【宅建過去問】(平成14年問09)契約不適合担保責任


Aが、Bに建物を売却し、代金受領と引換えに建物を引き渡した後に、Bがこの建物に契約締結時には予期しなかった欠陥があることを発見したが、当該建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合にAが当該不適合を担保すべき責任についての特約はない。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

  1. Bは、この欠陥がAの責めに帰すべき事由により生じたものであることを証明した場合に限り、この欠陥に基づき行使できる権利を主張できる。
  2. Bは、この欠陥がこの売買契約及び取引上の社会通念に照らして軽微である場合は、この売買契約を解除できないが、この欠陥により受けた損害につき、Aに対し賠償請求できる。
  3. Bが、Aに対し、この欠陥に基づき行使できる権利を行使するためには、Bが欠陥を知った時から1年以内にその旨をAに通知しなければならない。
  4. Bは、この欠陥が存在するために、この売買契約を締結した目的を達することができるか否かにかかわらず、この売買契約を解除できる。

正解:1

1 誤り

契約不適合担保責任は、売主が負う無過失責任である(民法562条、563条、564条)。
したがって、買主Bは、売主Aの帰責事由を証明しなくとも、担保責任を追及することができる。

※売主に損害賠償を請求することができるのは、売主の帰責事由がある場合に限られる(民法415条)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
契約不適合担保責任:無過失責任(民法[24]3(1)①)
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約を締結した。甲建物には、品質に関して契約の内容に適合しない箇所(本件不適合)があった。
121-10-1本件不適合にAが気付いておらず、Bも不適合であることに気付かず、かつ、気付かなかったことにつき過失がないような場合には、Aは担保責任を負う必要はない。
×
214-09-1Bは、この不適合がAの責めに帰すべき事由により生じたものであることを証明した場合に限り、この不適合に基づき行使できる権利を主張できる。
×

2 正しい

売主の債務不履行が軽微な場合、買主は、契約を解除することができない(民法541条ただし書き)。
しかし、解除ができない場合でも、建物の欠陥により損害を受けているのだから、損害賠償請求は可能である(同法415条)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
契約不適合担保責任:契約解除(民法[24]3(1)②)
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約を締結した。甲建物には、品質に関して契約の内容に適合しない箇所(本件不適合)があった。
1R03-07-3Bが引渡しを受けた甲建物に契約の内容に適合しない欠陥があることが判明したときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。×
2R01-03-2建物の構造耐力上主要な部分の不適合については、契約の目的を達成することができない場合でなければ、Bは本件不適合を理由に売買契約を解除することができない。×
3R01-03-3Bが本件不適合を理由にAに対して損害賠償請求をすることができるのは、本件不適合を理由に売買契約を解除することができない場合に限られる。×
419-11-2Bが本件不適合を知った場合でも、その不適合により売買契約をした目的を達成することができないとまではいえないときは、Aはその不適合を担保すべき責任を負わない。×
515-10-2Bが、本件不適合を知らないまま契約を締結した場合、この欠陥が存在するために契約を行った目的を達成することができるか否かにかかわらず、Bは、Aの担保責任を追及して契約の解除を行うことができる。
614-09-2Bは、本件不適合がこの売買契約及び取引上の社会通念に照らして軽微である場合は、この売買契約を解除できないが、この欠陥により受けた損害につき、Aに対し賠償請求できる。
714-09-4Bは、本件不適合が存在するために、この売買契約を締結した目的を達することができるか否かにかかわらず、この売買契約を解除できる。
808-08-4売買契約の目的物である土地の8割が都市計画街路の区域内にあることが容易に分からない状況にあったため、買主がそのことを知らなかった場合は、このため契約の目的を達することができるか否かにかかわらず、買主は、売主に対して契約を解除することができる。
904-08-1購入した建物の引渡し後に欠陥が発見された場合、その欠陥が軽微であり居住の用に支障がなくても、買主は、当該契約を解除することができる。×
1003-11-3売買の目的物に物理的な欠陥があり、契約目的を達成できない場合、買主の善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。×
1101-04-2売買の目的物である土地に欠陥があって、買主がそのことを知らなかったときは、買主は、その事実を知ったとき、欠陥の程度に関係なく、契約を解除することができる。×

