【宅建過去問】(平成27年問31)重要事項説明書(35条書面)(個数問題)
宅地建物取引業者が、宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明を行う場合における次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定に違反するものはいくつあるか。なお、説明の相手方は宅地建物取引業者ではないものとする。
- ア 宅地の貸借の媒介の場合、当該宅地が都市計画法の第一種低層住居専用地域内にあり、建築基準法第56条第1項第1号に基づく道路斜線制限があるときに、その概要を説明しなかった。
- イ 建物の貸借の媒介の場合、当該建物が新住宅市街地開発事業により造成された宅地上にあり、新住宅市街地開発法第32条第1項に基づく建物の使用及び収益を目的とする権利の設定又は移転について都道府県知事の承認を要する旨の制限があるときに、その概要を説明しなかった。
- ウ 建物の貸借の媒介の場合、当該建物が都市計画法の準防火地域内にあり、建築基準法第61条に基づく建物の構造に係る制限があるときに、その概要を説明しなかった。
- 一つ
- 二つ
- 三つ
- なし
正解:2
はじめに
取引物件に関する重要事項のうち、「②法令に基づく制限の概要」に関する出題です。重要事項説明の出題の中でも、細かい部分をつついたものといえるでしょう。
説明事項 | 売買 | 貸借 | |||
宅地 | 建物 | 宅地 | 建物 | ||
① | 登記された権利の種類・内容、登記名義人又は表題部所有者 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
② | 法令に基づく制限の概要 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
③ | 私道の負担に関する事項 | ◯ | ◯ | ◯ | × |
④ | 供給施設(飲用水・電気・ガス)、排水施設の整備状況 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
⑤ | 工事完了時における形状・構造 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
⑥ | 造成宅地防災区域内にあるときは、その旨 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
⑦ | 土砂災害警戒区域内にあるときは、その旨 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
⑧ | 津波災害警戒区域内にあるときは、その旨 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
⑨ | 水害ハザードマップ上に表示されているときは、その所在地 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
⑩ | 石綿の使用の調査結果が記録されているときは、その内容 | - | ◯ | - | ◯ |
⑪ | 耐震診断を受けたものであるときは、その内容 | - | ◯ | - | ◯ |
⑫ | 住宅性能評価を受けた新築住宅であるときは、その旨 | - | ◯ | - | × |
⑬ | 既存住宅 建物状況調査の結果の概要 | - | ◯ | - | ◯ |
⑭ | 既存住宅 書類の保存の状況 | - | ◯ | - | × |
「建物」の「貸借」に注目
しかし、対策がないわけではありません。
この問題では、肢イとウが「建物」の「貸借」に関するものであることがポイントです。
「建物」の「貸借」に関しては、「法令に基づく制限の概要」として、説明する項目がタッタの3つしかありません。
3つの制限の共通点は、「権利の処分の制限」です。
具体的にいうと、これらの法律は、「賃借権を設定する場合には、知事の承認が必要」ということを定めています。つまり、貸主と借主で賃貸借契約を締結したとしても、それだけでは賃借権が発生しません。そのため、「建物」の「貸借」に関しても、借主に説明が必要なわけです。
法令 | 内容 | |
---|---|---|
1 | 新住宅市街地開発法32条1項 | 造成宅地等に関する権利の処分の制限 |
2 | 新都市基盤整備法第51条1項 | 開発誘導地区内の土地等に関する権利の処分の制限 |
3 | 流通業務市街地の整備に関する法律38条1項 | 造成敷地等に関する権利の処分の制限 |
「建物」の「貸借」について、よく出る引っ掛けは、「建築基準法」に関するものです。例えば、「建蔽率・容積率の制限」や「用途制限」が出題されています。しかし、これらは、建物の建築時や建替時に問題になる制限です。建物の借主には、全く不必要な情報なのです。
「建物」の「貸借」に関して、「建築基準法」や「都市計画法」の制限が出題されたら、すぐに「これは重要事項じゃない!」と判断しましょう。
■参照項目&類似過去問(全選択肢合わせて)
内容を見る取引物件に関する重要事項(②法令に基づく制限の概要)(宅建業法[11]2(2)②)
年-問-肢 | 内容 | 正誤 | |
---|---|---|---|
1 | R06-41-エ | 宅地の売買の媒介を行う場合、当該宅地が急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第3条の規定に基づく急傾斜地崩壊危険区域内にあることは説明しなければならないが、当該区域内における行為の制限の概要については説明しなくてもよい。 | × |
2 | R03-36-1 | 建物の貸借の媒介を行う場合における、「都市計画法第29条第1項の規定に基づく制限」は、宅地建物取引業法第35条に基づき説明しなければならない事項として掲げられている。 | × |
3 | R02s-32-ア | 宅地の売買の媒介を行う場合、当該宅地が急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第3条第1項により指定された急傾斜地崩壊危険区域にあるときは、同法第7条第1項に基づく制限の概要を説明しなければならない。 | ◯ |
4 | R02s-32-ウ | 宅地の貸借の媒介を行う場合、文化財保護法第46条第1項及び第5項の規定による重要文化財の譲渡に関する制限について、その概要を説明する必要はない。 | ◯ |
5 | R02s-32-エ | 宅地の売買の媒介を行う場合、当該宅地が津波防災地域づくりに関する法律第21条第1項により指定された津波防護施設区域内にあるときは、同法第23条第1項に基づく制限の概要を説明しなければならない。 | ◯ |
