【宅建過去問】(令和07年問04)担保物権・相殺
AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れる金銭消費貸借契約(以下この問において「本件契約」という。)における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
- Aは、本件契約におけるAの債務を担保するために、Aが所有する不動産に対し、Bのために、抵当権を設定することはできるが、質権を設定することはできない。
- Aが本件契約に基づく債務の弁済を怠ったときに、BがAから預かっている動産を占有している場合には、Bは当該動産の返還時期が到来しても弁済を受けるまでその動産に関して留置権を行使することができる。
- Aが本件契約に基づく債務の弁済を怠った場合には、BはAの総財産に対して先取特権を行使することができる。
- Aが、期限が到来しているBの悪意による不法行為に基づく金1,000万円の損害賠償請求債権をBに対して有している場合、Aは本件契約に基づく返還債務をBに対する当該損害賠償請求債権で相殺することができる。
正解:4
設定の確認
AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れる金銭消費貸借契約

1 誤り
抵当権と質権は、いずれも約定担保物権です。当事者が合意すれば、被担保債権の内容を問わず、設定できます。
今回は、Bを債権者、Aを債務者とする貸付債権を被担保債権として、抵当権や質権を設定するわけです。
| 法定担保物権 | 約定担保物権 | |
| 占有型担保物権 | 留置権 | 質権 |
| 非占有型担保物権 | 先取特権 | 抵当権 |
抵当権の対象(目的)となるのは、不動産(土地・建物)、地上権、永小作権です(民法369条)。Aが所有する不動産に対して、Bの抵当権を設定することも、もちろん可能です。
一方、質権も、不動産を目的とすることができます(不動産質)。したがって、Aが所有する不動産に対して、Bの不動産質権を設定することも可能です。
この選択肢は、「不動産に対し、⋯質権を設定することはできない」が誤り。

■参照項目&類似過去問
内容を見る抵当権の対象(目的)(民法[12]4(1))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | R07-04-1 | AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れた。 Aは、本件契約におけるAの債務を担保するために、Aが所有する不動産に対し、Bのために、抵当権を設定することはできるが、質権を設定することはできない。 | × |
| 2 | R04-08-3 | AがB所有の甲土地を建物所有目的でなく利用するための権原が、①では地上権であり、②では賃借権である。 ①では、Aは当該権原を目的とする抵当権を設定することができるが、②では、Aは当該権原を目的とする抵当権を設定することはできない。 | ◯ |
| 3 | H01-07-1 | 抵当権は、不動産だけでなく、地上権及び永小作権にも設定することができる。 | ◯ |
質権(民法[14]1(3))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 約定担保物権 | |||
| 1 | H21-05-2 | 先取特権も質権も、債権者と債務者との間の契約により成立する。 | × |
| 目的物 | |||
