【宅建過去問】(平成22年問07)債権者代位権
民法第423条第1項は、「債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。」と定めている。 これに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
- 債務者が既に自ら権利を行使しているときでも、債権者は、自己の債権を保全するため、民法第423条に基づく債権者代位権を行使することができる場合がある。
- 未登記建物の買主は、売主に対する建物の移転登記請求権を保全するため、売主に代位して、当該建物の所有権保存登記手続を行うことができる場合がある。
- 建物の賃借人は、賃貸人(建物所有者)に対し使用収益を求める債権を保全するため、賃貸人に代位して、当該建物の不法占有者に対し当該建物を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある。
- 抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し当該不動産を適切に維持又は保存することを求める請求権を保全するため、その所有者の妨害排除請求権を代位行使して、当該不動産の不法占有者に対しその不動産を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある。
正解:1
1 誤り
債務者がすでに自ら権利を行使している場合には、その行使の方法又は結果の良し悪しにかかわらず、債権者は債権者代位権を行使することができません(最判昭28.12.14。図の要件②)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | 22-07-1 | 債務者が既に自ら権利を行使しているときでも、債権者は、自己の債権を保全するため、債権者代位権を行使することができる。 | × |
2 | 07-05-1 | 夫婦間の契約取消権を債権者が代位行使できる。 | × |
3 | 07-05-2 | 保存行為として債権者代位権を行使する場合、債権の弁済期が到来していない場合でも行使できる。 | ◯ |
2 正しい
未登記建物の買主は、売主に対する建物の移転登記請求権を保全するため、売主に代位して、当該建物の所有権保存登記手続を行うことができます(大判大05.02.02)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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借地・借家の不法占拠者への対応 | |||
1 | 26-07-2 | 賃借した土地が不法占拠されている場合、借地権者は、土地所有者の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使して妨害排除を求めることができる。 | ◯ |
2 | 22-07-3 | 建物賃借人が、賃貸人に代位し、建物の不法占拠者から直接自己への明渡請求が可能。 | ◯ |
3 | 07-05-4 | 建物賃借人が、賃貸人に代位し、不法占拠者に対する妨害排除請求権の行使が可能。 | ◯ |
登記請求権 | |||
1 | 22-07-2 | 未登記建物の買主は、売主に対する建物の移転登記請求権を保全するため、売主に代位して、建物の所有権保存登記手続を行うことができる。 | ◯ |
2 | 07-04-3 | 売主A・買主B間の売買契約が通謀虚偽表示によるものであった場合、Aの債権者Eは、自己の債権を保全するため、Bに対して、AB間の契約の無効を主張して、Aの所有権移転登記抹消請求権を代位行使することができる。 | ◯ |
3 | 07-05-3 | 不動産がA→B→Cと譲渡され、登記がAにあるとき、Cは、BのAに対する登記請求権を代位行使できる。 | ◯ |
錯誤による取消し | |||
1 | 13-02-2 | 錯誤による表意者の債権者は、表意者が錯誤を認めず、売買契約を取り消す意思がないときでも、表意者に代位して、売買契約を取り消すことができる。 | × |
3 正しい
建物の賃借人は、賃貸人たる建物所有者に代位して、建物の不法占拠者に対しその明渡しを請求することができます。この場合、直接自己に対して明渡しをなすべきことを請求することも可能です(最判昭29.09.24)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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借地・借家の不法占拠者への対応 | |||
1 | 26-07-2 | 賃借した土地が不法占拠されている場合、借地権者は、土地所有者の所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使して妨害排除を求めることができる。 | ◯ |
2 | 22-07-3 | 建物賃借人が、賃貸人に代位し、建物の不法占拠者から直接自己への明渡請求が可能。 | ◯ |
3 | 07-05-4 | 建物賃借人が、賃貸人に代位し、不法占拠者に対する妨害排除請求権の行使が可能。 | ◯ |
登記請求権 | |||
1 | 22-07-2 | 未登記建物の買主は、売主に対する建物の移転登記請求権を保全するため、売主に代位して、建物の所有権保存登記手続を行うことができる。 | ◯ |
2 | 07-04-3 | 売主A・買主B間の売買契約が通謀虚偽表示によるものであった場合、Aの債権者Eは、自己の債権を保全するため、Bに対して、AB間の契約の無効を主張して、Aの所有権移転登記抹消請求権を代位行使することができる。 | ◯ |
3 | 07-05-3 | 不動産がA→B→Cと譲渡され、登記がAにあるとき、Cは、BのAに対する登記請求権を代位行使できる。 | ◯ |
錯誤による取消し | |||
1 | 13-02-2 | 錯誤による表意者の債権者は、表意者が錯誤を認めず、売買契約を取り消す意思がないときでも、表意者に代位して、売買契約を取り消すことができる。 | × |
4 正しい
抵当権は、目的物の価値を把握し、これを優先弁済に充てるという非占有型の担保物権です。抵当権者は、目的物の利用関係に、原則として干渉できません。
しかし、その状態を放置してしまうと、抵当権自体が無価値になってしまう場合もあります。例えば、第三者が抵当不動産を不法占拠している状況では、競売の進行が妨害されたり、競売価格が適正な価額よりも下落するリスクが生じているのです。これでは、抵当権者の優先弁済請求権の行使は、困難と言わざるを得ません。
このような場合、抵当権者は、抵当不動産の所有者に対して有する抵当不動産の維持・保存請求権を保全するため、所有者が不法占拠者に対して有する妨害排除請求権を代位行使することができます。その際、所有者のために建物を管理することを目的として、不法占拠者に対し、直接抵当権者に建物を明け渡すよう求めることも可能です(最判平11.11.24)。
■参照項目&類似過去問
内容を見る[共通の設定]
Aは、Bに対する貸付金債権の担保のために、Bの所有する甲土地又は甲建物に抵当権を設定し、登記をした。
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
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1 | H25-05-3 | 対象不動産について第三者が不法に占有している場合、抵当権は、抵当権設定者から抵当権者に対して占有を移転させるものではないので、事情にかかわらず抵当権者が当該占有者に対して妨害排除請求をすることはできない。 | × |
2 | H22-07-4 | 抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し当該不動産を適切に維持又は保存することを求める請求権を保全するため、その所有者の妨害排除請求権を代位行使して、当該不動産の不法占有者に対しその不動産を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある。 | ◯ |
3 | H14-06-1 | Bが甲土地上に乙建物を築造した場合、Aは、Bに対し、乙建物の築造行為は、甲土地に対するAの抵当権を侵害する行為であるとして、乙建物の収去を求めることができる。 | × |
4 | H07-06-1 | Bが通常の利用方法を逸脱して、甲建物の毀損行為を行う場合、Bの債務の弁済期が到来していないときでも、Aは、抵当権に基づく妨害排除請求をすることができる。 | ◯ |