■講義編■民法[01]制限行為能力者
最初に、民法の基本概念である権利能力・意思能力・行為能力について整理します。
学習の中心は、制限行為能力者制度です。制限行為能力者の種類(未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人)、それぞれの制限行為能力者が単独でできるのはどのような行為か、保護者の権限はどのような範囲か、などを勉強しましょう。
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Contents
1.能力
(1).権利能力
①意味
権利・義務の主体となる能力・資格
②分類
・自然人(出生~死亡)
・法人
★過去の出題例★
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H25-02-1 | 父母とまだ意思疎通することができない乳児は、不動産を所有することができない。 | × |
2 | H17-01-3 | 買主である団体Dが法律の規定に基づかずに成立した権利能力を有しない任意の団体であった場合、DがAとの間で売買契約を締結しても、当該土地の所有権はDに帰属しない。 | ◯ |
(2).意思能力
①意味
自分のした法律行為の結果を判断できる能力
②意思能力がない場合
法律行為は、無効
★過去の出題例★
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03-05-4 | 意思能力を有しないときに行った不動産の売買契約は、後見開始の審判を受けているか否かにかかわらず効力を有しない。 | ◯ |
2 | H30-03-4 | AとBとの間で、A所有の甲建物をBに贈与する旨を書面で約した。本件約定の時点でAに意思能力がなかった場合、Bは、本件約定に基づき甲建物の所有権を取得することはできない。 | ◯ |
3 | H24-03-1 | 意思能力を欠く状態での意思表示は、無効である。 | ◯ |
4 | H20-01-1 | 成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。 | ◯ |
5 | H19-01-4 | A所有の甲土地についてのAB間の売買契約が、Aが泥酔して意思無能力である間になされたものである場合、Aは、酔いから覚めて売買契約を追認するまではいつでも売買契約を取り消すことができ、追認を拒絶すれば、その時点から売買契約は効となる。 | × |
6 | H17-01-2 | 自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方である買主Bが意思無能力者であった場合、Bは、Aとの間で締結した売買契約を取り消せば、当該契約を無効にできる。 | × |
7 | H15-01-1 | 意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行った場合、その親族が当該意思表示を取り消せば、取消しの時点から将来に向かって無効となる。 | × |
8 | H02-04-1 | A所有の土地が、AからBへと売り渡された。Aが成年被後見人の場合、Aは、契約の際完全な意思能力を有していてもAB間の契約を取り消し、Cに対して所有権を主張することができる。 | ◯ |
(3).行為能力
①意味
単独で有効な法律行為ができる能力
②行為能力がない場合
法律行為は、取消し可能
★過去の出題例★
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H17-01-1 | 自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方である買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。 | × |
2 | H06-02-4 | Aは、「近く新幹線が開通し、別荘地として最適である」旨のBの虚偽の説明を信じて、Bの所有する原野(時価20万円)を、別荘地として 2,000万円で購入する契約を締結した。Aが被保佐人であり、保佐人Cの同意を得ずに当該契約を締結した場合、Cは当該契約の締結にはCの同意がないとして、その無効を主張することができる。 | × |
3 | H02-04-1 | A所有の土地が、AからB、Bから善意過失のCへと売り渡され、移転登記もなされている。Aが成年被後見人の場合、Aは、契約の際完全な意思能力を有していてもAB間の契約を取り消し、Cに対して所有権を主張することができる。 | ◯ |
4 | H01-03-2 | A所有の土地が、AからB、BからCへと売り渡され、移転登記も完了している。Aは、Bに土地を売ったとき未成年者で、かつ、法定代理人の同意を得ていなかったので、その売買契約を取り消した場合、そのことを善意のCに対し対抗することができない。 | × |
(4).まとめ
2.制限行為能力者制度-未成年者の例
(1)意味
18歳未満の者
(2)単独でできること
(3)保護者
①名称
法定代理人(親権者、未成年後見人)
②権限
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R04-03-4 | 成年年齢は18歳であるため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。 | ◯ |
2 | R03-05-1 | 19歳の者は未成年であるので、携帯電話サービスの契約や不動産の賃貸借契約を1人で締結することはできない。 | × |
3 | R03-05-3 | 営業を許された未成年者が、その営業に関するか否かにかかわらず、第三者から法定代理人の同意なく負担付贈与を受けた場合には、法定代理人は当該行為を取り消すことができない。 | × |
4 | H28-02-1 | 古着の仕入販売に関する営業を許された未成年者は、成年者と同一の行為能力を有するので、法定代理人の同意を得ないで、自己が居住するために建物を第三者から購入したとしても、その法定代理人は当該売買契約を取り消すことができない。 | × |
5 | H26-09-3 | 未成年後見人は、自ら後見する未成年者について、後見開始の審判を請求することはできない。 | × |
6 | H26-09-4 | 成年後見人は家庭裁判所が選任する者であるが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。 | ◯ |
7 | H25-02-2 | 営業を許可された未成年者が、その営業のための商品を仕入れる売買契約を有効に締結するには、父母双方がいる場合、父母のどちらか一方の同意が必要である。 | × |
8 | H22-01-1 | 土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになるので、未成年者が土地を売却するに当たっては、その法定代理人の同意は必要ない。 | × |
9 | H20-01-2 | 未成年者は、営業を許されているときであっても、その営業に関するか否かにかかわらず、その法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は、取り消すことができる。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りではない。 | × |
10 | H17-01-4 | 自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方Bが未成年者であり、法定代理人から宅地建物取引業の営業に関し許可を得ている場合、Bは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる。 | × |
11 | H14-02-3 | 未成年者であっても、成年者を代理人とすれば、法定代理人の同意を得ることなく、土地の売買契約を締結することができ、この契約を取り消すことはできない。 | × |
12 | H11-01-1 | 満18歳に達した者は、成年とされる。 | ◯ |
13 | H01-03-2 | A所有の土地が、AからB、BからCへと売り渡され、移転登記も完了している。Aは、Bに土地を売ったとき未成年者で、かつ、法定代理人の同意を得ていなかったので、その売買契約を取り消した場合、そのことを善意のCに対し対抗することができない。 | × |
3.制限行為能力者の種類
(1).成年被後見人
①意味
