■講義編■農地法[01]農地法のシステム

農地とは、耕作の目的に供される土地のことをいいます。農地は、限られた貴重な資源です。したがって、農地を売却したり(権利移動)、農地以外のものにすること(転用)を自由にさせるわけにはいきません。
農地に関する権利移動や農地の転用を原則として許可制にする、農地法のアウトラインについて見ておきましょう。

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1.農地法の目的

【基本認識】
農地は限られた貴重な資源

【規制】
・効率的に利用する耕作者による権利取得を促進
・農地以外にすることを規制(市街化区域内は例外)

2.用語の整理

(1).農地
①農地とは

耕作の目的に供される土地
◯遊休農地・休耕地・不耕作地

②判断基準

◯土地の現況
×登記簿上の地目
★過去の出題例★

「農地」の定義(農地法[01]2(1))
年-問-肢内容正誤
1R03s-21-3
登記簿の地目が宅地となっている場合には、現況が農地であっても法の規制の対象とはならない。×
2R02s-21-1
山林を開墾し、農地として耕作している土地であっても、土地登記簿上の地目が山林であれば、法の適用を受ける農地に該当しない。×
3H30-22-4
雑種地を開墾し耕作している土地でも、登記簿上の地目が雑種地である場合は、法の適用を受ける農地に当たらない。×
4H28-22-4
農業者が、市街化調整区域内の耕作しておらず遊休化している自己の農地を、自己の住宅用地に転用する場合、あらかじめ農業委員会へ届出をすれば、法第4条第1項の許可を受ける必要がない。×
5H26-21-4山林を開墾し現に農地として耕作している土地であっても、土地登記簿上の地目が山林であれば、法の適用を受ける農地とはならない。×
6H25-21-2雑種地を開墾し、現に畑として耕作されている土地であっても、土地登記簿上の地目が雑種地である限り、法の適用を受ける農地には当たらない。×
7H24-22-1登記簿上の地目が山林となっている土地であっても、現に耕作の目的に供されている場合には、法に規定する農地に該当する。
8H23-22-3農業者が、自らの養畜の事業のための畜舎を建設する目的で、市街化調整区域内にある150㎡の農地を購入する場合は、法第5条第1項の許可を受ける必要がある。
9H20-24-1現況は農地であるが、土地登記簿上の地目が原野である市街化調整区域内の土地を駐車場にするために取得する場合は、法第5条第1項の許可を受ける必要はない。×
10H19-25-3耕作する目的で原野の所有権を取得し、その取得後、造成して農地にする場合には、法第3条第1項の許可を受ける必要がある。×
11H19-25-4市街化調整区域内の農地を駐車場に転用するに当たって、当該農地がすでに利用されておらず遊休化している場合には、法第4条第1項の許可を受ける必要はない。×
12H18-25-1山林を開墾し現に水田として耕作している土地であっても、土地登記簿上の地目が山林である限り、法の適用を受ける農地には当たらない。×
13H16-24-2市街化調整区域内の山林の所有者が、その土地を開墾し果樹園として利用した後に、その果樹園を山林に戻す目的で、杉の苗を植える場合には、農地法第4条の許可を受ける必要がある。
14H13-23-1現況は農地であるが、土地登記簿上の地目が「山林」である土地を住宅建設の目的で取得する場合には、農地法第5条の許可を要しない。×
15H11-24-4土地登記簿上の地目が山林や原野であっても、現況が農地であれば、その所有権を取得する場合は、原則として農地法第3条又は第5条の許可を受ける必要がある。
16H09-21-4[市街化区域外の農地]山林を開墾して造成した農地について、それを宅地に転用する目的で取得する場合は、農地法第5条の許可を受ける必要はない。×
17H07-26-1[個人が市街化区域外の農地等を売買により取得しようとする場合]現在耕作されている農地を取得して宅地に転用しようとする場合は、登記簿上の地目が「原野」であっても、農地法第5条の許可を受ける必要がある。
18H04-26-1土地区画整理事業の施行地区内にある農地で、耕作の目的に供されているものは、仮換地の指定処分があっても農地法上の農地である。
19H03-27-1山林を開墾した場合、農地として耕作していても、土地登記簿の地目が「山林」から「田」又は「畑」に変更されるまでは、農地法上の農地ではない。×
(2).採草放牧地

