AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物につき、①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
- Bが死亡した場合、①では契約は終了しないが、②では契約が終了する。
- Bは、①では、甲建物のAの負担に属する必要費を支出したときは、Aに対しその償還を請求することができるが、②では、甲建物の通常の必要費を負担しなければならない。
- AB間の契約は、①では諾成契約であり、②では要物契約である。
- AはBに対して、甲建物の瑕疵について、①では担保責任を負う場合があるが、②では担保責任を負わない。
正解:4
1 正しい
賃借権は、被相続人の財産権の一部として、相続の対象となります。賃貸借契約は終了しません。
これに対し、使用貸借は、借主の死亡によってその効力が失われます(民法599条)。つまり、使用貸借契約が終了します。
■類似過去問
内容を見る
賃貸借:相続の可否(民法[30]2(4))
使用貸借:相続の可否(民法[30]2(4))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
1 | 27-03-1 | 借主が死亡した場合、使用貸借では契約が終了する。 | ◯ |
2 | 21-12-4 | 借主が死亡すると使用貸借契約は終了し、使用借権は相続されない。 | ◯ |
3 | 17-10-1 | 借主が死亡した場合、使用貸借契約は当然終了する。 | ◯ |
4 | 13-06-2 | 貸主又は借主が死亡した場合、使用貸借契約は効力を失う。 | × |
5 | 09-08-3 | 借主が死亡した場合、相続人は使用借権を主張できない。 | ◯ |
2 正しい
賃借人が必要費を支出したときは、賃貸人に対して直ちに償還を請求することができます(民法608条1項)。
一方、使用貸借においては、借主が通常の必要費を負担します(同法595条1項)。
■類似過去問
内容を見る
賃借人による費用の償還請求(民法[29]4(2))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
必要費 |
1 | 27-03-2 | 借主は、賃貸借契約では、貸主の負担に属する必要費を支出したときは、貸主に対しその償還を請求することができる。 | ◯ |
2 | 09-03-1 | 建物の賃借人が、賃借中に建物の修繕のため必要費を支出した場合、必要費の償還を受けるまで、留置権に基づき当該建物の返還を拒否できる。 | ◯ |
3 | 09-03-2 | 建物の賃借人の債務不履行により賃貸借契約が解除された後に、賃借人が建物の修繕のため必要費を支出した場合、必要費の償還を受けるまで、留置権に基づき建物の返還を拒否できる。 | × |
4 | 09-03-4 | 建物の賃借人は、留置権に基づき建物の返還を拒否している場合に、さらに当該建物の修繕のため必要費を支出したとき、その必要費のためにも留置権を行使できる。 | ◯ |
5 | 03-13-2 | 借主は、貸主の負担すべき必要費を支出したときは、直ちに、貸主に対しその償還を請求することができる。 | ◯ |
6 | 01-06-2 | 建物が老朽化してきたため、借主が貸主の負担すべき必要費を支出して建物の修繕をした場合、借主は、貸主に対して、直ちに修繕に要した費用全額の償還を請求することができる。 | ◯ |
有益費 |
1 | 03-13-3 | Aは、有益費を支出したときは、賃貸借終了の際、その価格の増加が現存する場合に限り、自らの選択によりその費した金額又は増加額の償還を請求することができる。 | × |
使用貸借(民法[30]1&2)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
契約の成立 |
1 | 27-03-3 | 使用貸借契約は要物契約である。 | ◯ |
費用負担 |
1 | 27-03-2 | 借主は、使用貸借では、通常の必要費を負担しなければならない。 | ◯ |
2 | 09-08-4 | 借主が、借用物の通常の必要費を支出した場合には、貸主に対し、直ちに償還請求できる。 | × |
担保責任 |
1 | 27-03-4 | 使用貸借契約では、貸主は借主に対して担保責任を負わない。 | × |
3 正しい
賃貸借契約は、賃貸人と賃借人の合意のみで成立します(民法601条)。つまり、諾成契約です。契約の成立にあたって目的物の引渡しは必要ありませんし、書面により契約を締結する必要もありません。
これに対し、使用貸借契約は、借主が貸主から物を受け取ることによって、効力を生じます(同法593条)。つまり、契約の成立には、物の引渡しが必要です。言い換えれば、使用貸借契約は、要物契約です。