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者
②単独でできること
日用品の購入その他日常生活に関する行為
③保護者
成年後見人
④居住用不動産の処分についての許可
居住用不動産の
売却・賃貸・賃貸借の解除・抵当権の設定などの処分をする場合
家庭裁判所の許可が必要
★過去の出題例★
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R04-03-1 | 成年後見人は、後見監督人がいる場合には、後見監督人の同意を得なければ、成年被後見人の法律行為を取り消すことができない。 | × |
2 | R04-03-2 | 相続の放棄は相手方のない単独行為であるから、成年後見人が成年被後見人に代わってこれを行っても、利益相反行為となることはない。 | × |
3 | R04-03-3 | 成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。 | × |
4 | R04-03-4 | 成年年齢は18歳であるため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。 | ◯ |
5 | H26-09-1 | 成年被後見人が第三者との間で建物の贈与を受ける契約をした場合には、成年後見人は、当該法律行為を取り消すことができない。 | × |
6 | H26-09-4 | 成年後見人は家庭裁判所が選任する者であるが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。 | ◯ |
7 | H20-01-1 | 成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。 | ◯ |
8 | H18-12-1 | 成年者Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況になった場合、Aの推定相続人はAの法定代理人となる。 | × |
9 | H15-01-3 | 成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。 | ◯ |
10 | H02-04-1 | 成年被後見人は、契約の際完全な意思能力を有していても契約を取り消すことができる。 | ◯ |
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R03s-03-1 | 成年後見人が、成年被後見人を代理して、成年被後見人が所有する乗用車の第三者への売却を行う場合、家庭裁判所の許可を得なければならない。 | × |
2 | R03s-03-2 | 成年後見人が、成年被後見人を代理して、成年被後見人が所有する成年被後見人の居住の用に供する建物への第三者の抵当権の設定を行う場合、家庭裁判所の許可を得なければならない。 | ◯ |
3 | R03s-03-3 | 成年後見人が、成年被後見人を代理して、成年被後見人が所有するオフィスビルへの第三者の抵当権の設定を行う場合、家庭裁判所の許可を得なければならない。 | × |
4 | R03s-03-4 | 成年後見人が、成年被後見人を代理して、成年被後見人が所有する倉庫についての第三者との賃貸借契約の解除を行う場合、家庭裁判所の許可を得なければならない。 | × |
5 | H28-02-3 | 成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却する際、後見監督人がいる場合には、後見監督人の許可があれば足り、家庭裁判所の許可は不要である。 | × |
6 | H26-09-2 | 成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却する場合には、家庭裁判所の許可を要しない。 | × |
7 | H22-01-2 | 成年後見人が、成年被後見人に代わって、成年被後見人が居住している建物を売却するためには、家庭裁判所の許可が必要である。 | ◯ |
(2).被保佐人
①意味
精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者
+保佐開始の審判(家庭裁判所)
②単独でできないこと(例)
③保護者(保佐人)
★過去の出題例★年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R04-03-3 | 成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。 | × |
2 | H28-02-2 | 被保佐人が、不動産を売却する場合には、保佐人の同意が必要であるが、贈与の申し出を拒絶する場合には、保佐人の同意は不要である。 | × |
3 | H22-01-3 | 被保佐人については、不動産を売却する場合だけではなく、日用品を購入する場合も、保佐人の同意が必要である。 | × |
4 | H20-01-4 | 被保佐人が、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手方に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる。 | × |
5 | H17-01-1 | 自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方である買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。 | × |
6 | H15-01-4 | 被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、保佐人は、当該意思表示を取り消すことができる。 | × |
7 | H06-02-4 | Aは、「近く新幹線が開通し、別荘地として最適である」旨のBの虚偽の説明を信じて、Bの所有する原野(時価20万円)を、別荘地として 2,000万円で購入する契約を締結した。Aが被保佐人であり、保佐人Cの同意を得ずに当該契約を締結した場合、Cは当該契約の締結にはCの同意がないとして、その無効を主張することができる。 | × |
(3).被補助人
①意味
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者
+補助開始の審判(家庭裁判所)
②単独でできないこと
被保佐人のリスト(⇒(2)②)のうち、一部を指定
③保護者
補助人
★過去の出題例★
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H28-02-4 | 被補助人が、補助人の同意を得なければならない行為について、同意を得ていないにもかかわらず、詐術を用いて相手方に補助人の同意を得たと信じさせていたときは、被補助人は当該行為を取り消すことができない。 | ◯ |
2 | H22-01-4 | 被補助人が法律行為を行うためには、常に補助人の同意が必要である。 | × |
3 | H20-01-3 | 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者につき、4親等内の親族から補助開始の審判の請求があった場合、家庭裁判所はその事実が認められるときは、本人の同意がないときであっても同審判をすることができる。 | × |
4.制限行為能力者の相手方の保護
(1).相手方の催告
①仕組み
②催告先・結論
(2).制限行為能力者が詐術を用いた場合
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたとき
→取消し×
★過去の出題例★
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | H28-02-4 | 被補助人が、補助人の同意を得なければならない行為について、同意を得ていないにもかかわらず、詐術を用いて相手方に補助人の同意を得たと信じさせていたときは、被補助人は当該行為を取り消すことができない。 | ◯ |
2 | H20-01-4 | 被保佐人が、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手方に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる。 | × |
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