【宅建過去問】(令和04年問03)制限行為能力者

制限行為能力者に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. 成年後見人は、後見監督人がいる場合には、後見監督人の同意を得なければ、成年被後見人の法律行為を取り消すことができない。
  2. 相続の放棄は相手方のない単独行為であるから、成年後見人が成年被後見人に代わってこれを行っても、利益相反行為となることはない。
  3. 成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。
  4. 成年年齢は18歳であるため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。

正解:4

はじめに

制限行為能力者の種類とそれぞれの保護者の名称や権限については、以下の表を思い出しましょう。

1 誤り

(「はじめに」の表参照。)
成年後見人は、成年被後見人の法定代理人です(民法859条1項)。したがって、成年被後見人の行為を取り消すことができます(取消権。同法120条1項)。
これは、後見監督人がいる場合でも同様です。成年後見人が後見監督人の同意を得る必要があるのは、営業又は民法が定める重要行為(不動産の売買など)について成年被後見人を代理する場合に限られます(同法864条、13条1項)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
成年被後見人(民法[01]3(1))
年-問-肢内容正誤
1R04-03-1成年後見人は、後見監督人がいる場合には、後見監督人の同意を得なければ、成年被後見人の法律行為を取り消すことができない。×
2R04-03-2相続の放棄は相手方のない単独行為であるから、成年後見人が成年被後見人に代わってこれを行っても、利益相反行為となることはない。×
3R04-03-3成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。×
4R04-03-4成年年齢は18歳であるため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。
5H26-09-1成年被後見人が第三者との間で建物の贈与を受ける契約をした場合には、成年後見人は、当該法律行為を取り消すことができない。×
6H26-09-4成年後見人は家庭裁判所が選任する者であるが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。
7H20-01-1成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。
8H18-12-1成年者Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況になった場合、Aの推定相続人はAの法定代理人となる。×
9H15-01-3成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。
10H02-04-1成年被後見人は、契約の際完全な意思能力を有していても契約を取り消すことができる。

2 誤り

以下のような家族を例に考えてみましょう。
被相続人が死亡し、その相続人は、被相続人の①配偶者と②子1人でした。この相続人①が成年被後見人であり、相続人②がその成年後見人という関係です。この場合、成年後見人である子が母を代理して母の相続を放棄すれば、自分の相続分が増加します。このように、一方が得をすると、その分他方が損をするような行為は、利益相反行為に当たります。

成年後見人は、被後見人と利益が相反する行為を行うことができません。この場合、成年被後見人は、家庭裁判所に対して、特別代理人の選任を請求する必要があります(民法860条、826条)。

※宅建試験で利益相反行為について考える代表例は、双方代理です。理解が不十分な人は、民法[03]代理制度の5を復習しましょう。

※相続の放棄は相手方のない単独行為ですが、これを気にする必要はありません。このことによって、結論に影響はない、というのが判例です(最判昭53.02.24)。

☆「相続の放棄」というテーマは、問02肢2でも出題されています。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
成年被後見人(民法[01]3(1))
年-問-肢内容正誤
1R04-03-1成年後見人は、後見監督人がいる場合には、後見監督人の同意を得なければ、成年被後見人の法律行為を取り消すことができない。×
2R04-03-2相続の放棄は相手方のない単独行為であるから、成年後見人が成年被後見人に代わってこれを行っても、利益相反行為となることはない。×
3R04-03-3成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。×
4R04-03-4成年年齢は18歳であるため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。
5H26-09-1成年被後見人が第三者との間で建物の贈与を受ける契約をした場合には、成年後見人は、当該法律行為を取り消すことができない。×
6H26-09-4成年後見人は家庭裁判所が選任する者であるが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。
7H20-01-1成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。
8H18-12-1成年者Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況になった場合、Aの推定相続人はAの法定代理人となる。×
9H15-01-3成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。
10H02-04-1成年被後見人は、契約の際完全な意思能力を有していても契約を取り消すことができる。
相続の放棄(民法[31]4(3))
年-問-肢内容正誤
1R04-02-2家庭裁判所への相続放棄の申述は、被相続人の生前には行うことができない。
2R04-03-2相続の放棄は相手方のない単独行為であるから、成年後見人が成年被後見人に代わってこれを行っても、利益相反行為となることはない。
3H14-12-1相続の放棄をする場合、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
4H14-12-4被相続人の子が、相続の開始後に相続放棄をした場合、その者の子がこれを代襲して相続人となる。×
[共通の設定]
Aが、5,000万円相当の土地と5,500万円の負債を残して死亡した。Aには、弟B、母C、配偶者D及びDとの間の子E・F・G並びにEの子Hがいる。
5h05-13-2Eが相続放棄をしたときは、Hが、代襲して相続人となる。×
6h05-13-3E・F及びGが相続放棄をしたときは、B及びCが、Dとともに相続人となる。×
7h05-13-4E・F及びGが相続放棄をしたときは、Cは、相続開始のときから3ヵ月以内に単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。×