3 正しい

契約不適合担保責任を追及する場合、不適合を知った時から1年以内売主に通知する必要がある(民法566条本文)。

※通知により権利を保存しておけば、消滅時効が成立するまでの間、担保責任を追及することができる。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
契約不適合担保責任:担保責任の期間の制限(民法[24]3(4))
年-問-肢内容正誤
1R03s-04-4売主Aと買主Bとの間で締結した売買契約に関し、目的物の引渡しの時点で目的物が品質に関して契約の内容に適合しないことをAが知っていた場合には、当該不適合に関する請求権が消滅時効にかかっていない限り、BはAの担保責任を追及することができる。
2R02s-07-1Aを売主、Bを買主として、甲土地の売買契約が締結された。甲土地の実際の面積が本件契約の売買代金の基礎とした面積より少なかった場合、Bはそのことを知った時から2年以内にその旨をAに通知しなければ、代金の減額を請求することができない。×
[共通の設定]
Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約を締結した。甲建物には、品質に関して契約の内容に適合しない箇所(本件不適合)があった。
3R01-03-1Aは本件不適合を知っていたがBに告げず、Bはそのことを知らなかった。Bが本件不適合を建物引渡しから1年が経過した時に知ったとしても、本件不適合を知った時から2年後にその旨をAに通知すれば、BはAに対して担保責任を追及することができる。
420-09-3甲建物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合に、BがAの担保責任を追及するときには、Bは、その不適合を知った時から1年以内にその不適合をAに通知すればよく、1年以内に担保責任を追及するまでの必要はない。
519-11-4売買契約に、目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任を追及できる期間について特約を設けていない場合、BがAの担保責任を追及するときは、その不適合を知った時から1年以内に当該不適合についてAに通知しなければならない。
615-10-3Bが、本件不適合の存在を知らないまま契約を締結した場合、契約締結から1年以内に担保責任の追及を行わなければ、BはAに対して担保責任を追及することができなくなる。
×
714-09-3Bが、Aに対し、本件不適合に基づき行使できる権利を行使するためには、Bが欠陥を知った時から1年以内にその旨をAに通知しなければならない。
消滅時効との関係
826-03-3売買契約の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合の買主の売主に対する担保による損害賠償請求権には消滅時効の規定の適用があり、この消滅時効は、買主が売買の目的物の引渡しを受けた時から進行する。

4 正しい

(肢1の表参照。)
契約不適合があった場合、買主が売主の責任を追及する方法の一つとして、契約の解除が認められる(民法564条、541条)。

※契約を解除することができるのは、「売買契約を締結した目的を達することができないとき」に限られない。令和2年の民法改正により大きく変わった点である。注意しよう。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
契約不適合担保責任:契約解除(民法[24]3(1)②)
年-問-肢内容正誤
[共通の設定]
Aを売主、Bを買主として甲建物の売買契約を締結した。甲建物には、品質に関して契約の内容に適合しない箇所(本件不適合)があった。
1R03-07-3Bが引渡しを受けた甲建物に契約の内容に適合しない欠陥があることが判明したときは、修理が可能か否かにかかわらず、BはAに対して、修理を請求することなく、本件契約の解除をすることができる。×
2R01-03-2建物の構造耐力上主要な部分の不適合については、契約の目的を達成することができない場合でなければ、Bは本件不適合を理由に売買契約を解除することができない。×
3R01-03-3Bが本件不適合を理由にAに対して損害賠償請求をすることができるのは、本件不適合を理由に売買契約を解除することができない場合に限られる。×
419-11-2Bが本件不適合を知った場合でも、その不適合により売買契約をした目的を達成することができないとまではいえないときは、Aはその不適合を担保すべき責任を負わない。×
515-10-2Bが、本件不適合を知らないまま契約を締結した場合、この欠陥が存在するために契約を行った目的を達成することができるか否かにかかわらず、Bは、Aの担保責任を追及して契約の解除を行うことができる。
614-09-2Bは、本件不適合がこの売買契約及び取引上の社会通念に照らして軽微である場合は、この売買契約を解除できないが、この欠陥により受けた損害につき、Aに対し賠償請求できる。
714-09-4Bは、本件不適合が存在するために、この売買契約を締結した目的を達することができるか否かにかかわらず、この売買契約を解除できる。
808-08-4売買契約の目的物である土地の8割が都市計画街路の区域内にあることが容易に分からない状況にあったため、買主がそのことを知らなかった場合は、このため契約の目的を達することができるか否かにかかわらず、買主は、売主に対して契約を解除することができる。
904-08-1購入した建物の引渡し後に欠陥が発見された場合、その欠陥が軽微であり居住の用に支障がなくても、買主は、当該契約を解除することができる。×
1003-11-3売買の目的物に物理的な欠陥があり、契約目的を達成できない場合、買主の善意悪意に関係なく、契約を解除することができる。×
1101-04-2売買の目的物である土地に欠陥があって、買主がそのことを知らなかったときは、買主は、その事実を知ったとき、欠陥の程度に関係なく、契約を解除することができる。×

