【宅建過去問】(令和03年12月問08)申込みと承諾

AはBに対して、Aが所有する甲土地を1,000万円で売却したい旨の申込みを郵便で発信した(以下この問において「本件申込み」という。)が、本件申込みがBに到達する前にAが死亡した場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. Bが承諾の通知を発する前に、BがAの死亡を知ったとしても、本件申込みは効力を失わない。
  2. Aが、本件申込みにおいて、自己が死亡した場合には申込みの効力を失う旨の意思表示をしていたときには、BがAの死亡を知らないとしても本件申込みは効力を失う。
  3. 本件申込みが効力を失わない場合、本件申込みに承諾をなすべき期間及び撤回をする権利についての記載がなかったときは、Aの相続人は、本件申込みをいつでも撤回することができる。
  4. 本件申込みが効力を失わない場合、Bが承諾の意思表示を発信した時点で甲土地の売買契約が成立する。

正解:2

申込み・承諾、契約の成立

申込みや承諾、そして契約の成立時点に関する出題です。これらについて、宅建試験の民法で問われるのは初めてです。最初にアウトラインをまとめておきましょう。

甲土地の所有者Aが、Bに対して、「甲土地を1,000万円で売却したい。」という意思表示をしました。この意思表示を申込みといいます。この申込みに対して、Bが「甲土地を1,000万円で買います。」と返事をした場合、この意思表示を承諾といいます。
申込みと承諾が合致した時点で売買契約が成立する、これが民法の考え方です。

1 誤り

Aによる申込みの意思表示が、7月1日に発信され、7月3日にBのところに届いたとしましょう。通常であれば、この到達時点で、申込みが効力を発します(民法97条1項)。
問題は、申込みがBに到達する前(7月2日とします)に、Aが死亡していることです。この場合、申込みの効力はどうなるでしょうか。
この場合でも、原則として、申込みの意思表示は有効です(同条3項)。ただし、①②のケースに限っては、意思表示は、無効と扱います(同法526条)。

原則 意思表示は有効  
例外 意思表示は無効 ①申込者が死亡時には申込みの効力を失う旨の意思表示をしていた
②相手方が承諾の通知発信前に死亡の事実を知っていた

本肢は「Bが承諾の通知を発する前に、BがAの死亡を知った」というのですから、例外②に該当します。したがって、申込みは、効力を失います。

2 正しい

「Aが、本件申込みにおいて、自己が死亡した場合には申込みの効力を失う旨の意思表示をしていた」というのですから、肢1の表の例外①に該当します(民法526条)。したがって、申込みは、効力を失います。

3 誤り

申込みに承諾期間の定めがない場合、申込者は、承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができません(民法525条1項本文)。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、例外です(同項ただし書き)。
本肢では、「撤回をする権利についての記載がなかった」というのですから、例外には当たりません。原則通り、承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができないわけです。
Aが死亡したからといって、撤回が可能になるわけではありません。Aの相続人は、Aの地位を引き継ぐだけです。したがって、Aの相続人は、Bから承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、本件申込みを撤回することができません。
本肢は、「いつでも撤回することができる」とする点が誤りです。

※「本件申込みが効力を失わない場合」という記述は、肢1の表の例外①②のような事情がなかったことを示します。これは、肢4でも同様です。

4 誤り

契約が成立するのは、申込みに対して相手方が承諾したときです(民法522条1項)。そして、承諾が効力を発するのは、それが相手方に到達した時です(同法97条1項)。
したがって、甲土地の売買契約が成立するのは、Bの承諾の意思表示がAの相続人に到達した時点(7月12日)です。
本肢は、契約の成立時点を「Bが承諾の意思表示を発信した時点」(7月10日)とする点が誤っています。


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