6 | R02s-42-1 | 地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律第12条第1項により指定された歴史的風致形成建造物である建物の売買の媒介を行う場合、その増築をするときは市町村長への届出が必要である旨を説明しなくてもよい。 | × |
7 | R01-41-3 | 建物の貸借の媒介において、建築基準法に規定する建蔽率及び容積率に関する制限があるときは、その概要を説明しなければならない。 | × |
8 | H28-36-イ | 宅地の貸借の媒介を行う場合、当該宅地が流通業務市街地の整備に関する法律第4条に規定する流通業務地区にあるときは、同法第5条第1項の規定による制限の概要について説明しなければならない。 | ◯ |
9 | H27-31-ア | 宅地の貸借の媒介の場合、当該宅地が都市計画法の第一種低層住居専用地域内にあり、建築基準法第56条第1項第1号に基づく道路斜線制限があるときに、その概要を説明しなかった。この行為は、宅建業法に違反しない。 | × |
10 | H27-31-イ | 建物の貸借の媒介の場合、当該建物が新住宅市街地開発事業により造成された宅地上にあり、新住宅市街地開発法第32条第1項に基づく建物の使用及び収益を目的とする権利の設定又は移転について都道府県知事の承認を要する旨の制限があるときに、その概要を説明しなかった。この行為は、宅建業法に違反しない。 | × |
11 | H27-31-ウ | 建物の貸借の媒介の場合、当該建物が都市計画法の準防火地域内にあり、建築基準法第61条に基づく建物の構造に係る制限があるときに、その概要を説明しなかった。この行為は、宅建業法に違反しない。 | ◯ |
12 | H26-34-2 | 建物の貸借の媒介を行う場合、当該建物が津波防護施設区域に位置しているときはその旨を説明する必要があるが、津波災害警戒区域に位置しているときであってもその旨は説明する必要はない。 | × |
13 | H25-33-3 | 宅地建物取引業者は、マンションの1戸の貸借の媒介を行う場合、建築基準法に規定する容積率及び建蔽率に関する制限があるときは、その制限内容を説明しなければならない。 | × |
14 | H22-35-1 | 建物の売買の媒介の場合は、建築基準法に規定する建蔽率及び容積率に関する制限があるときはその概要を説明しなければならないが、建物の貸借の媒介の場合は説明する必要はない。 | ◯ |
15 | H22-36-3 | 宅地の売買の媒介において、当該宅地が急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第3条の規定に基づく急傾斜地崩壊危険区域内にあることは説明したが、立木竹の伐採には都道府県知事の許可を受けなければならないことについては説明しなかった。 | × |
16 | H21-33-1 | 建物の売買の媒介を行う場合、当該建物が地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律第12条第1項の規定に基づく歴史的風致形成建造物であるときは、宅地建物取引業者は、その増築に際し市町村長への届出が必要である旨を説明しなければならない。 | ◯ |
17 | H17-38-2 | 宅地建物取引業者がマンションの一室の貸借の媒介を行う場合、建築基準法に規定する容積率及び建蔽率に関する制限があるときは、その制限内容を説明しなければならない。 | × |
18 | H15-36-2 | 売買契約の対象となる宅地が、建築基準法に基づき、地方公共団体が条例で指定した災害危険区域内にある場合、宅地建物取引業者は、条例で定められている制限に関する事項の概要を説明しなければならない。 | ◯ |
19 | H15-36-4 | 売買契約の対象となる宅地が、土壌汚染対策法で規定する形質変更時要届出区域内にある場合、宅地建物取引業者は、当該宅地の形質の変更を行おうとするときは、原則として、都道府県知事への届出が必要である旨を説明しなければならない。 | ◯ |
20 | H13-37-2 | 宅地建物取引業者Aは、Bから住宅用地の購入について依頼を受け媒介契約を締結していたところ、古い空き家が建った土地(甲地)を見つけ、甲地の所有者とBとの売買契約を締結させようとしている。甲地が都市計画法による第二種低層住居専用地域に指定されている場合で、その制限について宅地建物取引業法第35条の規定による重要事項の説明をするとき、Aは、Bに対して、低層の住宅が建築できることを告げれば足りる。 | × |
21 | H10-41-1 | 宅地建物取引業者が建物の貸借の媒介を行う場合、当該建物について建築基準法に基づき容積率又は建蔽率に関する制限があるときは、その概要について説明しなければならない。 | × |
22 | H08-35-1 | 宅地建物取引業者が区分所有建物の貸借の媒介をする場合、用途地域内における建築物の用途制限に関する事項の概要を重要事項として説明しなければならない。 | × |
23 | H07-47-1 | 宅地建物取引業者Aは土地区画整理組合Bの施行する土地区画整理事業の施行地区内の宅地(造成工事完了済み)についてCに売買の媒介をすることとした。Aが仮換地指定後の宅地の売買の媒介を行う場合でその宅地の仮換地が住宅先行建設区に指定されているときには、Aは、宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項説明において、Cに土地区画整理法第117条の2の規定に基づく住宅建設の時期の制限の概要を説明しなければならない。 | ◯ |
ア 違反する
「宅地」の借主は、宅地上に建物を建てたり、既存の建物を建て替える権限を持っています。そのため、斜線制限(建築基準法56条)について知らせておく必要があります(宅建業法35条1項2号、令3条1項2号、2項)。
イ 違反する
新住宅市街地開発法32条1項の規定に基づく制限というのは、「建物に賃借権を設定するには、知事の承認を要する」というものです。つまり、賃貸借契約をしても、賃借権を得られない可能性があるわけです。このような重要な情報については、貸主に知らせておく必要があります(宅建業法35条1項2号、令3条3項)。
ウ 違反しない
「準防火地域内の建築物の制限」など「建築基準法」に関する制限は、建物の建築や建て替えに当たって問題になる制限です。建物の借主には、何の関係もない情報です。したがって、建物の貸借の契約においては、説明事項とされていません(宅建業法35条1項2号、令3条3項)。
まとめ
宅建業法に違反するのは、アとイです。正解は、肢2。
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