■類似過去問
内容を見る
賃貸借:契約の成立(民法[29]1(1))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
1 | 30-11-1 | [AとBとの間で、A所有の甲土地につき建物所有目的で賃貸借契約を締結する。]本件契約が専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする場合には、公正証書によらなければ無効となる。
| × |
2 | 27-03-3 | 賃貸借契約は諾成契約である。 | ◯ |
3 | 17-15-1 | 動産の賃貸借契約は、当事者の合意のみで効力を生じるが、建物の賃貸借契約は、要式契約である。 | × |
使用貸借(民法[30]1&2)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
契約の成立 |
1 | 27-03-3 | 使用貸借契約は要物契約である。 | ◯ |
費用負担 |
1 | 27-03-2 | 借主は、使用貸借では、通常の必要費を負担しなければならない。 | ◯ |
2 | 09-08-4 | 借主が、借用物の通常の必要費を支出した場合には、貸主に対し、直ちに償還請求できる。 | × |
担保責任 |
1 | 27-03-4 | 使用貸借契約では、貸主は借主に対して担保責任を負わない。 | × |
4 誤り
賃貸借契約は、有償契約ですから、売買契約の規定が準用されます(民法559条)。したがって、目的物の瑕疵について、賃貸人は、売買契約の売主と同様の瑕疵担保責任を負います(同法570条、566条)。
使用貸借においては、貸主の担保責任について、贈与に関する規定が準用されています(同法596条、551条)。したがって、貸主は、目的物の瑕疵又は不存在について原則として責任を負いません(同法551条1項本文)。ただし、例外的に、貸主が瑕疵又は不存在を知りながら、借主に告げなかったときは瑕疵担保責任を負うことになります。本肢は、「担保責任を負わない」と言い切っている点が誤りです。
■類似過去問
内容を見る
売買に関する規定の有償契約への準用(民法[23]3(4))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
1 | 27-03-4 | 賃貸借契約では、貸主は借主に対して担保責任を負う。 | ◯ |
2 | 18-10-4 | 建物の賃借人が賃貸人の承諾なく当該建物を転貸し、無断転貸を理由に転借人が賃貸人から明渡請求を受けた場合、転借人は賃借人(転貸人)に対する賃料の全部又は一部の支払を拒むことができる。 | ◯ |
3 | 12-09-4 | 代物弁済として不動産の所有権の移転を受けた後は、その不動産に隠れた瑕疵があっても、弁済者の責任を追及することはできない。 | × |
4 | 03-13-1 | 賃貸借契約の締結に関する費用は、賃貸人と賃借人が平等な割合で負担する。 | ◯ |
使用貸借(民法[30]1&2)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
契約の成立 |
1 | 27-03-3 | 使用貸借契約は要物契約である。 | ◯ |
費用負担 |
1 | 27-03-2 | 借主は、使用貸借では、通常の必要費を負担しなければならない。 | ◯ |
2 | 09-08-4 | 借主が、借用物の通常の必要費を支出した場合には、貸主に対し、直ちに償還請求できる。 | × |
担保責任 |
1 | 27-03-4 | 使用貸借契約では、貸主は借主に対して担保責任を負わない。 | × |
贈与者の担保責任(民法[28]4)
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 |
1 | 25-01-2 | 「贈与者は、知りながら受贈者に告げなかった瑕疵について責任を負う」旨が民法に規定されている。 | ◯ |
2 | 21-09-3 | 書面による負担付贈与の場合、贈与者は負担の範囲で瑕疵担保責任を負う。 | ◯ |
3 | 10-09-3 | 負担なし贈与で、贈与者が瑕疵を知らなかった場合、担保責任を負わない 。 | ◯ |
4 | 03-10-2 | 書面によるか否かを問わず、負担なし贈与で、贈与者が瑕疵を知らなかった場合、担保責任を負わない。 | ◯ |
>>年度目次に戻る
【令和2年度受験】ロケットスタートキャンペーン
令和2年度受験に向けて「1日でも早く勉強を始めたい」かたのためのキャンペーンです。
特別ショップクーポンを御利用になれば、
10,000円以上の教材を25%引きで御購入いただけます(12月15日まで)。