農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるもの

3.許可制度

(1).権利移動
①権利移動とは

使用収益を目的とする権利を設定or移転
=使用収益者が変更される場合

★過去の出題例★

権利移動:競売による権利移動(農地法[01]3(1)①)
年-問-肢内容正誤
1R02s-21-3耕作を目的として農業者が競売により農地を取得する場合であっても、法第3条第1項の許可を受ける必要がある。
2H27-22-4農業者が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため、市街化区域外の農地に抵当権の設定が行われ、その後、返済が滞ったため当該抵当権に基づき競売が行われ第三者が当該農地を取得する場合であっても、法第3条第1項又は法第5条第1項の許可を受ける必要がある。
3H26-21-2市街化区域内の農地について、耕作の目的に供するために競売により所有権を取得しようとする場合には、その買受人は法第3条第1項の許可を受ける必要はない。×
4H23-22-2競売により市街化調整区域内にある農地を取得する場合は、法第3条第1項又は法第5条第1項の許可を受ける必要はない。×
5H16-24-3競売により市街化区域外の農地の買受人となり所有権を取得しようとする場合には、農地法第3条又は第5条の許可を受ける必要がある。
6H08-17-4競売により農地の買受人となった者がその農地を取得する場合は、農地法第3条の許可を得る必要がある。
7H05-26-3競売により農地の所有権を取得する場合、農地法の許可を受ける必要がある。
②競売による権利移動

→農地の権利移動にあたる
→許可が必要

③「権利」に当たるもの・当たらないもの

★過去の出題例★
権利移動:抵当権の設定(農地法[01]3(1)③)
年-問-肢内容正誤
1R03s-21-1自己所有の農地に住宅を建設する資金を借り入れるため、当該農地に抵当権の設定をする場合には、法第3条第1項の許可を受ける必要がある。×
2R02-21-4農地に抵当権を設定する場合には、法第3条第1項の許可を受ける必要がある。×
3R01-21-2金融機関からの資金借入れのために農地に抵当権を設定する場合、法第3条第1項の許可が必要である。×
4H29-15-3銀行から500万円を借り入れるために農地に抵当権を設定する場合、法第3条第1項又は第5条第1項の許可を受ける必要がある。×
5H26-21-3農業者が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるために、自己所有の農地に抵当権を設定する場合には、法第3条第1項の許可を受ける必要はない。
6H21-22-2農業者が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため、自己所有の農地に抵当権を設定する場合には、法第3条第1項の許可を受けなければならない。×
7H17-25-4農業者が自ら居住している住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため、自己所有の農地に抵当権を設定する場合、農地法第3条第1項の許可を受ける必要はない。
8H09-21-1農家が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため、自己所有の市街化区域外の農地に抵当権を設定する場合は、農地法第3条の許可を受ける必要はない。
(2).転用

農地を農地以外のものにすること

★過去の出題例★

「転用」に該当するか(農地法[01]3(2))
年-問-肢内容正誤
1R01-21-1耕作目的で原野を農地に転用しようとする場合、法第4条第1項の許可は不要である。
2H21-22-1土地区画整理法に基づく土地区画整理事業により道路を建設するために、農地を転用しようとする者は、法第4条第1項の許可を受けなければならない。×
3H04-26-3農家がその所有する農地に分家住宅を建てる場合は、農地法第4条第1項の許可を受ける必要はない。×
一時的な転用