| 1 | R07-04-1 | AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れた。 Aは、本件契約におけるAの債務を担保するために、Aが所有する不動産に対し、Bのために、抵当権を設定することはできるが、質権を設定することはできない。 | × |
| 効力発生要件 | |||
| 1 | H29-10-3 | 不動産質権は、目的物の引渡しが効力の発生要件である。 | ◯ |
| 被担保債権の範囲 | |||
| 1 | H29-10-1 | 不動産質権では、被担保債権の利息のうち、満期となった最後の2年分についてのみ担保される。 | × |
| 2 | H14-05-2 | 利息請求権は、常に満期となった最後の2年分についてのみ、質権の被担保債権となる。 | × |
| 善管注意義務 | |||
| 1 | H21-05-4 | 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有する必要があるのに対し、質権者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、質物を占有する必要がある。 | × |
| 不動産質権者による使用及び収益 | |||
| 1 | H19-07-3 | 質権は、占有の継続が第三者に対する対抗要件と定められているため、動産を目的として質権を設定することはできるが、登記を対抗要件とする不動産を目的として質権を設定することはできない。 | × |
| 不動産質権の存続期間 | |||
| 1 | H29-10-2 | 不動産質権は、10年を超える存続期間を定めたときであっても、その期間は10年となる。 | ◯ |
| 不動産質権の対抗要件 | |||
| 1 | H29-10-4 | 不動産質権は不動産に関する物権であり、登記を備えなければ第三者に対抗することができない。 | ◯ |
| 指名債権を目的とする質権の対抗要件 | |||
| 1 | H14-05-1 | 債権質の質権者は、債務者の承諾が書面によるものであれば、確定日付を得ていなくても、この質権設定を、第三者に対しても対抗することができる。 | × |
| 2 | H10-03-2 | 確定日付のある証書による債権者から債務者への通知又は債務者の承諾がないときでも、質権者は、建物賃貸借契約証書及び敷金預託を証する書面の交付を受けている限り、質権の設定を他の債権者に対抗することができる。 | × |
| 質権者による債権の取立て | |||
| 1 | H14-05-3 | 敷金返還請求権に質権の設定を受けた者は、賃借人に対する債権の弁済期到来前に、敷金返還請求権の弁済期が到来した場合は、賃貸人に対し、敷金を供託するよう請求できる。 | ◯ |
| 2 | H14-05‐4 | 敷金返還請求権に質権の設定を受けた者は、賃借人に対する債権の弁済期が到来した場合、賃貸人に対し、敷金返還請求権の弁済期の前に、敷金を直ちに交付するよう請求できる。 | × |
| 3 | H10-03-3 | 敷金返還請求権に質権の設定を受けた者は、賃借人の承諾を得ることなく、賃貸人から直接取立てを行うことができる。 | ◯ |
2 誤り
(肢1の表参照。)
留置権は、他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまで、その物を留置できる、という法定担保物権です。
当事者間にこのような関係があれば、法律の規定により、留置権が自動的に発生します。

