【宅建過去問】(令和02年12月問43)宅建士・登録

宅地建物取引業法に規定する宅地建物取引士及びその登録(以下この問において「登録」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 登録を受けている者が精神の機能の障害により宅地建物取引士の事務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者となった場合、本人がその旨を登録をしている都道府県知事に届け出ることはできない。
  2. 甲県知事の登録を受けている宅地建物取引士が乙県知事に登録の移転の申請を行うとともに宅地建物取引士証の交付の申請を行う場合、交付の申請前6月以内に行われる乙県知事が指定した講習を受講しなければならない。
  3. 宅地建物取引士が、事務禁止処分を受け、宅地建物取引士証をその交付を受けた都道府県知事に速やかに提出しなかったときは、50万円以下の罰金に処せられることがある。
  4. 宅地建物取引士が、刑法第222条(脅迫)の罪により、罰金の刑に処せられ、登録が消除された場合、刑の執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過するまでは、新たな登録を受けることができない。

正解:4

1 誤り

宅建士の欠格要件となるのは、「心身の故障により宅地建物取引士の事務を適正に行うことができない者として国土交通省令で定めるもの」(宅建業法18条1項12号)、より具体的にいえば、「精神の機能の障害により宅建士の事務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」です(規則14条の2)。
これに該当することとなった場合、「本人又はその法定代理人若しくは同居の親族」が届出の義務を負います(同法21条3号)。
本肢は、「本人」による届出を否定する点が誤りです。

☆「宅建士の欠格要件(心身の故障)」というテーマは、問38肢エでも出題されています。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
宅建士の欠格要件(心身の故障)(宅建業法[05]4(1)⑤)
年-問-肢内容正誤
1R02s-38-エ成年被後見人又は被保佐人は、宅地建物取引士として都道府県知事の登録を受けることができない。×
2R02s-43-1登録を受けている者が精神の機能の障害により宅地建物取引士の事務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者となった場合、本人がその旨を登録をしている都道府県知事に届け出ることはできない。×
宅建士の死亡等の届出(心身の故障)(宅建業法[05]5(2)②)
年-問-肢内容正誤
1R02s-43-1
登録を受けている者が精神の機能の障害により宅地建物取引士の事務を適正に行うに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者となった場合、本人がその旨を登録をしている都道府県知事に届け出ることはできない。
×
2H28-38-ウ宅地建物取引士が家庭裁判所から後見を開始する旨の審判を受けたときは、その後見人は、3月以内に、その旨を登録をしている都道府県知事に届け出なければならない。
×
3H20-33-4宅地建物取引士が成年被後見人に該当することになったときは、その日から30日以内にその旨を登録している都道府県知事に本人が届け出なければならない。
×
4H06-36-2宅地建物取引士が成年被後見人となったときはその保佐人が、被保佐人となったときはその後見人が、届出をしなければならない。
×
5H03-38-3甲県知事の登録を受けている宅地建物取引士Aが心身の故障により宅地建物取引士の事務を適正に行うことができなくなった場合、A又はその法定代理人若しくは同居の親族は、その日から30日以内に、その旨を甲県知事に届け出なければならない。

2 誤り

宅建士証の交付を受ける場合には、申請前6か月以内に、登録をしている知事が指定する講習(法定講習)を受講する必要があります(宅建業法22条の2第2項本文)。
ただし、以下の2つのケースは例外で、法定講習を受ける必要がありません(同項ただし書き)。

  • a 宅建士試験合格日から1年以内に交付を受ける場合
  • b 登録の移転により交付を受ける場合

本肢は、登録の移転のケースです。乙県知事から新たに宅建士証の交付を受けるわけですが、その際に、法定講習を受講する必要はありません。

※登録の移転の申請とともに宅建士証の交付の申請があったときは、移転後の知事(本肢の乙県知事)は、登録移転前の宅建士証の有効期間が経過するまでの期間を有効期間とする宅建士証を交付します(宅建業法22条の2第5項)。つまり、「5年ごとに法定講習を受講する」ことが繰り返されるわけです。5年間の途中で登録の移転があっても、そのタイミングで法定講習を受講する必要はありません。