★過去の出題例★

一時的な転用(農地法[01]3(2))
年-問-肢内容正誤
1R03-21-3砂利採取法第16条の認可を受けて市街化調整区域内の農地を砂利採取のために一時的に借り受ける場合には、法第5条第1項の許可は不要である。×
2R01-21-4砂利採取法による認可を受けた採取計画に従って砂利採取のために農地を一時的に貸し付ける場合、法第5条第1項の許可は不要である。×
3H24-22-4砂利採取法による認可を受けた砂利採取計画に従って砂利を採取するために農地を一時的に貸し付ける場合には、法第5条第1項の許可を受ける必要はない。
×
4H20-24-2建設業者が、農地に復元して返還する条件で、市街化調整区域内の農地を一時的に資材置場として借りる場合は、法第5条第1項の許可を受ける必要がある。
5H17-25-1農地を一時的に資材置場に転用する場合は、いかなる場合であってもあらかじめ農業委員会に届出をすれば、農地法第4条第1項又は同法第5条第1項の許可を受ける必要はない。×
6H14-23-3建設業者が、工事終了後農地に復元して返還する条件で、市街化調整区域内の農地を6カ月間資材置場として借り受けた場合、農地法第5条の許可を受ける必要はない。
×
7H10-24-2市街化区域外の農地を一時的に資材置場に転用する場合は、あらかじめ農業委員会に届出をすれば、農地法第4条又は同法第5条の許可を受ける必要がない。
×
8H08-17-2市街化区域外の農地を6ヵ月間貸して臨時駐車場にする場合は、その後農地として利用するときでも、農地法第5条の許可を得る必要がある。
9H06-27-3建設業者が農地を工事期間中資材置場として借り受け、工事終了後速やかに農地に復元して返還する場合、農地法第5条の許可を要しない。
×
10H05-26-2農作物を収穫した後の数ヵ月だけ資材置場として賃貸する場合、営農に支障がなければ、農地法の許可を受ける必要はない。
×
(3).まとめ


4.法人による農地の利用

(1).農地所有適格法人

(2).不許可の例外

★過去の出題例★
法人による農地の利用(農地法[01]4)
年-問-肢内容正誤
1R05-21-4社会福祉事業を行うことを目的として設立された法人(社会福祉法人)が、農地をその目的に係る業務の運営に必要な施設の用に供すると認められる場合、農地所有適格法人でなくても、農業委員会の許可を得て、農地の所有権を取得することができる。
2R04-21-2法第2条第3項の農地所有適格法人の要件を満たしていない株式会社は、耕作目的で農地を借り入れることはできない。×
3H30-22-3法第2条第3項の農地所有適格法人の要件を満たしていない株式会社は、耕作目的で農地を借り入れることはできない。×
4H28-22-2法第2条第3項の農地所有適格法人の要件を満たしていない株式会社は、耕作目的で農地を借り入れることはできない。×

[Step.2]一問一答式実戦応用編講座

実戦応用編では、選択肢単位に分解・整理した過去問を実際に解き、その後に、(1)基本知識の確認、(2)正誤を見極める方法、の講義を視聴します。この繰返しにより、「本試験でどんなヒッカケが出るのか?」「どうやってヒッカケを乗り越えるのか?」という実戦対応能力を身につけます。

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この3段階で、着実に合格レベルに進むことができます。

■講義編■農地法[01]農地法のシステム” に対して4件のコメントがあります。

  1. yy より:

    3条許可や5条許可(届出)は、
    売主と買主どちらが申請するものなのでしょうか。
    許可と届出で変わったりするのでしょうか。

    1. 家坂 圭一 より:

      yy様

      農地法の許可や届出について、過去問では、

      • 許可や届出が必要かどうか?
      • 必要な場合の申請先はどこか?

      しか出題されていません。

      yyさんの質問について問われる可能性は少ないですが、以下にまとめておきます。

      (1)3条・5条の「許可」

      「当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。」(3条)
      「当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。」(5条)
      という表現です。
      例えば、売買契約でいえば、「売主」と「買主」の双方が許可の申請義務を負います。

      (2)「届出」

      3条の場合は、「権利を取得した者」です(3条の3)。
      5条の場合は、「当事者」です。売買の場合では「売主」「買主」連名での届出が必要となります。

      1. yy より:

        家坂 様
        ご教示いただきありがとうございます。
        国土法を勉強する中で農地法はどうなんだろうと気になり、
        近年の過去問で全く触れられていない部分でしたが、印象付けで記憶が定着するかなと思い、お力をお借りしたいと考えておりました。

        ありがとうございました。

        1. 家坂 圭一 より:

          yy様

          返信ありがとうございます。

          >近年の過去問で全く触れられていない部分でしたが、印象付けで記憶が定着するかなと思い、お力をお借りしたいと考えておりました。

          過去に出題のない論点について調べることは、却って有害になる可能性があります(不必要な知識に触れるため)。
          ご注意ください。

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