登場人物が多過ぎる!

宅建試験 問題文のルール

宅建試験の問題文における基本な表記のルールは、以下のようなものだと思われます。

・個人や法人、宅建業者が複数登場するときには、A、B、Cとアルファベットで区別する。
・県や県知事が複数出てくるときには、甲県、乙県、丙県と書き分ける。

いつもながらにヘンなこと、細かいことが気になる私。
今回、気になったのは、A、B、C……は、どこまで使われたのか。つまり、一問の中に、何人の登場人物が現れたのか、という疑問です。
また、甲県知事、乙県知事……の系列では、何人の知事が同時に登場したのでしょう。

これを知っても、本試験の得点が上がるようなことは多分ありません。
でも調べるのは楽しいし、幸いにも、平成01年から現在までの本試験問題は、このサイトに揃っています。「サイト内検索」などを使って調べてみました。

A、B、Cの系列

A、B、C、D、Eの5人が出てくる、という程度なら、毎年出題されています。どんどん人数を増やすと、どこまで行くのでしょうか?
それでは、上位の発表です!

第3位(1):10人(A~Jまで)

平成05年という古い問題です。
宅建業法の免許の欠格要件⇒宅建業法[03]免許の基準(欠格要件)をきく問題で、
「H社の取締役Iが、かつてJ社の代表取締役であった」
など各選択肢ごとに2or3人出現し、合計10人になりました。

【平成05年問36】
次の者のうち、宅地建物取引業の免許を受けることができるものはどれか。

  1. A社―その取締役Bが、3年前に、刑法第233条(業務妨害)の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終えた。
  2. C社―その政令で定める使用人Dが、3年前に、土地の投機的取引に関連して、国土利用計画法第23条の届出をせず、かつ、無免許で宅地の売買を数回行っていた。
  3. E社―その相談役Fが、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律により都道府県公安委員会が指定した暴力団(以下この問において「指定暴力団」という。)の構成員であり、かつ、社長GよりもE社に対する支配力が大きい。
  4. H社―その取締役Iが、J社の代表取締役であったとき宅地建物取引業に関し指定暴力団の構成員に暴力的要求行為をすることを依頼したため、業務停止処分に該当し、その情状が特に重いとして、J社が1年前に宅地建物取引業の免許を取り消された。
第3位(2):10人(A~Jまで)

「登場人物が多い問題が出たのは平成ヒトケタ年代のこと。古い問題ばっかり」
と信じていた我々を驚かせたのが、令和05年の問題でした。

令和05年問28では、A~Jまで10人の人物が登場したのです。
しかも、「民法の相続」や「宅建業法の欠格要件」ではない分野。
「勧誘の際の禁止行為」で、10人問題が出題されました。

【令和05年問28】
宅地建物取引業者Aの業務に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定に違反するものはいくつあるか。

  • ア Aの従業員Bが、Cが所有する戸建住宅の買取りを目的とした訪問勧誘をCに対して行ったところ、Cから「契約の意思がないので今後勧誘に来ないでほしい」と言われたことから、後日、Aは、別の従業員Dに同じ目的で訪問勧誘を行わせて、当該勧誘を継続した。
  • イ Aの従業員Eは、Fが所有する戸建住宅の買取りを目的とした電話勧誘をFに対して行った際に、不実のことと認識しながら「今後5年以内にこの一帯は再開発されるので、急いで売却した方がよい。」と説明した。
  • ウ Aの従業員Gは、Hが所有する戸建住宅の買取りを目的とした電話勧誘をHに対して行おうと考え、23時頃にHの自宅に電話をかけ、勧誘を行い、Hの私生活の平穏を害し、Hを困惑させた。
  • エ Aは、Jとの間でJが所有する戸建住宅を買い取る売買契約を締結し、法第37条の規定に基づく書面をJに交付したが、Aの宅地建物取引士に、当該書面に記名のみさせ、押印させることを省略した。
  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ
第2位:11人(A~Kまで)