3 誤り

(「はじめに」の表、肢1参照。)
成年後見人は、成年被後見人の法定代理人です(民法859条1項)。
保佐人は、被保佐人の行為に対する同意権を持っています(同法13条1項)。したがって、被保佐人の行為を取り消すことができます(取消権。同法120条1項)。それに加えて、代理権を付与することも可能です(同法876条の4第1項)。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
成年被後見人(民法[01]3(1))
年-問-肢内容正誤
1R04-03-1成年後見人は、後見監督人がいる場合には、後見監督人の同意を得なければ、成年被後見人の法律行為を取り消すことができない。×
2R04-03-2相続の放棄は相手方のない単独行為であるから、成年後見人が成年被後見人に代わってこれを行っても、利益相反行為となることはない。×
3R04-03-3成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。×
4R04-03-4成年年齢は18歳であるため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。
5H26-09-1成年被後見人が第三者との間で建物の贈与を受ける契約をした場合には、成年後見人は、当該法律行為を取り消すことができない。×
6H26-09-4成年後見人は家庭裁判所が選任する者であるが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。
7H20-01-1成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。
8H18-12-1成年者Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況になった場合、Aの推定相続人はAの法定代理人となる。×
9H15-01-3成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。
10H02-04-1成年被後見人は、契約の際完全な意思能力を有していても契約を取り消すことができる。
被保佐人(民法[01]3(2))
年-問-肢内容正誤
1R04-03-3
成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。×
2H28-02-2
被保佐人が、不動産を売却する場合には、保佐人の同意が必要であるが、贈与の申し出を拒絶する場合には、保佐人の同意は不要である。×
3H22-01-3被保佐人については、不動産を売却する場合だけではなく、日用品を購入する場合も、保佐人の同意が必要である。×
4H20-01-4被保佐人が、保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないでした土地の売却は、被保佐人が行為能力者であることを相手方に信じさせるため詐術を用いたときであっても、取り消すことができる。×
5H17-01-1自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方である買主Bが被保佐人であり、保佐人の同意を得ずにAとの間で売買契約を締結した場合、当該売買契約は当初から無効である。×
6H15-01-4被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、保佐人は、当該意思表示を取り消すことができる。×
7H06-02-4Aは、「近く新幹線が開通し、別荘地として最適である」旨のBの虚偽の説明を信じて、Bの所有する原野(時価20万円)を、別荘地として 2,000万円で購入する契約を締結した。Aが被保佐人であり、保佐人Cの同意を得ずに当該契約を締結した場合、Cは当該契約の締結にはCの同意がないとして、その無効を主張することができる。×

4 正しい

未成年者は、後見人になることができません(民法847条1号)。そして、成年年齢は、18歳です(同法4条)。したがって、18歳の者は、年齢を理由にした後見人の欠格事由には該当しません。