今回の問題では、「BがAの動産を占有している」ことと、「BのAに対する貸付債権」との間に、何の関係もありません。「その物に関して生じた債権」という関係(牽連性)がないのです。
したがって、Bは、留置権を行使することができません。
※留置権が成立するのは、以下のようなケースです。
賃借人Aと賃貸人Bの間の建物賃貸借契約において、AがBに対し、必要費の償還請求権を持っています。しかし、Bは、この必要費を償還しません。このような場合、賃貸借契約が終了した後でも、Aは、留置権を行使し、Bが必要費を償還するまで建物を留置し続けることができます。

■参照項目&類似過去問
内容を見る留置権(民法[14]1(1))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 目的物 | |||
| 1 | H21-05-3 | 留置権は動産についても不動産についても成立するのに対し、先取特権は動産については成立するが不動産については成立しない。 | × |
| 内容 | |||
| 1 | R07-04-2 | AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れた。 Aが本件契約に基づく債務の弁済を怠ったときに、BがAから預かっている動産を占有している場合には、Bは当該動産の返還時期が到来しても弁済を受けるまでその動産に関して留置権を行使することができる。 | × |
| 2 | R03-01-1 | 賃借人の家屋明渡債務が賃貸人の敷金返還債務に対し先履行の関係に立つと解すべき場合、賃借人は賃貸人に対し敷金返還請求権をもって家屋につき留置権を取得する余地はない。 | ◯ |
| 3 | H25-04-1 | 建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て建物に付加した造作の買取請求をした場合、賃借人は、造作買取代金の支払を受けるまで、当該建物を留置することができる。 | × |
| 4 | H25-04-2 | 不動産が二重売買され、第2買主が所有権移転登記を備えたため、第1買主が所有権を取得できなくなった場合、第1買主は、損害賠償を受けるまで不動産を留置できる。 | × |
| 5 | H25-04-3 | 建物の賃貸借契約が賃借人の債務不履行により解除された後に、賃借人が建物に関して有益費を支出した場合、賃借人は、有益費の償還を受けるまで当該建物を留置することができる。 | × |
| 6 | H25-04-4 | 建物賃借人が必要費を支出した場合、建物所有者ではない第三者所有の敷地を留置できない。 | ◯ |
| 7 | H21-05-4 | 留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有する必要があるのに対し、質権者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、質物を占有する必要がある。 | × |
| 8 | H19-07-2 | 建物の賃借人が造作買取代金債権を有している場合、弁済を受けるまで、建物を留置できる。 | × |
| 9 | H17-05-4 | 不動産に留置権を有する者は、目的物が金銭債権に転じた場合には、当該金銭に物上代位することができる。 | × |
| 10 | H09-03-1 | 建物の賃借人が、賃借中に建物の修繕のため必要費を支出した場合、必要費の償還を受けるまで、留置権に基づき当該建物の返還を拒否できる。 | ◯ |
| 11 | H09-03-2 | 建物の賃借人の債務不履行により賃貸借契約が解除された後に、賃借人が建物の修繕のため必要費を支出した場合、必要費の償還を受けるまで、留置権に基づき建物の返還を拒否できる。 | × |
| 12 | H09-03-3 | 賃借人は、留置権に基づき建物の返還を拒否している場合に、当該建物に引き続き居住したとき、それによる利益(賃料相当額)は返還しなければならない。 | ◯ |
| 13 | H09-03-4 | 建物の賃借人は、留置権に基づき建物の返還を拒否している場合に、さらに当該建物の修繕のため必要費を支出したとき、その必要費のためにも留置権を行使できる。 | ◯ |
| 14 | H03-07-1 | 不動産を目的とする担保物権の中には、登記なくして第三者に対抗することができるものもある。 | ◯ |
3 誤り
(肢1の表参照。)
先取特権は、特定の債権を持つ者が、債務者の一定財産から、優先弁済を受けることができる、という法定担保物権です。
債権者が特定の債権を有していれば、法律の規定により先取特権が自動的に発生します。

今回の問題ですが、「BがAに対する貸付債権を有する」ことにより「BがAの総財産に対する先取特権を有する」という法律の規定が存在しません。
したがって、Bは、先取特権を行使することができません。
※総財産に対する先取特権(一般の先取特権)が成立するのは、以下のようなケースです。
従業員Aは、雇用主Bに対して賃金債権を持っています。しかし、Bは、この賃金を支払わないまま破綻してしまいました。
このような場合、Aは、先取特権を行使し、Bの総財産(不動産・動産など全ての財産)を対象にして先取特権を行使することができます(民法306条2号)。つまり、Bの財産を競売して、その代金から賃金債権を回収するわけです。

