【宅建過去問】(平成12年問03)先取特権
Aが、Bに賃貸している建物の賃料債権の先取特権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- Aは、賃貸した建物内にあるB所有の家具類だけでなく、Bが自己使用のため建物内に持ち込んだB所有の時計や宝石類に対しても、先取特権を有する。
- Bが、建物をCに転貸したときには、Aは、Cが建物内に所有する動産に対しても、先取特権を有する。
- Bがその建物内のB所有の動産をDに売却したときは、Aは、その代金債権に対して、払渡し前に差押えをしないで、先取特権を行使することができる。
- AがBから敷金を預かっている場合には、Aは、賃料債権の額から敷金を差し引いた残額の部分についてのみ先取特権を有する。
正解:3
■参照項目&類似過去問
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先取特権(民法[14]1(2))
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
法定担保物権 | |||
1 | 21-05-2 | 先取特権も質権も、債権者と債務者との間の契約により成立する。 | × |
2 | 19-07-1 | 建物の建築工事の費用について先取特権を行使するには、あらかじめ債務者である建築主との間で、先取特権の行使について合意しておく必要がある。 | × |
目的物 | |||
1 | 21-05-3 | 留置権は動産についても不動産についても成立するのに対し、先取特権は動産については成立するが不動産については成立しない。 | × |
物上代位 | |||
1 | 21-05-1 | 火災保険に基づく損害保険金請求権は、抵当権・先取特権による物上代位の対象となる。 | ◯ |
2 | 17-05-1 | 不動産の売買により生じた債権を有する者は先取特権を有し、当該不動産が賃借されている場合には、賃料に物上代位することができる。 | ◯ |
3 | 12‐03‐3 | 建物の賃料債権の先取特権に関し、賃借人が建物内の動産を第三者に売却した場合、賃貸人は、代金債権に対し、払渡し前に差押えをしなくても先取特権を行使できる。 | × |
動産の先取特権 | |||
1 | 23-07-2 | 建物の賃料債権の先取特権に関賃借人が建物に備え付けた動産、転貸人の転借料債権→先取特権の対象。 | ◯ |
2 | 12-03-1 | 賃借人所有の家具類、自己使用のために持ち込んだ時計・宝石類→先取特権の対象。 | ◯ |
3 | 12-03-2 | 転借人が建物内に所有する動産→先取特権の対象。 | ◯ |
4 | 12-03-3 | 賃借人が建物内の動産を第三者に売却した場合、賃貸人は、代金債権に対し、払渡し前に差押えをしなくても先取特権を行使できる。 | × |
5 | 12-03-4 | 敷金を受領している場合、敷金を差し引いた残額についてのみ先取特権が発生。 | ◯ |
不動産保存・不動産工事の先取特権 | |||
1 | 03-07-3 | 不動産を目的とする担保物権の順位は、すべて登記の先後による。 | × |
1 正しい
建物の賃貸人の先取特権は、賃借人が建物に備え付けた動産について存在する(民法313条2項)。
この「動産」には、B(賃借人)所有の家具類だけではなく、建物に持ち込んだ時計や宝石類なども含まれる(大判大03.07.04)。
2 正しい
賃借権の譲渡・転貸の場合には、賃貸人の先取特権は、譲受人・転借人の動産にもおよぶ。譲渡人・転貸人が受けるべき金銭についても、同様である(民法314条)。
したがって、A(賃貸人)は、C(転借人)が建物内に所有する動産に対しても先取特権を有する。
3 誤り
先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない(民法333条)。
したがって、Dに売却された動産自体に対して先取特権を行使することはできず、売却代金に対する行使(物上代位)が問題になる。
先取特権に基づいて、物上代位を行うことは認められているが(民法304条1項本文)、そのためには代金の払渡前に代金債権の差押えをする必要がある(民法304条1項ただし書き)。
本肢のいうように「差押えをしないで」先取特権を行使することはできない。
4 正しい
賃貸人は、敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する(民法316条)。
したがって、A(賃貸人)は、賃料債権の額から敷金を差し引いた残額の部分についてのみ、先取特権を有する。
初めまして。他の解説サイトよりも図解であったり、暗記ではなく本質は何かを意識された解説で非常に勉強になっております。
優先度も低く、業法をもっと詰めてやるべきというのは分かっているのですが、どうしても気になってしまいスッキリしないのでご質問をさせていただきます。
先取特権と物上代位の違いは何なのか?といつも混乱してしまいます。
LECのテキストには、物上代位に関する補足説明で、「転貸借がなされている場合において、賃借人が取得すべき転貸賃料債権について、原則として物上代位権を行使できません。(判例)」
と書いてあったので、この問題の2番も不適切かと思ったら○なので、大混乱してしまいました・・
はじめまして。
当サイトをご利用いただき、ありがとうございます。
ご質問にお答えします。
【1】先取特権と物上代位の違い?
