【宅建過去問】(平成11年問04)抵当権と賃貸借契約
肢2〜4は「短期賃貸借の保護」という現在存在しない制度を前提にしています。
真面目に検討する必要はありません。
Aは、Bからの借入金で建物を建築し、その借入金の担保として当該建物に第一順位の抵当権を設定し、その登記を行った。この登記の後、Aが、Cとの間で本件建物の賃貸借契約を締結した場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち、正しいものはどれか。
- AがCに対して賃貸借契約に基づき賃料債権を有している場合、Bは、建物に対する抵当権に基づく差押えの前であっても、当該賃料債権を抵当権に基づき差し押えることができる。
- AC間の賃貸借契約の契約期間が2年であり、その契約期間の満了に当たりAC間の合意でさらに2年間契約を更新した場合でも、当初の契約締結時から3年を経過した時点で、その賃貸借契約は終了する。
- AC間の賃貸借契約の契約期間が4年であった場合でも、契約締結時から3年間は、Cは、Bに対して賃借権を対抗することができる。
- AC間で契約期間を3年とする賃貸借契約を締結したため、建物の担保価値が下落し、Bの被担保債権全額の弁済を受けられなくなった場合でも、Bは、契約締結時から3年間は、Cの賃借権を認めるほかはない。
正解:1
1 正しい
抵当不動産が賃貸された場合、抵当権者Bは、賃借人Cの賃料についても抵当権を行使することができる(最判平01.10.27。民法372条、民法304条)。
抵当権に基づき、建物を差押える前であっても構わない。
■類似過去問
内容を見る
賃料に対する物上代位(民法[12]3(4)③)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03s-10-1 | Aは、Bからの借入金の担保として、A所有の甲建物に抵当権を設定し、その登記を行った。本件抵当権設定登記後にAC間の賃貸借契約が締結され、AのBに対する借入金の返済が債務不履行となった場合、Bは抵当権に基づき、AがCに対して有している賃料債権を差し押さえることができる。 | ◯ |
2 | 25-05-1 | 賃料債権に対して物上代位をしようとする場合には、被担保債権の弁済期が到来している必要はない。 | × |
3 | 24-07-1 | 抵当権設定登記後に、賃料債権につき一般債権者が差押えした場合、抵当権者は物上代位できない。 | × |
4 | 24-07-2 | 抵当権実行中でも、抵当権が消滅するまでは、賃料債権に物上代位が可能。 | ◯ |
5 | 24-07-4 | Aの抵当権設定登記があるB所有の建物について、CがBと賃貸借契約を締結した上でDに転貸していた場合、Aは、CのDに対する転貸賃料債権に当然に物上代位することはできない。 | ◯ |
6 | 20-04-1 | 抵当権実行を申し立てた抵当権者は、賃料への物上代位と賃貸借契約の解除が可能。 | × |
7 | 17-05-2 | 抵当権者は、賃料債権に物上代位することができる。 | ◯ |
8 | 15-05-1 | (抵当建物を抵当権設定者が賃貸しているケース)抵当権設定登記後に、賃料債権が第三者に譲渡され対抗要件を備えた場合、賃借人が当該第三者に弁済する前であっても、抵当権設定者は、物上代位権を行使して当該賃料債権を差し押さえることはできない。 | × |
9 | 15-05-2 | (抵当建物を抵当権設定者が賃貸しているケース)抵当権設定登記後に、賃料債権につき一般債権者が差押えした場合、差押命令が賃借人に送達された後は、抵当権者は物上代位できない。 | × |
10 | 11-04-1 | 抵当権者は、抵当権に基づく差押えの前であっても、賃料債権の差押えが可能。 | ◯ |
11 | 01-07-2 | 抵当権の効力は、被担保債権に不履行があった場合、その後に生じた抵当不動産の果実に及ぶ。 | ◯ |
2~4 誤り
平成16年の民法改正により、短期賃貸借保護(民法旧395条)の制度はなくなっている。
現在の制度では、
- 抵当権に対抗できるのは、以下の場合だけである
(1)登記した賃貸借で、
(2)その登記前に登記をした抵当権を有するすべての者が同意をし、
(3)かつ、その同意の登記があるときは、
(4)その同意をした抵当権者に対抗することができる(民法387条1項)。 - 対抗力がない場合には、「建物の競売における買受人の買受けの時から6箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない」という明渡し猶予の規定があるのみである。