに進むことができます。
- [Step.1]基本習得編で宅建合格に必要な基礎知識を学ぶ。
- [Step.2]一問一答編で「一問一答式」の本試験過去問で基礎知識を確認し、○×を見分ける解法テクニックを身に付ける。
- [Step.3]過去演習編で「四択問題」の解決法を学ぶ。
この3段階で、着実に合格レベルに進むことができます。