「先取特権」は「担保物権の種類」の一つです。そして、「物上代位」は、「担保物権の性質」の一つです。
「種類」と「性質」という別次元のものですから、「先取特権と物上代位の違い」という質問には、答えようがありません。
以下の講義を見直して、「担保物権の種類」「担保物権の性質」をそれぞれ確認してください。
■民法[14]抵当権以外の担保物権
1.担保物権の種類
(2).先取特権のイメージ
3.担保物権の効力・性質
[Step.1]講義を見終わったら、以下の表で知識を整理しましょう。
【2】LECさんのテキストについて
当社はLECさんのテキストについて、制作や編集に関与していません。
そのため、内容について質問を受けても責任のある回答をすることができません。
LECさんのテキストについては、LECさんに直接質問されるほうが、速く確実な回答が得られます。
【3】キーワードから推測すると
キーワードだけ拾ってみると、この判例は、「抵当不動産の賃借人が取得する転貸賃料債権について抵当権者が物上代位権を行使することができるか」に関するものであるように思われます(最判平12.04.14)。
そうだとすると、先取特権に関するこの問題とは、全く別のものです。
先取特権に関しては、不動産賃貸の先取特権の目的物の範囲について、民法が明文で規定しています(同法314条)。
判例に頼る必要はありません。
抵当権と物上代位に関するこの判例については、平成24年問07肢4で出題されています。そちらで図解して説明しましたので、ぜひご覧ください。
家坂様
お世話になっております。
選択肢の回答とは少し外れてしまうかもしれませんが、
抵当権と先取特権の比較なんですが、約定または法定のほかに大した違いはないのでしょうか。
状況によってこういう名前分けがされているとしか思えなくて……
また、先取特権=抵当権の法定担保物権verという考え方は宅建試験において危険でしょうか。
漠然として大変恐縮ではございますが、ご教授いただければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
長野様
違いは他にもあります。
というより、「先取特権=抵当権の法定担保物権verという考え方」というのが、私には理解できません。
ここで考えてみましょう。
宅建試験試験対策として、先取特権にこだわる時間的余裕があるでしょうか。
先取特権の出題は、丸々一問きかれたのが、2問だけ。
(1)平成21年問05
https://e-takken.tv/21-05
(2)平成12年問03(この問題)
これ以外には、選択肢レベルで問われたのが、4肢あるだけです。
(詳細は、肢1の前にある「■類似過去問」をご覧ください。)
先取特権対策は、抵当権や根抵当権の勉強をして、権利関係以外の勉強もして、それでも時間が余ったら考えればいいことだと思います。
その際、宅建のテキストで、先取特権を詳細に説明したものは、あまりないかも知れません。
その場合は、「民法」の教科書を利用してください。
迅速な回答ありがとうございます。
先取特権はあまり重要度ないってことですね……
ほかの分野に時間を割こうと思います。
参考になりました。ありがとうございます。
どういたしまして。
それが得策だと思います。
出題の可能性がゼロとは言いませんが、労力に見合うほどの出題可能性はありません。