【宅建過去問】(令和03年10月問25)不動産鑑定評価基準

不動産の鑑定評価に関する次の記述のうち、不動産鑑定評価基準によれば、誤っているものはどれか。

  1. 不動産鑑定士の通常の調査の範囲では、対象不動産の価格への影響の程度を判断するための事実の確認が困難な特定の価格形成要因がある場合、鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないと判断されるときに限り、当該価格形成要因について調査の範囲に係る条件を設定することができる。
  2. 対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額を再調達原価というが、建設資材、工法等の変遷により、対象不動産の再調達原価を求めることが困難な場合には、対象不動産と同等の有用性を持つものに置き換えて求めた原価を再調達原価とみなすものとする。
  3. 取引事例等に係る取引が特殊な事情を含み、これが当該取引事例等に係る価格等に影響を及ぼしている場合に、適切に補正することを時点修正という。
  4. 不動産の鑑定評価によって求める賃料は、一般的には正常賃料又は継続賃料であるが、鑑定評価の依頼目的に対応した条件により限定賃料を求めることができる場合がある。

正解:3

1 正しい

対象の土地に土壌汚染の可能性があるとか、建物にアスベスト使用の可能性があるというような場合、その事実が判明すれば、価格に影響が出ます。これが「特定の価格形成要因」です。しかし、特定の価格形成要因の有無は、不動産鑑定士の通常の調査の範囲では知ることができません。専門家による調査などが要求されるわけです。
このような場合、調査の範囲に係る条件を設定することができます。ただし、その条件の設定が許されるのは、も鑑定評価書の利用者の利益を害するおそれがないと判断される場合に限られます。

2 正しい

鑑定評価にあたって原価法を用いるケースに関する記述です。原価法というのは、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の試算価格を求める手法です。
ということは、建設資材、工法等の変遷により、対象不動産の再調達原価を求めることが困難な場合には、本来通りの原価法を使うことができないことになります。このような場合には、対象不動産と同等の有用性を持つものに置き換えて求めた原価(置換原価)を再調達原価とみなします。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
原価法とは(税・鑑定[09]3(2)①②)
年-問-肢内容正誤
1R05-25-1原価法は、価格時点における対象不動産の収益価格を求め、この収益価格について減価修正を行って対象不動産の比準価格を求める手法である。×
2
R05-25-2原価法は、対象不動産が建物又は建物及びその敷地である場合には適用することができるが、対象不動産が土地のみである場合においては、いかなる場合も適用することができない。×
3R03-25-2対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額を再調達原価というが、建設資材、工法等の変遷により、対象不動産の再調達原価を求めることが困難な場合には、対象不動産と同等の有用性を持つものに置き換えて求めた原価を再調達原価とみなすものとする。
4R02-25-4原価法は、対象不動産が建物及びその敷地である場合において、再調達原価の把握及び減価修正を適切に行うことができるときに有効な手法であるが、対象不動産が土地のみである場合には、この手法を適用することはできない。×
5H22-25-1原価法は、求めた再調達原価について減価修正を行って対象物件の価格を求める手法であるが、建設費の把握が可能な建物のみに適用でき、土地には適用できない。×
6H19-29-3再調達原価とは、対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額をいう。
7H11-29-2原価法における再調達原価とは、対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額をいうので、積算価格を求めるには、再調達原価について減価修正を行う必要がある。
8H10-29-3原価法では価格時点における対象不動産の再調達原価を求める必要があるため、建設資材、工法等の変遷により対象不動産の再調達原価を求めることが困難な場合には、鑑定評価に当たって原価法を適用することはできない。×
9H04-33-2原価法において、土地の再調達原価は、建設請負により、請負者が発注者に対して直ちに使用可能な状態で引き渡す通常の場合を想定し、その土地の標準的な取得原価に当該土地の標準的な造成費と発注者が直接負担すべき通常の付帯費用を加算して求める。

3 誤り

鑑定評価にあたって取引事例比較法を用いるケースに関する記述です。原価法というのは、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法です。
事情補正と時点修正という言葉が出てきますが、これは、以下の意味です。

本肢は「特殊な事情を含み、これが当該取引事例等に係る価格等に影響を及ぼしている場合に、適切に補正すること」に関するものです。これは、事情補正の話であって、時点修正とするのは誤りです。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
取引事例比較法(補正・修正)(税・鑑定[09]3(3)③)
年-問-肢内容正誤
1R03-25-3取引事例等に係る取引が特殊な事情を含み、これが当該取引事例等に係る価格等に影響を及ぼしている場合に、適切に補正することを時点修正という。×
2H28-25-3鑑定評価の各手法の適用に当たって必要とされる取引事例等については、取引等の事情が正常なものと認められるものから選択すべきであり、売り急ぎ、買い進み等の特殊な事情が存在する事例を用いてはならない。×
3H22-25-4取引事例に係る取引が特殊な事情を含み、これが当該取引事例に係る価格等に影響を及ぼしているときは、適切に補正しなければならない。
4H16-29-3鑑定評価に当たって必要とされる取引事例は、当該事例に係る取引の事情が正常なものでなければならず、特殊な事情の事例を補正して用いることはできない。×
5H07-33-4取引事例等にかかる取引の時点が価格時点と異なり、その間に価格水準に変動があると認められる場合に、当該取引事例等の価格を価格時点の価格に修正することを事情補正という。×

4 正しい

賃料を求める場合、通常は、新規契約であれば正常賃料、継続契約であれば継続賃料を求めます。
鑑定評価の目的によっては、限定賃料を求めることができる場合があります。隣接不動産の併合使用を前提とする賃貸借等に関連する場合がその具体例です。


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