10月
19
2008

【宅建過去問】(平成20年問10)敷金

【過去問本試験解説】発売中

Aは、自己所有の甲建物(居住用)をBに賃貸し、引渡しも終わり、敷金50万円を受領した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1. 賃貸借が終了した場合、AがBに対し、社会通念上通常の使用をした場合に生じる通常損耗について原状回復義務を負わせることは、補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているなど、その旨の特約が明確に合意されたときでもすることができない。
  2. Aが甲建物をCに譲渡し、所有権移転登記を経た場合、Bの承諾がなくとも、敷金が存在する限度において、敷金返還債務はAからCに承継される。
  3. BがAの承諾を得て賃借権をDに移転する場合、賃借権の移転合意だけでは、敷金返還請求権(敷金が存在する限度に限る。)はBからDに承継されない。
  4. 甲建物の抵当権者がAのBに対する賃料債権につき物上代位権を行使してこれを差し押さえた場合においても、その賃料が支払われないまま賃貸借契約が終了し、甲建物がBからAに明け渡されたときは、その未払賃料債権は敷金の充当により、その限度で消減する。

正解:1

20-10-0

敷金契約は、賃貸借契約に付随するが、それとは別個の契約である。敷金を交付する目的は、賃借人が目的物を明け渡すまでの全債務を担保することにある。具体的には、延滞した家賃、物件の損傷による損害賠償などをいう。賃借人は、これら債務を全て差し引き、それでも残額があった場合に、始めて敷金の返還を求めることができる。

【1】 X 誤り

通常損耗について、賃借人に原状回復義務を負わせるためには、

  1. 賃借人が補修費用を負担する範囲につき、賃貸借契約書自体に具体的に明記されている
  2. 賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識して、合意の内容としたものと認められる

など、特約が明確に合意されていることが必要である(最判平17.12.16)。
逆にいえば、「特約が明確に合意されたとき」であれば、通常損耗について原状回復義務を負わせることができる。本肢は、「特約が明確に合意されたときでもすることができない」とする点が誤り。

【2】 ◯ 正しい

20-10-2建物を他人に譲渡して所有権移転登記を経た場合、賃借人の承諾がなくとも敷金が存在する限度で敷金返還債務は新所有者に承継される(最判昭44.07.17)。
したがって、本肢でも敷金返還債務は、AからCに承継される。

■類似過去問(当事者の変更と敷金)
内容を見る
 年-問-肢内容正誤
賃貸人の変更
120-10-2賃貸中の建物が譲渡された場合、賃借人の承諾がなくても、敷金返還債務は新所有者に承継される。
215-11-2賃貸借契約期間中に建物が譲渡された場合で、譲受人が賃貸人たる地位を承継したとき、敷金に関する権利義務も当然承継される。
315-11-4賃貸借契約が終了した後、借主が建物を明け渡す前に、貸主が建物を第三者に譲渡した場合で、貸主と譲受人との間で譲受人に敷金を承継させる旨を合意したとき、敷金に関する権利義務は当然に譲受人に承継される。×
411-14-4賃貸借契約期間中に建物が売却され、賃貸人たる地位を譲受人に承継した場合、賃借人の承諾がない限り敷金返還債務は承継されない。×
506-10-3貸主が第三者に建物を譲渡し、譲受人が賃貸人となった場合、貸主に差し入れていた敷金は、借主の未払賃料を控除した残額について、権利義務関係が譲受人に承継される。
602-13-2賃借人が賃貸人に敷金を差し入れていた場合、建物の譲受人は、賃貸人からその敷金を受領しない限り、賃借人に対する敷金返還債務を引き継がない。×
賃借人の変更
120-10-3賃借権の移転合意だけでは、敷金返還請求権は、旧賃借人から新賃借人に承継されない。
215-11-3賃借権の譲渡を賃貸人が承諾した場合、敷金に関する権利義務は当然新賃借人に承継される。×
306-10-4借主が未払賃料を支払って、貸主の承諾を得て賃借権を第三者に譲渡した場合、借主が譲受人に敷金返還請求権を譲渡する等しなくても、敷金に関する権利義務関係は、譲受人に承継される。×

【3】 ◯ 正しい

20-10-3たとえ承諾を得て賃借権を移転したとしても、賃借権の移転合意だけでは敷金返還請求権は新賃借人に承継されない。敷金返還請求権が新賃借人に承継されるためには、別途旧賃借人との合意が必要である(最判昭53.12.22)。
したがって、本肢では敷金返還請求権はBからDに承継されない。

■類似過去問(当事者の変更と敷金)
内容を見る
 年-問-肢内容正誤
賃貸人の変更
120-10-2賃貸中の建物が譲渡された場合、賃借人の承諾がなくても、敷金返還債務は新所有者に承継される。
215-11-2賃貸借契約期間中に建物が譲渡された場合で、譲受人が賃貸人たる地位を承継したとき、敷金に関する権利義務も当然承継される。
315-11-4賃貸借契約が終了した後、借主が建物を明け渡す前に、貸主が建物を第三者に譲渡した場合で、貸主と譲受人との間で譲受人に敷金を承継させる旨を合意したとき、敷金に関する権利義務は当然に譲受人に承継される。×
411-14-4賃貸借契約期間中に建物が売却され、賃貸人たる地位を譲受人に承継した場合、賃借人の承諾がない限り敷金返還債務は承継されない。×
506-10-3貸主が第三者に建物を譲渡し、譲受人が賃貸人となった場合、貸主に差し入れていた敷金は、借主の未払賃料を控除した残額について、権利義務関係が譲受人に承継される。
602-13-2賃借人が賃貸人に敷金を差し入れていた場合、建物の譲受人は、賃貸人からその敷金を受領しない限り、賃借人に対する敷金返還債務を引き継がない。×
賃借人の変更
120-10-3賃借権の移転合意だけでは、敷金返還請求権は、旧賃借人から新賃借人に承継されない。
215-11-3賃借権の譲渡を賃貸人が承諾した場合、敷金に関する権利義務は当然新賃借人に承継される。×
306-10-4借主が未払賃料を支払って、貸主の承諾を得て賃借権を第三者に譲渡した場合、借主が譲受人に敷金返還請求権を譲渡する等しなくても、敷金に関する権利義務関係は、譲受人に承継される。×

【4】 ◯ 正しい

20-10-4敷金は、賃借人が物件を明け渡すまでの全債務を担保する。したがって、賃貸借契約終了時に未払賃料債務が残っている場合、その債務は、敷金の充当により消滅する。
抵当権者が物上代位権を行使して、賃料債権を差し押さえたとしても、権利を行使できるのは、敷金が残存している範囲に限られる(最判平14.03.28)。

■類似過去問(物上代位と敷金)
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 年-問-肢内容正誤
123-06-3抵当権者が物上代位により賃料債権を差し押さえた後、賃貸借契約終了した場合、未払いの賃料債権は敷金の限度で当然消滅するわけではない。×
220-10-4抵当権者が賃料債権につき物上代位権を行使し差し押さえた場合でも、未払い賃料債権は敷金の充当により消滅する。
315-05-4抵当権者が物上代位権を行使し賃料債権を差し押さえた場合、賃料債権につき敷金が充当される限度において物上代位権を行使できない。
406-10-2借主の債権者が敷金返還請求権を差し押さえたときは、貸主は、その範囲で、借主の未払賃料の弁済を敷金から受けることができなくなる。×

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Written by 家坂 圭一 in: 平成20年過去問,民法 |

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