■講義編■民法[21]相殺
「AがBに100万円貸していて、逆に、BはAに対して100万円の売買代金債権を持っている。」としましょう。この場合、AがBに100万円返してその後にBがAに100万円支払う、というのでは、手順として無駄ですし、先に弁済する側にリスクが生じます。
この場合、一方からの意思表示だけで、両方が債務を免れられることになっています。このシステムを「相殺」と呼びます。
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|---|---|---|
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Contents
1.相殺とは
(1).意味
二人が互いに同種の債務を負担する場合に、
一方の意思表示により、
各債務者が、対当額の範囲で債務を免れること
(2).具体例
①両者の債権額が等しいケース
②両者の債権額に差があるケース

2.相殺適状
相殺に適する状態
(1).二人が互いに債務を負担していること
(2).債権が同種の目的を有すること
(3).双方の債務が弁済期にあること
①双方の債務が弁済期にあるケース
- 1)Aは、Bに対して、100万円の貸金債権を有している(返済期限は、1月31日)。
- 2)Bは、Aに対して、100万円の売買代金債権を有している(支払期限は、2月28日)。
- [Q1]3月10日時点で、双方の債権債務を、Bの方から相殺することはできるか?
②一方の債務が弁済期にないケース
- [Q2]2月10日時点で、双方の債権債務を、Bの方から相殺することはできるか?
3.相殺ができるケース
(1).弁済期未到来の債権を受働債権とする相殺
- [Q3]2月10日時点で、双方の債権債務を、Aの方から相殺することはできるか?
弁済期未到来の債権を受働債権とする相殺(民法[21]3(1))
[共通の設定]
AがBに対して貸金債権である甲債権を、BがAに対して貸金債権である乙債権をそれぞれ有している。
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | R05-04-ア | 弁済期の定めのない甲債権と、弁済期到来前に、AがBに対して期限の利益を放棄する旨の意思表示をした乙債権とを、Aが一方的な意思表示により相殺することができる。 | ◯ |
| 2 | R05-04-イ | 弁済期が到来している甲債権と、弁済期の定めのない乙債権とを、Aが一方的な意思表示により相殺することができる。 | ◯ |
| 3 | R05-04-ウ | 弁済期の定めのない甲債権と、弁済期が到来している乙債権とを、Aが一方的な意思表示により相殺することができる。 | ◯ |
| 4 | R05-04-エ | 弁済期が到来していない甲債権と、弁済期が到来している乙債権とを、Aが一方的な意思表示により相殺することができる。 | × |
| 5 | H30-09-1 | [Aは、平成30年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。]BがAに対して同年12月31日を支払期日とする貸金債権を有している場合には、Bは同年12月1日に売買代金債務と当該貸金債権を対当額で相殺することができる。 | × |
| 6 | H16-08-1 | 賃貸人が支払不能に陥った場合、賃借人は、自らの敷金返還請求権を自働債権として、賃料債権と相殺することができる。 | × |
| 7 | H07-08-2 | Aの債権について弁済期の定めがなく、Aから履行の請求がないときは、Bは、Bの債権の弁済期が到来しても、相殺をすることができない。 | × |
(2).時効消滅した債権を自働債権とする相殺
- 1)Aは、Bに対して、100万円の貸金債権を有している(返済期限は、1月31日)。
- 2)Bは、Aに対して、過去の家賃債権を有している。
- 3)Bの家賃債権は、2月28日に時効によって消滅した。
- [Q]3月10日時点で、双方の債権債務を、Bの方から相殺することはできるか?
時効消滅した債権を自働債権とする相殺(民法[21]3(2))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | H30-09-4 | [Aは、平成30年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。]BがAに対し同年9月30日に消滅時効の期限が到来する貸金債権を有していた場合には、Aが当該消滅時効を援用したとしても、Bは売買代金債務と当該貸金債権を対当額で相殺することができる。 | × |
| 2 | H17-04-3 | 時効完成前に相殺適状に達していた債権を自働債権として、時効消滅後に相殺することはできない。 | × |
| 3 | H16-08-3 | 時効完成前に相殺適状に達していた債権を自働債権として、時効消滅後に相殺することはできない。 | × |
| 4 | H07-08-1 | 時効完成前に相殺適状に達していた債権を自働債権として、時効消滅後に相殺することができる。 | ◯ |
| 5 | H01-02-4 | 債権が既に時効により消滅している場合、時効完成前に相殺適状にあったとしても、その債権を自働債権として、相殺することはできない。 | × |
4.相殺ができないケース
(1).不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺(⇒[30]5(4))
①対象となる債権
- 悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権
(悪意=積極的に他人を害する意思) - 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権
(不法行為の他、債務不履行に基づくものを含む。)
- 1)Aは、Bに対して、100万円の貸金債権を有している。
- 2)Bは、Aの起こした自動車事故により重傷を負った。
- 3)Bは、Aに対して、100万円の損害賠償請求権を有することになった。
②不法行為等による債権が自働債権であるケース(被害者からの相殺)
- [Q1]双方の債権債務を、Bの方から相殺することはできるか?
③不法行為等による債権が受働債権であるケース(加害者からの相殺)
- [Q2]双方の債権債務を、Aの方から相殺することはできるか?