■参照項目&類似過去問
内容を見る
成年被後見人(民法[01]3(1))
年-問-肢内容正誤
1R04-03-1成年後見人は、後見監督人がいる場合には、後見監督人の同意を得なければ、成年被後見人の法律行為を取り消すことができない。×
2R04-03-2相続の放棄は相手方のない単独行為であるから、成年後見人が成年被後見人に代わってこれを行っても、利益相反行為となることはない。×
3R04-03-3成年後見人は成年被後見人の法定代理人である一方、保佐人は被保佐人の行為に対する同意権と取消権を有するが、代理権が付与されることはない。×
4R04-03-4成年年齢は18歳であるため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。
5H26-09-1成年被後見人が第三者との間で建物の贈与を受ける契約をした場合には、成年後見人は、当該法律行為を取り消すことができない。×
6H26-09-4成年後見人は家庭裁判所が選任する者であるが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。
7H20-01-1成年被後見人が行った法律行為は、事理を弁識する能力がある状態で行われたものであっても、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りではない。
8H18-12-1成年者Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況になった場合、Aの推定相続人はAの法定代理人となる。×
9H15-01-3成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合、成年後見人は、当該意思表示を取り消すことができる。
10H02-04-1成年被後見人は、契約の際完全な意思能力を有していても契約を取り消すことができる。
未成年者(民法[01]2)
年-問-肢内容正誤
1R04-03-4成年年齢は18歳であるため、18歳の者は、年齢を理由とする後見人の欠格事由に該当しない。
2R03-05-119歳の者は未成年であるので、携帯電話サービスの契約や不動産の賃貸借契約を1人で締結することはできない。×
3R03-05-3営業を許された未成年者が、その営業に関するか否かにかかわらず、第三者から法定代理人の同意なく負担付贈与を受けた場合には、法定代理人は当該行為を取り消すことができない。×
4H28-02-1古着の仕入販売に関する営業を許された未成年者は、成年者と同一の行為能力を有するので、法定代理人の同意を得ないで、自己が居住するために建物を第三者から購入したとしても、その法定代理人は当該売買契約を取り消すことができない。
×
5H26-09-3未成年後見人は、自ら後見する未成年者について、後見開始の審判を請求することはできない。×
6H26-09-4成年後見人は家庭裁判所が選任する者であるが、未成年後見人は必ずしも家庭裁判所が選任する者とは限らない。
7H25-02-2営業を許可された未成年者が、その営業のための商品を仕入れる売買契約を有効に締結するには、父母双方がいる場合、父母のどちらか一方の同意が必要である。
×
8H22-01-1土地を売却すると、土地の管理義務を免れることになるので、未成年者が土地を売却するに当たっては、その法定代理人の同意は必要ない。
×
9H20-01-2未成年者は、営業を許されているときであっても、その営業に関するか否かにかかわらず、その法定代理人の同意を得ずに行った法律行為は、取り消すことができる。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りではない。×
10H17-01-4自己所有の土地を売却するAの売買契約の相手方Bが未成年者であり、法定代理人から宅地建物取引業の営業に関し許可を得ている場合、Bは未成年者であることを理由に当該売買契約を取り消すことができる。
×
11H14-02-3未成年者であっても、成年者を代理人とすれば、法定代理人の同意を得ることなく、土地の売買契約を締結することができ、この契約を取り消すことはできない。×
12H11-01-1満18歳に達した者は、成年とされる。
13H01-03-2A所有の土地が、AからB、BからCへと売り渡され、移転登記も完了している。Aは、Bに土地を売ったとき未成年者で、かつ、法定代理人の同意を得ていなかったので、その売買契約を取り消した場合、そのことを善意のCに対し対抗することができない。
×

>>令和04年の問題一覧へ

【無料公開講座】スリー・ステップ学習法

宅建学習のプロセスを3段階に分け、着実なステップアップを目指す『スリー・ステップ学習法』。この講座の特長を実際に理解・体験していただくための「無料公開講座」です。
  • [Step.1]基本習得編で宅建合格に必要な基礎知識を学ぶ。
  • [Step.2]一問一答編で「一問一答式」の本試験過去問で基礎知識を確認し、○×を見分ける解法テクニックを身に付ける。
  • [Step.3]過去演習編で「四択問題」の解決法を学ぶ。

この3段階で、着実に合格レベルに進むことができます。

【宅建過去問】(令和04年問03)制限行為能力者” に対して4件のコメントがあります。

  1. M より:

    1の解説ですが疑義があります。
    「これは、後見監督人がいる場合でも同様です。取消しの際に後見監督人の同意が必要なのは、営業又は民法が定める重要行為(不動産の売買など)に限られます(同法864条、13条1項)。」

    未成年者が法定代理人の同意無しに取り消すことができるのと同様に、取消の際に後見監督人の同意は必要とされていません。同意が必要とされるのは重要な行為をする際のみです。

    1. 家坂 圭一 より:

      M様

      ご質問ありがとうございます。
      Mさんのおっしゃることも、当社の解説も同じことを言っています。
      「疑義」が生じるような違いは見当たりません。

      その内容をまとめると、以下の通りです。

      大原則

      成年後見人には、成年被後見人の法定代理人であり、成年被後見人の行為を取り消すことができる。

      後見監督人が存在する場合
      • 【原則】
        後見監督人の同意は、不要である
      • 【例外】
        重要な行為(不動産の売買などの代理)の取消しに限り、後見監督人の同意が必要。

      以上について、解説講義(無料で見られます)では、文章による解説よりも詳しく説明しています。
      動画の講義もご覧になることをお勧めします。

      1. M より:

        お返事ありがとうございます。

        疑義がある部分は同意を「取消時」の際に必要としている部分です。同意が必要なのは重要な「行為時」であって、「取消時」にまで必要としていないと解しているのですが貴意いかがでしょうか。

        1. 家坂 圭一 より:

          M様

          返信が遅くなって申し訳ありません。
          おっしゃる通りで、成年後見人が後見監督人の同意を得る必要があるのは、営業又は民法が定める重要行為(不動産の売買など)について成年被後見人を代理する場合に限られます。

          この点に関し、先ほど修正を完了しました。
          このたびは貴重なご指摘をいただき、本当にありがとうございました。
          引き続きよろしくお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です