■参照項目&類似過去問
内容を見る先取特権(民法[14]1(2))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 法定担保物権 | |||
| 1 | H21-05-2 | 先取特権も質権も、債権者と債務者との間の契約により成立する。 | × |
| 2 | H19-07-1 | 建物の建築工事の費用について先取特権を行使するには、あらかじめ債務者である建築主との間で、先取特権の行使について合意しておく必要がある。 | × |
| 目的物 | |||
| 1 | H21-05-3 | 留置権は動産についても不動産についても成立するのに対し、先取特権は動産については成立するが不動産については成立しない。 | × |
| 物上代位 | |||
| 1 | H21-05-1 | 火災保険に基づく損害保険金請求権は、抵当権・先取特権による物上代位の対象となる。 | ◯ |
| 2 | H17-05-1 | 不動産の売買により生じた債権を有する者は先取特権を有し、当該不動産が賃借されている場合には、賃料に物上代位することができる。 | ◯ |
| 3 | H12‐03‐3 | 建物の賃料債権の先取特権に関し、賃借人が建物内の動産を第三者に売却した場合、賃貸人は、代金債権に対し、払渡し前に差押えをしなくても先取特権を行使できる。 | × |
| 一般の先取特権 | |||
| 1 | R07-04-3 | AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れた。 Aが本件契約に基づく債務の弁済を怠った場合には、BはAの総財産に対して先取特権を行使することができる。 | × |
| 動産の先取特権 | |||
| 1 | H23-07-2 | 建物の賃料債権の先取特権に関賃借人が建物に備え付けた動産、転貸人の転借料債権→先取特権の対象。 | ◯ |
| 2 | H12-03-1 | 賃借人所有の家具類、自己使用のために持ち込んだ時計・宝石類→先取特権の対象。 | ◯ |
| 3 | H12-03-2 | 転借人が建物内に所有する動産→先取特権の対象。 | ◯ |
| 4 | H12-03-3 | 賃借人が建物内の動産を第三者に売却した場合、賃貸人は、代金債権に対し、払渡し前に差押えをしなくても先取特権を行使できる。 | × |
| 5 | H12-03-4 | 敷金を受領している場合、敷金を差し引いた残額についてのみ先取特権が発生。 | ◯ |
| 不動産の先取特権 | |||
| 1 | R07-07-3 | Aは自己の所有する甲建物を事務所としてBに賃貸し、その後、本件契約の期間中に甲建物の屋根に雨漏りが生じたため、CがBから甲建物の屋根の修理を請け負い、Cによる修理が完了した。 BがCに修理代金を支払わない場合、Cは、Bが占有する甲建物につき、当然に不動産工事の先取特権を行使することができる。 | × |
| 2 | H03-07-3 | 不動産を目的とする担保物権の順位は、すべて登記の先後による。 | × |
4 正しい
Bの悪意による不法行為に基づいて、Aは、損害賠償請求権を取得しています。
この場合、被害者(不法行為債権の債権者)であるAのほうから相殺することには、何ら問題がありません。金銭で賠償を受けるか、貸付代金と相殺するかは、Aが決めるべき問題だからです。

※BのAに対する貸付債権には、弁済の期限の定めがありません。一方、AのBに対する損害賠償請求権は、すでに期限が到来しています。したがって、Aが期限の利益を放棄すれば、いつでも相殺が可能です。
※逆に、加害者Bのほうから相殺することはできません(民法509条2号)。これを認めてしまうと、極端な話、「貸した金を返さない借主をぶん殴って、損害賠償請求権と相殺」などということが可能になってしまいます。

■参照項目&類似過去問
内容を見る不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺(民法[21]4(1)、民法[30]5(4))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | R07-04-4 | AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れた。 Aが、期限が到来しているBの悪意による不法行為に基づく金1,000万円の損害賠償請求債権をBに対して有している場合、Aは本件契約に基づく返還債務をBに対する当該損害賠償請求債権で相殺することができる。 | ◯ |
| 2 | H30-09-3 | Aは、令和XX年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。同年10月10日、BがAの自動車事故によって被害を受け、Aに対して不法行為に基づく損害賠償債権を取得した場合には、Bは売買代金債務と当該損害賠償債権を対当額で相殺することができる。 | ◯ |
| 3 | H28-09-3 | 買主に対して債権を有している売主は、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の身体の侵害による損害陪償請求権を受働債権とする相殺をもって、買主に対抗することができない。 | ◯ |
| 4 | H18-11-3 | Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aに使用者としての損害賠償責任が発生する場合、Aが被害者に対して売買代金債権を有していれば、被害者は不法行為に基づく損害賠償債権で売買代金債務を相殺することができる。 | ◯ |
| 5 | H16-08-2 | Bは、A所有の建物を賃借し、毎月末日までに翌月分の賃料50万円を支払う約定をした。BがAに対し不法行為に基づく損害賠償請求権を有した場合、Bは、このAに対する損害賠償請求権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない。 | × |
| 6 | H07-08-3 | AがBに対して 100万円の金銭債権、BがAに対して 100万円の同種の債権を有している。Aの債権が、Bの悪意による不法行為によって発生したものであるときには、Bは、Bの債権をもって相殺をすることができない。 | ◯ |
| 7 | H04-09-1 | 不法行為の被害者は、損害賠償債権を目働債権として、加害者に対する金銭返還債務と相殺することができない。 | × |
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