【宅建過去問】(令和05年問12)借地借家法(借家)

建物の賃貸借契約(定期建物賃貸借契約及び一時使用目的の建物の賃貸借契約を除く。)に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 期間を1年未満とする建物の賃貸借契約は、期間を1年とするものとみなされる。
  2. 当事者間において、一定の期間は建物の賃料を減額しない旨の特約がある場合、現行賃料が不相当になったなどの事情が生じたとしても、この特約は有効である。
  3. 賃借人が建物の引渡しを受けている場合において、当該建物の賃貸人が当該建物を譲渡するに当たり、当該建物の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及び当該建物の譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない。
  4. 現行賃料が定められた時から一定の期間が経過していなければ、賃料増額請求は、認められない。

正解:3

設定の確認

建物の賃貸借契約(定期建物賃貸借契約及び一時使用目的の建物の賃貸借契約を除く。)

本問の建物賃貸借契約は、定期建物賃貸借でもなければ、一時使用目的の建物賃貸借でもないことが分かっています。
つまり、民法に加えて借地借家法も適用されますが、定期建物賃貸借に関する特別ルールは無視してもいいわけです。

  • 定期建物賃貸借契約=契約更新のない建物賃貸借
  • 一時使用目的の建物賃貸借契約=借地借家法の規定は、適用されない→民法のみ適用

1 誤り

建物賃貸借において、契約の期間を1年未満と定めた場合、期間の定めのない賃貸借とみなされます(借地借家法29条1項)。
「期間を1年とするものとみなされる」わけではありません。

※定期建物賃貸借には、借地借家法29条1項は、適用されません(同法38条1項後段)。したがって、1年未満の契約期間を設定した場合でも、その定めは、有効です。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
建物賃貸借の期間(借地借家法[05]1)
年-問-肢内容正誤
1R05-12-1期間を1年未満とする建物の賃貸借契約は、期間を1年とするものとみなされる。×
2H26-12-2定期建物賃貸借契約を締結するときは、期間を1年未満としても、期間の定めがない建物の賃貸借契約とはみなされない。
3H19-14-2定期建物賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができるが、一時使用賃貸借契約は契約期間を1年以上とすることができない。×
4H17-15-3動産の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が合意して契約期間を6月と定めればそのとおりの効力を有するが、建物の賃貸借契約は、賃貸人と賃借人が合意して契約期間を6月と定めても期間を定めていない契約とみなされる。
5H05-12-1賃貸借の期間を10月と定めた場合において、その賃貸借が一時使用によるものでないときは、Aが解約の申入れをしても、その申入れの日から6月を経過しないと、契約は終了しない。
6H02-12-2建物の賃貸借においては、その存続期間の最長限度に制限はない。

2 誤り

建物の借賃を増額しないという特約(不増額特約)は、有効です(借地借家法32条1項ただし書き)。しかし、建物の借賃を減額しないという特約(不減額特約)は、たとえ定めたとしても無効です。
本肢では、「一定の期間は建物の賃料を減額しない旨の特約」を定めています。しかし、「減額しない」という特約をしても、それは無効です。
したがって、特約にかかわらず、Bは、地代の減額を請求することができます。

【参考】定期建物賃貸借の場合

定期建物賃貸借に関しては、借賃の不減額特約をすることが可能です(借地借家法38条9項)。

■参照項目&類似過去問
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借賃増減請求権に関する特約(借地借家法[06]2(2))
年-問-肢内容正誤
特約がない場合
1R05-12-4現行賃料が定められた時から一定の期間が経過していなければ、賃料増額請求は、認められない。×
2R02-12-2AとBとの間でA所有の甲建物をBに対して、居住の用を目的として、期間2年、賃料月額10万円で賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、Bが甲建物の引渡しを受けた。本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、賃料改定に関する特約がない場合、経済事情の変動により賃料が不相当となったときは、AはBに対し、賃料増額請求をすることができる。
3H24-12-2普通建物賃貸借・定期建物賃貸借の双方につき、特約がなければ、賃料の増減額請求権が発生。
4H22-12-4定期建物賃貸借で、特約がなければ、賃料の増減額請求権が発生。
5H16-14-1普通建物賃貸借において、使用収益開始前には賃料減額請求は不可。
6H16-14-2転貸借契約を締結した場合、賃借人は、賃料の増減額請求権を行使できない。×
7H13-13-3普通建物賃貸借では、家賃が不相当に高額になった場合、借主は、契約条件にかかわらず減額請求が可能。
8H09-12-1家賃の増減について特約のない場合で、経済事情の変動により家賃が不相当に高額となったとき、賃借人は、賃貸人に対し将来に向かって家賃の減額を請求できる。
特約がある場合
1R05-12-2当事者間において、一定の期間は建物の賃料を減額しない旨の特約がある場合、現行賃料が不相当になったなどの事情が生じたとしても、この特約は有効である。×
2H27-12-2賃貸借契約開始から3年間は賃料を増額しない旨の特約を定めた場合、定期借家契約においても、普通借家契約においても、当該特約は無効である。×
3H25-11-4定期建物賃貸借において、賃料改定につき特約がある場合、賃借人は賃貸人に対して賃料の減額請求ができない。
4H13-13-3普通建物賃貸借では、家賃が不相当に高額になった場合、借主は、契約条件にかかわらず減額請求が可能。
5H13-13-4普通建物賃貸借では、「家賃を減額しない」という特約は無効。
6H09-12-2「家賃を増額しない」という特約があっても、増額請求が可能。×
7H05-12-2「家賃を増額しない」という特約は有効。