これも平成08年の古い問題。内容は、民法の相続⇒民法[34]相続です。
「Aに、その死亡前1年以内に離婚した元配偶者Jと、Jとの間に未成年の実子Kがいる」など、各選択肢でアレコレの設定を注ぎ込んだ結果、合計10人の相続人候補が現れることになりました。激しいバトルでございます。

【平成08年問10】
居住用建物を所有するAが死亡した場合の相続に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

  1. Aに、配偶者B、Bとの婚姻前に縁組した養子C、Bとの間の実子D(Aの死亡より前に死亡)、Dの実子E及びFがいる場合、BとCとEとFが相続人となり、EとFの法定相続分はいずれも1/8となる。
  2. Aに、配偶者B、母G、兄Hがいる場合、Hは相続人とならず、BとGが相続人となり、Gの法定相続分は1/4となる。
  3. Aに法律上の相続人がない場合で、10年以上Aと同居して生計を同じくし、Aの療養看護に努めた内緑の妻Iがいるとき、Iは、承継の意思表示をすれば当該建物を取得する。
  4. Aに、その死亡前1年以内に離婚した元配偶者Jと、Jとの間に未成年の実子Kがいる場合、JとKが相続人となり、JとKの法定相続分はいずれも1/2となる。
第1位:12人(A~Lまで)

さて、いよいよ真打ち。アルファベットのLまで12人が出演した問題は、平成09年の問06、物権変動の問題です⇒民法[08]物権変動と対抗問題)。

【平成09年問06】
物権変動に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

  1. Aが、Bに土地を譲渡して登記を移転した後、詐欺を理由に売買契約を取り消した場合で、Aの取消し後に、BがCにその土地を譲渡して登記を移転したとき、Aは、登記なしにCに対して土地の所有権を主張できる。
  2. DとEが土地を共同相続した場合で、遺産分割前にDがその土地を自己の単独所有であるとしてD単独名義で登記し、Fに譲渡して登記を移転したとき、Eは、登記なしにFに対して自己の相続分を主張できる。
  3. GがHに土地を譲渡した場合で、Hに登記を移転する前に、Gが死亡し、Iがその土地の特定遺贈を受け、登記の移転も受けたとき、Hは、登記なしにIに対して土地の所有権を主張できる。
  4. Jが、K所有の土地を占有し取得時効期間を経過した場合で、時効の完成後に、Kがその土地をLに譲渡して登記を移転したとき、Jは、登記なしにLに対して当該時効による土地の取得を主張できる。

物権変動・対抗問題をきく問題ですから、設定を成立させるためには、最低でも3人の登場人物が必要になります。例えば二重譲渡のケースで、売主Aと第一の買主B、第二の買主Cといった感じです。

この問題では、選択肢ごとに設定をリセットしています。つまり、登場人物も交代させる必要があった。そのため、各選択肢あたり3人×4択=12人の登場人物が現れることになりました。

いつもお話していることですが、
「登場人物が複数だったら図を描いて考える!」
が私のセオリーです。
この問題でも、解説のところで図(手描き!)を描いて示しています。まずは自分で図を描いて解き、その後に解説をご覧いただければ幸いです。

甲、乙、丙の系列

甲乙丙丁戊己庚辛壬癸、いわゆる十干についてはどうでしょう。
甲乙までは毎年出題、甲乙丙くらいはよく見かける気がしますが、その先はどうなっているのか。

第2位:5人(甲~戊まで)

甲県知事から戊県知事まで、5人の知事が登場した問題があります。

実際の問題をご覧いただきましょう。宅建士の登録に関する問題で、変更の登録や登録の移転が出題テーマです。
⇒宅建業法[05]宅地建物取引士

【平成03年問36】
宅地建物取引士であるAに関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、Aは、甲県知事の登録及び宅地建物取引士証の交付を受けているものとする。