登録移転後の宅建士証の有効期間

■参照項目&類似過去問
内容を見る
法定講習の受講(宅建業法[05]6(1)②)
年-問-肢内容正誤
1R04-29-3宅地建物取引士は、有効期間の満了日が到来する宅地建物取引士証を更新する場合、国土交通大臣が指定する講習を受講しなければならず、また、当該宅地建物取引士証の有効期間は5年である。×
2R02s-43-2甲県知事の登録を受けている宅地建物取引士が乙県知事に登録の移転の申請を行うとともに宅地建物取引士証の交付の申請を行う場合、交付の申請前6月以内に行われる乙県知事が指定した講習を受講しなければならない。×
3R02-28-4甲県知事の登録を受けている宅地建物取引士が、乙県知事に登録の移転を申請するときは、乙県知事が指定する講習を受講しなければならない。
×
4H29-30-3宅地建物取引士資格試験合格後18月を経過したA(甲県知事登録)が、甲県知事から宅地建物取引士証の交付を受けようとする場合は、甲県知事が指定する講習を交付の申請前6月以内に受講しなければならない。
5H25-44-イ宅地建物取引士証の交付を受けようとする者(宅地建物取引士資格試験合格日から1年以内の者又は登録の移転に伴う者を除く。)は、都道府県知事が指定した講習を、交付の申請の90日前から30日前までに受講しなければならない。
×
6H23-28-4宅地建物取引士資格試験に合格した日から1年以内に宅地建物取引士証の交付を受けようとする者は、登録をしている都道府県知事の指定する講習を受講する必要はない。
7H19-31-3甲県知事から宅地建物取引士証の交付を受けている宅地建物取引士が、宅地建物取引士証の有効期間の更新を受けようとするときは、甲県知事に申請し、その申請前6月以内に行われる国土交通大臣の指定する講習を受講しなければならない。
×
8H18-32-3宅地建物取引士A(甲県知事登録)は、宅地建物取引士証の有効期間の更新を受けようとするときは、必ず甲県知事が指定する講習で交付の申請前1年以内に行われるものを受講しなければならない。×
9H14-31-3Aは、自らが有する宅地建物取引士証の有効期間が満了して半年になるが、宅地建物取引士資格登録をしている都道府県知事が指定する講習を受講したので、当該宅地建物取引士証の更新の申請をせず、宅地建物取引士としてすべき事務を行っている。×
10H11-31-3宅地建物取引士A(甲県知事登録)が、宅地建物取引士証の有効期間の更新を受けようとするとき、Aは、甲県知事が指定する講習で有効期間満了の日前1年以内に行われるものを受講しなければならない。×
11H10-30-4甲県知事の登録を受けている宅地建物取引士は、宅地建物取引士証の有効期間の更新を受けようとするときは、甲県知事に申請し、その申請前6月以内に行われる国土交通大臣の指定する講習を受講しなければならない。×
12H06-49-1宅地建物取引士Aが宅地建物取引士証の有効期間満了前に都道府県知事の指定する講習を受けることができなくて、宅地建物取引士証の有効期間を更新することができなかった場合、Aは、その受講できなかったことに特別の事情があるとしても、当該有効期間満了後は、宅地建物取引士の業務を行うことはできない。
13H04-38-1宅地建物取引士の業務を行うため、宅地建物取引士証の交付の申請をしようとする者は、その交付の申請前に宅地建物の取引に関する実務経験が2年以上あれば、都道府県知事の指定する講習を受講する必要はない。×
14H02-39-1宅地建物取引士証の交付を受けようとする者は、国土交通大臣が指定する宅地又は建物の取引に関する実務についての講習で、交付の申請前6月以内に行われるものを、受講しなければならない。×
15H01-40-3宅地建物取引士が、宅地建物取引士証の交付を受けた後、6月以内に行われる国土交通省令で定める講習を受けなければ、当該交付を受けた宅地建物取引士証は、その効力を失う。×