3 正しい

「賃借人が建物の引渡しを受けている」のですから、賃借人は、この建物の賃借権について、対抗要件を備えているわけです(借地借家法31条)。
この場合、この建物が譲渡されると、この建物の賃貸人たる地位も、原則として、譲受人に移転します(民法605条の2第1項)。

ただし、建物の譲渡人と譲受人との間に、以下2つの合意があれば、話は別です。

  1. 賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨の合意
  2. その不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意

この場合、賃貸人たる地位は、譲渡人の元に留保されます(同条2項)。

 

■参照項目&類似過去問
内容を見る
賃貸人たる地位の移転(民法[26]6)
年-問-肢内容正誤
1R05-12-3賃借人が建物の引渡しを受けている場合において、当該建物の賃貸人が当該建物を譲渡するに当たり、当該建物の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及び当該建物の譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は譲受人に移転しない。
2R03-12-2Aを賃貸人、Bを賃借人とする甲建物の賃貸借契約が締結された。甲建物がBに引き渡された後、甲建物の所有権がAからCに移転した場合、本件契約の敷金は、他に特段の合意がない限り、BのAに対する未払賃料債務に充当され、残額がCに承継される。
3R02s-06-3AはBにA所有の甲建物を賃貸し、BはAの承諾を得てCに適法に甲建物を転貸し、Cが甲建物に居住している。AがDに甲建物を売却した場合、AD間で特段の合意をしない限り、賃貸人の地位はDに移転する。
424-06-2甲土地の賃借人であるBが、甲土地上に登記ある建物を有する場合に、Aから甲土地を購入したCは、所有権移転登記を備えていないときであっても、Bに対して、自らが賃貸人であることを主張することができる。
×
516-03-2Aは、自己所有の建物をCに売却したが、Cはまだ所有権移転登記を行っていない。BがAからこの建物を賃借し、引渡しを受けて適法に占有している場合、Cは、Bに対し、この建物の所有権を対抗でき、賃貸人たる地位を主張できる。
×
607-07-1BがAの所有地を賃借して、建物を建てその登記をしている。Aがその土地をCに譲渡する場合、賃貸人の義務の移転を伴うから、Aは、その譲渡についてBの承諾を必要とする。
×
707-07-3BがAの所有地を賃借して、建物を建てその登記をしている。CがAからその土地の譲渡を受けた場合、Cは、登記を移転していなくても賃貸人たる地位の取得をBに対抗することができる。
×

4 誤り

経済事情の変動により建物の賃料が不相当となった場合、当事者は、建物の借賃の額の増減を請求することができます(借賃増減請求権。借地借家法32条1項本文)。
「現行賃料が定められた時から一定の期間が経過」するまで待つ必要はありません。

※賃料改定に関する特約がある場合については、肢2を確認してください。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
借賃増減請求権に関する特約(借地借家法[06]2(2))
年-問-肢内容正誤
特約がない場合
1R05-12-4現行賃料が定められた時から一定の期間が経過していなければ、賃料増額請求は、認められない。×
2R02-12-2AとBとの間でA所有の甲建物をBに対して、居住の用を目的として、期間2年、賃料月額10万円で賃貸する旨の賃貸借契約を締結し、Bが甲建物の引渡しを受けた。本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借契約であって、賃料改定に関する特約がない場合、経済事情の変動により賃料が不相当となったときは、AはBに対し、賃料増額請求をすることができる。
3H24-12-2普通建物賃貸借・定期建物賃貸借の双方につき、特約がなければ、賃料の増減額請求権が発生。
4H22-12-4定期建物賃貸借で、特約がなければ、賃料の増減額請求権が発生。
5H16-14-1普通建物賃貸借において、使用収益開始前には賃料減額請求は不可。
6H16-14-2転貸借契約を締結した場合、賃借人は、賃料の増減額請求権を行使できない。×
7H13-13-3普通建物賃貸借では、家賃が不相当に高額になった場合、借主は、契約条件にかかわらず減額請求が可能。
8H09-12-1家賃の増減について特約のない場合で、経済事情の変動により家賃が不相当に高額となったとき、賃借人は、賃貸人に対し将来に向かって家賃の減額を請求できる。
特約がある場合
1R05-12-2当事者間において、一定の期間は建物の賃料を減額しない旨の特約がある場合、現行賃料が不相当になったなどの事情が生じたとしても、この特約は有効である。×
2H27-12-2賃貸借契約開始から3年間は賃料を増額しない旨の特約を定めた場合、定期借家契約においても、普通借家契約においても、当該特約は無効である。×
3H25-11-4定期建物賃貸借において、賃料改定につき特約がある場合、賃借人は賃貸人に対して賃料の減額請求ができない。
4H13-13-3普通建物賃貸借では、家賃が不相当に高額になった場合、借主は、契約条件にかかわらず減額請求が可能。
5H13-13-4普通建物賃貸借では、「家賃を減額しない」という特約は無効。
6H09-12-2「家賃を増額しない」という特約があっても、増額請求が可能。×
7H05-12-2「家賃を増額しない」という特約は有効。

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