【宅建過去問】(平成04年問07)手付

不動産の売買契約における手付に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 当該契約が宅地建物取引業者の媒介によるものであるときは、契約に別段の定めがあっても、手付は解約手付となる。
  2. 解約手付の契約は、売買契約と同時に締結しなければ、効力を生じない。
  3. 買主が手付を交付した後、契約に基づいて中間金の支払いを済ませた場合でも、契約に別段の定めがなく、売主が履行に着手していなければ、買主は、手付を放棄して、当該契約を解除することができる。
  4. 買主が手付を交付した後、売主の責めに帰すべき事由により売主の債務が履行不能となった場合において、損害賠償額について契約に別段の定めがないときは、その額は手付の倍額とされる。

正解:3

1 誤り

手付を交付した場合、それは解約手付であると推定される。しかし、当事者間で別段の定めをすることも可能である(最判昭24.10.04)。
本肢は、「別段の定めがあっても、解約手付」とする点が誤り。

※解約手付とは、「買主は手付を放棄し、売主は手付の倍額を償還して契約を解除できる」という趣旨で交付される手付のことである(民法557条1項)。
※宅建業者が自ら売主となる契約で、買主が宅建業者でない場合、当事者間の契約にかかわらず、交付された手付は解約手付とみなされる(宅建業法39条2項)。しかし、本肢の宅建業者は、売買契約を媒介しているに過ぎないから、この規定について考慮する必要はない。

■参照項目&類似過去問
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手付解除とは(民法[24]2(2)①)
年-問-肢内容正誤
112-07-1手付の額が売買代金の額に比べて僅少である場合には、解約手付とする約定は、効力を有しない。×
212-07-3手付解除した場合で、買主に債務不履行はなかったが、売主が手付の額を超える額の損害を受けたことを立証できるとき、売主は、その損害全部の賠償を請求することができる。×
312-07-4売主の側から手付解除する場合、単に口頭で手付の額の倍額を償還することを告げて受領を催告するだけでは足りず、これを現実に提供しなければならない。
406-06-3買主の債務不履行を理由に契約が解除された場合、買主は、売主に対し違約金を支払わなければならないが、手付の返還を求めることはできる。
504-07-1不動産の売買契約が宅建業者の媒介による場合、契約に別段の定めがあっても、手付は解約手付となる。×
604-07-2解約手付の契約は、売買契約と同時に締結しなければ、効力を生じない。×

2 誤り

手付契約は、売買契約とは別個の契約である。したがって、売買契約と異なる時期に締結することも可能である。

※売買契約と同時に締結しなければ、効力を生じないのは、買戻しの特約である(民法579条)。

■参照項目&類似過去問
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手付解除とは(民法[24]2(2)①)
年-問-肢内容正誤
112-07-1手付の額が売買代金の額に比べて僅少である場合には、解約手付とする約定は、効力を有しない。×
212-07-3手付解除した場合で、買主に債務不履行はなかったが、売主が手付の額を超える額の損害を受けたことを立証できるとき、売主は、その損害全部の賠償を請求することができる。×
312-07-4売主の側から手付解除する場合、単に口頭で手付の額の倍額を償還することを告げて受領を催告するだけでは足りず、これを現実に提供しなければならない。
406-06-3買主の債務不履行を理由に契約が解除された場合、買主は、売主に対し違約金を支払わなければならないが、手付の返還を求めることはできる。
504-07-1不動産の売買契約が宅建業者の媒介による場合、契約に別段の定めがあっても、手付は解約手付となる。×
604-07-2解約手付の契約は、売買契約と同時に締結しなければ、効力を生じない。×

3 正しい

手付による解除ができなくなるのは、契約の相手方が契約の履行に着手した時点以降である(民法557条1項)。 自らが履行に着手していても、相手方が履行に着手していなければ、解約手付による解除をすることができる。

本肢では、買主は、中間金を支払う行動により履行に着手しているものの、売主は、いまだ履行に着手していない。したがって、買主の方からであれば、手付を放棄することにより契約を解除することができる。この場合、もちろん、中間金の返還を受けることができる。

■参照項目&類似過去問
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手付解除ができる期間・当事者(民法[24]2(2)②)
年-問-肢内容正誤
1R03s-04-1売主Aと買主Bとの間で締結した売買契約に関し、BがAに対して手付を交付した場合、Aは、目的物を引き渡すまではいつでも、手付の倍額を現実に提供して売買契約を解除することができる。
×
2R02-09-1Aがその所有する甲建物について、Bとの間で、Aを売主、Bを買主とする売買契約を締結した。Bが手付を交付し、履行期の到来後に代金支払の準備をしてAに履行の催告をした場合、Aは、手付の倍額を現実に提供して契約の解除をすることができる。×
329-05-3Aは、中古自動車を売却するため、Bに売買の媒介を依頼し、報酬として売買代金の3%を支払うことを約した。Bの媒介によりAは当該自動車をCに100万円で売却した。売買契約が締結された際に、Cが解約手付として手付金10万円をAに支払っている場合には、Aはいつでも20万円を償還して売買契約を解除することができる。×
421-10-2売主が履行に着手していなくても、買主が履行に着手していれば、買主は契約を解除できない。×
517-09-4売主は、自らが履行に着手するまでは、買主が履行に着手していても、契約を解除できる。×
616-04-2売主が履行に着手した場合、買主が履行に着手したかどうかにかかわらず、売主は契約を解除できない。×
712-07-2買主が履行に着手した場合、売主が履行に着手していないときでも、買主は契約を解除できない。×
806-06-2買主は、売主が履行に着手するまでは、自らが履行に着手していても、契約を解除できる。
904-07-3買主は、自らが履行に着手していても、売主が履行に着手していなければ、契約を解除できる。

4 誤り

損害賠償額の予定をした場合は、実際の損害額の多い少ないにかかわらず、予定額の賠償額において清算される(民法420条)。
しかし、本肢では、「損害賠償額について別段の定めがない」。したがって、実際に生じた損害額の賠償を請求することができる。その範囲は、「手付の倍額」にとどまるものではない。

※「手付の倍額」は、売主の側から手付解除を主張する場合に、償還すべき金額である(同法557条1項)。本肢は、売主の債務不履行を理由に、買主が解除をする場合であるから、損害賠償額の範囲は、手付の倍額にとどまらない。

■参照項目&類似過去問
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損害賠償額の予定(民法[15]3(2))
年-問-肢内容正誤
1H26-01-2当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
2H16-04-3手付金相当額を損害賠償の予定と定めた場合、損害がその額を超えていても、その額以上に損害賠償請求することはできない。
3H14-07-1賠償額の予定条項があっても、債務者が履行遅滞について帰責事由のないことを主張・立証すれば、免責される。
4H14-07-3裁判所は、賠償額の予定の合意が、暴利行為として公序良俗違反となる場合に限り、賠償額の減額をすることができる。×
5H14-07-4賠償額の予定条項がある場合、債権者は履行遅滞があったことを主張・立証すれば足り、損害の発生や損害額を主張・立証する必要はない。
6H06-06-4実際の損害額が違約金より少なければ、違約金の減額を求めることができる。×
7H04-07-4賠償額の予定がない場合、売主から解除する場合の損害賠償額は手付の倍額とされる。×
8H02-02-2賠償額の予定は、契約と同時にしなければならない。×
9H02-02-3賠償額の予定は、金銭以外のものですることができる。
10H02-02-4賠償額を予定した場合、実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても予定額を超えて請求することはできない。

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