3 誤り

宅建士が事務禁止処分を受けた場合(宅建業法68条4項)、宅建士証の交付を受けた知事に速やかに宅建士証を提出する義務を負います(同法22条の2第7項)。

この義務を怠った場合、10万円以下の過料に処せられることがあります(同法86条)。
本肢は、「50万円以下の罰金」とする点が誤りです。

☆「宅建士に対する監督(事務禁止処分)」や「宅建士証の提出」というテーマは、問29肢3でも出題されています。

■参照項目&類似過去問
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宅建士証の提出(宅建業法[05]6(4)②宅建業法[22]3(2)④
年-問-肢内容正誤
1R04-29-2宅地建物取引士は、業務に関して事務禁止の処分を受けた場合、速やかに、宅地建物取引士証をその交付を受けた都道府県知事に提出しなければならず、これを怠った場合には罰則の適用を受けることがある。
2R03-35-ア宅地建物取引士(甲県知事登録)が事務禁止処分を受けた場合、宅地建物取引士証を甲県知事に速やかに提出しなければならず、速やかに提出しなかったときは10万円以下の過料に処せられることがある。
3R02s-29-3宅地建物取引士(甲県知事登録)が、乙県に所在する建物の売買に関する取引において宅地建物取引士として行う事務に関し不正な行為をし、乙県知事により事務禁止処分を受けたときは、宅地建物取引士証を甲県知事に提出しなければならない。
4R02s-43-3宅地建物取引士が、事務禁止処分を受け、宅地建物取引士証をその交付を受けた都道府県知事に速やかに提出しなかったときは、50万円以下の罰金に処せられることがある。×
5H30-32-4甲県知事の登録を受けている宅地建物取引士が、乙県知事から事務の禁止の処分を受けた場合は、速やかに、宅地建物取引士証を乙県知事に提出しなければならない。×
6H30-42-3宅地建物取引士は、事務禁止の処分を受けたときは宅地建物取引士証をその交付を受けた都道府県知事に提出しなくてよいが、登録消除の処分を受けたときは返納しなければならない。×
7H25-44-エ宅地建物取引士は、事務禁止処分を受けた場合、宅地建物取引士証をその交付を受けた都道府県知事に速やかに提出しなければならないが、提出しなかったときは10万円以下の過料に処せられることがある。
8H14-35-3宅地建物取引士が勤務している宅地建物取引業者が、宅地建物取引業に関し不正な行為をして業務停止処分を受けた場合、当該宅地建物取引士は速やかに、宅地建物取引士証をその交付を受けた都道府県知事に提出しなければならない。
×
9H13-32-3宅地建物取引士は、宅地建物取引士としてすべき事務の禁止の処分を受けたときは、2週間以内に、宅地建物取引士証をその処分を行った都道府県知事に提出しなければならない。
×
10H11-31-2宅地建物取引士A(甲県知事登録)が、乙県の区域内における業務に関して乙県知事から事務禁止の処分を受けたとき、Aは、1週間以内に乙県知事に宅地建物取引士証を提出しなければならない。
×
11H10-30-2甲県知事の登録を受けている宅地建物取引士Aが、宅地建物取引士として行う事務に関し不正な行為をしたとして、乙県知事から事務禁止処分を受けたときは、Aは、速やかに、宅地建物取引士証を乙県知事に提出しなければならない。
×
12H03-35-3宅地建物取引士(甲県知事登録)が、乙県知事から事務の禁止の処分を受けた場合、その者は、速やかに乙県知事に宅地建物取引士証を提出しなければならない。
×
13H02-39-2宅地建物取引士は、宅地建物取引士としてすべき事務の禁止の処分を受けたときは、速やかに、宅地建物取引士証をその処分をした都道府県知事に提出しなければならない。
×
宅建士証に関する罰則(宅建業法[05]6(5))
年-問-肢内容正誤
1R04-29-2宅地建物取引士は、業務に関して事務禁止の処分を受けた場合、速やかに、宅地建物取引士証をその交付を受けた都道府県知事に提出しなければならず、これを怠った場合には罰則の適用を受けることがある。
2R03-35-ア宅地建物取引士(甲県知事登録)が事務禁止処分を受けた場合、宅地建物取引士証を甲県知事に速やかに提出しなければならず、速やかに提出しなかったときは10万円以下の過料に処せられることがある。
3R02s-43-3宅地建物取引士が、事務禁止処分を受け、宅地建物取引士証をその交付を受けた都道府県知事に速やかに提出しなかったときは、50万円以下の罰金に処せられることがある。×
4H25-30-2宅地建物取引業者が、宅地建物取引士をして取引の相手方に対し重要事項説明をさせる場合、当該宅地建物取引士は、取引の相手方から請求がなくても、宅地建物取引士証を相手方に提示しなければならず、提示しなかったときは、20万円以下の罰金に処せられることがある。
×
5H25-44-エ宅地建物取引士は、事務禁止処分を受けた場合、宅地建物取引士証をその交付を受けた都道府県知事に速やかに提出しなければならないが、提出しなかったときは10万円以下の過料に処せられることがある。
6H06-37-1宅地建物取引士は、常時宅地建物取引士証を携帯して、取引の関係者から請求があったとき提示することを要し、これに違反したときは、10万円以下の過料に処せられることがある。
×