>>年度目次に戻る

YouTubeメンバーシップを使った宅建合格作戦

YouTubeの「メンバーシップ機能」を利用して、「スリー・ステップ学習」の全てを受講できるようになりました。
メンバーの種類(レベル)は、
  1. 「年度別過去問」(月額1,790円)
  2. 「基本習得編&年度別過去問 」(月額2,390円)
  3. 「スリー・ステップ オールインワン 」(月額3,590円)
の3種類。

自分の学習状況に合わせて「レベル」を選択すれば、サブスクリプション方式で効率的に勉強が進められます。

【宅建過去問】(平成14年問09)契約不適合担保責任” に対して3件のコメントがあります。

  1. 泉 ゆうき より:

    家坂先生
    ありがとうございます。
    肢2と肢4が別の問題であること、「売買契約を締結した目的を達成することができるか否」と「契約を解除することができるかどうか」の関連性がないということなんですね。
    勉強になりました。

  2. 泉 ゆうき より:

    はじめまして。
    問題で私が勘違いした解釈をしているようなので教えてください。
    問2では、取引上社会通念に照らして軽微である場合、「契約解除ができない。」とあり、問4では契約を締結した目的を達成することができるか否かに関らず「契約解除ができる。」とあり、共に「正しい」回答となっています。
    問4で、契約の目的達成が出来る、出来ない関係なく”契約解除が可能”との解釈になりますので、問2では、”社会通念に照らして軽微であるか否かに関係なく契約は解除できる”という解釈にならないのでしょうか。問2と問4が矛盾した内容になっていると感じますので、そのあたりの解釈について教えていただけませんでしょうか。

    1. 家坂 圭一 より:

      泉様

      ご質問ありがとうございます。

      問4で、契約の目的達成が出来る、出来ない関係なく”契約解除が可能”との解釈になりますので、問2では、”社会通念に照らして軽微であるか否かに関係なく契約は解除できる”という解釈にならないのでしょうか。

      この点が「勘違い」だと思います。
      肢4と肢2は別問題です。「肢4が正しいなら、肢2も正しい。」というような論理的関係はありません。
      以下、それぞれに分けて説明します。

      (a)肢2について

      肢2は、民法541条をベースにした出題です。

      (民法541条 催告による解除)
      当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

      ただし書きにあるように、債務不履行が「社会通念に照らして軽微であるとき」は、契約を解除することができません。

      (b)肢4について

      これに対し、肢4に関して民法に規定はありません。
      つまり、「売買契約を締結した目的を達することができるか否か」は、「契約を解除することができるかどうか」と関係がないのです。
      契約の目的を達成することができない場合はもちろん、契約の目的を達成することができる場合であっても、契約の解除が可能です。

      (c)肢2と肢4のまとめ

      肢2と肢4を合わせると、以下のようにまとめることができます。
      契約の目的を達成することができる場合でも、債務不履行が軽微でない限りは、契約の解除が可能である。

家坂 圭一 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です