不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺(民法[21]4(1)、民法[30]5(4))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | R07-04-4 | AがBから弁済の期限の定めなく金1,000万円を借り入れた。 Aが、期限が到来しているBの悪意による不法行為に基づく金1,000万円の損害賠償請求債権をBに対して有している場合、Aは本件契約に基づく返還債務をBに対する当該損害賠償請求債権で相殺することができる。 | ◯ |
| 2 | H30-09-3 | Aは、令和XX年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。同年10月10日、BがAの自動車事故によって被害を受け、Aに対して不法行為に基づく損害賠償債権を取得した場合には、Bは売買代金債務と当該損害賠償債権を対当額で相殺することができる。 | ◯ |
| 3 | H28-09-3 | 買主に対して債権を有している売主は、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の身体の侵害による損害陪償請求権を受働債権とする相殺をもって、買主に対抗することができない。 | ◯ |
| 4 | H18-11-3 | Bの不法行為がAの事業の執行につき行われたものであり、Aに使用者としての損害賠償責任が発生する場合、Aが被害者に対して売買代金債権を有していれば、被害者は不法行為に基づく損害賠償債権で売買代金債務を相殺することができる。 | ◯ |
| 5 | H16-08-2 | Bは、A所有の建物を賃借し、毎月末日までに翌月分の賃料50万円を支払う約定をした。BがAに対し不法行為に基づく損害賠償請求権を有した場合、Bは、このAに対する損害賠償請求権を自働債権として、弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない。 | × |
| 6 | H07-08-3 | AがBに対して 100万円の金銭債権、BがAに対して 100万円の同種の債権を有している。Aの債権が、Bの悪意による不法行為によって発生したものであるときには、Bは、Bの債権をもって相殺をすることができない。 | ◯ |
| 7 | H04-09-1 | 不法行為の被害者は、損害賠償債権を目働債権として、加害者に対する金銭返還債務と相殺することができない。 | × |
(2).差押えを受けた債権を受働債権とする相殺
①差押えとは
②自働債権の取得が差押えより後だったケース
- 1)Aは、Bに対して、100万円の貸金債権を有している。
- 2)この債権を、Aの債権者Cが差し押えた。
- 3)Bは、Aに対して、100万円の売買代金債権を有することになった。
- [Q]AB間の債権債務を、Bの方から相殺することはできるか?
③自働債権の取得が差押えより先だったケース
- 1)Aは、Bに対して、100万円の貸金債権を有している。
- 2)Bは、Aに対して、100万円の売買代金債権を有している。
- 3)AのBに対する貸金債権を、Aの債権者Cが差し押えた。
- [Q]AB間の債権債務を、Bの方から相殺することはできるか?
差押えを受けた債権を受働債権とする相殺(民法[21]4(2))
| 年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
|---|---|---|---|
| 1 | H30-09-2 | [Aは、平成30年10月1日、A所有の甲土地につき、Bとの間で、代金1,000万円、支払期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。]同年11月1日にAの売買代金債権がAの債権者Cにより差し押さえられても、Bは、同年11月2日から12月1日までの間にAに対する別の債権を取得した場合には、同年12月1日に売買代金債務と当該債権を対当額で相殺することができる。 | × |
| 2 | H23-06-1 | 差押前に取得した債権を自働債権とする場合、受働債権との弁済期の先後を問わず、相殺が可能。 | ◯ |
| 3 | H23-06-2 | 抵当権者が物上代位により賃料債権を差押した後でも、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の後に取得した債権を自働債権として相殺の主張ができる。 | × |
| 4 | H16-08-4 | 差押前に取得した債権を自働債権とした相殺が可能。 | ◯ |
| 5 | H15-05-3 | 抵当権者が物上代位により賃料債権を差押した後は、抵当不動産の賃借人は、抵当権設定登記の前に取得した債権を自働債権として相殺の主張ができない。 | × |
| 6 | H07-08-4 | 差押後に取得した債権を自働債権とした相殺は不可。 | ◯ |
(3).自働債権に同時履行の抗弁権が付着している場合(⇒[22]1(3)②)
- 1)Aは、Bに対して、100万円の貸金債権を有している。
- 2)Bは、Aに対して、100万円の売買代金債権を有している。
- 3)Bは、Aに対して、売買の目的物を引渡していない。
- [Q]双方の債権債務を、Bの方から相殺することはできるか?
[Step.2]一問一答編講座
一問一答編では、選択肢単位に分解・整理した過去問を実際に解き、その後に、(1)基本知識の確認、(2)正誤を見極める方法、の講義を視聴します。この繰返しにより、「本試験でどんなヒッカケが出るのか?」「どうやってヒッカケを乗り越えるのか?」という実戦対応能力を身につけます。
| 解説動画を視聴する方法 | 受講料 | |
|---|---|---|
| 1 | eラーニング講座[Step.2]実戦応用編を受講 | 1,980円~ |
| 2 | YouTubeメンバーシップ(「スリー・ステップ オールインワン」レベル)に登録 | 3,590円/月 |
| 学習資料 | 『一問一答式過去問集』 | 無料ダウンロード |
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