4 正しい

脅迫罪により罰金刑に処せられることは、宅建士の欠格要件に該当します。この理由で登録を消除された場合、再び登録を受けることができるのは、「刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日」から5年経過したときです(宅建業法18条1項7号)。

※罰金刑を科せられたことが欠格要件となるのは、以下の犯罪です。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
宅建士の欠格要件(罰金刑)(宅建業法[05]4(1)③)
年-問-肢内容正誤
1R03s-37-3宅地建物取引士が、刑法第204条(傷害)の罪により罰金の刑に処せられ、登録が消除された場合、当該登録が消除された日から5年を経過するまでは、新たな登録を受けることができない。×
2R02s-43-4宅地建物取引士が、刑法第222条(脅迫)の罪により、罰金の刑に処せられ、登録が消除された場合、刑の執行を終わり又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過するまでは、新たな登録を受けることができない。
3H23-29-2宅地建物取引士が、刑法第204条の傷害罪により罰金の刑に処せられ、登録が消除された場合は、当該登録が消除された日から5年を経過するまでは、新たな登録を受けることができない。×
4H15-33-3宅地建物取引士Aが無免許営業等の禁止に関する宅地建物取引業法に違反して宅地建物取引業を営み、懲役1年、執行猶予3年及び罰金10万円の刑に処せられ、登録を消除されたとき、執行猶予期間が満了すれば、その翌日から登録を受けることができる。×
5H12-33-2宅地建物取引士は、刑法第209条(過失傷害)の罪により罰金の刑に処せられた場合は、30日以内に登録の消除を申請しなければならず、当該登録が消除された日から5年を経過しなければ、新たな登録を受けることができない。×
6H08-42-3暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反して、罰金の刑に処せられ罰金を納付した宅地建物取引士は、その日から60日以内に、その旨を登録をしている都道府県知事に届け出なければならない。×
7H06-36-3宅地建物取引士Aが公職選挙法に違反して禁錮刑に処せられた場合、Aは、届出をしなければならないが、刑法第247条の罪(背任罪)を犯して罰金刑に処せられた場合は、その必要はない。×
8H05-38-2宅地建物取引士Aが知人に頼まれて無免許で宅地の売買の媒介を数回行った場合、Aは、その登録を消除されることがある。
9H05-38-4宅地建物取引士Aが刑法第211条(業務上過失傷害)の罪を犯し、10万円の罰金の刑に処せられた場合、Aは、その登録を消除されることはない。
拘留・科料刑
1H01-37-2登録を受けている者が刑法第208条の罪(暴行罪)を犯し、科料に処せられた場合、当該登録をしている都道府県知事は、当該登録を消除しなければならない。×

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【宅建過去問】(令和02年12月問43)宅建士・登録” に対して2件のコメントがあります。

  1. 大坪秀幸 より:

    質問よろしくお願いいたします。

    宅建志の登録についてですが、執行猶予の言い渡しを受けその期間を終えた(刑の執行の終わり)場合、
    ①その時時点から登録が可能か?
    ②その時点から5年間の経過が必要か?

    以上、ご教授をお願いします。

    1. 家坂 圭一 より:

      大坪様

      ご質問ありがとうございます。

      執行猶予の言い渡しを受けその期間を終えた(刑の執行の終わり)場合、

      「その期間」というのは、執行猶予期間を意味していると思われます。一方、「刑の執行の終わり」という言葉から見ると、執行猶予が取り消され、刑に処せられたようにも読み取れます。
      大坪さんがどちらを想定しているか分からないので、2つのケースに分けて説明します。
      「懲役1年執行猶予2年の刑に処せられた」という設定にしましょう。

      (1)執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予期間が満了した場合
      →①

      執行猶予期間(2年間)が満了しているので、その翌日からでも登録を受けることができます。

      (2)執行猶予の言渡しを取り消され、懲役刑に服した場合
      →②

      懲役刑(1年間)の執行が終わった日から5年経過しない限り、登録を受けることができません。

      過去問では、宅建士の登録だけでなく、宅建業の免許のケースを含めても、(2)のパターンが出題されたことはありません。
      (1)を中心に押さえておけばOKです。

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