  1. Aが甲県知事の免許を受けた宅地建物取引業者Bに専任の宅地建物取引士として就職した場合、Aは、甲県知事に変更の登録を申請する必要があるが、Bは、甲県知事に変更の届出をする必要はない。
  2. Aが勤務している甲県知事の免許を受けた宅地建物取引業者Cが商号を変更した場合、Cが甲県知事に変更の届出をすれば、Aは、甲県知事に変更の登録を申請する必要はない。
  3. Aが甲県から乙県に住所を変更し、丙県知事の免許を受けた宅地建物取引業者Dに勤務先を変更した場合、Aは、甲県知事を経由して、乙県知事に登録の移転を申請することができる。
  4. Aが丁県知事の免許を受けた宅地建物取引業者Eから戊県知事の免許を受けた宅地建物取引業者Fへ勤務先を変更した場合、Aは、甲県知事に遅滞なく変更の登録を申請しなければならない。

5人の県知事に加えて、宅建士A、宅建業者B~Eも出てきますから、合計10人の登場人物です。

第1位:6人(甲~己まで)

平成03年以来、「知事は5人がMAX」と誰もが考えてきました。
しかし、令和04年、ついにこの記録を抜く問題が出現したのです。
甲県知事・乙県知事・丙県知事・丁県知事・戊県知事・己県知事。43県のうち6県、全国の知事のうち14%が1問に集合です。

【令和04年問33】
宅地建物取引士に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

  • ア 宅地建物取引士資格試験は未成年者でも受験することができるが、宅地建物取引士の登録は成年に達するまでいかなる場合にも受けることができない。
  • イ 甲県知事登録の宅地建物取引士が、宅地建物取引業者(乙県知事免許)の専任の宅地建物取引士に就任するためには、宅地建物取引士の登録を乙県に移転しなければならない。
  • ウ 丙県知事登録の宅地建物取引士が、事務の禁止の処分を受けた場合、丁県に所在する宅地建物取引業者の事務所の業務に従事しようとするときでも、その禁止の期間が満了するまで、宅地建物取引士の登録の移転を丁県知事に申請することができない。
  • エ 戊県知事登録の宅地建物取引士が、己県へ登録の移転の申請とともに宅地建物取引士証の交付を申請した場合、己県知事が宅地建物取引士証を交付するときは、戊県で交付された宅地建物取引士証の有効期間が経過するまでの期間を有効期間とする宅地建物取引士証を交付しなければならない。
  1. 一つ
  2. 二つ
  3. 三つ
  4. 四つ

6人の県知事は出てきますが、残念なことに、「宅地建物取引士」や「宅地建物取引業者」にはA、Bなどの名前が付いていません。
合計人数では、平成03年の合計11人を超えることができませんでした。

過去にはA県知事もいました

ごく古い問題(平成01年問36)で、「A県知事、B県知事」という表現を見付けました。
これは、免許換え(⇒宅建業法[02])や案内所等の届出(⇒宅建業法[08])、そして合併の届出(⇒宅建業法[04])に関する問題です。

同じ平成01年でも問39では、「甲県知事」と書かれています。このころは、きちんとした表記のポリシーがなかったのでしょうか。

今後の展望は

今年の本試験では、記録の更新を狙って欲しいものです。

甲乙丙丁戊己の6人の県知事がいて、宅建業者がAからF、宅建士がGからK、さらにKの相続人が配偶者Lと子であるMとN、というような問題を出題してもらえませんでしょうか(合計20人登場)。
免許換えをしたり、登録の移転をしたり、個人業者が死亡したり、波乱万丈の一問を期待します。

丁寧に図を描いて考える人は、何人現れようとキチンと整理できるでしょう。
しかし、文章を読むだけで解いている人は、どうでしょう。10分、20分と浪費してしまいそうですね。

「登場人物が複数だったら図を書いて考える!」
これを徹底しておきましょう。

LINEアカウントで質問・相談

家坂講師に気軽に受験相談や質問ができるLINEアカウントを運営しています。
お気軽に「友だち追加」してください。
友だち追加
PCの場合は、「友だち検索」でID"@e-takken"を検索してください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です